レビュー

無くして気づく紛失防止タグの魅力。「MAMORIO」のありがたみ

最近のスマートフォンは「iPhoneを探す」「Androidを探す」といった、紛失した時に場所を探し出せる捜索機能が標準となっている。しかし、携帯電話回線機能を持ち、常にバッテリーがオンになっているスマホだからできる話。そうではない機器を紛失したときは、自分の記憶から場所を特定するしかない。

携帯電話回線を持っていない製品でも場所を探したい、という時のためのガジェットが紛失防止タグだ。TileやMAMORIOなど、いくつかの製品が販売されているが、基本的な仕様はほぼ共通。スマホとタグはBLE(Bluetooth Low Energy)で接続しておき、BLEの接続が切れることで「スマホと離れた」=紛失した、と見なし、その位置を地図上で確認できる、という仕組みだ。

紛失防止タグを利用中に財布を紛失したことでそのありがたさを痛感

筆者が紛失防止タグを使い始めたのは、とあるイベントのキャンペーンでTileが非常に安価で販売されていたのがきっかけだった。しかし現在MAMORIOを利用しているのは、その後Tileを入れた財布を紛失するという事態を体験したことで紛失防止タグの重要性を痛感したこと、そして新しく買うなら違う製品を体験してみたい、という理由だ。

5月に発売された最新の「MAMORIO(MAM-003)」は、デザインはそのままで、電波の発信頻度や飛距離、電池寿命などの基本性能を向上している。価格は2,480円(税込)。

MAMORIO。厚みは10円玉2枚程度
裏面は白地

財布に限らず何かを紛失したときは、まずどこで紛失した可能性があるかを必死に思い出し、心当たりのあるお店に電話したり、自宅とオフィスを交互に探してみたり、という手間がかかるし、見つかるかどうかわからないものを探す時の精神的負担も大きい。

しかし、紛失防止タグがあれば完全ではないもののかなりの精度で場所を特定でき、捜索のための工数を圧倒的に削減できる。紛失防止タグは「ものを無くさないため」の製品だが、いざ紛失した時に「取るべき行動を明確化できる」というのも隠れたメリットだな、と実感した。

なお、余談ながらTileのデータによれば財布を紛失したのは山手線の線路の上だった。該当の時間は山手線に乗車して移動中であり、目的地に着くまで自分の鞄を一度も開けていなかったことから、今回の紛失は落とした、置き忘れたというよりも盗難に遭った可能性が高そうだ。日本は安全だという思い込みから油断していた部分もあったが、紛失はもちろん盗難についても意識を高めるべき、といういい経験になった。

メーカーによっては他のユーザーや施設などがタグの電波を拾うことで紛失場所を特定するというサービスも提供している。MAMORIOの「みんなでさがす」「MAMORIO Spot」、Tileのコミュニティー機能などがそれだ。こうした機能はユーザーや設置場所が増えれば増えるほど見つかる可能性があるため、「利用ユーザーの多さ」も製品を購入する際の理由の1つになる。

今回MAMORIOを選んだ理由は、前述の「MAMORIO Spot」がJR東日本にも導入されているというニュースを見て、まさにJR乗車中に財布を紛失した身としては魅力的に映ったこと、そしてラインアップが多彩なことが決め手だった。

シール型など充実したラインアップが魅力のMAMORIO

少し話がそれるが、紛失した財布を新調する時に改めて考えたのが財布の大きさだ。キャッシュレス推進派の自分としては、ここ最近現金を使う機会はめっきり減ってきた。また、クレジットカードや身分証については再発行手続きの煩雑さや、利用する際も財布やスマートフォンに比べると即時性もさほど高くないといった理由から、「財布には必要最低限の現金とカードだけ入る小さいものにしておき、その他カード類は別のケースに入れて紛失しにくい場所にしまっておく」という運用をすることにした。

最近購入した財布。カードは3枚程度しか入らないサイズ

そして財布を小さくした結果難しくなったのが紛失防止タグの収納場所だ。普通なら小銭入れ部分に入れておけばいいのだが、購入した財布は小銭入れ部分が小さく、タグを入れるとただでさえあまり入らない小銭がますます入らなくなってしまう。

財布が小さくなったことで紛失防止タグを入れる場所に困る

とはいえ紛失時の対策を考えて紛失防止タグは財布に入れておきたい、というときに見つけたのが、シールタイプの「MAMORIO FUDA」(2,865円/税込)だ。

写真を見てもらうと分かるが、購入した財布は折りたたむと中間に隙間ができる。この隙間にMAMORIO FUDAを貼ればいいのでは……、と勢いで買ってみたところ、思惑通りに設置することができ、財布の小銭入れスペースを減らさずに済んだ。

財布以外に鞄にも紛失防止タグをつけておきたいが、こちらは財布ほどスペースを気にしなくてよいため通常モデルを購入。日常的に持ち歩くもので紛失が恐いのは主にこの2つのため、MAMORIO FUDAとMAMORIOの2つを購入することにした。

