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緊急事態宣言、39県で解除。「新たな日常のスタート」
2020年5月14日 18:26
安倍総理は14日、39県における緊急事態宣言の解除を発表した。新型コロナウイルス感染拡大防止のため重点的に対応している13の「特定警戒都道府県」でも、茨城、岐阜、愛知、石川、福岡の5県は解除となる。東京と神奈川、千葉、埼玉、大阪、京都、兵庫、北海道は引き続き緊急事態宣言の対象地域で、外出自粛が要請される。
緊急事態宣言は、47都道府県を対象に5月31日までを期限に発令されたが、14日を目処に感染が減ってきた地域では見直すと予告していた。新規感染者が減ってきた県を中心に、14日付けで宣言が解除される。
あわせて、宣言を解除する基準も示しており、「感染数」「医療提供体制」「監視体制」の3点から総合的に判断し、「直近1週間で10万人あたりの累積感染者が0.5人以下」が目安。東京都の人口約1,400万人に当てはめると、1週間で70人以下(1日10人以下)となる。
また5月21日を目処に、再び宣言の範囲を見直し予定。安倍首相は、「可能であれば31日を待たずに解除したい」とし、39県の緊急事態宣言解除について「コロナの時代の新たな日常を取り戻していく。今日はその本格的なスタートの日」と言及。段階的に、活動を再開していく方針を示した。
なお、海外ではロックダウン解除後に、再度の感染拡大が起きた事例もあるため、引き続きのテレワークや電話で済ませられる要件は電話でなど、段階的な活動再開を要望した。
また、飲食店、百貨店や商店街、劇場や映画館、ホテルなど、80以上の業界ごとに感染予防のガイドラインを策定。「現場で働く人を感染から守るための指針」として、協力を呼びかけた。
【安倍総理冒頭発言】
本日、関東の1都3県、関西の2府1県、そして北海道を除く39県について、緊急事態宣言を解除することといたしました。
その判断については、今回、専門家の皆様の御協力を得て、感染の状況、医療提供体制、監視体制の3つについて、具体的な数値なども含め、解除の客観的な基準を策定いたしました。
2週間前と1週間前を比べ、新規の感染が減少傾向にあること。直近1週間の合計で10万人当たり0.5人以下に抑えられていること。さらには、感染経路が分からない感染者の発生状況など、総合的に判断することといたしました。
そして、こうした基準に照らし、39県については、いずれも、今後、徹底的なクラスター対策を講ずることで、感染拡大を防止できるレベルにまで抑え込むことができたと判断いたしました。重症者も減少するなど、医療提供体制も改善しており、検査システムも新規感染者の動向を適切に判断する上で、十分に機能していると考えます。
こうした評価について、尾身会長を始め、諮問委員会の専門家の皆さんの賛同を得て、今月末までの期限を前倒しして、本日付で39県の緊急事態宣言を解除することといたしました。この後の政府対策本部において決定いたします。
残りの8都道府県では、感染者数の大きな減少に加え、人工呼吸器が必要となる重症者も、東京や大阪ではピーク時の6割ぐらいまで減少していますが、まだリスクが残っていると考えます。引き続き気を緩めることなく、外出自粛などに御協力をお願いいたします。地方への移動も控えていただきたいと思います。
1週間後の21日をめどに、もう一度、専門家の皆さんに、その時点で今回決定した解除基準に照らして評価いただき、可能であれば、31日を待つことなく、解除する考えです。
医療従事者の皆さんの献身的な御努力に対しまして、改めて敬意を表します。懸命な治療によって、退院などで感染症から快復した方は、累計で1万人を超えました。ひっ迫した医療現場の状況も、全体として改善傾向にあります。
一時、700人近くまで増加した全国の新規感染者は、このところ毎日、100人を下回る水準で推移しています。この1か月で7分の1以下に減少しました。全ては、徹底的な外出自粛などの要請に御協力してくださった国民の皆様一人一人の行動の結果であります。改めて、心より感謝申し上げます。
そして、多くの地域における緊急事態宣言の解除によって、ここから、コロナの時代の新たな日常を取り戻していく。今日は、その本格的なスタートの日であります。
レストランなどの飲食店、百貨店や商店街、各種の商店、映画館、劇場、博物館や美術館などの文化施設、公共交通機関、さらにはホテルや旅館、80を超える業界ごとに、専門家の助言の下、本日、感染予防のためのガイドラインが策定されました。これは、現場で働く皆さんを感染リスクから守るための指針であり、そして、消費者の皆さんに安心してそれぞれのサービスや施設を利用いただくための指針でもあります。解除された地域を中心に、事業者の皆様にはこのガイドラインを参考に、事業活動を本格化していただきたい。新たな日常を共につくり上げていきたいと考えます。
