いつモノコト

スポーツ車にも近い爽快感の電動アシスト自転車「Votani Q3」

数年前、結婚を機に引っ越した先は坂の多い街でした。

筆者は自転車が好きで、引越し前は「一生物にしよう!」と思い切って購入したウン十万円もするスポーツタイプの自転車に乗っていました。スポーツ車なので車体は軽く、ギアも多いので、ちょっとした坂道であればまったく問題ないのですが、自転車の動力源はあくまでも自分。もともと体力や筋力がないため、そこそこ急な坂が延々と続く地形にいつしか心が負けて、気がつけばすっかり乗らなくなってしまいました。

坂道の多さに負けてすっかり自転車に乗らなくなってしまった

しかし、徒歩だけでは行動範囲に限界がありますし、たくさん買い物をして荷物が多いときなどは、やはり自転車があった方が何かと便利です。そして、坂の多い街であれば、電動アシスト自転車以外の選択肢はないのですが、なかなかコレ! と思うものに出会えず、購入に踏み切れていませんでした。

というのも、自転車に大きく言って2つのジャンルがあります。ひとつは、それまで筆者が乗っていたようなスポーツ車。ロードバイクやクロスバイクなど、走ることそのものが目的の自転車です。荷物をたくさん乗せられるといった実用性はあまりありませんが、より速く、より長く走ることができ、自らの力で風を切って走る爽快感が存分に味わえます。また自分にとっては、見た目のカッコよさが何よりも魅力的でした。

もう一つは、生活のための実用車。いわゆる“ママチャリ”です。荷物がたくさん乗せられる、乗り降りがしやすいといった実用性はバッチリ。でも、走りの爽快感や見た目のカッコよさでは、どうしてもスポーツ車に劣ります。

電動アシスト自転車は基本的に実用車ですので、見た目もママチャリテイストのものがラインナップの中心です。実用性のために購入するのであればそこは割り切るべきポイントだろうとは思いつつ、それまでスポーツ車を乗り回していた身からすると、見た目にもテンションの上がるものが欲しいなという気持ちを抱いていました。

そんな中で「コレは!」と外見にひと目惚れし、ようやく購入まで至ったのがBESV JAPANの電動アシスト自転車「Votani Q3」(168,000円)でした。

Votani Q3(カゴは筆者による後付け)

U字型のフレームはママチャリでもよくあるシルエットですが、全体的な印象がどことなくスタイリッシュです。その理由は、バッテリーがフレームの中に収納される構造になっているから。電動アシスト自転車っぽさがなく、スッキリとしています。スポーツ車は乗る時に服装を選ぶことも多いのですが、こちらはフレームの真ん中が低くなっているので、スカートなどの普段着でも乗りやすくなっています。

バッテリーが外から見えないのでスッキリ

カラーバリエーションは、スノーホワイト、カッパーゴールド、ミルキーベージュ、グロスブラックの4種類。サドルとハンドルはブラウンで統一されていて、オシャレな感じがします。筆者は汚れが目立たなさそうで、シックな印象のグロスブラックを選びました。

また、スポーツ車の場合は、ライトや鍵などの必需品は自分で後から購入しなければいけないことがほとんどですが、Votani Q3はライトやスタンド、サークル錠、タイヤの泥除けなどが標準装備されています。この辺りはさすが実用車仕様で、スポーツ車を使っていた身からするとありがたいなと感じます。

ライトや鍵などの必需品も標準装備

私は買い物にも使いたかったので、オプションのリアキャリアを追加し、自分で後ろカゴを取り付けました。購入した店舗でカゴを後ろにつけたい旨を伝えると、安全のためスタンドを標準装備の片足タイプからオプションの両立スタンドに変更することをすすめられ、素直に従うことにました。片足スタンドは荷物が重いと倒れやすくなるため、ここは変更して正解だったと思います。

オプションのリアキャリアと両立スタンドに後ろカゴを後付け

肝心のアシスト機能は、「エコ・ノーマル・パワー」の3段階と、ペダルを漕ぐ力に合わせてアシストの出力を自動的に制御してくれる「オート」モードが用意されています。電源を入れて上下の矢印ボタンを押すと順番に切り替わる仕組みですが、「オート」が優秀すぎるためそれ以外のモードには正直出番がありません。

アシストのモードは4種類

過去にレンタルサイクルで電動アシスト自転車を利用した時は、「今アシストがオンになったな」「オフになったな」とはっきり分かるほどペダルの重さがガクッと変わる感触があったのですが、Votani Q3のアシストはとても自然です。あれ? 私の脚力が上がった? と錯覚してしまうような滑らかさで、スポーツ車にも近い走りの爽快感が味わえます。見た目と実用性に振った分、走りの軽快さはあきらめていましたので、これは嬉しい誤算でした。

心配していた坂道でもパワーは申し分なし。アシスト無しの自転車ではゼエゼエしながら立ち漕ぎし、途中からは力尽きて押して歩いていた長い上り坂でも、サドルにゆうゆうと腰掛けたまま、最後までスイスイと登りきることができました。

長い上り坂も座ったままでスイスイ登れる

もう一ついいなと思うのは、サドルの高さ調節が簡単なところです。ロックはレバー式で、工具なしでも開け閉めでき、サドルの後ろについた大きなハンドルのおかげで上げ下げもスムーズです。私は身長150cmと背が低く、夫は177cmと高めですが、どちらにも無理なく合わせられます。家族で自転車を共有したい、という場合にもよさそうです。

大きなハンドルでサドルの高さ調節もスムーズ
身長150cm(左)でも177cm(右)でも無理のない姿勢で乗れる

唯一の難点を挙げるとすれば、充電器の仕様でしょうか。端子を差し込んでネジで固定する方式なので、やや面倒です。別売りでもいいので、専用のクレードル(充電器)があればもっと便利だろうなと思いました。とはいえ、自分の使い方では充電する頻度はそれほど多く無いので、許容範囲内ではあります。

専用のクレードル(充電器)がないので充電はやや面倒

見た目重視で選んだ電動アシスト自転車でしたが、期待通りの実用性に加えて、スポーツ車に近い走りの爽快感もあり、結果的に満足のいく買い物でした。オシャレな自転車を探している方、メインはスポーツ車だけど、実用車として電動アシスト自転車も欲しいなと思っている方に、Votani Q3はおすすめできると思います。

ヨシムラマリ

ライター/イラストレーター。神奈川県横浜市出身。文房具マニア。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。元大手文具メーカー社員。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。