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一歩進んだ便利さ デジタル管理の温調はんだこて

goot デジタル温調はんだこて「PX-280」

太洋電機産業の「goot」ブランドから発売された、高性能でコストパフォーマンスに優れるデジタル温調はんだこて「PX-280」を買ってみました。Amazon.co.jpで5,806円でした。

温度を調節できるはんだこての中でも、「PX-280」はデジタル表示で細かく調節できる製品です。またそれだけでなく、スリープ機能や電源ボタン機能など、便利な機能が搭載されているのが特徴です。

本製品は2021年の年末に発売されたのですが、ネット上で話題が先行、通信販売で売り切れが続出したため店頭の展開が遅れるなど、はんだこて界隈では注目を集めた製品です。現在でもお店によっては「入荷しました!」とポップで紹介されていることもあります。

一般に、趣味の用途で買うような「グリップタイプ」のはんだこてはシンプルなものが多く、電源コードをコンセントに挿すと加熱が開始されるだけ、という単純な仕組みの製品が大半です。少し高機能なものになると、アナログなダイヤルを回して温度調節ができる「温調はんだこて」があり、私もこれまでアナログな温調はんだこてを愛用してきました。

一方、プロ用・業務用を想定した「ステーションタイプ」などと呼ばれる製品もあり、こちらは据え置きの本体とグリップに分かれていて、ハイパワーだったり細かな温度調節ができたりという高性能な仕様になっています。

今回買った「PX-280」が注目されているのは、ステーションタイプのはんだこてに搭載されているような機能を、グリップタイプの小さな本体に内蔵した点です。また価格も、シンプルなグリップタイプよりは高いものの、ステーションタイプより安い価格に抑えられています。「ステーションタイプは大げさだけど、グリップタイプでももう少し機能・性能が良いものが欲しい……」そんな人にぴったりの製品です。

見た目にも分かりやすいのは、デジタル表示で1℃単位で調節できる温度調節機能です。80Wのセラミックヒーターで立ち上がりも素早く、200~500℃の範囲で1℃単位で調節できます。鉛フリーはんだを使う場合など、通常より高い温度が必要な時でも細かく調節できます。

またこのデジタル表示ですが、使用中は現在の温度を表示するので、状態を把握するのに便利です(こて先の表面温度と内蔵センサーが捉える温度は厳密には違うので留意する必要はあります)。これはアナログなダイヤルを回す温調はんだこてにはなかった機能です。

高出力ヒーターとセンサーの組み合わせにより、温度の立ち上がりはgootのミドルクラスのステーションタイプはんだこてに匹敵するなど、趣味の電子工作に使うなら基本性能は十分以上だと感じました。

デジタル表示窓があり、1℃単位で調整できます

使用中に便利なのは、内蔵の振動センサーにより、一定時間使用しないとスリープモードになるという機能です。スリープまでの時間は初期設定が5分で、0~999分の間で設定できます。スリープ中はこて先の温度が約200℃まで下がり、空焼きを防止してこて先の寿命を伸ばせます。持ち上げるなどの振動を検知すると、自動的にスリープモードが解除され、数秒で設定温度に回復します。スリープを解除する振動の感度(DLF)も10段階で設定できます。

また、一定時間使用しない場合に、スリープではなくシャットダウンする設定にもできます。この場合、本体のいずれかのボタンを押すか、電源コードを抜き差しすると元に戻ります。

一定時間使用しないとスリープモードになり、約200℃まで下がります。振動を検知すると解除されます

ほかにも便利だと思ったのは、起動モードの設定です。これは、電源コードをコンセントに挿しても加熱を開始せず、本体のボタンのどれかを押すと加熱を開始するという、擬似的に電源ボタンを再現するモードです。一般にグリップタイプのはんだこてはシンプルなことが多く、電源コードを挿すとすぐに加熱が開始される仕様が多いので、やけどをしないようちゃんと設置しておくとかの、ちょっと気を使う場面があります。細かなことのようですが、作業を開始する前の小さな心配事が減って便利だと思いました。

交換できる別売りのこて先の種類も多いので、さまざまな作業に対応できます。標準で付属するこて先「PX-28RT-S2C」は先端の直径が2mmで、45度でカットされたタイプです。私は細かい作業に使うことも多いので、先端の直径が1mmの「PX-28RT-1BC」を一緒に買って交換しました。

使用イメージ。写真のこて先は標準付属のものです

従来のはんだこてだと、こて先の温度管理には慣れが必要だったのですが、本製品は現在の温度がデジタル表示で可視化されているので、状態を把握しやすいです。コンパクト・軽量なグリップタイプとして、また実売で6,000円を切る価格で販売されている国内メーカー・日本製の製品として、高性能でコストパフォーマンスに優れるはんだこてだと思います。

太田 亮三