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ホームゲームが600kmもの遠隔地 Jリーグクラブがなぜ1.5万円をファンに支給?
2026年9月24日 08:15
サッカー・Jリーグで、「ホームゲームに来場すれば、交通費1.5万円支給」という太っ腹なキャンペーンが決行された。なぜ、ここまで高額な“アシ代”支給が行なわれたのか? それは、「ホームタウンから600kmも離れている地元スタジアムに、ファン(サポーター)を来場させるため」だ。
8月22日のJ3リーグ戦・FC大阪vsFC琉球OKINAWA(以下、FC琉球)は、主催者であるFC大阪の本拠地(大阪府東大阪市)から5県も離れた「ミクニワールドスタジアム北九州」(福岡県北九州市、以下「ミクスタ」)での開催となった。九州までの遠征を強いられる地元・関西のファンの負担を考えた結果、「サポーター来場応援キャンペーン」の名目で、異例の交通費支給に踏み切った……ファンに対する誠意として、まず一定の評価がされるべきであろう。
ただ、主催側のチームが自らの本拠地(FC大阪の場合は「花園ラグビー場」)で開催すれば、交通費を出さずともファンは観戦できたはず。このような事態が起きた背景には、解決の糸口が見出せない「花園のラグビー・サッカー兼用問題」があった。
綱渡りだった「花園ラグビー場確保」
「花園ラグビー場」はその名の通り、ラグビーのプロチーム(花園近鉄ライナーズ)から国際試合、アマチュアまで幅広く公式戦を開催するラグビー場だ。一方でサッカーは、FC大阪が2020年シーズンからこの地を本拠地として公式戦を開催しており、ラグビー・サッカーでの日程競合が生じるようになった。
花園ラグビー場では、9月12日の「ネーションズカップ」(国際試合。フィジー対カナダ、日本対アメリカ)開催に向けて、芝生を休ませたり広告の入れ替えを行なう「クリーンタイム」とも呼ばれる措置を行った。この期間中に該当したがために、FC大阪のホームゲーム1試合を別の会場で開催せざるを得なくなったのだ。
しかし、夏休みも真っただ中の8月22日は、近隣の「たけびしスタジアム京都」(京都府)、「ロートフィールド奈良」(奈良県)、「紀三井寺公園」(和歌山県)などの近畿圏だけでなく、「四国化成MEGLIOスタジアム」(香川県)、「Axisバードスタジアム」(鳥取県)は、学生向けの陸上競技イベントや他のJリーグの試合予定で埋まっており……。「ギラヴァンツ北九州」が対 栃木SC戦でアウェイに滞在していたため空いていた「ミクスタ」しか確保できなかった、というのが事情だ。
なお、関係者の方に伺ったところ、実際には前日(8月21日)での花園開催を目指していたとのこと。しかし、「16日に花園(リーグ戦第2節)→19日にロートフィールド奈良(天皇杯)→21日にFC琉球戦(リーグ戦第3節)」といった過密スケジュールを懸念する声があり、代替会場を探す必要が生じたようだ。会場確保に対する初動の遅れや、見通しの甘さにも要因があったのではないか。
FC大阪のファン以外にも、〇〇目的の来場多数
FC大阪vsFC琉球の一戦では、大半のエリアで破格の入場料(通常1,000円、ゴール裏0円。いずれも前売価格)が設定された。「関西からの交通費支給」「入場料ディスカウント」のふたつの営業施策による、集客の好影響はあったのか? 実際に会場で確かめてみた。
当日の動員を目視したところ、主催者側であるFC大阪側のゴール裏スタンドは客入り1/4程度。関西のFC琉球ファンにも交通費支給を呼びかけたものの、応援はあまり多くなかった。それでも、少人数を感じさせないボリュームの声援を送り続けた両チームの“ゴル裏勢”(応援席)の方々に敬意を表したい。
