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NTTの技術で食用コオロギを飼育へ

NTT東日本と、食用コオロギの品種改良や販売を行なう国内ベンチャー・グリラスは、ITを活用したスマート飼育を確立するための実証実験を共同で行なう。調布市にあるNTTの研究施設では飼育設備をオープンし、一般見学も受け付ける予定。

今回の取り組みの背景として、世界人口の増加により食糧問題や動物性タンパク質の不足が指摘されている点がある。国連は解決策として昆虫食を推奨している。一方、世界の食品ロスは年間約9.3億トン、全世界で生産される食品の約1/3に相当すると報告され、こちらも課題になっている。

グリラスはこれらの解決策として、飼育時に必要な餌や水の量、温室効果ガスの排出量が少ない食用コオロギについて、食品ロス由来100%の独自配合飼料を用いて生産してきた。しかし、情報工学的アプローチは、十分に取り入れることができていなかったという。現在も、高密度飼育などで効率よく生産できても、手間やコストがかかることで最終的な生産コストが高くなるという課題があるとしている。

今回の共同実験では、グリラスの食用コオロギの飼育ノウハウとNTT東日本のICT/IoTソリューションをかけ合わせて、より最適な食用コオロギの飼育環境の構築や確立を目指す。

実証実験では、東京都調布市のNTTe-City Labo(NTT中央研修センタ)内にスマート食用コオロギの飼育施設を設置。飼育室内の温度や湿度、CO2濃度をはじめとした環境データをセンサーで収集する。センサーと飼育室の各種電子機器はHEMS(Home Energy Management System)で可視化・一元管理され、コオロギにとって最適な環境を自動で制御する。

また画像認識AIを用いて、各種センサーが収集したデータを分析する。飼育環境内で発生した異常や原因の検知、コオロギが食べた餌の量を測定し、飼育方法のさらなる向上やコスト・工数のスリム化を目指す。得られた分析結果を基にして、自動給餌など高度な飼育方法の開発に寄与することを目指す。

このほかNTT東のDXソリューションも活用、飼育施設で効果を検証し、環境負荷の低減や自動化、省人化を図っていく。

NTT東では、実証実験を通じて食用コオロギのスマート飼育環境の構築・確立を目指す。また今後の需要拡大を見据えて、飼育施設の拡大も含めた、事業化に向けての検討を進めるとしている。

NTTe-City Laboでは「食用コオロギ養殖ブース」として一般見学を受け付ける予定。開放時間は平日9時~17時。住所は東京都調布市入間町1-44(NTTe-City Labo内)。

グリラスでは食用コオロギについて、体に必要な栄養素を数多く含む次世代のタンパク質と紹介。含まれるキチン質は食物繊維として腸内環境を整える効果もあるという。またコオロギは「陸のエビ」と言われ、優れた食味で、香ばしいエビのような風味としている。