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近畿大学がウナギの完全養殖に成功

人工ふ化したウナギから生まれた仔魚。飼育は100日以上

近畿大学は、ニホンウナギの完全養殖に成功したと発表した。まずは稚魚(シラスウナギ)までの育成が目標で、育成技術の安定化に向けた研究を継続するとしている。

ウナギの完全養殖は国立の水産機構が2010年に成功しているが、大学では初めて。完全養殖による仔魚(しぎょ)は飼育期間が112日を経過(10月26日時点)しており、これを養殖用種苗として利用できる稚魚(シラスウナギ)にまで育成するのが第一目標としている。今後、仔魚用の飼料の改良に取り組むなどして、育成技術の安定化を目指す。

ウナギの養殖は1970年代から研究されており、1973年に北海道大学が人工ふ化に成功。2002年に水産機構がシラスウナギにまで育成することに成功し、2010年には完全養殖に成功している。

近畿大学水産研究所は、1976年にニホンウナギの種苗生産研究を開始。1980~1990年代には採卵・ふ化に成功したものの、仔魚が餌を食べるまでには至らず、その後の研究は中断していた。2019年に入り、水産機構から公表された技術情報をもとに研究を再開、同年9月に人工ふ化に成功していた。

完全養殖は、人工ふ化したウナギの雌雄を親魚とし、成長させて「催熟」で受精卵を得て、そこから仔魚がふ化した状態を指す。ウナギは、飼育条件下では性成熟に関するホルモンが生産・分泌されないため、受精卵を得るためには、「催熟」として人為的にホルモンなどを投与、成熟を促進させる必要がある。

シラスウナギにするまでが一番難しいとされており、大学の今後の研究でも、シラスウナギまでの育成が目標。順調に進めば、仔魚は今後3カ月~半年程度でシラスウナギになり、一般的な食用サイズに成長するにはさらに約1年程度かかる見込みとしている。

なお、仔魚の育成技術は特殊な小規模水槽でのみ飼育が可能で、単純に規模を拡大するだけの大量生産は実現が困難と指摘。「低コストで大量生産できるめどは立っていないのが実情」としている。

また、飼育技術の大部分は水産機構が開発したものをベースにしているため、完全養殖を実現した「近大マグロ」で知られる近畿大学水産研究所の技術や経験で、独自アプローチの仔魚用飼料の改良に挑戦、シラスウナギまでの安定した生産技術の確立を目指すとしている。