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アドビ、次世代生成AI「Firefly Image 2」 イラレに「ベクター生成」
2023年10月11日 01:00
Adobeは10日(米国時間)、Adobe Creative Cloudに生成AIを導入するアップデートを発表した。Adobe MAXにおいて発表し、Illustrator、Photoshop、Adobe Express、Adobe StockにAdobe Fireflyなどの生成AI機能を多数導入していく。
Adobe Fireflyでは、新生成AIモデルである「Adobe Firefly Image 2 Model」、「Adobe Firefly Vector Model」、「Adobe Firefly Design Model」を開発。これらをCreative Cloudの各製品に統合し、機能強化を図っている。
Adobe Illustrator
Illustratorでは、「テキストからベクター生成」(ベータ版)を搭載。Adobe Fireflyによる新機能で、シンプルなテキストプロンプトから、アイコン、シーン、パターンなど、編集可能な高品質のベクターグラフィックスを簡単に生成できる。ムードボードを作成したり、マーケティングや広告用のグラフィックを作成したりするのに最適としている。
また、アウトライン化されたテキストからフォント識別して編集可能にする「Retype」(ベータ版)や、画像やグラフィックをリアルな商品写真やブランディング用のモックアップに変換できる「モックアップ」(ベータ版)などの新機能を導入。コレボレーション用の「レビュー用に共有」の機能強化なども行なう。
さらに、ブラウザベースの「Adobe Illustrator web版(ベータ版)」も登場する。
Adobe Photoshop
Adobe Firefly搭載のAdobe Photoshop web版が一般提供され、Chromebook Plusデバイスでも利用可能になる。
Adobe Express(プレミアムプラン)
Adobe Expressに、生成AIを搭載した新機能「生成塗りつぶし」と「テキストからテンプレート生成」(ベータ版)を導入する。
100以上の言語のテキストプロンプトをサポートし、商用利用も可能。「自動翻訳」機能により、45以上の言語で効率的にクリエイティブ内のコピーやテキストのローカライズができる。
Adobe Lightroom
Lightroomは、写真に美しいぼかし効果を適用できる「ぼかし(レンズ)」など、AIを活用した新機能を搭載。
Lightroomモバイル版に最適化された編集エクスペリエンスでは、ツールバーが合理化され、人気のある機能が優先的に表示されるため、スマートフォンでの写真編集がより速く、より直感的に行なえるようになる。
その他、Lightroomエコシステム全体にわたるアップデートを実施。「HDRに最適化」、正確かつ高精度なカラー調整を行なえる「ポイントカラー」などを搭載。また、デジタルコンテンツの透明性を促進するために、コンテンツクレデンシャル機能がより多くのファイル形式に対応した。
Adobe Premiere Pro、Adobe After Effects、Frame.io
Premiere Pro(ベータ版)でInstagram、Facebook、YouTube、TikTokに直接動画を公開可能になる。
また、Premiere Proの「文字起こしベースの編集」とAfter Effectsの「ロトブラシ」の機能強化も行なわれる。Frame.io「レビュー用に共有」(ベータ版)では、コンテンツの共有とコラボレーションが迅速に行なえるようになる。
Premiere Proのタイムラインのパフォーマンスは5倍高速化。新しいカラー環境設定を導入するほか、トーンマッピングの強化なども図られる。
Adobe Stock
Adobe Stockでは、テキストプロンプトでコンセプト文をビジュアルに変換する「テキストから画像生成」と、数クリックで画像の背景を拡張したりアスペクト比の変更などができる「生成拡張」を導入する。また、「ビデオテンプレート」を追加する。
次世代Adobe Fireflyモデルを開発
Adobe Fireflyにおいては、新しい画像生成AIモデル「Adobe Firefly Image 2」を発表した。Fireflyのクリエイティブコントロールと画質を大幅に向上したほか、Fireflyの特徴である商用利用でも安全性を考慮したコンテンツ生成をする設計を継承している。
Adobe Firefly Image 2 Modelのほか、「Adobe Firefly Vector Model」、「Adobe Firefly Design Model」も発表した。
Adobe Firefly Image 2 Modelは、柔軟なクリエイティブコントロールと高い画像品質を実現し、次世代の画像生成AIモデルとして進化。Fireflyの初代モデルをベースに開発し、ユーザー指定のカスタムスタイルでコンテンツを生成する「生成Match」、写真スタイルの画像調整が可能な「写真設定」、プロンプトの追加や言い換えを支援する「プロンプト」などの新機能を追加。Adobe Firefly web版で利用できる新機能「テキストから画像生成」など、クリエイティブコントロールと画質を大幅に強化した「次世代の画像生成AI」としている。
また、Firefly Image 2では、より高品質な画像やイラストを生成し、肌、髪、目、手、身体の構造を改善する。人物のレンダリング品質を高め、より良いカラーを表現し、ダイナミックレンジを改善する。
