ニュース

人工知能レジはオフィス内店舗を変える? JCBが狙う“レジ待ち”解消

クレジットカード大手のJCBは、高田馬場オフィス内において、サインポストが開発した人工知能搭載レジ「Wonder Register(ワンダーレジ)」を利用した店舗支援実証実験を、9月28日より開始している。今回、実際にその様子を取材してきたので、詳細を紹介する。

JCB高田馬場オフィス内での実証実験で利用されている人工知能搭載レジ「ワンダーレジ」

店舗での人員不足解消やレジ待ち行列解消へ

近年、キャッシュレス決済や無人店舗に大きな注目が集まっている。実際に、現金不可をうたうキャッシュレス店舗や、店内やレジなどに店員が常駐していない無人型店舗が各地に登場しつつある。そういった中、JCBが高田馬場オフィス内で人工知能レジを利用した実証実験を開始したことで、JCBがキャッシュレス化や無人店舗などの実現に向けた取り組みを加速していると感じた人も多いかもいれない。

オフィス内小型店舗で実証実験が行なわれている

ただ、今回の実証実験は目的が少し異なっている。様々な場面で取り上げられることも多いように、現在はあらゆる業界で人員不足が叫ばれている。特に深刻なのが小売業や飲食業などの人員不足で、それが様々な問題を引き起こしている。そういった状況を受け、JCBの加盟店舗の業務効率を高め省力化に繋がるような支援策をと考え、今回の実証実験の実施を開始したのだという。

小売店舗や飲食店舗を利用する場合に消費者が残念に感じる場面はいろいろあるが、その中でも気になるのが長時間のレジ待ちだ。特に昼の混雑時などは、レジに長蛇の列ができる場面も少なくない。これは、利用者だけでなく経営者側にとっても頭の痛い問題で、人員を増やすことが改善策ではあるが、人手が不足しているだけでなく人件費も高騰していることを考えると、簡単には対応が難しい。

そういった状況を改善するために考えられたのが、無人で商品認識から決済まで行なえるレジの提供だ。今回のが実証実験では、サインポストが開発する人工知能搭載レジ「Wonder Register(ワンダーレジ)」を利用。このワンダーレジを、JCB高田馬場オフィスにあるオフィス内小型店舗に導入し、実証実験を行なっている。

今回利用されているワンダーレジでは、カメラを利用した画像認識によって商品を識別し、JCBの非接触決済「QUICPay」で決済を行なう。これら一連の操作はすべて利用者が行なうことになるため、店舗は人員を増やすことなくレジ作業を省力化できる。

ワンダーレジに装着されたカメラで商品をとらえ、画像認識で識別して決済

ただ、画像認識による商品識別は、まだまだ課題が多い。特に大きな課題が商品の認識率で、利用環境によって異なる光の反射などによって、認識率が大きく変化してしまうのだという。そこでワンダーレジでは、ドーム状のカバーで覆うことで、一定の環境を実現。加えて、機械学習によって商品の認識率も高められているそうで、複数の商品を同時に、かつ短時間で認識できるようになっているという。

安定して画像認識できるよう、商品読み取りトレイはドームで覆われている
読み取りが難しい商品に対応できるよう、バーコードリーダーも用意

また、代金の決済はJCBの非接触決済、QUICPayに特化。現金を使わず、タッチのみで瞬時に決済が完了する非接触決済を利用することで、決済にかかる時間も最小限になるよう考慮されている。なお、ワンダーレジ自体はQUICPay以外の非接触決済やクレジットカード、QRコード決済などにも対応可能とのことだが、今回はQUICPayのみとなっている。

決済はQUICPayを利用。クレジットカードやQRコード決済にも対応させたいという

オフィスビルの企業内小型店舗導入をファーストターゲットに

今回の実証実験は、導入店舗として小規模店舗やコンビニエンスストアやスーパーなどを想定し、それら店舗でのレジ業務効率改善を目的にしている。そして、今後の導入については、JCBの法人カードを導入している企業のオフィス内店舗をファーストターゲットにしているという。

今回の実証実験が、JCB高田馬場オフィスにあるオフィス内小型店舗で行なわれているのは、そういった意図があるからだ。

JCB高田馬場オフィス内の小型コンビニ店舗や、昼にランチや弁当を販売するスペースで実証実験を行なっている
ワンダーレジでは画像認識を使っていることもあり、他のレジにはない注意書きが用意されている
ワンダーレジの画面にも、商品の置き方が表示される

JCB高田馬場オフィス内には、簡単な食品や飲み物などを販売する小型コンビニのような店舗や、ランチタイムにお弁当やランチを販売する店舗があり、それら店舗と提携して実施している。そのようなオフィス内店舗は、ランチタイム時には多くの従業員によってレジ待ちの長い列ができることが常だが、そのレジ待ち時間を、人員を増やすことなく大幅に改善できているという。

実際の決済手順は、商品をワンダーレジのトレイに置いてディスプレイのボタンを押して商品を認識し、QUICPayで決済するという手順となる。複数の商品を置いても、それぞれを同時に識別できるので、商品ごとに識別させる必要はない。以下の動画を見ていただくと、その手順がよくわかると思うが、決済が完了するまで10秒ほどしかかかっていない。非常に効率良くレジ作業が行なえることが確認できた。

ワンダーレジ利用手順
(1)商品をワンダーレジのトレイに重ならないように並べる
(2)画面の「お会計に進む」ボタンを押す
(3)商品が認識され、商品名と料金が表示される
(4)画面右のリーダーにQUICPay対応カードやスマートフォンをかざして決済
ワンダーレジで商品を買う様子

また、画像認識を利用することで、バーコードなどが印刷されていない商品も読み取れるという利点もある。実際に今回の実証実験の店舗では、お菓子の小分けなども販売しているが、それらも問題なく認識し、決済が可能だった。これなら、オリジナル商品の販売などにも柔軟に対応できそうだ。

画像認識を利用するため、このようなバーコード表記のないお菓子の小分け販売も可能
たくさんの商品を一度に、瞬時に認識できるのは、画像認識を利用する利点のひとつ
わざと商品を重ねて置いてみたが、正常に認識できなかった。ただ、商品の置き方のコツを掴めば、ほぼ失敗せず購入可能だった

ただ、認識率については課題も感じた。ワンダーレジでは、商品は基本的に商品名がわかるように表を向けて重ならないように置いて認識させる必要があるが、わざと重ねたり縦や裏向きに置いて試しみると、正常に認識できないことが多かった。とはいえ、指示されているとおりに商品を置けば、全ての商品を瞬時に認識し、誤認識も全く見られなかった。商品数が増えても認識にかかる時間は非常に短く、レジ打ちの効率を大きく高められるだろう。

既に今回の実証実験は、複数の企業が視察を行なっているという。その反応も良いそうで、実証実験同様のオフィス内小型店舗に、比較的短時間で導入される可能性は高そうだ。その他にもJCBでは、キャッシュレス化の取り組みも積極的に進めていくとのことで、今後の展開にも注目していきたい。