トピック

電動アシスト自転車はこんなに多彩。ママチャリ、小径車、e-bikeまで

ちょっとした坂道でも、重いものを積んでいる時も、楽に走ることができる電動アシスト自転車。一般的にはシティタイプやチャイルドシート付きが知られていますが、今はスポーツタイプやファッション性の高いモデルなど、趣味性が高く、所有欲を満たしてくれるものも多くリリースされています。そこで今回は、電動アシスト館を併設するサイクルベースあさひ 砧公園店を訪れ、副店長の宮原治希さんに最近の売れ筋モデルや選び方のポイントについて話を聞きました。

「コロナの影響もあり、通勤で自転車を利用される方が増えたことで電動アシスト自転車を選ばれるお客様が増えています。当店では4~5割近くのお客様が電動アシスト付きのモデルをご購入されているくらいです。デザインのバリエーションもかなり増えていてどんな方でも理想の一台が見つかるはずですから、楽にカッコよく走りたいと思っている方はぜひ購入をご検討いただければと思います」

サイクルベースあさひ 砧公園店 副店長 宮原治希さん

ファッション性の高さで人気の小径車モデル

今、一番話題性の高いカテゴリーとして宮原さんが紹介してくれたのは、タイヤ径が20インチ以下の小径車モデルです。「どうせ乗るならオシャレなデザインの自転車がいい」という方におすすめだと宮原さん。人気の小径車は10万円台前半から20万円台前半になります。

小径車モデルは色もデザインも多種多様。品揃えも豊富だ

「小径車モデルは利便性とデザイン性を兼ね備えているのが魅力です。タイプもいろいろで、カッコいいものからかわいらしいものまで揃っています。ご自身のファッションに合わせて自転車もコーディネートしたい、と思われる方も多いようで、みなさんご自身のセンスに合ったモデルを選んでいるようです。デザイン性を損なわないように装備が最低限のものもありますが、カゴ類やスタンドなどのオプション品も多いので、使いやすさや理想のビジュアルを追求して自分なりのカスタムができます」

なかでもパナソニックはこのカテゴリーに力を入れているメーカーで、さまざまなモデルを揃えています。

「BMXスタイルの『EZ』は極太タイヤが個性的。前後についたキャリアもデザイン性を損なわず、街中をカッコよく走ることができます」

パナソニック EZ(131,800円)

「車に積載できる折りたたみ式の『オフタイム』は、旅先でも使えるアウトドア仕様。路面状況に合わせて7段の変速が可能で、工具不要の3ステップで簡単に折りたたむことができます。前カゴと安定感のある両立スタンドが標準装備で付いている『グリッター』は利便性も高く、ファッション性の高いモデルながらお買い物にも最適です」

パナソニック オフタイム(137,800円)
パナソニック グリッター(129,800円)

海外モデルはよりスタイリッシュなデザインに

海外ブランドの小径車モデルはよりスタイリッシュなデザインです。なかでも売れ筋は、自転車大国オランダ生まれのブランド、VOTANI(ボターニ)。

「キュートなデザインの『Q3』はフレームの重心が低く、またぎやすいのが特徴です。スタイリッシュでシャープなイメージの『H3』はフレーム部分にスリムなバスケットを装備。どちらも形は違いますが同じモーターやバッテリーを採用していて、サイドスタンド、泥よけのフェンダー、クリアなチェーンカバーと街乗りに役立つ標準装備となっています。しかもフレーム内にバッテリーを収納するインチューブバッテリーを採用。海外メーカーはバッテリーを隠すのが本当に上手です」

VOTANI Q3(150,800円)
VOTANI H3(150,800円)。バスケットは取り外し可能
同店ではQ3に後カゴなどを装備したセット商品も展示。買い物がより楽に

VOTANIを展開するBESV(ベスビー)も、洗練されたデザインと優れた機能性で高い評価を得ているヨーロッパで人気のブランドです。

「BESVの『PSA1』は、小径車ですがe-bike寄りのモデルです。クロスバイクに採用されるコンポーネントを取り入れていて、より高い走行性と軽量化を追求しています。モーターは小さく軽量ながらパワフルで、油圧式ディスクブレーキを採用。前後にサスペンションが付いているので段差や凹凸のある道路も快適に走ることができます。また、モーターを後輪にレイアウトすることで理想のフレームデザインを可能にしました。センターユニットでは中央にボリュームが出てしまい、それに合わせてフレームを作らなければなりません。しかし、後輪にもってくれば、このような個性的なフレームデザインに仕上げることができます」

BESV PSA1(214,800円)
7段変速ギアには「SHIMANO Altus 7speed」を採用
パワフルなスピードをしっかり抑える油圧式ディスクブレーキ

ここで宮原さんから「e-bike」という言葉が出てきましたね。e-bikeというとスポーツタイプの電動アシスト自転車というイメージですが、実際のところ普通のアシスト自転車とは何が違うのかも含めて、ここからはe-bikeについて話をうかがいましょう。

e-bikeになるとパワーも性能も段違い!

