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ファミマ店頭サイネージは効果抜群 ECに「やられっぱなしじゃない」

ファミリーマート 代表取締役社長の細見研介氏

ファミリーマートは、店頭への設置を進めているデジタルサイネージ(レジ上の3つの大きなディスプレイ)について、プロモーション方法やその効果と、背景にあるリテールメディア戦略を説明した。デジタルサイネージは商品訴求力を高めることが実証されたとし、導入店舗を現在の約4,600店からさらに拡大、2023年内に1万店への設置を目指す。

ファミリーマートは、コロナ禍を経て、店舗は顧客と繋がる基盤「カスタマーリンクプラットフォーム」であると、店舗の役割を再定義している。一般に小売企業は、商品を顧客に“販売した”という有力な情報を持つため、それを元に広告や販売促進活動を行なうリテールメディア戦略をとれる。ファミリーマートは2019年以降、リテールメディア戦略に合計500億円を投資。

内訳として、決済機能を含む強力なアプリとして「ファミペイ」を開発するファミマデジタルワンに約200億円、データ収集の加速や分析機能を強化し広告代理店機能も持つデータ・ワンに約50億円、デジタルサイネージを店舗に設置しメディア事業を行なうゲート・ワンに約200億円を投資している。

「リテールメディア戦略の根本にあるのは、店舗の再定義。カスタマーリンクプラットフォームとして、顧客といかにつながっていくのかがこの戦略の核心」(ファミリーマート 代表取締役社長の細見研介氏)としている。

「ファミチキにはコーク」で効果を検証

4~5月に実施された、「ファミチキ」と「コカ・コーラ」ブランド製品のセット販売プロモーション「ファミチキにはコーク」の効果も報告された。この企画は、ファミチキとコーラの同時購入で100円引きになるというキャンペーンで、全国の約16,500店舗で実施。レジ上の3枚のデジタルサイネージ「FamilyMartVision」設置店舗ではキャンペーンを訴求する表示を行なったほか、アプリ「ファミペイ」でも「ファミチキにはコーク」のデジタル広告を配信する連動企画を実施した。

デジタルサイネージやファミペイの広告でも「ファミチキにはコーク」を訴求

その結果、キャンペーン期間中の併売率は、実施前と比較して全店ベースで約6~7倍と大きな効果がみられた。またデジタルサイネージ設置店舗は、未設置店舗と比較して併売率が118%になるなど、高い販売実績に結びついたことがわかった。

デジタルサイネージ設置店舗と未設置店舗の比較

店頭施策、ファミペイ内のバナー広告、店頭デジタルサイネージ、の3つの接触状況別で購買件数の上昇率を検証すると、ファミペイ内バナー広告とデジタルサイネージの両方に接触したグループの購買件数の上昇率が268%と最も高い数値になった。この結果から、両者を併用することで店頭での商品訴求力をさらに高めることが可能としている。

店舗のメディア価値をデジタルで向上

「カスタマーリンクプラットフォーム」戦略の中核になっているのが、ファミマデジタルワンが手掛ける「ファミペイ」アプリ。1,500万ダウンロードに上るなど会員基盤として大きいほか、ユーザー一人ひとりに合わせた販促プログラムを展開しており、ファン化した顧客は通常の顧客の2~3倍の買い物をするなど、大きな成果を生んでいるという。今後はファーストパーティのデータをパートナー企業に開放し、一緒にパートナープラグラムを作り顧客のファン化を推進していくという方針も示されている。

ファーストパーティデータの開放も
ファミペイ翌月払いは9月に5%還元施策を実施。詳細は今後案内される

データ・ワンでは、ファミリーマート店頭の購買データを、広告配信や効果検証に活用できる体制を整えている。ターゲティング広告はdポイントクラブと合わせて、購買に紐付ている3,000万以上のIDを活用し、その母数の多さから、従来よりも細分化されたターゲティングも可能になっている。効果の検証もデータを活用したものになり、詳細な購買分析レポートを作成できる。設立から2年半で150社以上と取引があり、事業は2年で黒字化したという。

ゲート・ワンは、広告枠だけでなく番組枠の制作も手掛け、YouTubeなどほかのメディアでも配信するなど相乗効果を狙った施策も行なっている。店内のリーフレットのラックや店内放送といった既存のメディアも合わせて、クロスメディアの効果を広告主に還元していく。効果の検証については、AIカメラの活用にも目処がたっている。検証が完了し、今月から視認データなどを一部広告主に提供していくといい、媒体の視認率や視認行動の可視化を可能にしていく。今後は、より小規模な予算にも対応できるような広告メニューも開発していくという。

AIカメラの活用も始める

こうしたデジタルサイネージやアプリを絡め、店頭を含めて盛り上げていく施策の金額面での規模は、「3年以内に50億円(税引後利益)は超えたい。5年後には100億円を目指す」(細見社長)という。もっとも、こうした施策は広告クライアントからの収入だけでなく、施策による商品の売上の伸び、店舗の売上の伸びといった効果も入れるため、簡単には表しにくいともしている。

また今後は、デジタルサイネージに表示する内容を店により変えられる仕組みを実装予定。システム開発は2023年中に完了する予定で、郊外や、平均的な店舗と顧客の属性が異なるような店舗において、情報を変えて配信することが可能になるという。

eコマースに「やられっぱなしじゃない」

店頭のレジの上に大きな3枚のディスプレイを設置するファミリーマートのデジタルサイネージ「FamilyMartVision」は、販売プロモーションで大きな効果が確認された。ある程度は想定通りだったとするものの、数値で可視化され確認できたという形。分析の面では、広告に接するだけでなく、実際に買ったかどうかまで分かるので、より有効なデータを得られるのも強みになっている。

ファミリーマートでは全国の店舗を合計すると、1日だけで1,500万人が店舗を訪れる。そこにデジタルサイネージのようなメディアを設置すると、映像を駆使する高い訴求力を持つ広告媒体として期待できる。4,600店に設置したデジタルサイネージを1万店にまで拡大、将来的には全店(約16,500店)に展開したいという計画も、1日最大1,500万人という規模で接触機会があることを見込んでのもの。

またファミリーマートでは番組を制作してYouTubeなどで配信、アーティストの書き下ろし楽曲をファミリーマート店頭のデジタルサイネージで配信するといった施策も打ち、多数のファンが店に足を運ぶなど、これまでとは違った取り組みでも大きな効果があったとしている。

ほかにも実務面では、店頭の雰囲気が華やかになり、スタッフも映像を楽しんでいることや、レジに並ぶ人が見られることで(わずかな待ち時間とはいえ)暇を潰せること、ピリピリした雰囲気が解消されスタッフの精神的な負担も減るといった副次効果も指摘されている。

「過去10年でEコマースが伸び、リアル店舗の役割は少なくなると言われる時期が続いてきた。米アマゾンの売上は伸びているが、利益率は激減している。デジタル空間の競争は無限で、競合の新興企業が次々に出てくる。そんな中で米ウォルマートは戦略を見直し、デジタル技術を使ってリアル店舗の再定義を行ない成功している。それと同じで、Eコマースに喰われていたリアル店舗もやられっぱなしじゃないよということ」と細見社長は語り、デジタル技術を使って、店舗をメディアやプラットフォームのようにして取り込み、発展させていく方針を示している。

説明会を「リアル店舗の逆襲」と銘打っていたこともあり、フォトセッションはファイティングポーズに。左からファミリーマート代表取締役社長の細見研介氏、データ・ワン代表取締役社長 の太田英利氏、ゲート・ワン代表取締役COOの速水大剛氏、ファミマデジタルワン代表取締役社長の中野和浩氏