いつモノコト

ジャンク品オールドレンズをお手頃マウントアダプターで愉しむ

レンズ交換式カメラの主力が一眼レフからミラーレスに変わって、使いやすくなったものが「オールドレンズ」です。

主にフィルム時代のレンズをそう呼びますが、最新レンズの高画質な描写とは違ったレトロな写りが人気でファンも多いのです。かくいう筆者もいくつかのオールドレンズを持っており、よく持ち出して使っています。

先日、東京のあるデパートで開催していた中古カメラ市でオールドレンズを入手したので、その使い方をレポートしてみたいと思います。

購入したのは、1970年代に登場した「smc PENTAX-M 1:1.7 50mm」という単焦点レンズ。ジャンク品という扱いで2,000円でした。ジャンク品というのは何らかの難があるアイテムで、レンズの場合はカビや曇りがあったり、リング類の回転が渋いものなどが多いのです。

そのぶん安いわけですが、件のレンズを手に取ってみると外観がジャンク品にしては綺麗で、ピントリングの動きもスムーズ。同じく絞りリングの回転やクリック感も問題無し。肝心の光学系はというと、蛍光灯に透かした感じでは目立ったカビや曇りは見当たりません。「このコンディションなら良いかな」と買うことに決めたのでした。

とは言え、ジャンクレンズというのは一見綺麗に見えても少しのカビや曇りはあるものと承知はしていました。家に帰ってライトで照らしてみると、やはり少しですが曇りがありました。ただ、この程度だと写りに大きくは影響しなさそうです。

マウントアダプターを購入する

オールドレンズをミラーレスカメラで使うには、カメラとレンズの橋渡しをする「マウントアダプター」というアイテムが必要になることがほとんどです。

筆者はソニーの「α7 III」を使っていて、ニコンやキヤノンのレンズを使うマウントアダプターは持っていましたが、ペンタックスのレンズを付けるアダプターは持っていません。

そこでK&F Conceptというメーカーの「PK-E」(KF06.445)というマウントアダプターを購入しました。箱には中国製とあり、価格は4,000円前後です。これで、先ほどのペンタックスKマウントレンズをソニーEマウントカメラに装着できます。

このマウントアダプターには電子接点がありませんが、元のレンズが電気を使わないマニュアルフォーカスレンズなので問題ありません。こうしたタイプのアダプターは、特に中国製が安価に購入できるのが嬉しいところです。

アダプター本体は2020年に外観がリニューアルされ、よくあるアダプターよりもモダンな印象のデザインになりました。カメラ側、レンズ側とも装着感は絶妙で、なかなか高精度に作られているようで安心しました。もちろん全体が金属製です。

レンズ取り外しボタンも金属製でしっかりしていた

カメラへの装着手順ですが、メーカーによるとレンズにアダプターを着けてから、それをカメラに装着すると説明されていました。

カメラに装着したところ

カメラ側の設定も必要

オールドレンズを使う際には、カメラ側を適切な設定にする必要があります。

まず、メニューにある「レンズなしレリーズ」という項目を「禁止」から「許可」に変更します。オールドレンズの場合、装着していてもカメラはレンズが付いていると認識できないので、「禁止」になっているとシャッターが切れません。

これで撮影が可能になります。マニュアルフォーカスレンズですから、もちろんピント合わせは手動です。ピントが合っているかわかりにくい場合は、拡大表示の機能を使うと良いでしょう。また、ピントの位置に色を出して知らせてくれる「ピーキング」という機能があるカメラも多いので、設定しておくと使い勝手が高まります。

今回のように絞りを鏡胴のリングで設定するレンズの場合、撮影モードは「A」(絞り優先)または「M」(マニュアル露出)が基本になります。Aモードであれば、絞りリングで設定した絞り値に合うようにシャッター速度が自動で決まります。シャッター速度が遅すぎるようでしたらISO感度を上げるか「ISO感度オート」にすれば良いでしょう。一方Mモードでは、シャッター速度も自分で決められます。

α7 IIIはボディ内手ブレ補正機能を搭載していて、オールドレンズでも有効なのがありがたいところ。構図を決めている段階のライブビューでも、シャッターを半押ししていれば手ブレ補正が効いて見やすくなります。ただし、レンズの焦点距離を自分で設定しておかなければならないので忘れないようにしましょう。

オールドレンズならではの写りを堪能!

さっそくα7 IIIとこのレンズで何枚か撮影してみました。オールドレンズは、特に絞り開放で撮影するとふわっとした独特の写りになることが多く、それが目当てで購入する人も少なくありません。そこで、開放絞りとなるF1.7を中心に使って見ました。

窓越しのショットですが、ボケも綺麗で柔らかい印象になりました。

α7 III / smc PENTAX-M 1:1.7 50mm / F1.7 / 1/1,000秒 / ISO 100

続いて神社の鈴に付いている紐。背景をかなりぼかして浮き立たせることができました。

α7 III / smc PENTAX-M 1:1.7 50mm / F1.7 / 1/200秒 / ISO 100

逆光では画面のコントラストが大きく低下しました。最新のレンズではこのようにはなりませんが、オールドレンズならではの写りとして楽しみたいところです。

α7 III / smc PENTAX-M 1:1.7 50mm / F1.7 / 1/1,000秒 / ISO 100

次も太陽光がレンズに当たっている状態です。オレンジ色のゴーストが写りました。ゴーストはレンズへの光の入り方によって写真上で発生するもので、実際にオレンジ色のものがここにあるわけではありません。ポートレートなどでゴーストを作画に生かすのも面白そうです。

α7 III / smc PENTAX-M 1:1.7 50mm / F1.7 / 1/400秒 / ISO 100

多くの単焦点レンズはF値の小ささ(明るさ)が特徴の1つで、明るいと前後のぼけが大きくなります。このレンズもF1.7と明るめなので、F値が暗くなりがちなズームレンズよりもぼけを出しやすいのもメリット。前ぼけを使えば見せたいものを強調できます。

α7 III / smc PENTAX-M 1:1.7 50mm / F1.7 / 1/500秒 / ISO 100

背景が細かい構造物だと、ボケはあまり綺麗とはいえずごちゃつきます。しかし見方を変えると、レトロな雰囲気の写りとしてこれもありかもしれません。

α7 III / smc PENTAX-M 1:1.7 50mm / F1.7 / 1/8,000秒 / ISO 100

絞り開放付近では画面周辺が暗くなります。ですが自然と中央に目が行く効果もあるので、マイナスばかりとも言えません。

α7 III / smc PENTAX-M 1:1.7 50mm / F1.7 / 1/200秒 / ISO 100

F8まで絞り込んでみたところ、かなりくっきりと写すことができました。現代でも十分通用する描写です。

α7 III / smc PENTAX-M 1:1.7 50mm / F8 / 1/250秒 / ISO 100

ハードルが下がったオールドレンズ遊び

今回試したようなオールドレンズでの撮影は、デジカメをお持ちならぜひチャレンジして欲しい遊びです。以前はマウントアダプターが高価だったり、海外製の安いものは精度が悪かったりで、オールドレンズを使うハードルはそれなりに高いものでした。

ところが最近は、海外製の安価なマウントアダプターが充実してきた上に、作りもしっかりしているようです。マウントアダプターのチェックポイントに「無限遠が出るか」というものがありますが、今回のアダプターはしっかりと無限遠にピントを合わせることができて安心しました。

まずはジャンクレンズからでも良いので、皆さんもマウントアダプターの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか?

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。