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トヨタと出光、全固体電池量産化で協業 搭載EVは27年に

全固体電池

出光興産とトヨタは、バッテリーEV(BEV)用の次世代電池「全固体電池」の量産化に向けた協業を開始した。固体電解質の量産技術開発や、生産性向上、サプライチェーン構築に取り組み、2027年~28年の全固体電池実用化実現を目指す。

BEVはトヨタのマルチパスウェイ戦略における重要な選択肢の一つとし、その進化には、高出力、ロングレンジを追求したもの、良品廉価な普及版など、用途・特性に応じたソリューションが開発されている。

現在のリチウムイオン電池など液系電池の先にある技術として開発が進められてきたのが、全固体電池だ。全固体電池は、電解液を使うリチウムイオン電池などに対し、固体電解質を使用するため、イオンが速く動けるメリットがある。これにより充電時間の短縮や長い航続距離、高出力などの特性が見込める。温度の影響も受けにくく、一般的な乗用車はもちろん、充電速度が速いことから商用車などへの展開も期待されている。

しかし、全固体電池は耐久性に課題がある。電解質が固体であることから、充放電を繰り返すと電解質に亀裂が入り、性能が劣化してしまう。

これを解決するのが、出光と共同開発を進めてきた「硫化物系固体電解質」。硫化物系固体電解質は、柔らかく他の素材と密着しやすいうえ、割れにくいという特徴を備え、全固体電池の課題を解決する要素技術の一つになる。これにトヨタの正極負極剤、電池化技術を組み上げることで、その性能と耐久性を両立する目処がついたという。

全固体電池のイメージ
固体電解質(出光興産提供)

全固体電池の要素技術研究・開発には、出光は2001年から、トヨタは2006年から取り組んできたが、トヨタは2013年以降、出光が開発した「硫化物系固体電解質」について、共同研究を開始している。今回の協業では、硫化物系固体電解質を使用した全固体電池の本格的な量産に向け、数十名規模のタスクフォースを立ち上げ、その実現に取り組んでいく。

第1フェーズとしては、硫化物固体電解質の開発と量産化に向けた量産実証(パイロット)装置の準備を行なう。双方の技術領域へのフィードバックと開発支援を通じ、品質・コスト・納期の観点で、硫化物固体電解質を作り込み、出光の量産実証装置を使った量産実証に繋げる。

第2フェーズは、量産実証装置を用いた量産化。出光による量産実証装置の製作・着工・立ち上げを通じた、硫化物固体電解質の製造と量産化を推進する。トヨタは、硫化物固体電解質を用いた全固体電池とそれを搭載した電動車の開発を推進し、全固体電池搭載車の2027~2028年市場導入を、より確実なものにする。

出光の固体電解質小型実証設備

第3フェーズは将来の本格量産の検討。第2フェーズの実績をもとに、将来の本格量産と事業化に向けた検討を両社で実施する。

固体電解質の中間材料である硫化リチウムの材料となる硫黄成分は、原油から石油を精製する際に発生する副産物。出光は1994年に硫化リチウムの製造技術を確立している。

トヨタは、4月1日に開催した新体制による方針説明会において、2026年にBEVのプラットフォームを刷新し、新開発の電池で従来のEVの2倍以上の航続距離を目指すことを表明している。最初に市場へ投入される全固体電池は新開発される電池に対して、そのエネルギー密度は2割増しになるという。ただし、これは最終的な性能ではなく、まずはこの段階で市場に投入し、さらなる性能向上を目指していくことになる。

左からトヨタ自動車 CN 先行開発センター長 海田啓司氏、トヨタ自動車 代表取締役社長 佐藤恒治氏、出光興産 代表取締役社長 木藤俊一氏、出光興産 専務執行役員 中本肇氏