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電動キックボードが免許なし・20km/hに 7月法改正で「LUUP」新型投入

電動キックボードは、7月1日の改正道路交通法が施行により「特定小型原動機付自転車」という新たな枠組みに位置付けられ、交通ルールが刷新される。シェアリングサービスの「LUUP(ループ)」を運営するLuupは、7月から新たなルールに則ったサービスを展開し、最高速度が20km/hに向上するほか、16歳以上・免許不要で乗れるようにする。

電動キックボードが最高20km、免許なしに

今回の法改正では、電動キックボードが新たな「特定小型原動機付自転車」という区分に統一され、新たな法律のもとで“わかりにくさ”を解消する。

これまでLUUPの電動キックボードシェアは、特例措置下の「特殊小型自動車」という区分で免許が必要で、最高速度は15km/hに制限されていた。

新ルールでは、16歳以上であれば免許不要で利用できるようになり、速度も20km/hまで高速化される。また、6km/h以下であれば歩道の走行にも対応する。ヘルメットの着用は“努力義務”となり、機体のバックミラーは不要になる。

ナンバープレートは必要で、新たに小型のプレートが用意された。新ルールで必要になったのは、「最高速度表示灯」という現在の「走行モード」を示す表示灯で、20km/hモードの時は「点灯」、歩道用の6km/hモードの場合は「点滅」し、周囲に車両の状態を示す。これにより、歩道を20km/hで走行することを防ぐ。

新型キックボードは「最高速度表示灯」を搭載

新型キックボードに順次置き換え

LUUPでは、これまで東京・大阪・横浜・京都・神戸・宇都宮・名古屋の7カ所で電動キックボードと電動アシスト自転車のシェアリングサービスを展開しており、ポート数は3,500カ所以上、モビリティ数は1万台以上で、キックボードと電動アシスト自転車はそれぞれ5,000台程度となっている。

7月の法改正にあわせて、今後投入する電動キックボードは、新ルールに準拠したものとする。また、既存のキックボードについては、2024年12月までは猶予期間として利用可能となっており、速度を20km/hに引き上げ、バックミラーを省略した形で、引き続き利用する。

新型の機材との主な違いは、走行モードを示す「最高速度表示灯」の有無と、ナンバープレートが旧式の大型のものであること。LUUPでは、猶予期間に新ルールに則った機材に置き換えていく方針。

小型のナンバープレートを装着する

LUUPの利用料金は、基本料金50円+1分あたり15円(宇都宮のみ料金が異なる)。7月以降も変更はないが、法改正をうけて柔軟な事業展開が可能になることから、サブスクなど、ユーザーの利用動向にあわせた料金プラン等も検討していくという。

新ルールでは、電動キックボード利用で免許が不要になり、免許証に紐づいた罰則は使えなくなる。一方で、Luupにおいては違反に対する厳しいペナルティ制度を新設し、利用者の安全な利用を促していく。

「飲酒運転」が即アカウント停止になるのは従来と同様だが、今後は車両の放置や信号無視など、不注意による違反も、繰り返し行なわれる場合はアカウント停止にするなど、厳しく対応する方針。

このルールは、業界団体のマイクロモビリティ推進協議会において統一化しており、参加社では一律に適用する方針。ただし、ルールの詳細は公開しない。

Luupでは、7月以降多くのユーザーが新たに利用すると想定しており、まずはポートと機材の拡充を進める。現時点では、アプリダウンロード数が100万を超えているのに対し、機材数が1万と少なく、まずはユーザー増に対応しながら、サービス強化を図っていく。

課題は「交通ルールの啓発と安全対策」

一方、新たなモビリティの登場となることから、7月時点で最も力を入れるのが、「交通ルールの啓発と安全対策」という。

7月以降のLUUPの電動キックボード利用では、新たな交通ルールテストの全問連続・満点合格が必要となる。例えば走れる場所や、右折方法などについて確認した上で、キックボードの乗車が可能となる。

免許証は不要となるが、7月以降の電動キックボード利用には「本人確認」が必須化され、マイナンバーカード・運転免許証・在留カード・パスポートによる確認が必要となる。7月以降外国人も利用できるようになるため、LUUPアプリの英語対応も行なった。

