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これが宅配ボックス決定版? パナソニックの「COMBO-Light」

パナソニックの宅配ボックス「COMBO-Light」

パナソニックといえば、日本に住むほとんどの人がお世話になっている家電・住設メーカーに違いない。壁面スイッチや電源コンセントをはじめ、住まいの大事なところをさりげなく支えていたりする。住宅用の宅配ボックスも以前からラインアップしていたが、これまでは新築の戸建や集合住宅向けが中心で、製品本体+設置費用で1台10万円以上というのがだいたいの相場。信頼性や機能性は高いが、お値段もそれ相応だったわけだ。

一方で、最近はいろいろなメーカーから安価に導入できる簡易的な宅配ボックスが続々と登場している。設置工事を業者に依頼することなく、自宅に宅配ボックスを気軽に置ける時代になりつつあるのだ。そんななか、パナソニックも10月21日に、満を持して安価なモデルを発売するに至った。

ミドルタイプが39,800円、ラージタイプが49,800円という戦略的な価格の「COMBO-Light」がそれ。大手メーカーのリーズナブルな宅配ボックスの登場で、いよいよ家庭への普及が一気に進むのか。今回はラージサイズをお借りして、その使い勝手を確かめてみた。

ラージタイプ「デカい!」。設置はアンカーか接着剤で

パナソニックの「COMBO-Light」は、同社の新築戸建物件向け製品「COMBO」シリーズのいわば「簡易版」に当たるもの。同じく戸建物件向けながら主に後付を想定した製品で、ミドルタイプとラージタイプの2種類が用意されている。新築向けは金属外装のものが多いのに対して、COMBO-Lightは樹脂素材を用いている点が一番の目立つ違いとなっている。

ミドルタイプは収納容量が310×400×500mm(幅×奥行き✕高さ)、最大収納重量が20kg、ラージタイプは310×400×700mm(同)で25kg。幅・奥行きは変わらないものの、高さ方向に20cm広がっているのがラージタイプの利点だ。

大容量のラージタイプ

高さだけとはいえ、今回お借りしたラージタイプは、自宅に届いたそれを目にした瞬間「デカい!」と目をむくような大きさ。大部分が樹脂なので、見た目に反して重量はそれほどでもないが、思った以上に容量に余裕がありそう。樹脂外装の素材にもチープさはあまり感じられず、雨風が当たる場所でも長く使えそうな印象だ。

自宅に届いた梱包状態のラージタイプ。なかなかに威圧感がある
普段使用している宅配ボックス「スマポ」(左)と比較。ラージタイプはスマポのポストタイプと宅配ボックスタイプの2つを合わせたくらいの大きさだ
左がCOMBO-Light
奥行きはCOMBO-Light(奥)の方が深い
背面はツヤがある。ここも含め、外装はほとんどすべてが樹脂素材
底面。固定設置時に使う穴が見える
玄関前に仮置きしてみた
中サイズ1個と小サイズ2個のダンボールが収まった
スマポの宅配ボックスタイプでは微妙に入らなかった水2リットル×9本の箱も余裕で収納。あと1箱分以上のスペースが余っている(2箱入れると重量オーバーになるので注意)

設置は専門業者に依頼する必要はなく、最低限のDIYの知識があれば自分でできる。玄関先にベタ置きするだけで使いはじめることもできるし、軽量なので宅配ボックス自体が風で動いたり、盗難されたりするのが心配なら、別売の「据え置き施工用ベース」(9,500円)などと組み合わせてアンカーや接着剤で固定して使うのもいい。

付属品と別売の「据え置き施工用ベース」(左端)
据え置き施工用ベースはCOMBO-Light本体の底面にネジ留めして使う

アンカーを使った固定は、コンクリートに下穴を作るための工具が必要になるので、万人におすすめできる手軽な方法ではない。簡単なのは、対金属・コンクリート・石材用の強力な接着剤(別売)を使った固定方法だ。

本体底面に据え置き施工用ベースをネジで固定した後、地面に接着剤を塗布してその上にベースごと載せ、24時間ほど待てば完成となる。このあたりの固定設置の作業は業者に頼むほどではないとはいえ、それなりに手間のかかる部分ではある(COMBO-Lightに限った話ではないが)。いったん設置したら移動するのは困難なので、思い切りも必要だ。

接着剤を使うときは、このネジを本体内部の底から差し込み、据え置き施工用ベースと固定する
本体に固定したところ
別売の接着剤
コンクリートなどに一度接着すると外すのは難しい。設置場所はよく考えよう

1アクションで押印&ロックできる、シンプルで安全な機構

COMBO-Lightの特徴は、シンプルな使い勝手に加えて、個人宅の宅配ボックスの課題の1つであるハンコの盗難対策が施されていること。扉の裏側にあるロック機構のカバーを開けると、ハンコを固定できる場所がある。ここにハンコをセットしたら再びカバーを閉じてしまうので、ハンコが内蔵されていることは傍目にはわからない。

宅配ボックス内にハンコを無防備に置いてある状態だと不安だが、COMBO-Lightの場合はわざわざドライバーを使ってネジを外さないとハンコにアクセスできないため、盗難に対してはある程度抑止力が働くと期待できる。そもそも宅配物受け取り専用のハンコにしておけば、盗難されたところで悪用される心配はあまりないのだけれど。

