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美味しい非常食。吉野家・湖池屋など有名メーカー発も多彩

地震大国であり、近年は台風や大雨による浸水被害も増えている日本。9月1日「防災の日」は改めて身を引き締めて災害への備えを見直したいところです。そこで今回は非常食に注目。通年、非常食の売場を常設し、品揃えにも力を入れている東急ハンズ渋谷店で防災用品を担当している吉田如和応(ヨシダ ニワオ)さんに、最近の非常食事情やおすすめの商品を聞いてきました。

「2011年の東日本大震災をきっかけに各メーカーが非常食の開発に力を入れ始め、東急ハンズでは2015年くらいからラインナップが増え始めました。さらに、ここ数年でより種類が多彩になったという印象です。東急ハンズは幅広い層のお客様が来店されるので、基本となるご飯、おかず、水を軸に商品を展開しています。このほか、お菓子や栄養食も用意し、ご飯のジャンルも和・洋・エスニックと幅広く用意することで選択肢の幅を広げ、吉野家や湖池屋など認知度の高いメーカーの保存食を積極的に導入するなど、お客様が安心して選べるような工夫もしています」

東急ハンズ渋谷店 防災用品担当 吉田如和応さん

東急ハンズでは防災の日に向けて、非常食の試食会を実施。そこで味見したものは感想もあわせてお伝えします。

東急ハンズ 渋谷店 B1Cフロア 防災食品コーナー。同フロアでは渋谷区の防災プロジェクト「もしもプロジェクト渋谷」とのコラボ企画「もしもストア」も展開しています

普段から食べ慣れている吉野家&ココイチが人気

まずは、数あるラインナップの中から売れ筋上位の商品を聞いてみました。

「主食となる白飯やカレーは毎年安定して売れ筋の上位に入ります。なかでも吉野家の『缶飯 牛丼』はここ数年で急速に上位に入ってきた、今人気の商品です。幅広い世代にファンが多く、災害備蓄用に限らず、家に置いておいて何かのタイミングで食べようと、若い人がライト感覚で購入するケースが増えているようです」

吉野家の非常用保存食シリーズ。缶飯 牛丼(756円)、缶飯 豚丼(756円)、缶飯 焼塩さば丼(702円)

実際に缶飯 牛丼を食べてみると、吉野家の味そのもので安定のおいしさ。通常の白米より栄養価の高い高機能玄米「金のいぶき」を使っていて、常温でもおいしく食べられる工夫を施しているのが缶飯の特徴です。

最近ではコロナ禍の備えとして自宅待機用に非常食を備蓄する方も増えている、と吉田さんは続けます。

「その場合は普段から食べ慣れているメーカーの食品を選ばれる方が多く、吉野家を筆頭にCURRY HOUSE CoCo壱番屋(ココイチ)監修のカレーなどブランド力のある商品が人気となっています」

CoCo壱番屋監修 尾西のカレーライスセット。右は辛さ控えめのCoCo壱番屋監修 尾西のマイルドカレーライスセット(各594円)
HOKO CoCo壱番屋監修さばカレー(378円)

CoCo壱番屋監修 尾西のカレーライスセットを実際に作って食べてみると、想像よりもスパイシーで頭皮からじんわり汗が出るくらい。しかし辛いものが苦手な筆者でも最後までおいしく食べることができました。非常食とは思えないボリューム感もうれしいところです。

今回は皿に盛りつけていますが、アルファ米の袋が器代わりになるので災害時は皿がなくても大丈夫。スプーンも付属

アルファ米もふっくらしておいしいですが、ご飯にするには熱湯で15分、水では60分かかるので、時間を見計らって作ってくださいね。

定番の水や野菜ジュースは防災時の必需品

主食とともに売れ筋の上位に入るのが保存水です。東急ハンズでは7年と長期保存ができる保存水などを販売しています。

IZAMESHI 7年保存水は2L(324円)のほかに500ml(162円)も販売

「イザメシの『7年保存水』は良質の温泉地帯として知られる島根県金城町の地下水を使用しています。豊かな自然が育んだおいしさや成分を損なわないように、無菌充填システムで非加熱のままボトリングしたものです」

飲料では長期保存用の野菜ジュースも売れ筋です。カゴメの「野菜一日これ一本」は5.5年の長期保存が可能な保存食。1缶に野菜1日分350g分をぎゅっと濃縮しています。

カゴメ 野菜一日これ一本 長期保存用(162円)

「非常食を購入する際、多くの方はカロリーや塩分・糖分などの栄養価を見落としがちです。実際に東日本大震災のときには非常食と不規則な生活、ストレスが重なり、体調を崩された方も多かったそうです。野菜ジュースがあれば非常食でもバランス良く栄養を摂ることができるので、備蓄品に加えることをおすすめします」

子供が喜ぶ有名メーカーのポテチやビスケットも

売場でよく質問されるのが「何をどのくらい買えばいいのか」ということ。災害への危機感と備蓄の必要性を感じて売場に来たものの、家族一日分の食事の量や好みなどハッキリしたイメージを持たずに売場スタッフに相談される方が少なくないそうです。

「備蓄の目的や期間、人数にもよりますが、自分を含めた家族一人ひとりの健康状態や好み、1日に必要な栄養量は最低限抑えておきたいところ。また小さなお子様がいる家庭は、ストレスを緩和するおやつや好物を多めに用意する工夫も必要です」

