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「待ち時間も楽しい」 音楽体験を強化するVisaと"削ってはいけない時間"
2026年9月20日 09:00
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ビザ・ワールドワイド・ジャパン(Visa)とユニバーサル ミュージックは、音楽を通じたファンとアーティストの新たな体験創出を目的とし、協力すると発表しました。詳細は今後検討していくことになりますが、日本の音楽イベントやライブ協賛、アジア地域の音楽フェスでの連携のほか、音楽ファン向けの特別な体験や参加機会の提供などを想定しているとのこと。
アーティストコラボのクレジットカードやポップアップストアなどの事例は紹介されましたが、本格的にどこを目指すのか、などの具体策は、まだこれからのようです。ただし、発表会の質疑応答で印象に残ったのは、決済のスムーズさや効率化とは逆ともいえる、音楽業界ならではの話でした。
それは「チケット予約の争奪戦やコンサート会場のグッズの物販の待ち時間などが音楽体験の課題ではないか? この提携はこうした課題の解決になるのか?」という質問への回答でした。
提携内容の「本筋」ではないのですが、ユニバーサル ミュージック 上席執行役員の玉木一郎氏は「改善できるものでは協力していく」と応じました。玉木氏は「不要なストレスは解消したい」と語る一方で、音楽というエンターテイメントでは「待ち時間も楽しい」という側面もあると語りました。
「予約のタイミングでみんながじっと待つ、あるいはライブ・コンサートに行って早朝からグッズを並んで待つ、といった体験は確かにあります。ただ、その待ってる方たちの気持ちの中にも2つの気持ちがあるのではないか? 1つは『早く終わった方が嬉しい』、でも同時に『その待ち焦がれていること自体がすごく楽しい』ということもあるかもしれない」
「音楽はストリーミングサービスの普及によって、『いつでもどこでも』聴けるようになりました。待たなくてもいい。ではなぜ、アーティストのライブに参加したり、商品のために一生懸命待つのか。そこに特別な価値があり、そこにいることが目的だから。コンサートにもそういう面があります。できればこの協業を通じて、本当の目的のために待つのは楽しいけど、その途中にある障壁やストレスはなるべく取り除いていきたい。そのいいバランスを見つけられたらと思っています」
個人的には、「チケットや物販にまつわる待ち時間は、短ければ短いほど良い」と思っていたこともあり、この回答は非常に興味深いものでした。
たしかに、音楽やエンタメで本当に顧客が求めているものが、「待ち時間がまったくない世界」かといえばそうではないのかもしれません。
コンサート会場に行くまでの交通機関、会場が近づくにつれ「同好の士」が増えていくような連帯感、待機列での雑談。それらの時間の一つ一つが、目的のための体験の一部であり、楽しさでもあります。また、アーティストを待つ、新しい楽曲を待つ、新しいライブの発表を待つ、といった時間もある種の「楽しみ方」と言えそうです。
「AIで業務改善。生産性を追求」みたいな世界にいると「何を言っているの?」と思われるかもしれません。しかし、音楽やエンタメの周囲にはこうした一見"無駄"な時間にも確かな価値があるようにも思えてきます。
25年にライブやコンサートに足を運んだ人は約6,000万人。ストリーミングで「いつでもどこでも」聴ける時代に、それだけの人がわざわざ時間をかけて会場に向かっているわけです。
待ち時間はゼロに近いほど良い、と思っていた自分ですが、玉木氏の話を聞いて、無駄に思える時間にも「削ってはいけないものがある」と気付かされました。取り除くべきは決済や手続きの煩わしさであり、開演を待つ高揚感ではない。便利さを突き詰めるだけでは見えてこない"残すべき待ち時間"をどう設計するか。それこそが、この提携が目指すものなのかもしれません。

