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包丁は三徳よりも牛刀が万能!? 種類と使い分けを知って自炊を快適に

コロナ禍で在宅時間が増え、家で料理をする人が増えている昨今。こだわりの調理家電を揃えている人もいると思いますが、料理をする上で必ずといっていいほど登場する包丁はどうでしょう。1本の包丁で済ませている人も少なくないはずです。しかし包丁には様々な種類があり、素材に合わせて使い分けることでより楽しく、快適に調理ができるようになります。そこで今回は創業113年の刃物メーカー、貝印の包丁マイスターである林泰彦さんに包丁の奥深さと使い分けについて話を聞きました。

「一般のご家庭で多く使われている三徳包丁はどんな素材にも使える万能包丁で、ひと昔前は文化包丁と呼ばれていました。肉・魚・野菜、3つそれぞれの専用包丁のいいところを合わせたものが三徳包丁の位置づけになります」

貝印 研究開発本部 マイスター推進部/国内営業本部 kai shop推進部 次長 林泰彦さん

三徳は万能選手! でも「帯に短し、たすきに長し」

関孫六 匠創 三徳 165mm AB5156(4,950円)

刃渡り16.5cm前後の長さがメインで、比較的薄めの刃を使用している三徳包丁。万能がゆえに最初の1本として購入する人が多いのですが、現実的には切れない食材、切りにくい食材があると林さんは話します。

「魚を捌くときは硬い骨を断ち切らなければならない場合もあるため、刃が薄い三徳では刃こぼれする可能性があります。また、スイカなどの大きい食材や、カボチャなどの硬い食材も切りにくいものです。あらゆる食材を快適に切り、楽しく調理するなら、やはり専用包丁を買い足して上手に使い分けることをおすすめします」

たしかに三徳1本だけですべてを何とかしようとすると「もっと刃が長ければ、厚ければ」と思うことがあります。家庭によって頻繁に登場する食材は違いますから、三徳包丁では「足りない」と思った部分をフォローできる専用包丁を買い足すのがいいのかもしれません。

より短く扱いやすい小三徳もある。関孫六 いまよう 小三徳 145mm AB5457(4,400円)

「三徳は万能なぶん、『帯に短し、たすきに長し』というところがあります。しかし専用の包丁を使えば作業効率が良くなり、調理も楽しくなるものです。さらに食材に優しいので断面がきれいになり、歯触り、舌触り、鮮度、風味など、いろいろといい結果が得られる。そこが複数の包丁を使い分ける一番のメリットです」

包丁マイスターは最初の1本に「牛刀」を推奨

在宅時間で料理の楽しさを知り、これから本格的に包丁を揃えていきたいという場合、最初の1本は三徳のほかに牛刀も選択肢に入れて欲しい、と林さん。

「私どもでマーケティング調査を行なった結果、料理好きな方や料理研究家の方は三徳ではなく牛刀をメインに使っている傾向があることがわかりました。牛刀は刃渡り18cm以上が一般的で、21cmくらいのものが使いやすいサイズになります。刃が長いので大きな食材も一発で切れますし、硬いカボチャも長さを利用してテコの原理を使えば切りやすくなる。さらに切先(きっさき)と呼ばれる先端部分が三徳よりも尖っているので、そこを使って捌いたり、突いて切ったりすることもできます」

関孫六 いまよう 牛刀 210mm AB5460(5,280円)

三徳よりも刃渡りが長く、重くなるため取り回しは難しくなりますが、そのぶん適応する食材が多くなるようです。今、三徳を持っている方でも、料理が好きでいろいろ挑戦してみたいという方は、牛刀を買い足すのもおすすめだとか。

「刃は刃渡りも刃幅も長さがあるので大きなキャベツやカボチャ、刺身などもカバーできます。もちろん、菜切り包丁や刺身包丁などの専門の包丁を揃えていただくのがベストですが、キッチンの環境によって何本も収納できない、という場合もありますから、三徳で足りない部分を牛刀でフォローする、という感じで買い足すのも一案です」

和包丁と洋包丁では何が違うの?

