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“あたらないカキ”完全陸上養殖で実現へ

ゼネラル・オイスターは、ノロウイルスフリーの“あたらないカキ”を開発、完全陸上養殖に成功したと発表した。「8TH SEA OYSTER 2.0」(エイスシーオイスター2.0)と名付け、今後は量産化施設の建設を進めていく予定。

ゼネラル・オイスターのグループ会社であるジーオー・ファームが、沖縄県久米島にて、海洋深層水を活用した牡蠣の完全陸上養殖に世界で初めて成功。外部検査機関におけるノロウイルス検査を実施し、牡蠣の食中毒の主な原因であるノロウイルスが検出されないことも確認されている。この養殖技術は日本、台湾、中国、米国でも特許を取得済み。

これまでは、牡蠣が取り込む海水を紫外線で殺菌する方法ではなく、表層の海水と混ざらず、より安全性・清浄性が高い海洋深層水を取り込ませる方法を採用。牡蠣に海洋深層水を取り込ませることで体内を浄化する方法を確立し、「8TH SEA OYSTER 1.0」として年間600万個以上が出荷されていた。しかしノロウイルスの検出はゼロにはならず、検出されたロットを出荷しないなどの対策をとってきた。

牡蠣の食中毒を起こすノロウイルスは、牡蠣が海水を取り込むことで蓄積されるため、ゼネラル・オイスターはノロウイルスが存在しない環境として完全陸上養殖を選択。一方、一般的な牡蠣の養殖の過程で海域の海水が使われるのは、牡蠣の餌である植物プランクトンを大量に含むためで、海洋深層水は細菌が存在しない代わりに植物プランクトンも存在しないという問題があった。

そこで、東京大学生物生産工学研究センターとの共同研究で、栄養が豊富な海洋深層水を使った植物プランクトンの大量培養技術、無菌培養技術が研究され、大量安定培養技術が確立された。海洋深層水は沖縄県久米島の海洋温度差発電の発電後海水を二次利用し、加温のランニングコスト抑制や環境負荷低減を図っている。

海洋深層水を使った植物プランクトンの大量安定培養技術
陸上養殖

これらの、ノロウイルスが含まれない海洋深層水を使い、餌となる植物プランクトンの大量培養に成功したことで、“あたらないカキ”の完全陸上養殖が実現した。

7月末に実施された細菌検査では(カッコ内は食品衛生法が定める生食用牡蠣の成分規格)、細菌数が300未満/g(50,000/g)、E.coli最確数が18未満/100g(230/100g)、腸炎ビブリオ最確数が3.0未満/g(100/g)となっており、食品衛生法が定める基準を大幅に下回る結果が出ている。また外部検査機関によるノロウイルス自主検査では、ノロウイルスが検出されなかった。

完全陸上養殖で生育した牡蠣の味は、分析により甘みの強い牡蠣になるという特徴が明らかになっている。また全国29の海域で養殖される牡蠣と比較してタウリンやプロリンなどが高く、栄養価値も高いと評価されている。

今後はIoT技術なども駆使しながら量産施設の建設を想定。量産化の第1段階では年間数十万個の生産、第2段階では年間数百万個の生産を想定する。また次の研究は、陸上養殖で与える植物プランクトンの種類によって、栄養機能性や旨味成分をコントロールする技術開発に取り組む予定。