Firefly Image 2は10日から、Adobe Firefly web版(有料/無料)で提供を開始。Adobe Stockが収録する画像、オープンライセンス画像、著作権が失効したパブリックドメインコンテンツでトレーニングされ、テキストプロンプトは100言語以上をサポートしている。また、有料プランでは優先的に処理を受けられる生成クレジットが付与される。
ユーザーが選択した任意の画像のスタイルを適用して新しい画像を生成。Adobe Firefly web版の「テキストから画像生成」機能で新しい画像を作成するときに、事前に選択したリストから画像を選択するか、独自の参照画像をアップロードして希望のスタイルを指定できる。ブランドガイドラインに沿った画像を作成したい場合や、一貫したスタイルでアセットを作成したいような場合、手作業で既存の画像のスタイルを再現する手間と時間を節約できる。「生成Match 」は、アップロードされた画像を使用する権限があることへの確認と合わせ、アドビの利用規約への同意を求めるメッセージがアプリ内で自動的に表示される
肌の毛穴や植物の葉などのディテールをより忠実に再現し、被写界深度のコントロール、モーションブラー、視野、ジェネレーションなどの調整により、よりフォトリアルな画像を生成できる。ユーザーは、マニュアルカメラのレンズコントロールと同様に設定を適用・調整でき、クリエイターは思い通りの結果がより早く、より少ない労力で得られる。また、「自動モード」ではプロンプト入力中に「写真」または「アート」のいずれかの画像生成スタイルが自動選択されたうえで適切な写真設定が適用されるため、手動で調整する手間を省ける
テキストプロンプトの理解が向上し、より多くのランドマークや文化的シンボルを認識。また、プロンプトの改善点の提案を受けられるので、新たな制作へのインスピレーションを得るとともに生成のやりなおし回数が減り、プロンプトの自動補完機能によって美しいコンテンツをより速く生成できる。プロンプトガイドは、より効果的な文の追加や言い換えをユーザーに提示し、より簡単にビジョンを実現できるように支援する。さらに、Adobe Firefly web版の「テキストから画像生成」モジュールでは、キーワード、カラー、形状など特定の要素を指定して生成画像から除外することもできる
Adobe Fireflyが生成した画像を直接他のユーザーと共有したり保存したり、気に入った画像の生成に使われたプロンプトを再利用して自分好みに微調整することもできる。「Adobe Fireflyから共有」を使えば、ユーザーは自分の作品だけでなく、その作成方法も他の人と共有することができる。アプリをまたいだワークフローを容易にする「ライブラリに保存」では、 Adobe FireflyファイルをAdobe Creative Cloudライブラリに保存し、他のアプリで再度開くことができる。これにより、Adobe Fireflyで生成した出力を共有ライブラリ経由で他のユーザーが開き、活用できるようになる
Adobe Firefly Vector Modelは、ベクター画像特化型の生成AIモデル。アドビによるベクターグラフィックと生成AIの両方の知見を活かし、Adobe Illustatorの新機能「テキストからベクター生成」(ベータ版)としてワークフローに統合されている。
アートボード上に追加されるベクターが既存のアートのスタイルと完全に一致するようにできる。これにより、アートボード上の他のシーン、被写体、アイコン、パターンなどのスタイルにマッチした高品質なベクター出力を生成できるようになり、特定のスタイルに沿ったコンテンツを作成できる
従来、グラデーションをベクターで再現するのは困難だったが、同モデルに搭載された新しいエンジンにより、ベクターグラデーションを編集可能な状態で生成できるようになった
生成されたベクターグラフィックに含まれるすべてのエレメントは論理的にグループ化され、レイヤー化される。樹木のアートワークの場合、どの部分を構成するかによってすべての関連パスが自動的にグループ化され、最終的なベクター出力を微調整、編集、再利用できる
Adobe Fireflyは継ぎ目のないパターンタイルを生成するため、目に見えるギャップが存在しないデザインパターンを無限に繰り返せる
スムーズかつ正確な、高品質なベクターカーブを出力し、複数の曲線が交差する接合部など細かい部分もインテリジェントに処理される
Adobe Firefly Design Modelは、Adobe Firefly Image Model、Adobe Stock、Adobe Fontsと組み合わせたレイアウトテクノロジーを実装し、Adobe Expressの新機能「テキストからテンプレート生成」(ベータ版)により、テンプレートデザインを瞬時に生成する。
印刷、SNS、web広告など、Adobe Expressで編集可能である一般的なアスペクト比のテンプレートを生成できる。
Adobe Expressの「テキストからテンプレート生成」(ベータ版)で生成されたテンプレートは、印刷、SNS、オンライン広告などをカスタムデザインできる。ユーザーは、Adobe Fireflyで画像生成をした後、プロンプトを引き継いでAdobe Expressで微修正を続けることができ、Adobe Firefly搭載のテキストエフェクトを使用してタイトルをリッチ化できる
AIが生成したテンプレートや自動生成のテキストおよび画像により、ユーザーは何千ものAdobe Expressテンプレートを選択する時間を節約し、ニーズに最適なレイアウトを特定できる
ユーザーは、最適なテキストサイズ、色、位置を選択し、必要に応じて画像をトリミングや置換などを行ない、簡単なプロンプトからテキストと画像を容易に生成可能
「Adobe Firefly Design Model」は生成AIを活用して、ユーザーのプロンプトと調和した画像、テキスト、トーンを作成し、クリエイターが瞬時に最適な結果を生成できる