財布を折りたたむと隙間ができる
隙間の部分にMAMORIO FUDAをぴったり配置できた

MAMORIOの通常モデルは第3世代となる新製品が発売されたばかり。基本的な機能は従来モデルと変わらないが、電波の発信頻度や飛距離、電池寿命といった機能が向上し、価格も2,480円(税込)と、1,500円近く安価になった。ただし、現在は切り替えタイミングのためか、第2世代製品をそのまま販売している店舗もあるようだ。違いは価格のほか、本体カラーのラインアップなど。購入時にはよく確認して欲しい。

左が第2世代、右が第3世代のMAMORIO。第2世代は原色系、第3世代はパステル系のカラー

設定はシンプル。通知はややわずらわしいがありがたい存在

設定はとてもシンプル。専用アプリをスマートフォンにインストールし、メールアドレスを登録して新規アカウントを作成したら、MAMORIOの絶縁シートを抜いて電源をオンにした状態でスマホアプリからMAMORIOを登録。カテゴリーや名前などを設定したら、あとは紛失したくないものにMAMORIOを付けておくだけだ。

メールアドレスを登録→MAMORIOをアプリに登録→絶縁シートを抜いてMAMORIOをオンにする
名前やカテゴリを設定して登録完了

スマートフォンとMAMORIOの距離が離れると「手元にありますか?」という通知が表示される。以前に使っていたTileはこうした通知機能がなく、紛失に気がついてからスマホを確認する、という仕様だったので、この点は大きな違いだ。

手元を離れると通知が来る
どのあたりで手元を離れたのかを地図で確認
履歴も確認できる

通知機能は紛失防止という主たる目的のためには便利だ。しかし、食事で財布や鞄を持たず外に出たり、トイレに行くだけでも通知が来るのはややわずらわしい面もある。MAMORIOには、スマホが家庭や職場のWi-Fiに接続している間は紛失通知を送らない、というモードもあるが、これだとスマホを持って外出したときにはあまり意味がない。

特定のWi-Fi接続時に通知しない設定が可能

通知をオフにする機能もあるが、オフにしてしまうと大事な時の通知がなくなってしまうのも悩みどころだ。「一定時間は通知をオフ」「指定した時間帯は通知をオフ」などの機能が欲しいところだ。

個別に通知オフもできる

とはいえ、通知機能があるおかげで、スマートフォンを見るだけで紛失に気がつけるのは大きなメリット。Tileにはこうした通知機能がなかったため、翌日まで紛失に気がつかず終わってしまったという苦い経験もあり、通知は基本的に常時オンにしている。

バッテリー消費の大きさは課題

また、バッテリーの消費も課題だ。最初は手持ちのAndroidにインストールして使っていたのだが、あまりにバッテリーの減りが早くなったため「これはMAMORIOの影響では」と思い、動作モードを「省電力モード」にしてみたのだがあまり効果がない。仕方なくいったんアンインストールしたところ、バッテリーの減り方は以前程度に戻った。

検証のためにOSを初期化してMAMORIOだけをインストールしたAndroidスマートフォンを用意し、ほぼ使わない状態で常に持ち歩くことでMAMORIOインストール時とアンインストール時で比較したところ、アンインストール時は24時間経過しても75%近くバッテリーが残っていたのだが、インストール時は24時間でバッテリーが50%以下、悪いときはほぼ空になっていた。

移動中の通信状況でもバッテリー持ちは変化するためあまり正確なテストとは言えないものの、バッテリー消費に少なからず影響を与えているようだ。

そのため現在はAndroidではなくサブ機のiPhoneに設定して使っている。iPhoneについては上記のようなテストはできていないが、Androidに比べると、MAMORIOを使ってもバッテリーの減りはそこまで変わらない感覚だ。常にアプリがバックグラウンドで動作できるAndroidは、iPhoneよりもバッテリーが減りやすいのかもしれない。

また、iOSの場合はAR技術を用いて周囲のMAMORIOをカメラで探し出せる「カメラで探す」という機能も提供されている。実際に試したところ、場所はかなり大まかではあるものの方向は非常に近く、広い場所での捜索には役に立ちそうだ。

ARアプリで場所を検索

「どこで紛失したか」を特定できるありがたさ

実際に紛失したことでそのありがたみを痛感した紛失防止タグ。バッテリーの消費が気になる、通知がやや煩わしいという課題はあるものの、実際に紛失したほうがダメージは大きい、ということを身をもって体験しているだけに、今後も使い続けたい。

MAMORIOの場合、上記で紹介した機能に加えて、初回利用から180日経つと割引価格で新品に交換できる「OTAKIAGE」というユニークなサービスも定期用している。MAMORIOは電池内蔵で自分では交換できないため、電池が切れたら新品を買うしかないのだが、既存ユーザーであれば安価に入手できるというのは非常にありがたい。

紛失防止タグを装着したからといって紛失を本当に防ぐことができるわけではないのだが、手元から離れたことを教えてくれること、そして紛失に気がついた時に「どこで紛失したか」をある程度特定できる便利さは一度体験するとやめられない。紛失は二度と体験したくないが、万が一の時に備えて貴重品には設定しておくことをお勧めしたい。

甲斐祐樹

Impress Watch記者から現在はフリーライターに。Watch時代にネットワーク関連を担当していたこともあり、動画配信サービスやスマートスピーカーなどが興味分野。ライター以外にも家電ベンチャー「Shiftall」スタッフとして活動中。個人ブログは「カイ士伝