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緊急事態宣言、5月31日まで延長決定。「コロナの時代の新たな日常」

安倍首相(出典:首相官邸YouTubeから)

5月6日までを期限に全国に出されていた緊急事態宣言が5月31日まで延期される。4日に安倍首相が発表した。

安倍首相は、多いときは700人を超えていた全国の新型コロナウイルス感染者数が直近では約200名、約3分の1に減少し、「収束に向けた道を着実に前進していることを意味する」と言及。「欧米のような感染爆発が起こるという悲観的な予想もあったが、私達の行動は私達の未来を確実に変えつつある」とし、緊急事態宣言から約1カ月での感染者減の実現と、国民の協力について感謝を述べた。

一方で、「努力をもう少しお願いしたいと、お伝えしなければならない。現段階では感染者減少が十分ではない。1万人近い方が全国で療養中で、人工呼吸機による治療を受ける方は1カ月で3倍、500名を超える方が亡くなっている。医療負荷が高い現状は変わっていない。さらに重傷者治療に集中するためにも、新規感染者を減らす必要がある」と説明し、特に「特定警戒都道府県」(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県、北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府)の13都道府県については、「引き続き8割の接触回避をお願いしたい。各地への感染を防ぐためにも、地方への人の流れが生まれることを避けなければいけない。全国を対象に延長する」とした。

宣言の延長が5月31日までとなった理由については、「平均的な入院期間は2~3週間。感染した方の退院などで医療現場の逼迫を改善するには、1カ月程度の期間が必要と判断し、専門家の皆様の賛同を頂き、延長を決定した」と説明。ただし、10日後の5月14日を目処に、その時点での状況を改めて評価する。「その際に地域ごとの感染者の動向や医療機関の逼迫状況などを見て、可能であると判断されれば、期間満了を待つことなく緊急事態を解除する」と述べ、早期の解除もありうるとの姿勢を示した。

また、「1カ月で緊急事態宣言を終えることができなかったことは、国民の皆様にお詫びしたい」と語り、「我が国の雇用の7割を支える中小企業の皆様がこれまでにない経営環境に置かれていることは痛いほどわかっている。緊急事態を1カ月続ける判断は断腸の思い」と語り、支援策などについて言及。また、家賃補助やアルバイト学生の補助なども与党で追加施策を検討していく。

学校の再開についても言及。収束のための1カ月で次なるステップの準備期間とし、「『コロナの時代の新たな日常』を作り上げなければいけない」とし、ウイルスの存在を前提としながらも会社や学校に行くなど、“密”を避けた新たな生活様式に取り組むよう呼びかけた。そのため、分散登校や小規模なイベント開催など、活動再開に向けた感染予防ガイドラインの作成を進めていく。

一方、密が避けられないライブハウスなどは「引き続き自粛をお願いすることとなる」という。「外出自体が悪いわけではない。予防対策をしながら外出できるよう、日常を取り戻していく。5月は出口に向けて真っ直ぐに進んでいく1カ月」と語った。

【安倍総理冒頭発言】

緊急事態宣言を発出してから間もなく1か月となります。最低でも7割、極力8割、人との接触を削減する。この目標の下、可能な限り御自宅で過ごしていただくなど、国民の皆様には大変な御協力を頂きました。その結果、一時は1日当たり700名近くまで増加をした全国の感染者数は、足下では200名程度、3分の1まで減少しました。これは、私たちが終息に向けた道を着実に前進していることを意味します。また、一人の感染者がどれぐらいの数の人にうつすかを示す実効再生産数の値も、直近の値も1を下回っています。

緊急事態を宣言した4月上旬、1か月後の未来について、欧米のような感染爆発が起こるのではないか。そうした悲観的な予想もありました。しかし、国民の皆さんの行動は、私たちの未来を確実に変えつつあります。我が国では、緊急事態を宣言しても、欧米のような罰則を伴う強制的な外出規制などはできません。それでも、感染の拡大を回避し、減少へと転じさせることができました。これは、国民の皆様お一人お一人が強い意思を持って、可能な限りの努力を重ねてくださった、その成果であります。協力してくださった全ての国民の皆様に心から感謝申し上げます。

その一方で、こうした努力をもうしばらくの間、続けていかなければならないことを皆さんに率直にお伝えしなければなりません。現時点ではまだ感染者の減少が十分なレベルとは言えない。全国で1万人近い方々がいまだ入院などにより療養中です。この1か月で人工呼吸器による治療を受ける方は3倍に増えました。こうした重症患者は回復までに長い期間を要することも踏まえれば、医療現場の皆さんが過酷な状況に置かれている現実に変わりはありません。これまでに500名を超える方々が感染症によりお亡くなりになられました。心から御冥福をお祈り申し上げます。

一人でも多くの命を救うためには、医療資源を更に重症者治療に集中していく必要があります。1日当たりの新規感染者をもっと減らさなければなりません。このところ、全国で毎日100人を超える方々が退院など、快復しておられますが、その水準を下回るレベルまで、更に新規感染者を減らしていく必要があります。

