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「明るい兆し」はあるが「長丁場」の対応が必要。新型コロナ専門家会議

政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、5月1日付けの「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」を公表した。4月7日に7都府県に出され、16日に全国に拡大された緊急事態宣言により、「新規感染者数は減少傾向に転じるという一定の成果」が確認されたが、「長丁場での対応が必要」としている。

外出自粛で一定の成果

確定日別新規陽性者数は、4月10日前後は700人近くだったが、直近では200人程度に留まる日も増えてきたことから、外出自粛等は「一定の成果」を見せている。しかし、3月20日過ぎから生じた発症者数の急増のスピードに比べれば、減少のスピードは緩やか。全国データの減少が鈍い理由は、大都市圏からの人の移動により、地方に感染が拡大し、地方での感染の縮小のスピードが東京に比べて鈍いからと分析している。

東京都の確定日別新規陽性者数は、4月9日には250名近くだったが、直近では100名を下回るようになり、減少傾向にあると考えられる(5月1日は165名)。東京都の減少スピードは全国データよりも早いが、増加した際の立ち上がりに比べるとやはり緩やか。夜間の接待を伴う飲食店における感染者数は減少傾向だが、病院内や福祉施設内での集団感染や家庭内感染が増えていることが要因とする。

全国の実効再生産数(1人の感染者が生み出した二次感染者数の平均値)は3月25日は2.0だったが、4月10日には0.7となり、1を下回った。東京都は、3月14日の2.6から、4月10日には0.5に低下。「全国的に新規感染者数は減少傾向にあることは確か」とする。ただし、いまだにかなりの新規感染者数があり、現状は3月上旬やオーバーシュートの兆候を見せ始めた3月中旬前後の新規感染の水準は下回っていない。

なお、「PCR等検査数が諸外国と比べ限定的で、感染者数が減少しているとなぜ判断できるのか」との指摘もある。専門家委員会では、「感染者の全てが把握されているわけではない」としながらも、「検査件数が徐々に増加している中で、陽性件数は全国的に減少傾向にあること、また、東京などで倍加時間が伸びていることなどから、新規感染者数が減少の傾向にあることは間違いないと判断される」としている。

医療体制維持には、新規感染減少こそ重要

医療体制においては、症状別の病床の役割分担が進んでいる。重症者・中等症に対応可能な病床の確保に加え、無症候や軽症例についてはホテルなどでの受入れを進めるているが、特に特定警戒都道府県においては、医療現場の逼迫が続いている。

また、新規感染者数が減少傾向となっても、平均的な在院期間は約2~3週間程度。特に重症患者は、在院期間が長期化し、その数が減少に転じにくいため、入院患者による医療機関への負荷はしばらく継続。医療現場の逼迫した状況は、「緩やかにしか解消されない」とする。そのため、新規感染者数を減少させる取組の継続が必要とする。

接触を避ける「行動変容」については、人流(都市部の人口サイズ)だけでなく、接触率(一人当たりが経験する単位時間当たりの接触頻度)をあわせて減少率を評価。渋谷駅周辺と難波駅周辺から半径1km圏内は、10歳台および20歳台の若者を中心として昼夜問わず接触頻度が80%以上減少。ただし、日中の30歳台以上の接触頻度の減少は8割に達していなかった。なお、東京の丸の内の夜間における接触頻度は、8割減を達成していた。

また、都道府県を跨ぐ移動は、3~5割の減少に留まるところが多く、「都心等への
通勤を続ける限り、生産年齢人口の接触頻度の減少度合いが少ない」としている。

「明るい兆し」も長丁場を前提とした「新しい生活様式」を

今後の見通しについては、「早期診断から重症化予防までの治療法の確立に向けた明るい兆しが見えつつある」と言及。ただし、対策を緩めれば、感染が再燃し、医療崩壊・重症者増大のおそれがあるとする。

そのため、感染が一定範囲に抑えられ、医療提供体制が確保された地域については、対策の強度を一定程度緩め、感染拡大を予防する「新しい生活様式」へと移行。効率的なクラスター対策により、新規感染者数の発生を一定以下にコントロールしていく方針。並行して、医療提供体制のキャパシティを上げていく。

一例として、学校については、「リスクを低減した上で、活動を再開し、学習の機会を保障していくことも重要。感染リスクが高い活動や場面を整理し、対応について早急に示すべき」としている。また、公園の取り扱いについても検討し、「再度のまん延が生じないようにするため、長丁場の対応を前提とした、『新しい生活様式』の定着が必要」と提言している。

緊急事態宣言は概ね1カ月延長へ

安倍首相は、専門家会議の報告を受けて会見。「緊急事態宣言の下、国民の皆様の多大な御協力により、諸外国のような爆発的な感染拡大を逃れ、一定の成果が現れ始めている。一方、累積の感染者は1万人を大きく上回り、医療現場は依然厳しい状況にあることから、当面引き続き国民の皆様の御協力が必要であるというのが専門家の見解。先ほど西村大臣に対して、現在の緊急事態宣言の枠組みを概ね1カ月程度延長することを軸に、専門家の皆様の意見を伺いながら、地域の感染状況に対応した対策を速やかに調整するよう指示した。最終的には、各地域の感染状況、最新のデータを、専門家の皆様に十分に御検討いただいた上で、5月4日に決定したい」と述べた。

会見する安倍総理(出典:首相官邸)