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50代リスキリング挑戦記(1) Yahoo!テックアカデミーでプログラミング学習に挑戦した

50代で初リスキリング挑戦

人生で初めて「リスキリング」に挑戦した。

ああ、最近なにやら流行語にもなっているあれね、なんて言わないでほしい。その通りすぎて恥ずかしいからだ。トレンドにまる乗りしてみた。

ノリと勢いで始めたリスキリングだが、結果には大満足している。

一言でいうなら……

「脱皮した」 感じか。

サナギが蝶になったとまでは言わないが、おたまじゃくしからカエルになったくらいの変化を今、自分の中で感じている。

水中を泳ぐだけじゃなく陸地でジャンプすることができるようになった。その新しい移動能力を使って、これまで行けなかった場所に向かうことができそうだ。

割と最近の話で、スタートしたのは52歳9カ月の2023年1月。オンラインスクールで4カ月間のコースに参加しプログラミングを学んだ。そしてコース終盤から実際にWebアプリを作り始め、スクール終了後の1カ月で完成させて、つい先日リリースしたばかりだ。

連日の徹夜作業で睡眠不足となり、目はしょぼしょぼ髪もぼさぼさ。

だけど、この5カ月間を振り返ると、「頑張ったな」「意外とやったじゃないか」と自身をちょっとほめてあげたい気持ちにもなれる。……いや嘘だ。本当は大絶賛してあげたいくらいの達成感が得られた。

開始前には正直、「今さらプログラミングなんて学んだところで意味があるのか」という懐疑的な気持ちもあった。前日の夕食内容さえ忘れる50代の自分が今更プログラミング学習して果たして使えるようになるのか、自信もなかった。オンラインスクールの授業料も少々お高かったので、「どうせ無駄にするくらいなら、海外旅行で贅沢三昧したほうがいいのでは」なんて考えも脳裏をよぎった。その時の自分と対面できるなら「意味あるなんてもんじゃない、可能性がぐんと広がる」と一喝したいところだ。

唯一抱いている後悔はこれだ。

「何故20年前、もしくはせめて10年前にこのスキルを身に着けておかなかったのか……」

まあでもいいとしよう。
仮に自分が70歳まで現役で働くとしたら、このスキルを活かせる期間はあと17年ある。さらにその間にスキルをより進化させ、脳の健康も維持できれば、70歳を過ぎた後にもまだ活躍できる可能性はあるだろうし、プログラミングが老後の楽しみになるかもしれない。だってプログラマーとしての自分はまだド新人の駆け出しなのだから、自慢じゃないけど

「伸びしろだけは大きい」

そう考えるとちょっとワクワクしてくる。
前置きが長くなったが、この記事では、私がリスキリングとしてプログラミングに挑戦した理由、そして初体験したオンラインスクールでの学習をご紹介したい。

ChatGPTの衝撃とリスキリング

AIやロボット技術の進化で、主たる担い手が「人」ではなくなる職業が数多く存在する───。

そんな「消える職業」をめぐる議論はここ10年、何度となく盛り上がってきた。

世界的にセンセーショナルを巻き起こしたのは、2013年にオックスフォード大学の研究者が発表した論文だろう。それによると、アメリカの職業のうち実に約47%がロボットやAIによる自動化で影響を受ける可能性があるとされた。

「やばいよ、自分の仕事なくなっちゃうよ」

当時そんな不安を抱いた方ももいるだろう。でも気付いたら10年なんて結構あっという間で、意外と仕事はまだまだ単純作業を多分に含んだまま人が担っていたりする。

一方「漠然とした将来に対する不安が、急激に具体的になってきた」なんていう人もいる。その大きな要因のひとつが、昨年末から世界に衝撃を与え続けているChatGPTであり、画像・文章生成AIだ。

AIの進化は加速している。そして今後も我々の想像をはるかに超えるスピードで成長していく。今はAI対応チャットサポートの自動回答にイライラさせられることのほうが多く、「早く(人の)オペレーターを出してよ」と思いがちだが、いずれ人でまわしている従来のコールセンターに苛立つ日がくるのかもしれない。

でも嘆いていても始まらない。
今やっている自分の仕事が将来AIにとって替わられてしまうのであれば、別のスキルを身につけて仕事の領域や内容をシフトさせればいい。それが今注目の

「リスキリング(Re-skilling)」

だ。日本語でいうなら 「学び直し」

もともとは、企業が社内のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していく際に必要な人材育成として注目されるようになった。グローバルでの競争力獲得には不可欠と国も後押しをしており、昨年秋には岸田首相が「個人のリスキリング支援に5年で1兆円を投じる」とも表明している。ユーキャン新語・流行語大賞2022にもノミネートされ、それで初めて知ったという人も少なくないようだ。