包丁は、大きく和包丁と洋包丁に分類されるようですが、その違いについても林さんに聞いてみました。

「洋包丁はほとんどが両刃で刃先が均等なV字になっているのが特徴です。三徳や牛刀は洋包丁で、どちらかというと一般使いができる多目的な包丁という感じ。一方、和包丁の多くは片刃で刃先のV字が傾いています。目的に特化している包丁が多く、魚を捌く出刃包丁、刺身を切る刺身包丁、野菜を切る薄刃や鎌型なども和包丁に分類されます。とくに大根などの『かつらむき』は片刃でないと上手にできません。両刃の包丁で一定に薄くむいていこうとすると、刃の角度によってだんだん中心に寄っていってしまいます。しかし片刃であれば透けるような薄さを維持したまま切ることができるのです」

貝印では、片刃か両刃か、左右兼用か左利き用かをパッケージにアイコンで表記

両刃の洋包丁は利き腕を選ばずに使うことができますが、片刃の和包丁は利き腕を選びます。貝印では左利き用の包丁も用意しています。

「ハガネの方が切れ味がいい」は大きな誤解

包丁の素材は大きくハガネとステンレスに分けられますが、一般家庭で使うなら手入れに手間がかからないステンレスの方が便利だと林さん。

「ステンレスとハガネは、『サビに強いか弱いか』が大きな違いです。ハガネは素晴らしい素材で私も大好きですが、残念なことに非常にサビやすい。水に濡らして放っておくと15分くらいでサビ始めることもあるほどです。そのため、ご家庭で使うならサビにくく切れ味の持続性が高いステンレスの方が使い勝手がいいと思います」

よく「ステンレスは切れないし研げない」「ハガネの方が切れ味がいい」という人がいますが、林さんに言わせればまったくの誤解だそうです。

「切れ味はハガネもステンレスも研ぎ方で決まります。いい刃物の定義は3つあり、その良し悪しでクオリティが大きく変わるんです。1つは材料、2つ目は焼き入れ、3つ目は刃付け。つまりステンレスでもハガネでも、いい材料を使ってしっかりとした製造工程でつくられていれば良いものができる。この3つをきちんとやろうとすると製造コストがかかるので、お値段も張る、というわけです」

こだわってつくられた包丁は、ハガネでもステンレスでもしっかりと研いであれば切れ味は変わらない、とのことですが、いくらくらいの包丁を買えばこの3つをクリアした包丁を手にできるのでしょうか。

「お使いになる人の感覚や使い方にもよりますが、一般的には1万円くらい出せばいい包丁が買えると言われています。ただし、弊社の商品はコストパフォーマンスがいいと自負しているので、お料理をよくされる方でも5,000円~6,000円くらいのものでご満足いただけると思います。とりあえず1本包丁を持っておきたいという方にはさらに安価なラインナップもありますので、ライフスタイルに合わせて選んでいただければと思います」

出刃や菜切など、包丁の種類いろいろ

ここからは、三徳や牛刀のほかにどのような種類の包丁があるのか、おすすめの商品とともに林さんに紹介してもらいましょう。

「すでに三徳を持っていて、2本目の包丁としておすすめしたいのはペティナイフです。基本的に包丁はまな板を相手に使うものですが、ペティは手に持った食材の皮をむいたり、細工をしたりすることを目的としています。鍋の上で食材を切りながら入れることもできるので、1本あるとかなり便利です。皮をむく時は刃渡り9cmくらいの短めがおすすめですが、12cm、15cmと大きめのものも揃えています。男性が最初の包丁として購入するなら牛刀とペティのセットで私の提案は決まりです。この2本があればいろいろなことができますから」

関孫六 茜 ペティ 120mm AE2909(3,960円)

釣った魚を自宅で食べるなど、魚をよく食べる方には、和包丁の代表格、出刃包丁や刺身包丁があると便利です。

「出刃は捌く魚の種類や大きさによってサイズを選ぶ必要があります。お求めになる多くは釣りをされる方です。その場合は主に釣る魚の大きさから包丁のサイズを選ぶといいでしょう。弊社の売れ筋は刃渡り15cmや16.5cm。そのくらいの長さであればだいたいの魚に対応します」

