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携帯電子メモパッド「Decrio」速報レビュー

 WorkpadのオプションとしてDecrioなるものが発表された。今回、そのハードウェアを試用することができたので、詳細な情報や使い勝手などをレポートする。


■Decrioって何?

日本IBM Decrio
標準価格24,800円、12月初旬出荷予定。手書きメモというアナログデータをデジタル化して活用するためのWorkPad用オプション。ケース込み重量580g。サイズは190×270×40mm(幅×奥行×高)

 11月9日発表のリリースによると、「携帯電子メモパッド」と呼ばれるこの「Decrio」は、ハードウェアとしては、WorkPad用の外部タブレット(デジタイザ)である。形は、ファスナーの付いた、バインダ型ノートである。

 このデジタイザは、上に紙のノートを置き、ボールペンの芯を組み込んだ専用ペンで、このノート上に普通に書いていくことで、その筆跡がWorkPadの画面にリアルタイムに表示されていく。WorkPadとの接続には、赤外線インターフェイス(IrDA)を使っており、WorkPadを定位置に置くだけでよい。

 WorkPadと同じ“PCコンパニオン”と呼ばれる製品にCross Padというものがあるが、簡単にいうとこのCrossPad相当の機能をWorkPadと組み合わせて実現するのがDecrioといえる。そうはいっても、読者の多くの方は、CrossPadを知らないと思われるので、実際の使い方などを解説しよう。

 Decrioには、WorkPad組み込みの「予定表」「アドレス」「ToDo」「メモ」を置き換える4つのソフトが付属している。もちろん、これらはメモとしてタブレットで書いた手書きデータを扱えるように拡張されている。標準のこれらのソフトには、テキストでメモ(ノート)を個々のアイテムに付けることができるが、この置き換えアプリケーションは、さらにDecrioで作成した手書きデータを付けることができるように機能拡張されているわけだ。

Palm画面
置き換えアプリケーションの「メモ」に手書きメモを添付した例。手書きメモが添付されたデータはアイコンで示される

 Decrioを使うには、WorkPadで上述の置き換えアプリケーションのどれかを起動しておき、ノートに普通にメモを取るだけだ。画面に枠(標準ではこれが紙1枚分の範囲を示す)が表示され、紙に書いた内容がそのまま枠の中に表示されていく。その時、置き換えアプリケーションで選択中の項目があれば、そこに作成した手書きメモが添付され、なければ、新規に項目が作られて手書きメモが付く。置き換えアプリケーションでは、小文字の“i”が書いてあるように見えるアイコンが表示される(画面右)。

 手書きメモなら、WorkPad本体だけでもできるのでは? と思われるかもしれない。しかし、まず書くエリアの大きさが違い、細かくいえば、解像度が違う(タブレットは、0.02ミリ程度の分解能がある)。つまり描画の自由度が全然違うのである。無理矢理比較してしまえば、WorkPadの液晶部分は、60ミリ四方しかないのに対して、Decrioのノートは、B6、JISだと128×182mmである。また、紙にボールペンなので、書き具合も違う。

 それから、反応の良さもここでは挙げておく必要があるだろう。液晶上に直接書いていく場合、たとえば、ペンをグリグリグリと回すと、筆跡がカクカクと多角形状になることがあるが、このDecrioではそういう心配はない。また、Decrioで書くときには紙を見て書いているので、画面表示と多少タイミングがずれていても、気にならないし、実際、筆跡をあとから見ても、カクカクしたところもない。

Palm画面 Palm画面
紙にメモを書くと、WorkPad画面に枠が表示され、その中にリアルタイムに書いた内容が表示される
紙全体が見える表示から、2倍、4倍表示に切り替えて詳細を見ることができる。これは2倍表示で画面下に「2X」と表示されている
Palm画面 Palm画面
4倍表示したところ
1ページのデータサイズは9KB程度


■実際の使い方は?

 予定表なら、打ち合わせのメモなどを予定に添付しておけば、あとから検索が容易だし、アドレスなら、たとえば、相手の会社の手書きの地図などを住所録に付けておくこともできる。

 また、Decrioのパッケージには、米国で定評のある電子メールソフトMultiMail日本語版が付属している。これを使うことで、Decrioで作成した手書きメモをWorkPadからGIF形式、あるいはDecrio専用のEDF形式で、添付ファイルとしてメールで送ることが可能だ。

Palm画面 Palm画面
Decrioのパッケージには米国で定評のある電子メールソフトMultiMail日本語版が付属。GIFやDecrio独自のEDFファイルで電子メモを添付ファイルとしてメールで送れる