そのために、感染者が多く、特に警戒が必要な13都道府県の皆さんには、引き続き極力8割の接触回避のための御協力をお願いします。東京都では、5月になってからも平均で1日100人を超える感染者が確認されています。これまでの努力を無駄にしないためにも、ここで緩むことのないようにお願いをいたします。

そして、各地への感染拡大を防ぐためにも、地方への人の流れが生まれるようなことは避けなければなりません。そのための対策も講じることができるよう、今後とも全国を対象として、延長させていただくことといたしました。その上で、入院患者の皆さんは、2、3週間が平均的な在院期間とされています。新たな感染者数を低い水準に抑えながら、これまでに感染した患者の皆さんの退院などを進めていく。そうすることで、医療現場のひっ迫した状況を改善するためには、1か月程度の期間が必要であると判断いたしました。

こうした考え方について、本日は尾身会長を始め、諮問委員会の専門家の皆さんの賛同を得て、今月いっぱい、今月末まで緊急事態宣言を延長することを決定いたしました。ただし、今から10日後の5月14日を目途に、専門家の皆さんにその時点での状況を改めて評価いただきたいと考えています。その際、地域ごとの感染者数の動向、医療提供体制のひっ迫状況などを詳細に分析いただいて、可能であると判断すれば、期間満了を待つことなく、緊急事態を解除する考えであります。

当初予定していた1か月で緊急事態宣言を終えることができなかったことについては、国民の皆様におわび申し上げたいと思います。

感染症の影響が長引く中で、我が国の雇用の7割を支える中小・小規模事業者の皆さんが、現在、休業などによって売上げがゼロになるような、これまでになく厳しい経営環境に置かれている。その苦しみは痛いほど分かっています。こうした中で、緊急事態を更に1か月続ける判断をしなければならなかったことは、断腸の思いです。

明日の支払にも大変な御苦労をしておられる皆さんに、一日も早く、使い道が全く自由な現金をお届けしなければならないと考えています。5月1日から最大200万円の持続化給付金の受付を始めましたが、最も早い方で8日(注)から入金を開始します。公庫や商工中金だけでなく、身近な地方銀行や信金や信組でも、3,000万円まで、実質無利子・無担保、元本返済も最大5年据置きの融資が受けられます。納税や社会保険料の支払も猶予いたします。これらの支援策を御活用いただくことで、この緊急事態を何とかしのいでいただきたい。事業と雇用を何としても守り抜くとの決意の下で、政府の総力を挙げ、スピード感を持って支援をお手元にお届けしてまいります。加えて、飲食店などの皆さんの家賃負担の軽減、雇用調整助成金の更なる拡充、厳しい状況にあるアルバイト学生への支援についても、与党における検討を踏まえ、速やかに追加的な対策を講じていきます。

その上で、事業者の皆さんが何よりも望んでおられるのは、事業の本格的な再開だと思います。そのために、この1か月で現在の流行を終息させなければならない。5月は、終息のための1か月であり、そして、次なるステップに向けた準備期間であります。どうか御理解と御協力をお願い申し上げます。

感染の拡大防止は、私たちの命を守るための大前提です。有効な治療法やワクチンが確立されるまで、感染防止の取組に終わりはありません。その意味で、私たちはある程度の長期戦を覚悟する必要があります。しかし、経済社会活動を厳しく制限する今のような状態を続けていけば、私たちの暮らし、それ自体が立ち行かなくなります。命を守るためにこそ、私たちはコロナの時代の新たな日常を一日も早くつくり上げなければなりません。ウイルスの存在を前提としながらのいつもの仕事、毎日の暮らし、緊急事態のその先にある出口に向かって、皆さんと共に一歩一歩前進していきたいと考えています。その観点から、本日、日常生活において留意すべき基本的なポイントを専門家の皆様からお示しいただきました。密閉、密集、密接、3つの密を生活のあらゆる場面でできる限り避けていく。このウイルスの特徴を踏まえ、正しく恐れながら、日常の生活を取り戻していく。専門家の皆さんが策定した新しい生活様式は、その指針となるものです。

子供たちには、長期にわたって学校が休みとなり、友達とも会えない。外で十分に遊べない。いろいろと辛抱してもらっています。心から感謝いたします。また、お父さんやお母さんや御家族の皆様には、大変な御負担をおかけしています。先週、文部科学省から、分散登校など、新たな指針をお示ししました。段階的であっても、子供たちの学校生活を取り戻していく。学校においても、新たな日常をつくる取組を進めます。

経済活動においても、新たな日常をつくり上げます。様々な商店やレストランの営業、文化施設、比較的小規模なイベントの開催などは、新しい生活様式を参考に、人と人との距離を取るなど、感染防止策を十分に講じていただいた上で、実施していただきたいと考えています。今後2週間をめどに、業態ごとに専門家の皆さんにも御協力を頂きながら、事業活動を本格化していただくための、より詳細な感染予防策のガイドラインを策定してまいります。ただし、3つの密が濃厚な形で重なる夜の繁華街における接待を伴う飲食店、ライブハウスなど、これまで集団感染が確認された場所へ出かけることは、引き続き自粛をお願いすることとなると考えます。