関孫六 金寿ステンレス 出刃 150mm AK1101(5,500円)

「お刺身は切ったものを買うより柵で買ったほうが鮮度を保てます。刺身包丁を使うと断面も美しく、舌触りも良くなるのでぜひ試してみてください。出刃、刺身ともに『関孫六 金寿 ステンレス』シリーズならコスパも良く、手入れも楽で長く快適にお使いいただけます」

関孫六 金寿ステンレス 刺身 210mm AK1105(5,500円)

このほか、中がやわらかく表面が硬いものでもうまく刃が入る波刃を使ったパン切り包丁や、刃先から峰までの身幅があり、葉物野菜を切りやすい菜切り包丁などもあると便利だと林さん。パンや葉物野菜を切る機会が多い方は、ぜひ買い足しましょう。

Kai House SELECT Bready ONE AB5524(1,650円)
関孫六 金寿ステンレス 菜切 165mm AK1121(4,950円)

こだわり派に人気の「ダマスカス」シリーズ

貝印の包丁の中でもとくに人気が高いのが「関孫六 ダマスカス」シリーズです。高級ラインで多少値は張りますが、切れ味や使い心地、機能美を追求したデザイン性など、多くのこだわりが詰め込まれています。包丁のスペシャリストである林さんも、「一番おすすめのシリーズ」と語るほどの自信作です。

「包丁に入った模様が美しく、コスパの良さも魅力で、プロの料理家の方から一般の方まで多くの方に愛用いただいているシリーズです。柄は上が平らになった逆三角形なので持ちやすく、力が入れやすいようになっています。パン切り包丁は15,400円もしますが、パンの切り口がとても滑らかになるほど切れ味は抜群です」

牛刀、菜切り、三徳、ペティなどさまざまな種類がある関孫六 ダマスカスシリーズ

こういった高級品は持って、使って楽しいもの。せっかくなら良い包丁を、愛着を持って長く使いたいものです。

手軽にできるメンテナンス方法を教えます

包丁はいくら良いものであっても使っているうちに切れ味が落ちてきます。切れない包丁を使っていると作業効率が悪くなり、気持ちよく調理ができなくなるもの。ケガをする危険性も高まります。いつも快適に、安全に使えるよう、手軽にできるメンテナンス方法も聞いてみました。

「もっとも簡単にできるメンテナンスはシャープナーで刃先を研ぐことです。いろいろな種類がありますが、なかでも『関孫六 ダイヤモンド&セラミックシャープナー』をおすすめします。性質の違う3種類の砥石がついていて、順番に使うことで刃の先端を滑らかに仕上げ、切れ味を復活させる人気商品です。ただし簡易的なため、比較的早く切れ味が落ちることが多い。ですから、日頃はシャープナーを使い、時間がある時に砥石で研いでいただくのがいいと思います」

関孫六 ダイヤモンド&セラミックシャープナー AP0308(2,200円)

包丁の能力を最大限に引き出すためにも、切れ味が落ちてきたらマメに研ぐことが大切です。

「切れ味の低下はトマトの皮で見極めることができます。皮が切れずにトマトがぐにゃっとつぶれるようでは重症です。しっかり研がれていれば触った時点で刃が入りますから、触れてもすぐに刃が入らず、少しでもトマトがへこむようであれば研ぎ時、ということですね」

研ぐ方法がわからない、研いでもうまくいかない、という方のために、貝印のWebサイトでは「包丁の研ぎ方」を案内しています。シャープナーでも砥石でも、こちらを見れば正しく上手に研ぐことができ、切れ味のいい状態を保つことができます。

包丁にこだわれば調理が快適になり、切れ味のいい包丁を使うことで食材の舌触りや風味が良くなり料理のクオリティも上がるもの。ぜひ、自分に合ったお気に入りの包丁を揃えて、しっかりメンテナンスをして、楽しく、おいしい料理をつくりましょう!