 PC側のソフトは、Backupフォルダに置かれた手書きメモを読み出して、表示するEcriNoteという専用アプリケーションが付属し、ここで各アプリケーションに添付された手書きメモを見ることができる。

 このほか、自由に配布が可能なEDFビューアーもあり、これはJavaで記述されているため、Windows以外のプラットフォームで利用可能かもしれない(評価版では、Windows用のインストールパッケージになっていたため、実際のところは不明ではある)。なお、このEDFでは、手書きメモをベクトル情報として扱うため、ビットマップ図形と比べるとファイルサイズが小さくなる。

 ここで、手書きというと、「文字認識」できるのかが気になる人もいるだろう。答えはNOである。CrossPadでもそうなのだが、文字認識ができないと急に興味を失う人がいる。現状のCPUパワーでは、たとえ最高速のPentium IIIをもってしても、オンライン手書き認識(日本語なら、枠内に1文字ずつ書いてリアルタイムに認識する)か、印刷文書の光学認識(OCR)しかできないのが現状で、自由に絵も交えて描いたものをあとから、文字コードに変換することは困難である(英語では、筆記体のストロークを認識することがある程度可能なので、CrossPadでもアルファベットの文字認識機能がある。しかし、数字と大文字小文字のアルファベット、スペースや若干の記号を入れても高々94文字しかない英語と、ひらがなだけで、濁音や半濁音を無視しても61文字ある日本語では、カタカナや漢字を考えると処理に必要なコストが違いすぎる)。

 たしかに文字認識ができると便利なのはわかっているが、それがなくとも、使い道はいっぱいあるし、十分な場面も少なくない。また、あとから手書きメモを見ながら、ワープロを打つような場合でも、メモに書いてある文章をそのまま使うことはなく、できあがった文書は、単語としては、メモに書いてあるものが含まれるものの、認識や訂正などを手間を考えると、キーボードを打ったほうが早いことが多い。筆者は、日頃、CrossPadを持ち歩いて、実際に、記事の打ち合わせなどに利用しているが、このように、メモを見ながらキーボードを打つことが多く、文字認識の必要はそれほど感じていない。

 それに、この電子メモパッドは、キーボードの代替物となるインプットデバイスではないのだ。キーボードでは文字しか入力できないし、その文字の画面上での表示位置(レイアウト)を同時に簡単に指定することはできない。しかし、デジタイザとペンという組み合わせでは、絵を描くのにモードを切り替える必要もないし、縦、横、斜め、すきな方向に、好きなところに文字や絵を自由に書けるのである。この特性を殺してまで、たとえば、原稿用紙のような升目に文字を書かねばならないとしたら、実際メモとして利用するのはかえって難しいだろう。


■ なぜ武藤工業が?

decrio内側の左上部に赤外線インターフェイスがあり、その右にテープで補強されている部分がある。この補強部の下を、赤外線インターフェイスとデジタイザを接続する線が通っている

 さて、このDecrioだが、WorkPadのオプションという位置付けで、IBMからベンダーロゴ製品として販売される。オリジナル発売元はドラフター(製図台っていうんでしょうか。あの設計図書くときに使う定規の付いた机です。専門外なので詳しくなくてすいません)で有名な武藤工業である。この武藤工業のデジタイザは、CrossPadにも使われており、今回、Decrioに付属するペンもCrossPad用のものと同じだという(ただし、Decrioのペンは、キャップを軸の後ろに付けるとWorkPad用のスタイラスのペン先が飛び出すしくみがついている)。

 Palmシリーズは、ペンベースのPDAだが、現在のザウルスなどとともに、ペンベースのマシンがここまで普及するには長い道のりがあった。かつて、米国でGOと呼ばれるペンベースOSマシンが話題になり、日本でもソニーからPalmTop(という名前のペンベースPDA)が発売され、AppleはNewtonを発表など、「これからはペンだ」みたいな時期があった(1980年代末から1990年代前半のことである)。当然、液晶とデジタイザの組み合わせが必要で、そうした製品を開発していた企業の1つがKurtaという米国のメーカーだ。このKurtaは一時期、武藤工業の子会社になっており、このため、電磁誘導方式の特許を、Mutoh America(武藤工業の米国法人)が持っているのである(Kurtaはその後他社に売却され、まだデジタイザのブランドとしては生き残っているようである)。そして、このMutoh Americaには、Pen Products Divisionがあり、今回のDecrio開発でも中心的な役割を果たしたという。

