こどもとIT

【連載】こどもとセキュリティ

ネット動画を安全に楽しむために、子どもが気をつけることは?

スマホやタブレットは、子どもたちにとっても楽しくて魅力的。だからこそ、安心・安全に正しく使うためには保護者の関わりが欠かせません。どんなことに気をつけて、子どもたちを見守っていけばいいのか。保護者目線で気になる疑問に、セキュリティの専門家がお答えしていきます。
(イメージ提供:トレンドマイクロ株式会社)

ネット動画の視聴も利用者をねらうサイバー攻撃が潜む

NetflixやHulu、Amazonプライム・ビデオなどの動画配信サービスや、YouTube、TikTokなどの動画共有サイトが人気です。おうち時間が増え、これらのサービスを利用してアニメや映画、ドラマ、スポーツ、音楽、投稿動画などの視聴を楽しむお子さんも多いのではないでしょうか。

昨今、動画配信サービスや動画共有サイトの利用者をターゲットとするサイバー攻撃が報告されています。過去にNetflixを名乗るフィッシングメールが出回りました。それらは「支払いに問題があり、アカウントが保留になっています」「支払方法の更新が必要です」などの文言で利用者をフィッシングサイトへ誘い込み、そこで入力された認証情報やクレジットカード情報などを盗み出すことを目的としていました。

フィッシングサイトは一般に、正規のWebサイトからデザインやレイアウト、ロゴなどが盗用されるため、一見本物のように見えます。また、本物を想起させるURL(正規のURLがTrendmicro.comだとすると、Trendnirco.comのようなもの)や、通信の内容を暗号化する鍵マークが表示された「https://」からはじまるサイトを用意するなど、正当なサイトに見えるため、真偽の判別が困難です。

大手動画配信サービスに偽装したログイン画面

ほかにも、2018 FIFAワールドカップの開催期間中には、試合映像を無料で視聴できるとうたうストリーミング配信アプリを確認しました。この偽アプリは一般のWebサイトで配布され、Android端末にインストールされると位置情報やSMSメッセージ、通話音声データ、外部ストレージ内のファイルなどを外部に送信する不正アプリでした。このように、話題の動画配信サービスや動画コンテンツなどに便乗する手口は、くり返し報告されています。

正規アプリに偽装した不正アプリのダウンロードサイト

子どもが安全にネット動画を視聴するために

冬休み期間は動画配信サービスの需要も高まり、動画コンテンツも注目のラインナップがアップロードされることが予想されます。子どもが安全にネット動画を視聴するために、保護者は教育と技術(テクノロジー)の両面で子どもを守っていきましょう。

教育的対策:動画配信サービスは保護者の管理下で利用する

①子どもの年齢に応じたサービスを利用する、視聴可能な動画の制限をかける
子ども専用の動画サービスや、視聴可能な動画の制限を行なったアカウントを用意し、アカウントへのログインは必ずブックマークに登録した公式サイトや、公式アプリから行ないましょう。子どもが誤って、成人が利用するアカウントのまま利用してしまわないよう、保護者の管理下でのみ利用するように教えましょう。

また、メールやSNS、SMS内のURLリンク、非公式Webサイト、ネット広告などからたどり着いたページは不正サイトの疑いがあるため、安易な情報入力も禁物です。URLはクリックせず、Webサイトの安全性をチェックするツールを活用して、安全性を確認する習慣を子どもと一緒に身につけましょう。

ほかにも動画共有サイトでは、動画配信に紛れて不正サイトへ誘導する手口もあります。コメントのやり取りや投稿を行なう際は、URLはクリックせず、個人情報は他人と共有しないように子どもに教えましょう。また動画を含めたネット上の情報はすべてが正しいわけではなく、間違った情報や誤解を招く情報が紛れ込んでいる可能性があることを伝えましょう。「ネット上の偽情報に惑わされないためにはどうしたらいいの?」の記事も参考にしてください。

②アカウントを厳重に管理する
動画配信サービスをはじめとするインターネットサービスのアカウントを第三者に不正利用されないための対策も不可欠です。サービスごとに異なるIDとパスワードの組み合わせを使用すること、第三者に推測されにくい複雑なパスワードを設定することを徹底させましょう。また、パスワード認証とは別に二要素認証といったセキュリティを強化できる設定を利用できる場合は必ず有効にさせましょう。「アカウントを乗っ取られないためには、どうしたらいいの?」の記事も参考にしてください。

③公式のアプリストアからアプリを入手する
正規サイト以外のWebサイトや公式アプリストア以外で配布されているアプリには注意が必要です。スマホに動画配信アプリを入れる際はGoogle PlayやApp Store、携帯電話会社などが運営する公式のアプリストアを利用するよう子どもに教えましょう。公式アプリストアを利用する場合も、アプリのダウンロード前に検索サイトでアプリ名や開発元を検索し、評判を調べることも習慣づけさせましょう。

アプリのインストールに際しても、子どもの年齢に適さないアプリや有料アプリを勝手にインストールしてしまわないよう、予め制限やペアレンタルコントロールによる管理を行った端末を利用させましょう。「不正アプリを避けるには、どうしたらいいの?」の記事も参考にしてください。

技術的対策:セキュリティソフトやアプリを導入し、セキュリティの強化と年齢に応じた管理を行なう

パソコンやスマホ、タブレットなど、動画視聴に利用する機器には必ずセキュリティソフトやアプリを入れ、常に最新の状態で利用しましょう。フィッシングサイトや偽サイトにアクセスしたり、不正アプリをインストールしたりしてしまうリスクを下げることができます。

スマート家電など、セキュリティソフトをインストールできない機器については、ネットワーク全体を保護してくれるセキュリティ製品や、セキュリティ機能を備えたホームルータを使って守りましょう。このようなセキュリティの製品は、一般的にペアレンタルコントロール機能も備えています。子どもの年齢に応じた設定を行い、不適切なコンテンツから子どもを守りましょう。

中村江里(トレンドマイクロ株式会社)

トレンドマイクロ株式会社コーポレートバリューマネジメント室所属。2013年にトレンドマイクロへ新卒入社。2018年よりトレンドマイクロのCSR活動の一つである、子どもと保護者へのインターネットセキュリティ教育プログラム「Internet Safety for Kids and Families」を担当。子どもとその保護者の方々にネットやスマホ利用に潜む最新の脅威やモラルの啓発にあたる。