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みんなの銀行の基幹システムを外販 世界にデジタル銀行の機運

ゼロバンク・デザインファクトリー 取締役社長、みんなの銀行 取締役頭取の永吉健一氏

ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)傘下のゼロバンク・デザインファクトリーは、アクセンチュアと共同開発したフルクラウド型の銀行システムを国内外の事業者に向けて提供する。同システムは、みんなの銀行が使用する基幹システムと同等のもの。販売価格の目安は、数十億円~になる見込み。

バンキングシステム提供のコンセプト

ゼロバンク・デザインファクトリーは、みんなの銀行と同じFFGに属し、みんなの銀行が使用するシステムを開発・運営している。この基幹システムは既存の銀行システムの流用ではなく、ゼロから設計されたフルクラウド型で、銀行の個人向けサービスかつ必要最低限のシステムのみを実装して提供されている。

今回の発表は、みんなの銀行が使用しているものと同等の基幹システムを、国内外の金融機関や、新たに銀行サービスの提供を計画する非金融事業者向けに提供するというもの。アジアを含む各国ではデジタル銀行の設立を後押しする施策が推進されており、これに応えるものとして提供する。フルクラウド型で、セキュリティや堅牢性、柔軟性、データ分析などでのリアルタイム性を兼ね備え、スマートフォンだけで完結する“スマホ銀行”のシステムに対する引き合いは多いとしている。

世界で設立されるデジタルバンク
アジア圏でも注目されている
欧州のデジタルバンクの動向

みんなの銀行は開業から約1年でアプリが100万ダウンロード、口座開設は40万件を超えている。福岡の銀行を母体としながらも、フルクラウド型として地域を問わず展開し、コアターゲットとするデジタルネイティブ世代から大きな支持を得ているという。

みんなの銀行のユーザー属性

同社が“ミニマル”という必要最低限の個人向け銀行サービスのシステムは、アジア圏などで求められるデジタル銀行のサービス像とも合致するという考えで、実際にゼロバンクとアクセンチュアが開発したこれらのシステムは、海外でも賞を受賞し、導入についての相談が増えているという。

この銀行システムは、フルクラウド型として、スケーラビリティや耐障害性、柔軟性を担保しているのが特徴。

みんなの銀行も使用するバンキングシステムの特徴
フルクラウド型でスケーラビリティに優れる

またシステム内部は「マイクロサービス」として機能単位で構築され、お互いを内部のAPIで呼び出し合う仕組み。サービス単位で開発・改善を行なえ、従来の銀行システムのような、芋づる式に増える影響の考査も不要になっている。

設定ミスを監視するセキュリティ機能を備えるほか、システム運用の自動化も進めて、ログの集積・分析なども自動で行なう。外部とのAPIはFAPI準拠など高いセキュリティ機能を持つものを用意している。

マイクロサービスと内部API
データ分析も即時
セキュリティ
オートメーション機能

提供範囲の違いから競合他社と一律の比較は難しいというが、チャレンジャーバンク(新規の銀行事業者)向けのシステムでも、フロントエンドまで含めて提供するケースは少ないとのこと。そうしたサービス全体を包含した提供内容は、強みになるとしている。また国際的なセキュリティ規格のFAPIに対応している点も強みという。

ゼロバンク・デザインファクトリー 取締役社長で、みんなの銀行 取締役頭取の永吉健一氏は、世界でチャレンジャーバンクやデジタルバンクの設立が相次いでおり、軽量な銀行システムに対するニーズが高まっていることを紹介する。

「金融サービスもデータが左右する時代。既存の銀行のマーケティングの課題は、結合・集約されたデータにアクセスできず、ユーザーの行動をタイムリーに把握できないこと。我々のシステムなら、すべてのデータは(月次などではなく)ニアリアルで結合して提示して、こうした課題に応えられる」(永吉氏)と、フルクラウド型で、“APIの塊のような銀行”という同社システムのメリットを解説している。