レビュー

快適な大画面と手書き入力「Kindle scribe」の魅力と可能性

Kindle scribe

アマゾンの電子書籍端末「Kindle」シリーズの最新モデルとして登場した「Kindle scribe」。最大の特徴はペンが付属して手書き入力に対応していることと、10.2型というKindle市場最大のディスプレイを採用していること。プレミアムペン付属の16GBモデル(51,980円)で、実際の使い勝手をチェックしてみた。

大画面で快適な電子書籍端末

Kindle scribeは、10.2型という大画面の電子ペーパーを搭載。ペンがなくても、最大クラスの画面サイズのKindleとしても利用できる。Kindleシリーズは6~7型程度で、基本的に縦持ちで1ページずつ読むことを想定したサイズだったが、10.2型であれば横持ちにして見開きでの読書も可能なサイズだ。

10.2型と大型の画面を搭載。片手でずっと持っているとさすがに疲れるレベルの重さだが、画面サイズが大きいので本が読みやすい。マンガや雑誌も読みやすいし、見開きでハードカバーを読むような感覚のサイズ

本体サイズは196×230×5.8mm(横×縦×厚み)で、6型のKindleと比べると、横持ちにした場合の横幅は倍以上のサイズ。6型Kindleを2つ並べると考えれば、見開きでも十分なサイズとなる。縦横のサイズは大きいが、厚みは8mm台の従来モデルに対して5.8mmと薄くなっている。

サイズが大きい分、薄型化が図られている
背面はフラット
背面にゴム足が4つ配置されていた

従来のKindleは、縦持ちにしたときに下側のベゼル幅が広く、手で持つ位置は下側が想定されていた。Kindle Oasisでその位置が側面に移り、Kindle scribeも片側側面のベゼル幅が広くなっている。

重さは433gとなり、Kindle Oasisよりも倍以上の重さ。片手で長時間の読書はちょっと難しい。このサイズだと両手で持って読書するといいだろう。

画面は従来通りの電子ペーパー。解像度は300ppiなので、精細な描写で見やすい。横持ちをして見開き表示にしても十分なサイズがあり、文庫本ぐらいの感覚で読める。対応している書籍であればフォントサイズの変更も可能なので、情報量は多い。

大画面なのでライブラリも見やすく探しやすい

マンガや雑誌を読む分にも十分なサイズ感。マンガであれば見開きでも十分読みやすく、雑誌なら縦持ちで単ページ表示の方が見やすいが、見開き表示にして小さな文字でも見やすい。

大画面なので、小説などのテキスト中心の本も読みやすいが、マンガ、雑誌で威力を発揮する

画面サイズが大きくなると電子書籍が読みやすくなるのは間違いない。持ち運びしにくくはなるのでトレードオフだが、電車内や外出先ではなく、自宅などで本を読むなら大画面のKindle scribeのメリットが遺憾なく発揮される。

大画面ながら、画面書き換えも高速で反応は良く、パフォーマンスは高いので不満は全く感じない。他社製品と比べても高速なので、読書が快適に行なえる。このあたりの使い勝手は最近のKindle端末と同様だろう。

ペンで手書き入力

大画面に加えた特徴がペンの搭載だ。Kindleシリーズとしては初めてのペンによる手書き対応で、メモ取りなどで手書き入力が可能になる。

ペンでのタッチ操作と手書き入力が可能。これはプレミアムペン

付属のペンは「スタンダードペン」と「プレミアムペン」が選択可能となっており、購入すればすぐさま手書きが使える。プレミアムペンには、ペン先の反対側に消しゴム機能が用意されていて、ペンをひっくり返すだけで素早く書き込み内容を消すことができる。

ペンにはボタンを搭載。押しながら書き込むと、指定の機能が動作する
ボタンの設定。ハイライトや消しゴムなどが選べる
プレミアムペンには消しゴム機能を内蔵

専用ペンはどちらもマグネットを搭載。Kindle scribeの側面のマグネットに取り付けられる。特に無線機能を使っているわけではないので、充電やペアリングは不要だ。

ペンに関しては、スマートフォンの「Galaxy」シリーズの一部で使われる「Sペン」と互換性がある。試したところ、Galaxy NoteシリーズのSペンだとそのまま手書きが可能だったが、Galaxy Z FoldシリーズのSペン(「S Pen Fold Edition」)は手書きではなく消しゴム機能として動作した。「S Pen Pro」だと、Z Foldモードでは消しゴム、Noteモードではペン先として動作していた。