公式サイトの告知には「純粋な応援・観戦を目的としたキャンペーン」と明記されていたが、実際には「旅行がてらに来た。普段は大阪府内の別チームを応援している」「このスタジアムはスタグル(場内のグルメ)が有名なので」など、交通費が目当ての観客やライトなサッカーファンも相当数いたようだ。
この日に設けられた交通費の支給申請窓口は相当に混み合い、一時は100人を超える行列ができていた。全員に1.5万円を支給する原資と、花園でのホームゲーム開催時の入場料の差(一般販売で大人2,000円~4,000円。観客平均は前年度で2,698人)や遠征費用・スタジアム使用料・物販・グルメ売上の落差を考えると、FC大阪の経営上のロスは単純計算で1千万近くに及ぶと推察される。
ただ、ここまでしても当日の観客動員数は「894人」。何も手を打たなければ、さらにスタンドは寂しかっただろう……と考えると良いかもしれないが、J3平均(2025年シーズンで3,760人)と比べても、客入りが寂しすぎる。
1.5万円の交通費を申請されたFC大阪のファンは大喜びしているかと思いきや、表情が冴えない方も相当にいた。「そもそも東大阪で開催した方が安上がりなのに」「花園以外でのホームゲーム開催のたびにFC大阪が損失を出しているのが明らかで、見ていて辛い」という声も多く、中には来場を諦めたり、あえて自腹で来たという人も。今回の交通費支給は単純に喜ばれず、ファンの心理と財布を削るものであったようだ。
「本拠地から離れた主催試合」では劇的に観客が少ない
FC大阪は23年のJ3参入の初年度から「本拠地(花園ラグビー場)以外での主催試合開催」を何度も行なっているが、そのたびに入場者数の少なさに頭を抱えている。特に、25年4月に和歌山県・紀三井寺公園陸上競技場で開催された対 ザスパ群馬戦では「374人」を記録するなど、Jリーグと思えない動員の少なさが課題となっている。
25年には、J2昇格プレーオフに初進出できたにもかかわらず、2試合とも鳥取県(Axisバードスタジアム)での開催となり、「テゲバジャーロ宮崎」に0-4の完敗を喫した。もし、地元の声援を受けることができる本拠地・花園ラグビー場で開催できていれば……やはり、FC大阪は全試合をホームで開催できる手段を、一刻も早く講じるべきだろう。
と、ここまで書くと「FC大阪がラグビー・サッカーの競合で試合を開催できない」という不利なハンデに悩まされている、と見えるかもしれない。しかし実際には、地元・東大阪市でもこの状況に同情している方は少ない。なぜなら、同クラブが言い出したにもかかわらず何度も反故にされている「花園ラグビー場・第2グラウンド改修問題」が解決されていないからだ。
3度覆った「第2グラウンド・自腹改修宣言」約束から7年
FC大阪は19年から東大阪市をホームタウンに定め、花園ラグビー場で公式戦を開催してきた。同施設には第1グラウンドと第2グラウンドがあるが、第2グラウンドは客席数1,300席ほどと、J3の最低条件である「5,000人収容のスタジアム」には程遠く、23年のJ3昇格後は2.7万人を収容できる第1グラウンドでしか公式試合を開催していない。
FC大阪の本拠地問題で賛否が分かれている原因は、19年に東大阪市と定めた、以下の協定が実現していないことにある。
「花園ラグビー場の第2グラウンドは、FC大阪の負担で50億円をかけて5,000席の客席を設置、J3ライセンスに必要な条件を備えたうえで2021年4月までに完成させ、東大阪市に寄贈する」
コロナ禍の影響もあって資金調達は難航し、計画の実現見込みは21年12月から23年12月に延期。それでも改修は進まず、24年12月に結ばれた再協定では「28年3月までに完成」に延期し、計画を15億円規模に縮小。完成時期の面でも内容面でも、第2グラウンド工事に関する目標が、詳細な説明もなく3度も動いているのだ。
書類上は「本拠地は第1グラウンドで問題なし」?