「リスキリングなんて、結局は余裕がある大企業の話でしょ」

なんて思うなかれ。

昨今、企業の人材育成だけでなく、個人単位でのリスキリングにも注目が集まりつつある。

中でも注目が「プログラミング」。さらに今後の大幅な人材不足が予測されているデータ分析などのスキルにも。

具体的にどんな分野が人気なのかを知りたかったら、そんな時に便利なのはやはりChatGPT先生。試しに聞いてみると「デジタルスキル」「プログラミングとコーディング」「AIと機械学習」「サイバーセキュリティ」「クラウド技術」「ソフトスキル(コミュニケーションスキルなど)」「グリーンスキル(環境影響評価など)」「リモートワークスキル」の8分野をあげてくれた。ふむふむ、なるほど。

過去何度もプログラミング学習に挑戦するも挫折の連続

私の話に戻ろう。

「プログラミングできたらいいなあ」と最初に思ったのは15年以上前の30代半ば頃。20代の終わり頃から個人的にWebサイトを作っており、もともとHTMLとCSSの知識はある。

入門書でプログラミング学習を試みるも挫折

ご存じの方もいると思うが、HTML/CSSはいわゆる「プログラミング言語」とは異なり、一般に「マークアップ言語」と言われる。ブラウザに表示させたいコンテンツのうち、どこを見出しにし、画像をどう配置するのかなどを記述するためのもので、例えるならWordで見た目も格好いいチラシを作るようなイメージと思ってもらえばいい。

今も、趣味と実益兼ねて様々なサイトを作って運営しており、最近はさらに手軽に「WordPress」というブログツールを使うことが増えた。用意されたデザインパターンの中から好きなものを選び、タイトルなど入力すればわずか10分で完成する。

ただ読み物コンテンツだけなら、HTML/CSSで作り込んだり、WordPressを使ってスタイリッシュなサイトを作るで十分だが、ちょっとした機能をつけたいと思うとそれだけでは無理なことも。WordPressなら様々な機能追加ができる「プラグイン」も用意されているが、出来合いのプログラムなので妥協が必要となる。

そこでプログラミング入門書を買って読み始めたが、基礎がない自分は第一章で挫折してしまった。まずプログラミング特有の単語が理解できない。いくら読んでも頭に入ってこない。実際にパソコンで開発環境を作って手を動かしてみれば、「お、本に書いているとおりに動いた!」とはなる。たとえば「X」と「Y」という変数を設定し、それぞれに数字を代入して、足し算をさせるというものだ。X=2、Y=3、X+Y=5 ふむふむ。で?

勉強の進め方にも問題があったのだが、PHPやPythonなど入門書を買ってのプログラミング学習は挫折の連続だった。とてもとても、実践レベルには遠く至らなかった。

「へー、ヤフーがプログラミングスクールを始めるんだ!」

そんな挫折経験を重ねながら、プログラミング“学習”自体に苦手意識を抱き始めていた私だが、昨年12月、Twitterで流れてきたニュースに目が釘付けになった。

受講形式は完全オンラインで、総学習時間は320時間(自習時間を含む)、Webやシステム開発の基礎知識を幅広く学べる30以上のレッスンを提供する。プログラミング未経験者向けのエンジニア求人を1000社以上保有するキラメックスを通じて、ヤフーやZホールディングスのグループ企業を含む転職活動を支援する。11月30日から2023年1月3日の期間中に100人を上限に受講生を募集し、1月23日から講義を開始。受講費用は55万円(税込)。

ヤフーとキラメックスがリスキリングを支援する「Yahoo!テックアカデミー」を開設(2022/12/1)

ヤフーが、キラメックスとの提携でオンラインスクール事業を始めるというニュースだった。

Yahoo!テックアカデミー公式サイト

Yahoo!テックアカデミー公式サイト
https://yj-techacademy.yahoo.co.jp/

しかも単に「プログラミングが学べる」だけではない。「プログラミング未経験者からエンジニア」だ。別ジャンルに例えるなら、お料理教室ではなく調理師養成所といったところか。

「ヤフーの現役エンジニアが、あなたを未経験から即戦力へ。」というコピーにもそそられた。

こんな方におすすめ!・プログラミング未経験からIT業界でエンジニアになりたい方
・より実践的な技術・ノウハウを学びたい方
・ヤフーの現役エンジニアからキャリアのヒントを得たい方

対象はプログラミング未経験者

流石に50代でエンジニアを目指すビジョンは持ち合わせていなかったが、「実践的ノウハウ」や、「ヤフーの現役エンジニア」と1対1で話ができる機会が得られるというのは魅力に感じた。

