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衰えぬビットコイン まもなく迎える“半減期”とは? 現物資産と融合にも注目

ビットコインがまもなく4回目の半減期を迎える。ビットコインのプログラムの上ではあらかじめ仕組まれているもので、マイルストーンとしてさまざまに解釈され、値動きも予想されるイベントとなる。

ビットコインの半減期にまつわる動向、そして2024年の暗号資産市場の展望について、Binance Japanが説明会を開催し、代表取締役の千野剛司氏が解説した。

世界初の暗号資産として2009年に発表されたビットコインは、現在も暗号資産の市場で50%以上のシェアを占める中心的な存在。高いボラティリティ(価格の上下動、流動性)がありながらも価格は上昇傾向にあり、直近の3月14日には日本円換算で1BTCが1,080万円を記録するなどしている。

ビットコイン半減期とは

ビットコインの“半減期”とは、ビットコインマイナー(ビットコインネットワークの取引の検証にコンピューティング・リソースを提供し、ビットコインを報酬として得る人や事業者)が受け取る報酬のビットコインが半分になるタイミングを指したもの。ビットコインは最初から、発行枚数の上限が2,100万枚と決められている。マイナーの1ブロックあたりの報酬は21万ブロック毎に半減する仕組みで、第1回目は2012年11月、2回目は2016年7月、3回目は2020年5月だった。21万ブロックのマイニングにはおおよそ4年かかっているため、4年周期のイベントになっている。2024年4月16日時点では1ブロックにつき6.25BTCの報酬を受け取れるが、まもなくとされる4回目の半減期を迎えると、報酬は3.125BTCになる。なお、ビットコインの発行枚数の上限である2,100万枚には2140年ごろに到達するとされている。

希少価値が高まることへの期待

では“半減期”のなにがイベントなのか。マイナーにとっては単純に報酬が半分になるため、事業規模や直近の収益性によっては、ビジネスモデルを見直したり、マイニング事業から撤退したりすることも現実的な選択肢になる可能性があり、ポジティブなイベントとはいい難い。

一方、ビットコインを売買する市場の参加者、特に暗号資産に明るい人にとっては、半減期は、ビットコインが破綻せずプログラム通り進行しているという進捗を確認するマイルストーンであり、“お祝いのイベント”として受け止められているという。

過去3回の半減期の後には、いずれでもビットコインは値上がりしたほか、「1年後には価格が相当に上昇している」(千野氏)といい、長期的な価格上昇のきっかけになっているとする。もっとも、千野氏によれば、半減期でビットコインの価格が上昇する“明確な理屈”はなく「お祝いムードではないか」としている。

ただ一般的には、マイナー報酬が半分になることで市場に供給されるビットコインの量が少なくなる(ペースが落ちる)ため、既存のビットコインの希少価値が高まることへの期待感が、半減期の価格上昇の要因とする見方が多い。またそうした価格上昇を見越して参入する投資家が増えることも価格上昇の一因とする意見もある。結果的に半減期は、供給の大幅な変化、需要の拡大、心理的要因も絡んだ、複雑な理由で価格の上下動が起こるイベントになっている。

今回の半減期がこれまでと異なる点

4回目となる今回の半減期は、これまでの半減期とは違う動向や環境も指摘されている。

まず、ビットコインは2023年後半から価格の上昇が続いており、4月時点で過去最高値の水準。こうした最高値付近で半減期を迎える状況は、過去になかった形となる。

もうひとつは、米国にてビットコイン現物ETF(上場投資信託)が承認されるなど、機関投資家からも資金流入が増大している状況が挙げられる。ビットコイン現物ETFは、投資家が株式市場を通じてビットコインに投資(保有)できるようになるため、ビットコインへの投資機会を拡大している。またビットコイン現物ETFで最初に承認されたのは大手のブラックロックの商品であり、ETFに限らず、“オルタナ資産”としてビットコインが伝統的な機関投資家の投資対象、関心の受け皿になっていることも、これまでと異なる状況となる。

半減期を迎えた後、これまでのように価格が上昇するかどうかは「神のみぞ知る」(千野氏)とするが、市場の環境やプレイヤーは従来と異なり、需要を刺激する材料も揃っている状況で、その動向に注目が集まっている。

本格化する現物との融合、RWA(リアルワールドアセット)

4回目の半減期を迎えるにあたってもうひとつ、従来と異なる状況がある。それは、ビットコインに対し、これまで本格的には普及できていなかったスマートコントラクトを搭載する技術など、ビットコインを拡張する技術の開発にあらためて注目が集まっていること。

例えば「Ordinals」(オーディナルズ)は、ビットコインの最小単位(1サトシ)に対してユニークな識別子を付与し、画像などのデータを追加することで、ビットコインをNFTのように取引できるようにするスマートコントラクトの技術。NFTでは、ビットコインと双璧をなすイーサリアムのチェーンが中心的な役割を担ってきたが、オーディナルズはビットコインのメインネットで利用できるようになったことで、「ビットコインNFT」の有力候補として期待を集めている。

NFTは2021年に爆発的な盛り上がりを見せた後、市場規模は後退しており、オーディナルズも例外ではない。2021年に盛り上がったNFTの多くは、デジタルデータのコレクションといった趣味性の強いものが大半で、投機的な商品という側面も強かった。

一方、千野氏によれば、NFTはそうした衰退を経て、現在は“社会実装”にシフトしている段階という。

ここまで明らかにされた動向はグローバル市場や、それを牽引するアメリカ市場の動向が中心。規制の強い日本では、例えばビットコイン現物ETFなどの盛り上がりに対して、蚊帳の外に置かれている状況が続いている。

しかし一方で、グローバルの動向に先んじて、日本で積極的に取り組まれている分野が、NFTなどの新技術を“社会に役に立つ技術”として開発する社会実装の取り組みだという。

グローバルでは一般的に、政府や規制当局が市場の“邪魔をする”ことが多いというが、日本は規制が強く柔軟性に欠ける一方で、社会実装のための制度づくりには積極的で、企業の活動を「後押しする機運が政治の世界にある」(千野氏)のが特徴という。

自民党の「web3 PT」に代表されるように、政府与党がweb3技術を積極的に活用しようと乗り出しており、政府のバックアップを受けて大手企業もこれに呼応、市場に参入するという環境が生まれている。Binance Japanからこうした状況を聞いた海外の企業が、日本で実験を行なう動きもあるという。

例えばホテルにおいて、一定の割合で存在する“稼働していない部屋”の宿泊権を、NFTと絡めた商品として販売し、稼働率の上昇を図る取り組みがあるという。大手ホテルからの関心も高いといい、ユーザーはNFTやブロックチェーンの技術を知らなくても利用でき、NFTの技術でメリットを享受できる。

このようなNFTの活用は、2021年に盛り上がったデジタルデータのNFTとは大きく異なり、現物の資産と紐づけることで、日常生活で役に立つNFTになるのが特徴。こうした分かりやすさは、より多くの関心を引き付ける要因になると見込まれている。千野氏は、2024年のキーワードはこうした現物資産と融合を図る「RWA」(リアルワールドアセット)になるとしている。