また、交通ルールや乗り方を伝えする安全講習会や啓発イベントも実施する。7月前半は以下の3都市で開催を予定している。

・7月1日~4日:東京・MIYASHITA PARK
・7月1日:東京・中池袋公園
・7月1日:東京・丸の内近辺の複数ポート(ポートガイドのみ、試乗なし)
・7月1日:大阪・中央公会堂
・7月2日:神戸・メリケンパーク

日本の移動が変わる

Luup代表の岡井大輝氏は、「30年前の電動アシスト自転車解禁以来の大きな変更」で、「日本の移動が変わる」と強調。LUUPのこれまでの取り組みとともに、その特徴についても言及した。

LUUPの競合としては、多くのシェアサイクルサービスなどが想定されるが、例えば港区のシェアサイクルは平均利用時間が37分で、3-5km程度の移動に使われている。一方、LUUPは平均17分、最頻ライド時間は7分で、1-2km程度の「短距離」利用が多いという。

これがLUUPの特徴のひとつで、ポート数の“密度”を重視して展開することで、短距離移動でも使ってもらえるという。7分の移動のためにキックボードを借りる場合、ポートまでの徒歩距離は1-2分程度しか許容されない。そのため、乗りたい場所で“すぐ見つかる”状況を作る必要がある。

実際に密度が高い地域のほうがLUUP利用が促進されることはデータからも確認されており、渋谷区や目黒区では3大コンビニの店舗数より、LUUPのポートが多くなっている。こうした地域では、積極的にLUUPが活用されており、「既存交通を埋める短距離移動としては唯一のインフラ」(岡井氏)とする。

もう一つの特徴が、「おそらく世界で唯一」という、キックボードを借りる時点で「目的地ポートを予約」するという仕組みだ。

多くのシェアサイクル/キックボードサービスでは、借りた後に目的地を選択できるが、LUUPでは事前に目的地を決定する。他のサービスでは、ポートにモビリティが溢れているケースが多いが、これを防ぐための施策だ。利用者としては、乗る前の一手間が生じるが、LUUPポートを導入する施設のポートが“荒れ”ず、管理コストを削減できるメリットがある。また、返却する際もカメラで停車位置を撮影し、それが確認されると決済が完了する仕組みになっている。

海外で先行して普及した電動キックボードだが、事故や利用者マナーが問題となっている地域も多い。フランス パリでは8月をもって電動キックボードシェアが禁止されるが、雑な返却などで、「景観を汚す」問題もあった。LUUPでは目的地事前設定により、こうした問題を抑制する。

Luup 岡井大輝 代表

直近の課題としては、電動キックボードに関するルールがまだ浸透していないことが挙げられるが、ざっくりルールをまとめると「車道の左側を走行する」といえる。右折については2段階右折で、標識なども概ね自転車に準拠する。例えば、一方通行で「自転車を除く」との補助標識がある場合は、自転車と同様に電動キックボードも通行可能だ。

岡井氏も「実はほとんど自転車のルール」とする。違いとしては、年齢制限があること、歩道走行、違反内容と罰則規定があることだ。

歩道走行は、自転車が通行できるとされる歩道においてのみ、「6km/hモード」に切り替えて通行できる。この6km/hモードは走行中には変更できず、一旦停止してハンドル右のボタンを押して切り替える形となる。車道に駐車車両が多く、左側走行ができない場合など「やむを得ない状況下」で使う機能と考えており、基本的には車道を走行することを推奨している。

7月以降投入する電動キックボードには、この6km/hモードを搭載するが、きちんと使われるかは見極めていくという。なお、6km/hモードを選ぶと、最高速度表示灯が点滅する。20km/hモードでは点灯しており、これで歩道を走行している場合は、「違反している」ことが示されていることになる。

また、ヘルメット着用は努力義務(任意)。Luupとしては推奨しており、テスト的にポートに設置もしたが、「雨の後で臭う」「他の人のヘルメットを使いたくない」という声が多かったという。そのため、折りたたみ型のオリジナルヘルメットを制作し、安全講習会での活用や配布、販売を行なっていく方針。

岡井氏は、「7月以降、利用者は増えるためまずは安全ルールを啓発する」と強調。サービス拡大とともに、まずは新しい交通ルール周知を重視していく姿勢を示した。