プログラミングを学んでも、実践で使えないのでは意味がない。そしてプログラミングといっても、小規模サイトに組み込むためのWebアプリから、ゲーム開発、大規模な金融システム構築までピンキリだ。自分のようなド素人には、やりたいことを実現するためにはどんなプログラミング言語が最適なのかすら見当がつかない。コンテンツも多岐にわたるYahoo!最前線で活躍する現役エンジニアであれば、そんな相談もできるんじゃないだろうか。

記念すべき「第1期」の募集は、55万円という料金の高さにもかかわらず、数日で応募者が定員の100名を超え、枠自体を拡大するという追加リリースが発表された。

新型コロナ禍という長いトンネルの出口も見えていた2022年の師走に、「来年は新しいチャレンジをしたい」「転職を実現させたい」とこのニュースに心躍らせた人が多かったのだろう。

「ヤフー」ブランドの威力は大きく、また「リスキリング」というパワーワードの影響もあり、テレビでもこのニュースが流れ話題となった。もはや応募者数は想像もつかず、抽選で落ちる確率のほうが高い気もしたが、それも年初の運試しだと思えばいい、そう思って私も応募した。

結果は……

案の定の落選。

キャンセル者分の再抽選の結果、繰り上げ当選

からの数日後に届いた繰り上げ当選メール。

その日のうちにクレジットカード決済し、正式に申し込みを行なった。1月16日のことだ。

「まるでうちの新人研修カリキュラム」「最新知識を体系的に学べうらやましい」

Yahoo!テックアカデミーは、完全オンラインのプログラミングスクールだ。

LIVEでの授業もないので、空き時間を使って自分のペースで学習を進めていくことができる。

受講者専用サイト上でテキストを読み進めながら学習するスタイルで、知っているところは斜め読みで飛ばしていくこともできるので、全体の学習時間もひとつの目安でしかない。例えば自分なら、HTMLとCSSは既に仕事でも使っているレベルなのでさくっと読むで十分。一方、Java基本はごく初歩的な用語もわからず、いちいちネット検索で調べながら読んでいったので進みは非常に遅かった。

公式サイトで公開されているカリキュラムの内容はこんな感じ。

ヤフーが監修したかなり幅広いカリキュラム

学習の中核となるプログラミング言語は「Java」。そしてそのフレームワーク(ソフトウェア開発を効率よく進めるためのもの)で「Spring Boot」、さらにデータベースで「MySQL」、その他「Git/Git Hub」「Docker」、Webサーバ構築で「Linux」や「Apache」など。システム開発に必要な知識として、要件定義やデータベース設計、テストの方法などもカリキュラムに含まれている。かなりのテンコ盛りだ。

私は「Java」という名前は知っていたが、どういう特徴があり、どんな開発で採用される言語なのかといった知識はなかった。フレームワークも「システム開発を簡単にしてくれる便利そうなもの」くらいの認識で、「Spring Boot」という名前も初耳だった。

ちなみに、Javaが採用されたのは、ヤフーの開発環境というだけでなく、「未経験者の転職」というコースのゴール設定にも関係する。

いくらプログラマーが圧倒的に足りない現状があるとはいえ、現場経験ゼロの初心者プログラマーを採用できる企業となると限られてくる。当然、少人数で開発を進めるベンチャーというよりは、新卒採用も含め数多くのエンジニアを抱える開発会社や事業会社などになる。たとえば大規模な金融システムの開発を手掛けていて、チーム制で育成体制も整ったところなど。となってくると、必要とされている言語はまずJavaとなる可能性が高い。またよく言われることだが、ひとつのプログラム言語をマスターすれば、他の言語もぐんと理解しやすくなり、その後は独学でも割とすぐ習得できるとのこと。

4カ月弱の学習カリキュラムとその後の就職支援

第1期は1月23日から5月14日までの112日間。

学習目安は1日2~3時間想定なので、仮に1日フルタイムで6~9時間を勉強時間にあてる想定なら1カ月ちょっとだ。

その期間で、Javaにフレームワーク、さらにデータベースからサーバまわりから、さらには演習課題までやるとなるとどれも中途半端に終わってしまわないだろうか。

そんな懸念をエンジニアとして働く友人に投げたところ、こう言われた。

「うちの会社の新人研修カリキュラムと同じような内容」
「それでフルタイム1カ月超なら、楽ではないけど妥当な線」

そしてカリキュラムについても、業務で開発に携わるなら、自分が直接担うところ以外もひととおりの知識はもっておかないとダメ。フロント(実際にユーザが見る画面を作るほう)じゃなくてもHTMLの知識は必要だし、サーバ周りもしかり、とのこと。

ベテランのプログラマーからはこうも言われた。現時点で最新のスタンダードな知識を体系だって学べるのはうらやましい。このカリキュラムは非常に興味深いと。

このカリキュラムが自分に適しているかどうか判断する基準も持っていなかった私だが、信頼するエンジニアの知人にそう言ってもらえたので安心した。(続く)

和田 亜希子