それはともかく、ハンコをセットしたら、荷物の受け入れ準備も完了。あとは宅配物が届くのを待つだけだ。

取っ手をつかんで扉を開ける
扉の裏側にあるロック機構部分のカバー。使い方の説明もある
ネジ留めされているカバーを外したところ
シヤチハタ ネーム9を用意。キャップは外しておく
Shachihataのロゴが上に向くようにセットすると、伝票にまっすぐ押印する形になる、はず

荷物を届けに来た宅配業者の人は、無施錠状態の宅配ボックスを開け、荷物を中に入れた後、扉の裏側のレバーを動かす(押印の操作ができる状態にする)。扉を閉めて取っ手に設けられたスリットに受け取り伝票を差し込み、ロックボタンを押し下げれば、収納しているハンコが動いて伝票に押印し、同時に扉のロックがかかる仕組みになっている。あとは、ユーザー側が付属の鍵で解錠して宅配ボックスに届いた荷物を受け取るだけだ。

荷物を入れたらレバーを手前に起こす
伝票を差し込んでボタンを押し下げる
ロックされ、同時に伝票に押印される

ただ、個人的にネックに感じるのが、対応するハンコが「シヤチハタ ネーム9」に限定されていること。筆者がすでに他の宅配ボックスで利用していた印面シャッター付きのシヤチハタは使えず、新たに注文しなければならなかった。スタンダードな「ネーム9」にはシャッターがなく、COMBO-Lightへの取り付け時にはキャップを外しておかなければならないため、インクの揮発が早まるのではないかと心配になる。

パナソニックとしては、ハンコを十分な期間使えると判断してこのような設計にしているのだと思うけれど、屋外に設置するものだけに、インクの乾燥、揮発が気になる。できればもう少しハンコの対応範囲を広げてほしかったところではあるのだが……。

シヤチハタ ネーム9のみ対応。名前を印字する場合は注文してから届くまで1週間はかかるので、あらかじめ用意しておくべし(11月現在、ミドルタイプの購入時にシヤチハタ ネーム9が付属するキャンペーンも実施)
ちなみにロックしなくても、マグネットが内蔵されているのかピタッと締まるようになっている

ラージはベストな選択だが、買い物スタイルによってはミドル複数台も

信頼性の高いパナソニックの宅配ボックスであり、デザインバリエーションが豊富で質感も良く、大容量のラージタイプを選べることもあって、いろいろな面で安心感は高い。特に、現状は他社の安価な宅配ボックスのなかに、ラージタイプクラスの製品がほぼ見当たらないことからも、「不在時受け取り用」の宅配ボックスとしては、この価格帯ではベストな選択肢のように思う。

内部には段差がある。隙間から入り込んだ雨が荷物を濡らすことを防いでくれているようだ。こうした細かい気配りもうれしい
デザインバリエーションはミドル、ラージそれぞれ6種類。自宅の外観や好みに合うものを選べる

宅配ボックスの場合、大きければ大きいほど受け入れ可能な荷物の範囲が広がり、「大は小を兼ねる」の理論がそのまま当てはまる。荷物の幅、奥行き、高さのいずれかがわずかでもオーバーして収納できず、再配達になってしまえば、宅配ボックスを設置する意味は薄くなってしまう。普段、大きな荷物を受け取る頻度が少ないとしても、設置スペースに問題がないならラージタイプを選ばない理由はない。

ただし、導入にあたってはあらかじめ頭に入れておくべき注意点もある。

1つは、COMBO-Lightはシリンダー錠のモデルしかラインアップしておらず、仕組み上、受け取り専用の宅配ボックスになること。もしダイヤル錠であれば、ヤマト運輸を利用して、宅配ボックスから荷物を発送することも可能だが……。受け取りも発送もしたい、という人は、発送に対応する他の宅配ボックスの組み合わせも考えた方が良いだろう。

次に、これもシリンダー錠の簡易的な宅配ボックスであるがゆえに、いくら容量に余裕があっても、というか、余裕がありすぎるだけに、宅配物が1個しか受け取れないジレンマを感じやすい。小~中型の荷物が一度に届いて、容量的にはそれら複数個を同時に収納できるとしても、受け取れるのはどれか1個のみ(伝票1枚にひも付く荷物しか原則受け取れない)。ロックを兼ねた押印操作は(いったん解錠しない限り)1回きりだからだ。後から来た宅配物も、もちろん受け取り不可となる。

日中に届き、夜に受け取った細長い宅配物。こういったイレギュラーな形の荷物も受け取れるのはありがたいが、もっとこの大容量を有効活用したい、という欲が出てくる……

現在は手書きサインのみになっている佐川急便のように、受け取り時にハンコを使わない宅配業者であれば、複数個を一度に受け取れる。けれども、それ以外の多くの宅配業者のことも考えると、COMBO-Lightでこの問題を根本的に解決するには複数台設置するしかない、という結論に行き着く。

なので、サイズより数を重視したいのであれば、むしろ1万円安価なミドルタイプを複数用意する、という考え方も大いにアリ。細かな荷物が頻繁に届くのか、とにかく大きな荷物を受け取れるようにしたいのか、ネット通販の利用スタイルによってミドルタイプとラージタイプのどちらにするか決めるのが良さそうだ。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。