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24年1月 請求書・領収書保存のルールが変わる 改正電帳法に備える

2024年1月1日から、改正電子帳簿保存法(電帳法)により、Webで発行された請求書や領収書などについて、要件を満たした状態で電子データで保存しなければならなくなる。この義務化にどう対応すればよいのか、また対応できてない企業にはどのような課題があるのかについて、TOKIUMが勉強会を実施した。

電帳法の宥恕期間がまもなく終了

電帳法とは、1998年に施行され、国税関係書類や国税関係帳簿を一定の条件を満たすことで電子データなどの電磁的記録により保存することを認める法律。国税関係帳簿、国税関係書類などは紙で保存することが原則だったのが、紙ではなく電子データでの保存が認められた。

なお、電子帳簿保存には3つの分類があり、会計ソフト等で電子的に作成した書類が「電子帳簿保存」、紙で受け取った請求書や領収書、レシートなどをデータ化して保存したものが「スキャナ保存」、Webで発行された請求書や領収書など紙がなく電子データで受け取ったものが「電子取引」とされる。

電子データで保存するにはいくつかの要件を満たさなければならず、この要件の難しさから混乱や手間が発生していたという。実際、TOKIUMの調査では、電帳法を理解できていないという回答は40%以上となっている。

政府には電子化を進めたい意向もあることから、改正が繰り返されて利用しやすくなっており、'15年にスキャナ保存可能な書類の対象が拡大、'16年にスマートフォンやデジタルカメラで撮影した電子データがスキャナ保存として認められるようになった。

'22年1月には、ハードルの1つとなっていた、保存開始3カ月前までに税務署長の事前承認が必要という要件が廃止され、電子取引における電子データでの保存が義務化された。それまで電子データを紙に印刷して保存することが許容されていたが、これが不可となった。

'22年1月に義務化されたにもかかわらず、なぜいま話題になっているかというと、'23年12月末までは宥恕(ゆうじょ)期間とされていたため。'24年以降は、対応しなければ青色申告の承認の取消対象となり得るほか、会社法による過料を科せられる可能性がある。ただしTOKIUMによれば、直ちに青色申告の承認が取り消されることはないという。

対象となるのは、電子データで取引した請求書や領収書、契約書、見積書などのすべての国税関係書類。また、すべての事業者(個人事業主・法人)が対応しなければならない。

電子取引における保存要件には、「真実性の確保」に向けたデータの改ざんを防ぐための要件、「可視性の確保」に向けたデータを検索・表示できるようにするための要件がある。

データの改ざんを防ぐための要件として、下記のいずれかを満たす必要がある。

  • タイムスタンプが付与された後、取引情報の授受を行なう
  • 授受後、速やかにタイムスタンプを付す
  • 記録事項を訂正または削除した場合に、履歴を確認できる/訂正・削除できない
  • 訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、運用する

この中にある「タイムスタンプ」とは、電子データが作られた日時を記録する仕組みで、たしかにその日時に電子データが存在し、その日時以降にファイルが改ざんされていないことを証明するものとなる。第三者機関の時刻認証局が発行しており、信頼できるものではあるが、専用のシステムを利用する必要がある。

データを検索・表示できるようにするための要件については、下記のすべてを満たす必要がある。

  • 電子計算処理システムの概要書の備付け
  • 電子計算機(パソコンなど)やディスプレイ、プリンタおよびこれらの操作マニュアルを備付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式および明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておく
  • 検索機能の確保(「取引年月日・取引先・金額」の3項目、「取引年月日」または「取引金額」)

上記のような対応が迫られる中、TOKIUMの調査では電帳法への対応に不安を感じている経理は約60%(とても感じている20.6%、やや感じている42.7%)にのぼる。営業など各担当部署で取り扱う見積書や契約書なども対象となることから、特に「経理以外の社員が正しく理解・対応できるか」に不安を感じているという。

電帳法対応については、12月末までに対応できないという回答は20%以上で、企業規模で見ると1千名未満の企業の17.3%はまだ法対応の見通しが立っていないとしている。

保存要件に対応するには、システムを活用する方法と、アナログで運用する方法がある。システムの場合は一般的に、タイムスタンプ自動付与機能や訂正削除履歴の閲覧機能が搭載されており、真実性を満たすことができる。また、検索要件のデータ化や要件の検索機能(範囲検索、組み合わせ検索など)により、可視性も満たされるケースが多い。

アナログでも真実性は事務処理規定を用意することで対応でき、国税庁がサンプルを公表している。ただし、訂正や削除をする際に書類が必要で、その際の手順を他部署や新入社員に周知する必要も出てくる。可視性についてもファイル名の規則を揃え、Excel等で索引簿を作成して検索性を担保するなどの方法があるが、経理ではない一般従業員にまでルールを徹底するのはかなり大変と思われるとしている。

1月から変わること ややこしいインボイス制度との関連

'22年1月から'23年12月31日まで「宥恕措置」が設けられていたのは前述の通りだが、'24年1月からは「猶予措置」が新たに設けられる。

猶予措置適用の要件の1つとして「保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める」とある。

この中の「相当の理由」があると認められるケースとして「保存要件に従って保存するためのシステムやワークフロー等の整備が間に合わない」「資金繰りや人手不足等の理由で、要件に従って電子データの保存を行なうことが困難」がある。

一方で、特段の理由なく電子データを保存していなかったり、「紙じゃないとダメな文化」「電子は嫌いだからやりたくない」といった経営者の信条のみに基づいた理由の場合は、認められない可能性が高いという。

そのほかTOKIUMは、インボイスでは認められるものの電帳法では認められない要件があるなど、インボイス制度と電子帳簿保存法による複雑な規制で混乱が発生していると指摘する。

その一例としてクレジットカードのWeb明細の取扱いがあり、クレジットカード会社からの利用明細をWeb明細を受け取った場合、電帳法の観点ではWeb明細の電子保存が必須で、インボイスの観点ではWeb明細では仕入れ税額控除が不可になる。

なお、インボイスの観点でのWeb明細について国税庁は「クレジットカード会社の作成した請求明細書を保存することにより仕入税額控除の適用を受けることはできません。この場合、課税資産の譲渡等を行なった他の事業者(カード加盟店)から受領した適格請求書等を保存することで、仕入税額控除の適用が認められます」と公表している。

TOKIUMでは支出管理クラウド「TOKIUM」において、こういった経理課題を解決できる文書管理クラウド「TOKIUM電子帳簿保存」を展開。TOKIUM電子帳簿保存では、あらゆる国税関係書類の書類タイトル、日付、金額、取引先名、適格請求書番号をTOKIUM上でデータ化。電帳法を満たして保存し、書類を一元管理できる。そのほか完全ペーパーレスを実現する、クラウド経費精算システム「TOKIUM経費精算」、クラウド請求書受領システム「TOKIUMインボイス」を提供している。