しかし、どんなガイドラインも感染リスクをゼロにすることはできません。緊急事態が解除された後も、私たちの身の周りにウイルスは確実に存在します。
北海道では、2月下旬に独自の緊急事態宣言を出し、感染者を大きく減少させることに成功しました。しかし、3月半ばの解除後、2、3週間たったころから感染者が再び拡大傾向となりました。ドイツでも、行動制限を緩めた直後、感染者が増加に転じ、再びロックダウンをせざるを得なくなった地域があります。当初、抑え込みに成功したと言われたシンガポールでも、感染者が大きく増えました。韓国でも、先週、ナイトクラブで集団感染が発生したというニュースを御覧になった方も多いと思います。
気を緩めた途端、一気に感染が広がっていく。全てをかつてに戻した途端、あっという間に感染が拡大する。これがこのウイルスの最も怖いところです。これまでの努力を無駄にしないために、解除された地域の皆さんに3つのお願いがあります。
第一は、少しずつ段階的にということです。解除された地域の皆さんに、もはや外出自粛はお願いいたしません。それでも、最初は人との面会は避ける、電話で済むものは済ませるなど、人との接触をできる限り減らす努力は続けていただきたいと思います。解除された地域の中でも、県をまたいだ移動については、少なくとも今月中は、可能な限り控えていただきたい。段階的に日常の暮らしを取り戻していただくようお願いいたします。
第二は、前向きな変化はできるだけこれからも続けてほしいということであります。オフィスの仕事については、多くの皆さんの御協力によって、この1か月でテレワークが普及しました。改善すべきは改善しながら、この前向きな変化を今後も継続していただきたい。時差通勤などの取組も、混雑を避ける上で有効であり、是非これからも続けていただきたいと考えています。
第三は、日常のあらゆる場面でウイルスへの警戒を怠らないでいただきたいということです。こまめな手洗いを心がけていただくことはもとより、常に人と人の距離を十分に取り、密集は避ける。外出するときは必ずマスクを着用し、他の人との密接はできるだけ避ける。屋内より屋外で、密閉は避ける。専門家の皆さんが取りまとめた新しい生活様式も参考に、3つの密を生活のあらゆる場面で避けていただきたいと考えています。特に3つの密が濃厚な形で重なる夜の繁華街の接待を伴う飲食店、バーやナイトクラブ、カラオケ、ライブハウスへの出入りは、今後とも控えていただきますようにお願いいたします。いずれもこれまで集団感染が確認された場所であり、身を守るための行動を重ねてお願いいたします。
社会経済活動を本格的に回復させる一方で、同時に、このウイルスの感染拡大を抑え込んでいく。これほど難しい作業はありません。これまで以上にお一人お一人の御協力が必要となります。ウイルスとの暮らし、ウイルスが身の周りにいることを前提に、その感染リスクをできる限りコントロールしながら、いつもの仕事、日々の暮らしを取り戻す。新たな日常を、しっかりと時間をかけ、ある程度の試行錯誤も重ねながら、確立していく必要があります。
世界中、どこにもまだ、こうすれば大丈夫という正解はありません。長い道のりも覚悟する必要があります。だとすれば、その間も私たちの雇用と暮らしは何としても守り抜いていかなければなりません。新たな日常への道のりを国民の皆様と共に、一歩一歩前進していく。そのためには、もう一段の強力な対策が必要である。そう判断いたしました。
先般の事業規模117兆円の補正予算を強化するため、政府として直ちに2次補正予算の編成に着手いたします。この後の政府対策本部で指示いたします。休業を余儀なくされている皆さんの暮らしを守るため、雇用調整助成金を抜本的に拡充します。1日8,000円余りが上限となっていた助成額を、世界で最も手厚いレベルの1日1万5,000円まで特例的に引き上げます。さらに、雇用されている方が直接申請することができ、そして、直接お金を受け取れる、新たな制度を創設いたします。
世界的な感染の広がりには、全く終わりが見えません。世界経済がリーマンショックとは比較にならない、正に100年に1度の危機を迎えています。世界的な大企業すら大きなダメージを受けています。そうした中で、連鎖倒産という事態は絶対に防がなければなりません。大企業から中堅・中小企業に至るまで、資金繰り支援の更なる充実に加え、必要があれば機動的に十分な規模の資本性の資金を投入することも可能とし、事業の存続を強力に下支えします。