「一般的な電動アシスト自転車は完全に利便性特化型で、街中をのんびり楽して走るための自転車となっています。それに対してe-bikeは高速度域を維持できる、遠くまで行ける、山道をラクラク登れる、などの特性からフィールドも変わってくるわけです。それを実現させるためには部品構成が大事ですから、パーツも一般的なものとは違います。シーンにより幅広いギア選択ができるよう最低でも7段以上で、モーターもパワフル。そのパワフルなスピードを制御するためにブレーキも制動力が強いものが採用されています」

つまり、「楽して走る」だけではなく、+αの要素を盛り込んだ、ハイパワーの高性能モデルということですね。10万円台前半のモデルもありますが、上位モデルになると30万円以上となり、ラインアップは幅広いです。

「ユニットには高性能で知られるシマノ製を使うなど、トルクも段違いです。ですから、e-bikeは機種によって急勾配や未舗装路も走破できるモンスターマシンなんです」

サイクルベースあさひでは、主に通勤利用で購入する方が多いということで、それに対しておすすめのモデルを紹介してもらいました。

「パナソニックの『JETTER』は値段も手頃な人気モデルです。前カゴや荷台を付けられる、通勤に便利な仕様になっています。変速8段ギアでVブレーキを採用。クロスバイクでは定番のブレーキで、一般的なキャリパーブレーキに比べるとはるかに制動力が高いです」

パナソニック JETTER(158,800円)
コンパクトで軽いVブレーキを採用

「ルイガノの『AVIATOR-E』はエントリー向けのe-bike。シマノのユニット、油圧式ディスクブレーキを採用し、スポーツ感のある乗り味です。20km以上のスピード域を保つことができ、e-bikeならではのパワーとアシスト感を十分に感じることができます。純正オプションでキャリアや前カゴのラインナップがあり利便性も補えるので、ちょっとしたサイクリングだけでなくコミューター系の通勤にも利用できます」

ルイガノ AVIATOR-E(別売のスポーツバスケット、キャリア込みで225,418円)
液晶メーターで速度やバッテリー残量などを管理できる

さらに、サイクルベースあさひでも自社ブランドのe-bikeをリリースしています。紹介してくれたのは「OFFICE PRESS E」で、スーツ時での乗り心地や安全性を考慮し、意匠と機能の両立をコンセプトとしたモデルです。

「スポーツタイプの自転車には付けられる部品に制約がありますが、このモデルは前カゴ、泥よけ、一本スタンドを標準装備して利便性に特化しました。買ってすぐに走り出せる、オプションのコストがかからない、といったところが魅力ですね。これだけの部品が付くとシティサイクルのような印象になりますが、ギア構成は8段、油圧式ディスクブレーキの採用と、スペックはルイガノと変わらないんですよ」

あさひブランド OFFICE PRESS E(129,800円)
カゴ下の中央に設置されたライトも標準装備

さらに、宮原さんが「今、熱い」と語るグラベル仕様の最新e-bikeもご紹介。

「BESVの『JG1』は未舗装路を走破できるグラベルバイクです。太いブロックタイヤ、グラベルに特化したシマノGRXのコンポーネントを採用。これによりチェーン暴れを抑制し、めちゃくちゃ軽いギアまでフォローするワイドなギア構成を実現しました。このほか、電動アシスト自転車に見えないインチューブバッテリー、油圧式ディスクブレーキ、落ち着いたカラーリングと、今の流行りをすべて取り入れたモデルです」

BESV JG1(368,800円)
ギアには「SIMANO GRX 11s」を採用

走りを楽にするだけならママチャリタイプで十分

e-bikeの上位機種になるとさすがにお値段が張りますが、ちょっとしたお出かけや買い物にしか使わない、なるべくコストを抑えたいという方はママチャリタイプで十分だと宮原さん。ママチャリタイプなら10万円以下のモデルもあります。

「買い物だけでなく、ちょっとした通勤にも使えるママチャリタイプは、前カゴ、荷台、両立スタンドを標準装備。重心が低めにつくられているので、乗りやすく安定感があります。当店ではパナソニック、ヤマハ、ブリヂストンの3大メーカーに、あさひブランドと、それぞれに個性あるモデルをラインナップ。タイプもいろいろで、パナソニックは部品構成などでコストを落とした廉価グレードのお手軽モデルもあれば、キーレスでロックが解除できる高級モデルもあります」

高級モデルにあたる、パナソニック ビビEX(147,980円)
車のように端末を携帯していれば自転車に近寄るだけでキーが解除される
お手軽モデルのパナソニック ビビSX(93,980円)

「あさひブランドの『エナシス フィール』はまたぎやすさや利便性に特化したモデルです。重い荷物を前カゴに入れても安定するよう、ハンドルロック機能を搭載しています。モデルによってはスタンドを上げるとハンドルロックされるものもありますが、このモデルはかけたい時にかけられるのが魅力です」

