インタビュー

ペットと共生する幸せVol.3
ペットと電車に乗れる日が来る!? 日本経済を元気にする!?

前回前々回の記事で、ペットとの暮らしが私たちのQOLをどれだけ豊かにしてくれるかについてレポートしました。今回は、ペットと共生するライフスタイルが広がることで、日本経済まで元気になるかもしれない、というビックリな話題をお届けします。

犬の飼育率はアメリカの半分、猫の飼育率は各国の3分の1

じつは日本は、まだまだペット大国ではないのかもしれません。統計の違いによりさまざまなデータがあるのですが、犬の飼育率は15.1%、猫の飼育率は10.1%。犬の飼育率に関しては、ヨーロッパと比べて大きな遜色はありません。しかし、アメリカと比較すると約半分、猫は各国に比べて約3分の1くらいなのだとか。そして、このままでいくと、現在1000万頭を超えている犬の飼育頭数は、将来的に半分くらいに減ってしまうかもしれないのです。

越村会長「ここ最近、とくに犬は少子化・高齢化の時代を迎えています。7歳以上のシニア犬が5割くらいにまで増えているのに対し、子犬の数は急激に減っています。20007年には、全体の約7%が1歳未満の子犬でした。しかしいまでは、子犬の割合は約半分(3.4%)くらいに減少しています」

一般社団法人ペットフード協会会長 ペットフード公正取引協議会会長 越村義雄さん

なんと、犬の少子化・高齢化は人間以上に急激で、かつ深刻な状態でした。なぜこんなことが起きてしまうのでしょうか。日本の人口減少も理由のひとつですが、実際には「ペットを飼いやすい社会になっていない」ためだと思われます。

越村会長「集合住宅では、ペット飼育が禁止されている物件が多いうえに、ペット飼育可の物件でも、飼うための厳しい規定が設けられていることが珍しくありません。飼育は小型犬に限る、ペット飼育は1家族1頭まで、などの規定がそれです。大型犬は小型犬に比べ穏やかで大人しいことが多いのに、サイズが大きいというだけで飼えない。ペットとの共生についての社会的な意識が、まだまだ完成されていないためではないでしょうか。ペット先進国にはほど遠い状態です」

犬も猫もアメリカに比べると、まだまだ飼育率は低いそうです。その原因のひとつが、集合住宅など飼いたくても飼えない住宅環境にあります

一時のペットブームで飼育頭数はグッと伸びたのですが、それが単なる瞬間風速に留まり、後に続いていないのです。飼いたいけれどさまざまな理由で飼えない人、そもそもペットとともに暮らす喜びを経験していない人が、安心してペットを飼い始められる社会を築いていく必要がありそうです。そして、その取り組みが進めば、日本に巨大な経済効果をもたらしてくれるのだそうです。

ペットと一緒に電車に乗れる、どこへでも出かけられる社会に

越村会長「ペットの飼い主がいまいちばん困っているのは、ペットがいるため、なかなか外に出られないということです。すべてのペットを含めると、ペットを飼っている人は34%に上りますから、この方々が気軽にペットと外出できるようになれば、経済効果は計り知れません。ホテルやレストラン、バス、鉄道などがもう少しペットを受け入れてもいいのではないか、電車の一部車両、バスなら5台に1台ぐらいはペットと一緒に乗れる車両があっていいのではないでしょうか」

ペットと飼い主である34%の世帯が自由に移動できる仕組みを作るだけで、観光、飲食、交通などさまざまな業種で売上が期待できるうえに、ペットと暮らす喜びは飛躍的に高まります。ペットフード協会では、自動車メーカー、電気産業、住宅メーカーなどさまざまな分野と連携し、これまで以上にペットと共生する未来の実現を目指し推進活動を行なっているのだそうです。ペットはいまや家族の一員ですから、経済面では子どもが1人増えたのと同じと考えることもできます。

インターペットの会場でも、さまざまな業種が出展していました

越村会長「とはいえ、移動中に犬が激しく吠えたり周囲の人や動物に噛みついたりは、絶対に避けなければいけません。そこでペットフード協会では、一般の飼い主さん向けに"ペットフード/ペットマナー検定"を実施。マナーの向上に努めています。さらに、9団体が協力する"ペットとの共生推進協議会"を通じて、"笑顔あふれるペットとの幸せな暮らし"など各種パンフレットを製作し、啓発活動を行っていきます」

ペットフード協会が製作しているパンフレットとペットマナー検定の公式テキスト

ペットとの暮らしをより深く知り、共生社会を広げていけば、ペットの飼育割合も頭数も欧米並みに増加しそうです。また、ペットのQOL向上のための取り組みも始まっています。

越村会長「2009年には"ペットフード安全法"が制定されました。フードの"安全"を掲げた基準を作ったのは、世界のなかで日本が最初です。また、近ごろは国や地域を越えてフードや原料が流通していますから、昨年12月に世界規模のペットフード協会を起ち上げ、世界共通の品質安全基準を制定するための作業を進めています」

なんと、越村会長が2010年にアメリカ・シカゴで開催された第1回グローバルペットフード協会会議で、グローバルスタンダートを決めることを提案したのです。言い換えれば、日本が世界中のペットの"食の安全性"を守る規定作りの先導役を果たしているのです。こうしたさまざまな取り組みを進めていくことで、未来の日本は世界一のペット共生大国になることができるかもしれません。

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