 その意味で、このDecrioやCrossPadは、あのペンコンピューティングブームにつながっているといえる。一時、下火になったペンコンピューティングがWorkPadで復活したと思ったら、こうしたところで、過去とのつながりがあったのだ。

 武藤工業というと、ドラフターのメーカーという印象が強く、こうした一般向けの機器を作るのは珍しいことだが、その背景には、こうした歴史があったのだ。

Decrio Decrio
Decrioの専用ペン。半透明のため、ペン先のほうに茶色くコイルが見える。RFトランスミッターを内蔵しており、軌跡データをデジタイザに送る。ペンのキャップにはスタイラスのペン先が入っていて、ペンのお尻にキャップを装着すると、スタイラスペン部が出て、スタイラスとしても使える仕組み
ケースを開けて左上には、ボールペンの替え芯5本の入ったマガジンが収納されている。その下の縦長のポケットは、携帯電話の収納用だ。左側中央にWorkPadを固定するためのマジックテープが2本縫い付けられている。WorkPadを固定する場所の下には、SnapConnectなどを入れるための透明ポケットが用意されている

■そして、個人的感想

 このDecrioのいいところは、手書きメモがそのままWorkPadに取り込めるというのもあるが、標準アプリケーションとの連携が最初から考えられていることが大きいと思う。アドレスなら人や会社のデータに手書きメモを添付する、予定表なら打ち合わせのメモを添付する、ToDoなら仕事の内容を考えるときに使ったメモを添付する、などの使い方ができる。打ち合わせ中や公衆電話の中、そして、ゆっくりと考え事をするときなどは、Graffitiでは入力に気を取られる分、少々苦しいところがある。また、狭い画面も窮屈だ。このDecrioは、WorkPadの機能を強化し、自由に書けるノートを使いつつ、情報をWorkPadに集中して保存することができるのである。しかも、書いた手書きメモは、打ち合わせの予定や、実行すべきToDo項目、住所録に登録されている名前などから検索可能だ。

 ただし、Decrioに一番先に興味を持つのは、現在のCrossPadのオーナーであるような気がする。簡単にいえば、表示装置付きのCrossPadといってもいいのだから。そこで気になるのが、CrossPadの基本情報フォーマットであるINK形式との互換性だ。現時点では、特に変換ツールなどが用意される話は出ていないが、同じPCコンパニオン同士、ぜひ、お願いしたいところである。

 Decrioは、CrossPadには興味のなかったWorkPadユーザーが使ってもきっと便利だと思う(ただし、メモを頻繁に取るような仕事なり、環境にいればだが)。書いている横で、WorkPadに画像として表示されるので、CrossPadよりも手軽に使える(CrossPadでは、シリアルでPCに接続しなくてはデータとして使えない)。WorkPadに手書きメモが取り込まれたら、元の紙はもう捨ててもいいし、いつでもWorkPadで見ることができる。なお、IBMでは、対象をWorkPad 30Jおよびc3としているが、Palm-OS 3.1以上でJ-OSを使っているものでも動作はできるようである(この場合は、あくまでもご自分のリスクでということだが)。

 というわけで、Decrioのレポートを終えたいが、筆者は、前述のようにWorkPadとCrossPadを両方愛用しているので、そうしたユーザーからの視点と多少割り引いて判断していただいたほうがいいかもしれない(すでにすごーく欲しくなっているので……)。最後にクイズ、PC CompanionであるCrossPadとWorkPadを両方所有している人を何というか?
答:IBM Companion(ThinkPadもあれば完璧か)。

◎関連URL
■プレスリリース(日本IBM)
http://www.ibm.co.jp/NewsDB.nsf/1999/11092
■武藤工業のホームページ
http://www.mutoh.co.jp/
■MUTOH America
http://www.mutoh.com/main.htm
■Kurta(1996年にALTEKに買収)
http://www.kurta.com/index.htm
■CrossPad製品情報
http://www.ibm.co.jp/pc/vlp/vhcrp8b/vhcrp8ba.html

■日本IBM WorkPad製品情報
http://www.ibm.co.jp/pc/workpad/index.html
■PalmComputingのホームページ
http://www.palm-japan.com/home.html

◎関連記事
■WorkPad用電子メモパッド「Decrio」
http://www.watch.impress.co.jp/mobile/news/1999/11/09/decrio.htm
■塩田紳士のCrossPadファン倶楽部(PC Watch)
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/990204/crosspad.htm
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/990205/crosspad.htm
■スタパトロニクス「CrossPad? なんスかそりゃ!?」(PC Watch)
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/980629/stapa04.htm

(塩田紳ニ)
1999/11/11


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