ギンビス×IZAMESHI 厚焼きたべっ子どうぶつ(475円)

「ギンビスの『たべっ子どうぶつ』や湖池屋のポテトチップスなど、普段から食べ慣れているようなお菓子も長期保存用が販売されているので、備蓄品に入れておくと何かと便利です。日常とさほど変わりないものを食べることでストレスを軽減できますからね」

湖池屋の「LONG LIFE SNACK」シリーズ。左からプライドポテト 神のり塩、じゃがいも心地、カラムーチョ(各454円)

たべっ子どうぶつを試食しましたが、ザクザクとした食感と素朴な味わいは通常品とまったく変わりません。かたどられた動物の絵柄と懐かしい味に、大人でもホッとできるお菓子だと思います。

この他、デザート感覚で味わえるケーキの缶詰を用意しておくのもおすすめ。子どもはもちろん、大人のストレス緩和にも甘いものは最適です。

トーヨーフーズ どこでもスイーツ缶。左からガトーショコラ、抹茶チーズケーキ(各540円)

「スイーツ缶は災害時に不足しがちなカロリーを補給できますし、やわらかくしっとりしているのでお子様からご年配の方までおいしくいただけますよ」

実際に食べてみると、きめ細やかで口溶けがよく、あっさりした甘さも好印象。ケーキ類は口の水分がもっていかれがちですが、このスイーツ缶はなめらかな食感。味わいも濃厚でとてもおいしかったです。

非常食メーカーの商品もおいしさが格段にアップ!

最近は食品メーカーも非常食を多く販売していますが、非常食に特化したメーカーのものと違いはあるのでしょうか?

「非常食は年々進化しているため、味に関しては食品メーカーも防災や長期保存食に特化したメーカーも大差なく十分においしいレベルになっています。例えばIZAMESHIシリーズは美味しさにこだわった長期保存食で、東京・銀座にある『IZAMESHI Dish』という保存食をアレンジしたメニューを提供するレストランを展開するほどです」

IZAMESHIのスープシリーズ。トムヤムクン、7種野菜のコーンポタージュ、ポルチーニ茸とハト麦のスープなどがある(各454円)

人気商品の1つであるCoCo壱番屋監修 尾西のカレーライスセットの販売元で、アルファ米を製造している尾西食品からは、ナシゴレンなどのエスニックシリーズが出ています。

非常食では珍しい尾西食品のエスニックシリーズ。左からオニシのナシゴレン、オニシのビリヤニ(各367円)

「オニシのナシゴレン」を試食しましたが、エスニックな香りとピリッとした辛みがありおいしくいただきました。刺激的な香りと味に、元気が出そうな一品ですね。

「メーカーに関わらず、ポイントは“非日常感を感じるか感じないか”ということ。ここ数年で食品メーカーが次々と保存食を発売している背景には非日常を感じさせない消費者心理に加え、備蓄目的の多様化や保存期間が長期から中短期にシフトしつつあることも関係していると思われます。個人的には今後、誰もが利用したことのある有名外食産業などの参入が増えると面白いのではないかと考えています」

昔ながらの非常食「カンパン」ってどうなの?

非常食といえば「カンパン」が昔ながらの定番としてありますが、ラインナップが豊富になった現在も売れているのでしょうか?

「昔ほどではありませんが毎月コンスタントに売れていますので、非常食の代名詞として今もしっかり受け継がれていると思います。食べ過ぎないように絶妙な味わいにしたり、口の中がパサつくので唾液を促進するように飴が一緒に入っていたり、運搬中に粉々にならないよう硬めにするなど、実はかなり計算され尽くしたすぐれモノです」

ブルボン 缶入カンパン(270円)

ブルボンの「カンパン」も、水がなくても食べやすい飴入り。フタは簡単に開封できるプルトップ式で、再封に便利なキャップ付きになっています。

非常食は日常でも便利に使われている!

最後に備蓄の際の注意点を聞いてみました。

「一度にまとめて購入して避難バッグなどに詰めてしまうと、商品によって消費期限がバラバラなので気づいた時には期限切れ、ということがよくあります。フードロスにならないようにすすめているのが、一定期間で購入~備蓄~消費を循環させるローリングストックです。定期的に消費するには普段食べ慣れているものやおいしいものをストックするのがベスト。吉野屋の牛丼缶やココイチのカレー、スイーツケーキ缶などはその点からもおすすめできます」

ローリングストックを見据えて、非常食は日常でも便利に使われている方が多い、と吉田さんは話します。

「たくさんの荷物の中でも中身がしっかり守られる保存の良さと、調理の手間なくおいしい食事が食べられることからアウトドアシーンに持って行く方も多いようです。さらに、手軽で時短ができるため仕事や育児などで多忙な時や、テスト勉強中の夜食やおやつにも向いていると思います。有名メーカーからの相次ぐ発売やおいしさのレベルアップによって防災食のイメージもずいぶん変わっていますので、今後も購入目的はますます多様化しそうですね」

東急ハンズ渋谷店(東京都渋谷区宇田川町12-18)

なお、記事内の価格は取材時点の税込価格です。商品により一時的に品切れとなる場合があります。