レビュー
油性・水性・ゲルボールペンを比較。同じ0.5mmでも太さが違う?
2019年12月3日 08:15
三菱鉛筆が12月に油性ボールペンでは世界初のボール径0.28mmのペン先を備えた「ジェットストリーム エッジ」を発売するというニュースを取り上げた。「油性で0.28mmの超極細」と言われても、ボールペンにこだわりが無い人から見れば、正直しっくりこないのではないだろうか。筆者もピンとこなかった1人だ。
「丈夫なペン先ができたんだな、ゲルだと普通に0.28mmあるし」といった感想だったのだが、久々にボール径0.5mmの油性ボールペンを使ってみると、引いた線がだいぶ細い。筆者が普段使っているゲルインクのボールペンは、油性よりも粘度が低く、若干線が太くなることは理解していたのだが、あまりにも差があるように感じた。実際に並べて比較してみたくなり、メーカーやインクの種類が異なる9本のボールペンを用意。KOKUYO MEのノートブックとコピー用紙で書き味や筆跡、裏抜けなどを比べてみた。
用意したボールペンは、KOKUYO MEのボールペン(230円)、ゼブラのSurari(100円)、SARASA CLIP(100円)、PILOTのアクロボール(150円)、Vコーン(100円)、フリクションボールノック(230円)、三菱鉛筆のuni JETSTREAM スタンダード(150円)、uni-ball AIR(200円)、uni-ball Signo(uni STYLE FIT/130円)。
ボール径は0.5mm、インク色は黒で揃えている。選定方法は、東急ハンズで売っていた200円台までのものを適当に購入。
同じ0.5mmなのに線の太さがかなり違う
インクの種類を紹介する前に、まずは9本すべてをノートに書いてみたものを見て欲しい。線で並べてみると、同じボール径0.5mmでも太さや濃さに差があることがわかる。裏面を見てみると、裏抜けはしていないものの、KOKUYO MEのボールペンとuni-ball AIRが若干目立って見える。
インクの種類は耐水性や耐光性がある「油性インク」、粘度が低くさらさらとした書き味の「水性インク」、水性よりも滲みにくく油性よりも書き味の軽い「ゲルインク」。基本はこの3種類。
今回用意したボールペンでは、ZEBRAのSurari、PILOTのAcroball、三菱鉛筆のuni JETSTREAM スタンダードが油性インク。PILOTのVコーン、三菱鉛筆のuni-ball AIRが水性インク。KOKUYO MEのボールペンとZEBRAのSARASA CLIP、PILOTのフリクションボール、三菱鉛筆のuni-ball Signoがゲルインク。ノートで比べたモノを見返すと、水性・ゲルの違いはわかりにくいが、油性は線が細くてわかりやすい。
次に、インクの種類ごとに分けて比較。書き味などについても比べてみた。同じ種類のインク同士ではとくに違いはないだろうと予想していたのだが、色の濃さやインクののり方が若干違っていて面白い結果になった。
油性ボールペン3種で比較
まずは油性ボールペンから。水性やゲルと比べると書くのにある程度筆圧が必要。細くはっきりした線が書けるのが特徴で、水に滲まず、日焼けにも強い。今回用意したものは、油性インクのデメリットである擦れやインク溜まり等を解決するために各メーカーが開発した粘度の低いインクが使用されているもの。
ゼブラのSurariは「エマルジョンインク」、PILOTのAcroballは「アクロインキ」、三菱鉛筆のuni JETSTREAM スタンダードは「ジェットストリームインク」を搭載。メーカーによっては油性インクとは別のカテゴリーとされているが、ここではこの3本を油性インクとして扱う。
書き心地は軽さ順に並べるとSurari、JETSTREAM、Acroball。インクの濃さだとこの並びが逆転する。Surariは書き始めに若干インク溜まりができ、AcroballとJETSTREAMは力を入れないと若干擦れる。裏抜けは3本ともしていない。自然と指に力が入るため、インクの性質よりもグリップの握り心地で選ぶ方が良さそうな印象。筆者の場合は、この中だとSurariのグリップが握りやすかった。
水性ボールペン2種で比較
次に水性ボールペン。利点は軽い力でさらさらと書けること。一方で、紙の質によっては滲んだり、乾きにくかったりする弱点がある。uni-ball AIRとVコーンで比べてみる。書いてみると、uni-ball AIRがやや滲む。にじみや裏抜けを気にしなくていいアイデア出しのメモなどで快適に使えそうだ。
どちらも軽い書き味だが、ペン先が柔らかい仕様のuni-ball AIRがとくに軽い。紙に触れただけですぐにインクがにじみ出てしまうため、細かい文字を書くのには向かないが、大量に文字を書くときなどに手首への負担がかかりにくい。なお、水性ボールペンが2本だけなのは、売り場で見つからなかったため。メーカーのサイトを見ても、水性インクの商品はやや少なめだ。
ゲルインクボールペン4種で比較
ゲルインクは、油性よりも軽い書き味で、水性よりもインクが早く乾き、滲まずに書けるのが利点。カラーのラインナップが豊富で、ペン売り場で1番目立っているように思う。ゲルインクも厳密には水性に属するのだが、ここでは「ゲル・ジェル」と表記されているモノをゲルインクとして扱う。KOKUYO MEのボールペンとZEBRAのSARASA CLIP、PILOTのフリクションボール、三菱鉛筆のuni-ball Signoで比べてみる。
書き心地では、最もなめらかなのがKOKUYO MEのボールペン、次にフリクション、SARASA CLIP、uni-ball Signoの順で堅くなっているように感じた。線を比べてみても、KOKUYO MEのボールペンが一番太く、なめらかさと同じ順番でuni-ball Signoが一番細くなっているように見える。また、消せるボールペンのフリクションはインクの色が薄い。
コピー用紙で比較。水性が滲んでインクの差が明確に
インクごとに紹介したのを踏まえて、最後にコピー用紙に書いて比べてみた。油性の3本はあまりノートとの差が見られないが、水性のuni-ball AIRは、はっきりと滲んでいる様子が見えた。裏抜けも少ししているので、コピー用紙の両面を使う場合には適さないようだ。同じく水性のVコーンも、裏抜けはしないものの滲んでいる。ゲルインクもノートのときとあまり変わらず、KOKUYO MEのボールペンが裏から見るとやや目立つ。
ノートとコピー用紙で書き比べても、「水性インクだと少し滲むな」程度の結果にしかならないだろうと予想していたが、比較してみて油性インクとゲルインクの線の太さの違いがあることを改めて実感できた。文房具売り場の試し書きでも、インクの種類ごとに売り場が離れていて、並べて比較するといった機会はあまりないように思う。
ボールペンの選び方といえば、こだわりがなければ適当に目に入ったモノ、安価なモノ、転写する伝票用に油性のモノ、カラーが豊富なゲルなどといったことがほとんどだと思うが、インクの特性がわかるとまた少しボールペンの印象が変わるのではないだろうか。
今回は一般的なノートとコピー用紙を使ったが、手帳に使われている紙や、裏抜けしにくい紙など、特徴を持った紙との組み合わせで比較すると違った特徴の差が見えたり、実用性に繋がったりしそうだ。またの機会に試してみたい。