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みんなのタクシー、車種指定や汎用QR決済対応。JR東やKDDI、ドコモと連携

タクシーアプリ「S.RIDE」などを展開する「みんなのタクシー」は5日、ソニーとの事業連携強化やパートナー各社との事業・資本提携等について発表した。今後「アルファード」、「フーガ」などの車種指定予約や、PayPayなど汎用QRコード決済に対応するほか、エリアも拡大。また、ソニーと協力した需要予測サービスの商用化や、JR東日本と協力したMaaS展開などを発表した。

アルファード、エルグランドなど車種指定配車。PayPay対応も

みんなのタクシーは、都内タクシー会社5社と、ソニー、ソニーペイメントサービスの合弁企業。タクシー会社5社が保有するタクシー車両は都内最大規模の1万台を超え、4月から事業展開している。

配車事業については、1日当たりの配車件数が18倍以上(2019年9月実績:対4月実績比)で10月には22倍になった。平均利用単価が2,755円(迎車料金込み)で、「他社の動向は知らないが相当高いと思う(みんなのタクシー 西浦賢治社長)」とする。

西浦社長は、他社と異なり「クーポンや大規模なプロモーションをやっていない」としながらも順調に利用者が伸びていることを強調。また、10月28日には事前確定運賃サービスを開始。JapanTaxiとS.RIDEの2サービスが対応しているが、「数の上では(JapanTaxiを)凌駕している」とした。

また、what3wordとの協業による、乗車位置の精緻化など、「タクシーと出会えないというミスマッチを解消している」と説明。ユーザーインターフェイスの改善は引き続き強化していくという。

広告事業も4月比で、月当たりの広告売上が約4倍となり、9月以降は満稿が継続中という。

決済事業は、1月当たりのネット決済/S.RIDE Walletの利用件数が15倍以上(4月比の9月実績)となり、9月事業のネット決済比率は約64%となった。

今後の展開としては、「車種指定サービス」に対応。S.RIDEアプリからアルファード、エスクァイア、JPN Taxi、フーガなどの車種が選択可能になる。さらにPayPayやLINE Pay、メルペイ、au PAY、d払い、楽天ペイ、Origami Pay、Alipay、WechatPayなど、汎用のQRコード決済に対応する。

エリア拡大については、2019年度内に多摩、横浜を始めとした関東地域等におけるタクシー事業者と連携し、S.RIDE 配車サービスを導入する予定。地方展開については、「23区や武蔵野の実績が我々の武器」とし、高い稼働が見込める場所を中心に展開を検討していくという。

ソニーと連携し、需要予測サービス開始。安全支援やパートナー連携も

ソニーとの連携を強化。ソニーが保有する AIとセンシング技術を活用したモビリティ領域への取り組みと連携し、需要予測サービスの商用開始を開始する。

需要予測サービスは、11月5日より開始。大和自動車交通株式会社が保有するタクシーに搭載されているドライバー用タブレットに、ソニーのAI技術で開発した需要予測アプリを搭載し、商用サービスを開始。グリーンキャブ、寿交通、チェッカーキャブについても順次対応予定としている。

ソニーと連携し、需要予測サービスを開始

また、アプリは単に需要予測するだけではなく、乗車点予測、長時間乗車率、空車動態表示、おすすめルート表示、特需発生表示など、タクシー会社の稼働率・売り上げ向上のための機能を搭載する。

需要予測では500m四方ごとの需要のヒートマップ表示や高需要スポットをピンポイントで表示。ロング率は長距離・長時間乗車の需要を予測する。また、新人ドライバー向けのおすすめルート表示なども行なう予定。

安全運転支援へのソニーとの取り組みとして、タクシー車両と同型の車両にソニーの各種センサー、LiDAR等を搭載して走行。センシングデータの収集や運転操作記録(アクセル・ブレーキ・ハンドル操作)を収集、解析し、危険予測データベースの構築を推進する。

LiDARを装備
上部にイメージセンサー

このデータ取得により、安全・安心スコアを算出、熟練ドライバーとの差分評価や危険検知をもとにドライバーへの警告や注意喚起を行なう安全運転支援ツールを構築。実際のタクシーに搭載して今後検証を開始する。

ソニーはこの取り組みにより、タクシー会社への安全運転支援や走行データの蓄積によるAIやセンシング技術の開発を加速。「タクシー会社の収益貢献のほか、エネルギー効率化による社会問題の解決を目指す」(ソニー 執行役員AIロボティクスビジネス担当 川西泉氏)とした。

JR東日本のRingo Passに対応。ドコモのdアカウント対応も

さらにJR東日本との MaaS領域で事業提携。JR東日本の交通系スマートフォンアプリ「Ringo Pass」とみんなのタクシーの配車アプリ「S.RIDE」を連携し、両社が持つネットワークや資産を共に有効活用する。国際自動車、大和自動車交通、チェッカーキャブが有する約9,000台のタクシー車両に設置されている後部座席タブレットを用いて、2019年度中に「Ringo Pass」に対応する。

KDDIやドコモ、ゼンリンデータコム、帝都自動車交通と資本業務提携。KDDIとは、MaaSの普及に向けたプラットフォームの共同構築やタクシーの新たなサービスの共同開発と商用化、及びビッグデータを活用した新たなビジネスの共同検討等を推進する。

相乗りやオンデマンド、ダイナミックプライシングなどのタクシー利用の変化に対応。「タクシーのデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する」という。

ドコモとの連携では、dアカウントやdポイントクラブ会員基盤とS.RIDEを連携。移動の支援やタクシー車内におけるd払いでのQRコード決済などにおける協業を推進する。

ゼンリンデータコムとは、タクシー走行データを活用した3Dリアルタイムマッピングでの可視化とデータベース化による利活用を目的とし、R&Dを推進する。

なお、ドコモやKDDI、ソニーによる出資金額や比率は非公開。ただし、「みんなのタクシーは、タクシー産業が運営する会社。タクシー会社が過半数超を持っているという構成は変わらない」(みんなのタクシー 西浦社長)とした。

KDDIとNTTドコモなど、通信会社との提携については、「基本的にタクシーと連携して、相乗効果がある企業であれば組んでいく。みんなのタクシーという社名の通り。通信会社の顧客基盤からの送客には大きく期待している」とした。

また、GrabやUberなどの海外の配車アプリは、配車を基盤とした金融サービスに向かっているものも多い。みんなのタクシーの西浦社長は、「明確にそちらに展開する絵は描いていない。一方でネット決済を提供しており、これは金融の一部といえる。その範疇の中で、利便性を提供するための多様化は検討していく。ただ、我々が金融の会社になり、事業ドメインを変えるようなことは考えていない」とした。