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ソニーのクルマが目指す未来。日本に着いた「VISION-S」に乗る
2020年8月4日 19:15
ソニーの電気自動車「VISION-S」が日本に到着。短時間ながら試作車両に試乗できたので、その模様を紹介するとともに、VISION-Sでソニーが目指すものについて、ソニー執行役員 AIロボティクスビジネス担当の川西泉氏に聞いた。
VISION-Sは、ソニーがマグナ・シュタイアらと共同で開発した電気自動車。ソニーのイメージセンサーやセンシング技術を搭載し、レベル2相当の自動運転に対応。ソニーは自動車メーカーに部品を供給する立場にあるが、実車を用いることで先進的なセンサーなどの開発を目指すほか、オーディオやエンタテインメント技術のEV(電気自動車)展開の研究開発に使われる。「ソニーの自動車」としての製品化は現時点では予定していないが、自動車向けの技術・開発に役立てるため、2020年中の公道での走行実験を目指している。
日本に到着したVISION-Sは、CESで公開されたものとほぼ同じ。4人乗りのスポーツカーに、車内外の人や物体を検知・認識し、運転支援を実現するため、車載向けCMOSイメージセンサーやToFセンサーなどセンサーを合計33個搭載している。今回は短時間ながら試乗も行なえた。
まず、クルマのロック解除にはデジタルキーを採用。アプリとカードキーから選択できるが、今回はアプリから解錠。ロックが開くと車体の周囲に配置されたLEDが発光、クルマを一周するように光が回る。デザインコンセプトのオーバル(楕円)をイメージしたギミックとなっている。
EVということもあるが、音はとても静かで、走り出す際のショックも少なくスムーズ。試乗した場所は石畳で凹凸の多い路面だったが、振動はさほど感じられなかった。試作車両で公道走行はできないものの、単なる開発試作機ではなく、クルマとしてしっかり作り込まれていることがわかる。
車室・コクピットは、パノラミックスクリーンと呼ぶ横長の画面を採用。画面表示は中央と助手席側を入れ替えられる。例えば助手席の人がナビを操作して、見やすい場所を選んで、中央に戻すといった操作も可能。
ドアミラーは無く、カメラで撮影した映像をパノラミックスクリーン左右端の画面に表示する。
映画や音楽も楽しめるほか、クルマのほとんどの機能をタッチディスプレイからコントロール可能。ダイヤル式のコントローラも備えている。
公道走行を目指すVISION-S。クルマがゲーム機になる未来?
ソニー執行役員 AIロボティクスビジネス担当の川西泉氏によれば、VISION-Sの開発は、欧州と日本で分担しているが、オーディオビジュアル関連などソニーの技術を入れていくには、日本で開発するものが多く、またイベントでも使うため、日本にVISION-Sを持ってきたという。新型コロナ感染拡大の影響でお披露目イベントなどは当面難しい状況だが、実車を生かした開発を日本で進めていく。
一方、欧州では公道走行用の車両を製作中で、まもなく完成予定という。欧州で製作中の試作機も基本構造やシルエット等はほぼ同じだが、公道走行のための安全基準を満たすための改良が加えられており、こちらの新型車両で公道走行試験を開始する予定という。そのため、公道走行試験は欧州から開始される予定。
ソニーとしては、特にセンサー系の開発をVISION-Sで担っていく。イメージセンサーとLiDAR。レーダー、TOFなど、様々なセンサー・センシング技術を使い、画像認識の厳しい環境下でも早期の正確な物体認識を可能とする「センサー・フュージョン」のノウハウを蓄積。その上に新しいエンターテイメントを載せていくのが基本戦略という。
ソニー独自の空間音響技術「360 Reality Audio」なども導入。エンターテイメントについては、「音楽」と「映像」の提案は行なわれているが、ソニーならではの取り組みとして、「うちの場合もう一つあるので、それはやらなければいけない」とゲームへの応用について言及。「e-Sportsとほぼ同じことが物理世界で実現できて、その逆もできる。レイテンシー(遅延)の問題とかもわかってくると面白い」という。また、クラウド連携や5Gの活用なども「当然」視野に入れて開発していくという。