他方で、外出それ自体が悪いわけではありません。人との距離を十分に保ち、マスクを着用する。そうした予防対策を講じながら外出できる。そうした日常を、専門家の皆さんのアドバイスの下に取り戻してまいります。

もう一度申し上げますと、外出それ自体は全く悪いわけではないということであります。3つの密を避けることを大前提に、新たな日常を国民の皆さんと共につくり上げていく。5月はその出口に向かって真っすぐに進んでいく1か月です。同時に、次なる流行のおそれにもしっかり備えていきます。その守りを固めるための1か月でもあります。

各地で、医師会の皆さんの協力も得てPCRセンターを整備するなど、検査体制を更に拡充していきます。地域の感染対策の砦(とりで)である保健所の皆さんの負担軽減、体制強化にも更に取り組みます。感染が判明した方々には、宿泊施設での療養や医療機関への入院など、病状に応じた適切な対応がスムーズに行われるよう、自治体ごとの体制構築を支援していきます。ガウンや高性能マスクなどの医療防護具についても、国内での増産や輸入を一層強化します。そして、最前線の医療現場に国が直接届ける取組をもっと充実していきます。介護施設などの感染予防も一層強化しなければなりません。さらには有効な治療薬、有効な治療法の確立に向かって、この1か月、一気に加速していきます。

日米で共同治験を進めていたレムデシビルについて、米国で使用が承認されました。そして本日、我が国においても特例承認を求める申請がありました。速やかに承認手続を進めます。我が国で開発されたアビガンについても、既に3,000例近い投与が行われ、臨床試験が着実に進んでいます。こうしたデータも踏まえながら、有効性が確認されれば、医師の処方の下、使えるよう薬事承認をしていきたい。今月中の承認を目指したいと考えています。あらゆる手を尽くして、次なる流行に万全の備えを固めていく。そのための1か月にしなければならないと考えています。

感染のおそれを感じながら、様々な行動制約の下での生活は緊張を強いられるものです。目に見えないウイルスに強い恐怖を感じる。これは私も皆さんと同じです。しかし、そうした不安な気持ちが、他の人への差別や、誰かを排斥しようとする行動につながることを強く恐れます。それは、ウイルスよりももっと大きな悪影響を私たちの社会に与えかねません。誰にでも感染リスクはあります。ですから、感染者やその家族に偏見を持つのではなく、どうか支え合いの気持ちを持っていただきたいと思います。

各地の病院で集団感染が発生している状況を大変憂慮しています。しかし、医師、看護師、看護助手、そして病院スタッフの皆さんは、そのような感染リスクと背中合わせの厳しい環境の下で、強い使命感を持って、今この瞬間も頑張ってくださっています。全ては私たちの命を救うためであります。医療従事者やその家族の皆さんへの差別など、決してあってはならない。共に心からの敬意を表したいと思います。

緊急事態の下でも、スーパーや薬局で働いている皆さん、物流を支えている皆さん、介護施設や保育所の職員の方々など、社会や生活を様々な場所で支えてくださっている皆さん、そうした皆さんがいて、私たちの暮らしが成り立っています。改めて、心から感謝申し上げます。私たちの暮らしを支えてくださっている皆さんへの敬意や感謝、他の人たちへの支え合いの気持ち、そうした思いやりの気持ち、人と人との絆(きずな)の力があれば、目に見えないウイルスへの恐怖や不安な気持ちに必ずや打ち勝つことができる。私はそう信じています。

今年は、大型連休中も不要不急の外出を避け、自宅での時間を過ごしてくださっている皆さんに、改めて、衷心より御礼を申し上げます。友人同士でのオンラインでの交流など、インターネットやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を使って人と人との絆を深め、楽しもうという、自宅での時間を楽しもうという方々がいらっしゃることに大変勇気づけられます。前向きな皆さんの存在が緊急事態を乗り越える大きな力となっています。

例年、ゴールデンウィークには実家に帰省するなど、家族で旅行していた皆さんも多いと思いますが、今年はオンライン帰省などのお願いをしております。そうすることで皆さんの、そして愛する家族の命を守ることができます。御協力に感謝いたします。いつかきっと、また家族でどこかに出かける。そのときのために、今はどうか、おうちで家族との時間、家族との会話を大切にしていただきたいと思います。

先日、国立感染症研究所が発表したゲノム分析によれば、我が国は徹底的なクラスター対策によって、中国経由の第一波の流行について押さえ込むことができたと推測されます。そして、700名を超える集団感染が発生したダイヤモンド・プリンセス号からのウイルスも、様々な対策の結果、国内では終息したと分析しています。そして、今また欧米経由の第二波についても感染者の増加はピークアウトし、終息への道を進んでいます。皆さんに大変な御協力を頂きました。大変つらい思いもしていただいていることと思います。しかし、私たちのこれまでの努力、取組は間違いなく確実に成果を上げています。みんなで前を向いて頑張れば、きっと現在のこの困難も乗り越えることができる。国民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。

ありがとうございました。私からは以上です。