中小・小規模事業者の皆様には、使い道が全く自由な現金を最大200万円お届けする持続化給付金の受付を今月1日から開始しています。手続を徹底的に簡素化し、1週間後から入金をスタートしました。この1週間だけで8万件余りの中小企業・個人事業主の皆さんに、合計1,000億円を超える現金をお届けしています。月末の資金繰りを乗り越えていただくため、実質無利子、元本返済最大5年据置きの融資を実行していくことと併せ、一層加速していきます。
その上で、感染症の影響が長期化していることも踏まえ、家賃負担を軽減するための給付金も新たに創設いたします。さらには、感染防止措置など、次なる事業展開を応援する最大150万円の補助金など、あらゆる手を尽くして、地域経済の核である中小・小規模事業者の皆さんの事業継続を力強く後押ししていきます。
自治体による感染症対策を支援する交付金も大きく拡充します。自治体と緊密に連携しながら、次なる流行の波をできる限り起こさないように、そして、仮に起きたとしても、その波をできる限り小さくするように、万全の備えを固めていきます。
医師が必要と判断した場合には、直ちに検査を実施していく。昨日、薬事承認した抗原検査キットはその大きな武器となるものです。抗原検査は多くの皆さんが病院で受けたことがあるインフルエンザの検査と同じ仕組みです。最大6時間を要するPCR検査と異なり、わずか30分ほどで結果が分かるため、医療現場で簡便に陽性判定を行うことができます。ウイルスが多い場合にはPCR検査と同等の検出感度があります。感染力の高い人を早期に見つけることで感染拡大の防止に大きな効果が期待できます。
来月には1日当たり2万人から3万人分の検査キットを供給できる見込みであり、従来のPCR検査と組み合わせながら、量においても、スピードにおいても、検査体制を強化していきます。
PCR検査についても唾液を使った検査の実用化を加速します。鼻の奥から検体を採取するこれまでのやり方と比べ、検査に従事する皆さんの感染リスクを大きく軽減し、検査件数の増大にも寄与すると考えます。あらゆる手を尽くして、医師が必要と判断した皆さんにスムーズに検査を実施する体制を整えることで、市中感染の広がりをできる限り抑えていきたいと考えています。
重症者への治療薬として承認したレムデシビルは国内の重症者治療に必要な量を確保し、医療機関における投与が始まっています。アビガンについても有効性が確認されれば、今月中の承認を目指します。さらには、フサン、アクテムラ、イベルメクチン、いずれも日本が見いだした薬です。別の病気への治療薬として、副作用なども判明し、それを踏まえて処方すれば、安全性は確認されています。既に臨床研究や治験を進めていますが、この感染症への有効性が確認され次第、早期の薬事承認を目指す考えです。それぞれの薬の長所が異なることから、これらをうまく組み合わせることで、更なる治療効果も期待できます。感染爆発を起こすことのないよう、流行の波をできる限り小さくし、また、後ろに遅らせる中で、有効な治療法を一日も早く確立したいと考えています。
次なる流行のおそれは常にあります。新たな日常に向かって社会経済活動を本格化することは、当然そのリスクを高めます。皆さんお一人お一人が十分な警戒を怠れば、1週間後の未来は予断を許しません。感染者の増加スピードが高まってくれば、残念ながら、2度目の緊急事態宣言もあり得る。今回はその判断に当たっての考え方もお示ししています。しかし、国民の皆様の御協力があれば、そうした事態は回避できます。
2月下旬、学校の一斉休校、大規模イベントの自粛をお願いいたしました。国民の皆様には大変な御負担をおかけいたしましたが、結果として、私たちは中国からの第一波の流行を抑え込むことができた。国立感染症研究所のゲノム分析によれば、そう推測されています。国民の皆様の御協力に感謝申し上げます。
そして、この1か月余りの皆様の努力によって、私たちは欧米経由の第二波も抑え込みつつある。そして、我が国の人口当たりの感染者数や死亡者数は、G7、主要先進国の中でも圧倒的に少なく抑え込むことができている。これは数字上明らかな客観的事実です。
全ては国民の皆様の御協力の結果であります。大変な御苦労をおかけしております。長期にわたって生活の制約の多い暮らしが続く中で大きなストレスもたまっておられると思います。ただ、私たちのこれまでの取組は確実に成果を上げています。今、また感染拡大を予防しながら、同時に社会経済活動を本格的に回復させていく。新たな日常をつくり上げるという極めて困難なチャレンジに踏み出します。しかし、このチャレンジも国民の皆様の御協力があれば、必ず乗り越えることができる。私はそう確信しております。
私からは以上であります。