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メルカリ、J1鹿島アントラーズを子会社化。クラブ運営参入で「共に世界へ」

日本製鉄 津加 執行役員、鹿島アントラーズ・エフ・シー庄野 代表取締役、メルカリ小泉社長

メルカリは、J1鹿島アントラーズの経営権を取得。Jリーグクラブチームの運営に参入する。30日の開催の取締役会において、日本製鉄から鹿島アントラーズを運営する「鹿島アントラーズ・エフ・シー」の発行済株式の61.6%を取得することを決議。日本製鉄と株式譲渡契約を締結した。取得金額は15億8,800万円。株式譲渡実行日2019年は8月30日を予定している。

鹿島アントラーズは、国内三大タイトル(J1リーグ、Jリーグカップ、天皇杯全日本サッカー選手権大会)において最多優勝回数を誇り、2018年にはアジアでのナンバー1クラブを決めるAFCチャンピオンズリーグで優勝するなど、アジアを代表するサッカークラブとなっている。

メルカリは、鹿島アントラーズが日本から世界のトップを目指す姿勢に共感し、2017年よりスポンサーとなっていたが、より強固な関係にすべく、鹿島アントラーズがメルカリグループに参画することについて合意した。

今後は、鹿島アントラーズの独立したクラブ運営を尊重しながら、メルカリの経営ノウハウを活用し、世界に挑む鹿島アントラーズのさらなる発展をサポートしていくという。

また、メルカリも、自社のブランド価値の向上と、運営する「メルカリ」と「メルペイ」の顧客層拡大につなげ、「アントラーズとともに世界を取っていきたい」(メルカリ小泉社長)とする。

競争時代の新生アントラーズ。サッカーで40代も狙う

メルカリの小泉文明 社長兼COOは、「鹿島で生まれ、成長したアントラーズは『Jリーグ成功の象徴』」と語り、「チームを常勝軍団にしてビジネスを拡大する。アントラーズの伝統、フィロソフィーを変える必要はなく、ビジネスで正の循環を生み出していく」と子会社化の理由とスポーツビジネスの推進を強調した。

また、メルカリやメルペイなどのサービス連携のイメージとして、「メルペイをスタジアムのグッズや飲食での利用、チケットのペーパーレスなど、スタジアムでの快適性向上は考えられる。また、VRやARといった技術でスタジアムに来なくても楽しめる。スポーツとエンタテインメント、テクノロジには発展の余地がある」と説明した。

米国事業を強化しているメルカリとして、「なぜ日本でサッカーなのか?」との問には、「今我々が強化しているペイメント(メルペイ)は、日々の生活に近いサービス。これを活用するにはスポーツやスタジアムをショーケースにしていくことは非常に意味がある。また、我々のサービスは、20-30代の女性が多い。男性、特に40代以上にアプローチするには、サッカーの可能性は大きい」とした。

メルカリ小泉文明 社長兼COO

また、「メルカリは(メルカリアッテやメルチャリなど)サービス見切り(終息判断)も早い。サッカークラブでも、そうなるのでは?」との懸念に対しては、「事業として大きく伸ばせると感じている。広告を売るだけではなく、物販もまだ伸ばせるし、収益を伸ばす余地は大きく、単体での収益は安定する。また、アプリでは実際に数字が見えるので判断が早くなるが、クラブやスタジアムは違う。5Gを見据えて大きく変わるのは5-10年スパン。我々も大きなビジネスの可能性がある米国事業に、すでに4年間力を入れている。同じように、スポーツビジネスに可能性があると考えている」とした。

「本拠地・スタジアムを変えない。地域に貢献」が決めて

日本製鉄の津加宏 執行役員は、「(アントラーズは)Jリーグのトップチームとして確固たる地位を築いた。一方、近年のJリーグは放映権がDAZNに入ったこともあり、共存から競争への時代に入った。世界で戦うチームであるためには、アントラーズの経営基盤の一層の強化、企業価値の向上に務めなければいけない。検討の結果、これまで培ったアントラーズブランドを活用しながら、新しいパートナーを受け入れ、一緒に支えていくことが最良だと考えるにいたった。経営主体はメルカリとなるが引き続き、2位株主として経営に関わる」とした。

日本製鉄の津加宏 執行役員

DAZNの参入により、賞金も上がったが、海外移籍金の高騰など、クラブ運営もより世界を見据えたものに変化する必要がある。そのためメルカリへの株式譲渡を決めた。

メルカリに決めた理由は、「本拠地は鹿島。ホームスタジアムも鹿島。その継続と、地域貢献など、クラブ設立時からの理念を大事に積極的に継承していただける会社ということ。その上でメルカリのテクノロジーなどを使って、アントラーズブランド活用が期待できると考えた」と説明した。

このコメントを受け、メルカリ小泉氏は「個人的な話」としながら、「父親の実家は(スタジアムのある鹿嶋市の)隣的の麻生町(現在の行方市)で、中1の時にスタジアムのオープニング試合を観てファンになった。以来ファンになり、愛着がある」とコメント。なお、観戦したのは、スタジアムのこけら落としとなったアントラーズ対フルミネンセ戦で、20年来のファンとのこと。

鹿島アントラーズ・エフ・シーの庄野洋代表取締役は、「クラブとして成長のためにメルカリの経営参加に期待している。知識・ノウハウ・テクノロジーなどメルカリの力を得て、クラブの永遠のテーマーであるフットボールドリーム、そして勝利を求めていく」と語った。

鹿島アントラーズ・エフ・シー 庄野洋代表取締役

なお、アントラーズはNTTドコモとスマートスタジアムの構築で協力関係にあるが、庄野氏は「5Gを使ったサービスなど、メルカリとはまた違う技術やサービスと考えている。メルカリとドコモとの相乗効果が出てほしい」とコメント。メルカリ小泉氏も「ドコモさんはインフラ側、メルカリはアプリケーション側でレイヤーが違う。元々仲良くやっているので、両社で協力していく」と述べた。

キャッシュレスは当然推進。“滞在時間”を重視

なお、メルカリの子会社化後も、他のスポンサー契約に変更はない。メルカリも引き続きユニフォーム鎖骨部分のロゴ掲出などのスポンサーを続けていく。

小泉氏は、「外部のスポンサーはさらに増やしたい」とし、一例としてスタジアム空席を使ったプロジェクションマッピングによる広告商品や、スタジアムまでの経路のサイネージなどの案に言及。また、グッズ物販だけでなく、クラウドファンディングを使ったファン向けビジネスの拡大なども検討しているという。

その上で、「キャッシュレスは当たり前に提供したい。スタジアムで両手が空くのはメリットしかない。プレオーダーで、後はビールを取りに行くだけなど便利なはず。技術やサービスはあるので、スタジアムのオペレーションにどう落とし込んでいくか、これから相談したい」とした。単にスタジアムの集客を増やすだけでなく、「滞在時間を重視したい」とう。

また地域との連携についても今後話し合いを進める。小泉氏は「個人的には、東京のサービスをもっとカシマに持ってきたい。福岡や千葉で実証実験が盛んになっているが、よりコンパクトなので、もっと自由にできるのではないか」とした。