あさひブランド エナシスフィール(99,980円)

ママチャリの中には、コンセプトが異なるシニアモデルもあります。小型のタイヤを採用し、足つきをよくしているのが特徴です。

「電動のシニアモデルは最近進化していて、軽量化がトレンドになっています。通常、鉄やステンレスを使用するスタンドや荷台は自転車の中でも重い部品のため、アルミニウムを採用して軽量化を図っているんですよ。メーカーそれぞれに力を入れている機能があるので、ぜひ店頭で比べてみてください」

ブリヂストン フロンティア ラクット20(135,800円)。前輪駆動による回生充電機能を搭載しているため、走りながらでも充電が可能
あさひブランド エナシスライフ(105,800円)。アルミフレームで軽量化を図り、またぎやすさ、乗りやすさを重視したシニアモデル

技術を集結したチャイルドシート付きモデル

各メーカーともに力を入れていて、技術の結晶ともいわれるチャイルドシート付きモデル。こちらもメインとなるのは、ママチャリと同じ3大メーカーとあさひブランドです。このタイプを購入の際には、最初に決めるべきことがあるそうです。

「チャイルドシート付きモデルは、大きく『前子乗せ標準装備』と『後子乗せ標準装備』の2つに分かれます。前子乗せは、乗せる面が広く、低くセットされているため子どもの乗せ下ろしが楽。重心が低くなるので安定した走行ができます。後子乗せは前カゴを付けられるのがメリットです。前のシートを追加すれば前後に子どもを乗せながら荷物も運べるのですが、こぎにくくなるデメリットもあります。このようにそれぞれに利点・欠点があるので、当店では前シートか後シートかを選ぶところからご案内しています」

「前子乗せ」はハンドルの前にシートをセットしているため乗せ下ろしがしやすい

このカテゴリーはメーカーごとの特性があり、それを基準に選ぶ方も多いそうです。

「パナソニックの『ギュット・クルームR・EX』はママチャリでもご案内したキーレス機能が備わっています。『クルーム』と書かれたモデルは、ベビーカーメーカー『コンビ』とのコラボ商品。サンシェードが標準装備で付いている唯一のメーカーで、その点でも人気です。ヤマハの『PAS Babby un SP』はスマートパワーアシスト機能を採用。アシストのパワーが小刻みに設定できるユニットなので、よりスムーズに走ることができます。さらにパワーが強力なので、急勾配やきつい向かい風、重い荷物を運ぶ時もラクラク。個人的には、激坂でのパワーをお求めの方にはヤマハ一択でおすすめしますね」

パナソニック ギュット・クルームR・EX 後子乗せ(173,980円)
ヤマハ PAS Babby un SPリヤチャイルドシート標準装備モデル 後子乗せ(148,800円)

パナソニックとヤマハは前子乗せも後子乗せも仕様は同じですが、ブリヂストンは大きく異なります。

「後子乗せの『bikke MOB dd』はシニアモデルと同様に、回生充電機能を搭載していて走行中の充電が可能です。前輪に大きなユニットが付くため、前輪のみ24インチと大きめのタイヤを採用しています。さらに、ゴムのような素材をチェーンの代わりに使用する『ベルトドライブ』は切れにくく汚れにくいのでメンテナンスフリーです。前子乗せの『bikke POLAR e』はパワーが自慢のヤマハのユニットを採用しています」

後子乗せタイプのブリヂストン bikke MOB dd(147,980円)
前子乗せタイプのブリヂストン bikke POLAR e(149,800円)

「あさひブランドのチャイルドシート付きモデル『エナシスベビー』は、シニアモデルと同様にアルミフレームの軽量設計で乗り降りしやすいのが特徴です。前シートは後付けでハンドルにつけるタイプですが、ハンドル位置を低くすることで安定感を図りました。ただしグリップの高さはそのまま。ハンドルの形状を変えることで前シートをつけても視界を遮らないようにしています」

あさひブランド エナシスベビー(139,980円)
前カゴを樹脂製にすることでも軽量化を図っている

よく通るルートや環境を踏まえて最適な一台を

このようにカテゴリーも用途もさまざまな電動アシスト自転車。購入する場合は、どのような用途で使うのか、どんなフィールドで走りたいのかを明確にする必要があります。高性能なモデルを買ったところで、宝の持ち腐れになってはもったいないですからね。そこさえ明確にしておけば、あとは知識豊富なスタッフと相談して決めるのがおすすめと宮原さん。

「当店は試乗もできるので、そこでイメージが変わるお客様も多くいらっしゃいます。もちろん、予備知識はあっていいと思いますが、そこにとらわれずにご自身に最適な、長く付き合えるモデルを選んでくださいね」

自分の住んでいる場所や環境を考えつつ、乗って、走って楽しい気分になれるモデルを選びましょう。

サイクルベースあさひ 砧公園店 電動アシスト館(東京都世田谷区大蔵1-2-1)

なお、価格等の情報は10月20日の取材時点のものです。