プレミアムペンとSペンには互換性があった
プレミアムペンでの手書きだけでなく、Sペンでも手書きやハイライトが可能

いずれにしても、付属ペン以外にSペンが使えたのは少し意外だったが、書き味に関してはどちらも同程度の感覚で、書きやすかった。ちなみにKindle scribeのプレミアムペンは、Galaxy Z Foldだと非対応のペンとして警告が出たが、Galaxy Noteだと問題なく利用できた。

今回テストしたのはプレミアムペンだが、書き味は良好で、電子ペーパーながら追従性は高く、細かな描写も十分可能。筆圧検知はないようだが、快適な手書きが可能だった。

使い方としては、ライブラリに保存したPDFなどのファイルに手書きでメモを書き込む、マーカーを引くといった用途に使える。読書用だけでなく、仕事の資料などをライブラリに保存しておけば、資料への手書きもしやすい。

ただ、PDFへの手書きしたものは、そのまま保存されるわけではないようで、他のスマートフォンのKindleアプリなどで確認しようとしても反映されなかった。基本的にはKindle scribe内で確認するという感じになる。

もう1つはKindle本への書き込み。マンガや雑誌など一部非対応のコンテンツはあるが、テキストをハイライトしてメモを書き込む際に、キーボードからテキスト入力に加え、手書き入力も可能になる。挿絵など任意の場所をタッチして付箋を加える場合にも手書きが使える。

Kindle scribeでは対応するKindle本でスタイラスツールバーが表示される。赤枠で囲った付箋マークをタッチすると手書きメモを書き込める。テキストをハイライトするか、任意の場所をタッチすれば書き込み画面になる
手書きメモの書き込み。テキストメモも可能で、テキストは他の環境にも同期される

ハイライトとキーボードのメモはスマホアプリなど他の環境にも反映されるが、手書きメモは反映されないようだ。このあたりは残念なところで、特にペンの互換性があるGalaxy Note / Z Foldあたりは同様に手書きメモが使えれば便利そうだ。

手書きメモは後から一覧で確認し、該当する文章にジャンプできる
別の端末のKindle for Androidで該当するメモを見ても手書きは表示されない

さらに手書きノート機能も搭載している。新たに「ノートブック」が用意され、白紙のノートに手書きで書き込むことができる。18種類のノートテンプレートが用意され、通常の罫線を引いたノートからスケジュール帳、ToDoリストなど、用途に合わせてノートを作成できる。

新搭載のノートブック
18種類のテンプレートからノートの体裁を選び、手書きノートが作成できる
手書きノート

書き込んだノートはKindleアプリ内で同期され、他のデバイスでも内容を確認できる。ただし、編集はできず、他のデバイスではノートの作成もできない。このあたりも残念なところ。Kindleアプリ以外では、メール送信での共有も可能で、PDFファイルとしてノートが送信される。

Kindle for Androidアプリにも同期されるが、内容の確認しかできない

画面が大きく、反応もいいので、手書き入力だけでなくイラストを使った書き込みも快適にできるので、用途は様々に使えそうだ。

快適な読書が可能な大画面Kindle

電子ペーパー搭載のデバイスでは、ファーウェイの「MatePad Paper」が近い。10.3型とわずかに大きいが、ほぼ同サイズ。ペンを使った手書きにも対応しているという点は共通している。

10.3型電子ペーパーにペン対応のHUAWEI MatePad Paper(右)。電子書籍端末というよりは電子ペーパー搭載タブレット

基本的に、アプリによる機能拡張やノートアプリでの音声録音や手書き文字のテキスト変換(日本語対応)、マルチタスクによる複数アプリの起動など、機能としてはMatePad Paperの方が高機能だが、電子書籍端末としてはリフレッシュがより高速で読みやすく、ペンの書き味もKindle scribeの方が「紙の感触に近くて上」という印象だ。

より高機能で手書きメモをテキスト変換してテキストデータやPDFなどで共有できるといった、再利用のしやすいMatePad Paperも魅力で、音声録音と合わせて会議録などを作るという使い方ができる。

それに対してKindle scribeは、Kindle本を快適に読める電子書籍端末としての性能と、書き味の良い手書きメモが魅力。一番大きいKindleとしても十分魅力的だが、他の端末との連携がもう少し強化されればさらに魅力が高まりそうだ。

小山安博