もうひとつ、第1グラウンドの主催試合開催に関する扱いの変化も、東大阪市との齟齬の原因となっている。
FC大阪がJFL(アマチュアリーグ)だった19年の協定では「将来は第2グラウンド」であったにもかかわらず、21年の「ホームスタジアムに関する確認書」では第1グラウンドの使用を東大阪市が認めたうえで、「J3リーグ公式試合実施のための施設的要件を満たす」「J3リーグ公式戦のホームゲームの80%以上の実施が可能」との文面が明記された。従来の第2グラウンドのままでは「スタジアムが不適格」と判断されて昇格は叶わないが、第1グラウンドなら昇格は可能であり、ゆくゆくの昇格を見据えて東大阪市・FC大阪が先手を打ったといえるだろう。
しかし実際には、翌年の22年にJFLで2位に食い込み、昇格をあっさり決めてしまう。こうなると全試合を第1グラウンドで開催せざるを得ず、「花園近鉄ライナーズ」や国際試合を開催するラグビーとの日程競合が始まったのだ。
事情の説明が混み入ってしまったが、各方面の「花園ラグビー場問題」に関する3社の状況をまとめてみよう。
- Jリーグ運営サイド:東大阪市長・FC大阪が連名で署名した「本拠地は第1グラウンド」との書類に基づいて、J3昇格を決めた。これ以上の問題が起きない限り、裁定できる要素がない
- 東大阪市サイド:あくまでも「FC大阪は改修後の第2グラウンド使用」の見解を徹底。24年の協定でも「FC大阪が第2グラウンド改修を完了できないと市が判断した場合、花園ラグビー場をFC大阪のホームスタジアムと認めない」ことを明記
- FC大阪サイド:書類上は「第1グラウンドが本拠地」と認められているが、痺れを切らした東大阪市に改修工事の催促を受けている。度重なる主催試合の遠征は財務面でも悪影響、遠征を強いられるファンの我慢も限界
7月に行なわれたJリーグ理事会では「ホームスタジアムを確保することはクラブの責務」とFC大阪を名指しした指摘が飛ぶなど、本拠地で試合を開催できないFC大阪への視線は厳しさを増している。FC大阪が当初の約束通り「第2グラウンドの実質的な新スタジアム化・整備」を進めなければ、問題は何も解決しないだろう。
11月に「第2グラウンド改修着工」
現時点で花園ラグビー場・第2グラウンドでは、改修工事について「2026年11月着工予定」と記された看板が掲げられている。工事にあたっての躯体構造調査(建物調査)の入札も済んでおり、あとは28年の完成を待つのみ……こんなことを疑って申し訳ないが、FC大阪によって3度も覆されてきた「第2グラウンド改修の遂行能力」が、最大の懸念材料だ。
そもそも、FC大阪の財政力は強固ではない。J3昇格で売上が3.8億円(22年)→6.7億円(25年)とほぼ倍増したにもかかわらず、利益はずっと100万円前後のまま。この状態で、26年から10年間の分割で、第2グラウンドの改修資金(15億円)を分割で支払う必要がある。
にもかかわらず、新スタジアム建設にあたって「ガンバ大阪」が実施したような寄付や、「FC今治」のような社会貢献クラウドファンディング、企業からの資金調達、記念品販売などによる増収策(事例:ガンバ大阪・FC今治・FCバルセロナなど)がほとんど見られない。
最初に改修を延期した21年と同様に説明がなく、着工2カ月前になっても建設会社・工事スケジュールも明らかになっておらず、ファンが「スタジアム建設への具体的な対策がまったく見えない」「本当にやる気があるのか?」と指摘する運営のクローズドな体質も、課題として挙げられる。
工事スケジュールだけでなく「改修資金の支払」「資金確保に向けた原資確保の見込み」「北九州への『来場者応援キャンペーン』の開催事情」「これまでの『主催試合の遠隔地開催』に対するファンの反応」など、発信されていない懸念点をFC大阪にアンケートで伺ったところ、まとめて「担当としてもこの件について取材を受ける考えはありません」とのご回答をいただいた。
今度は「FC“大阪”、山口県で試合開催」 課題は山積
こういった記事を執筆している間にも、以下のスタジアムでFC大阪の主催試合の開催が発表された。
- 9月29日のルヴァンカップ 1stラウンド 2回戦(対 アビスパ福岡戦)を「維新みらいふスタジアム」(山口県)
- 10月9日のJリーグ第8節(対 ツエーゲン金沢戦)を「たけびしスタジアム京都」
28年の第2スタジアム完成まで、計画上ではまだ2年。それまで、FC大阪がスタジアムをブッキングできる能力の有無や、変更が続く改修の遂行能力も含めて、そろそろJリーグ運営側による調査・ヒアリングが必要とされていないか。
また、今シーズンのFC大阪は、直近で首位・愛媛FCを撃破するなど、J3→J2昇格も十二分にあり得る。しかし、現状の第2グラウンドでの「観客席5,000席以上(J3ライセンス基準)」の改修ではJ2基準に足りず、例外規定の適用が可能となるだけのスタジアム拡張性を、FC大阪が提示できるかどうかも注目される。
過去には「スタジアムの不適格」で昇格を逃した「FC町田ゼルビア」(2010年。JFL→J2)、「ブラウブリッツ秋田」(2017年。J3→J2)のような事例もある。現状でFC大阪はJ2昇格のライセンスを保持しているが、15億円を投じた第2グラウンドで例外適用できるか。
なし崩しで認められた第1グラウンドの使用に「Jリーグによる花園“ラグビー”場の乗っ取り」という批判も上がる中、直近では「主催試合で花園ラグビー場を確保できない」、長期では「資金スキームが不明」といった問題を、FC大阪は抱えている。果たして、ファンを納得させるだけの説明と、実質上の新スタジアム建設へのスキームを提示できるのか?
正直な目線で見れば、最初に提示した「第2スタジアムを自腹で改修」という、当初から大風呂敷に見えた計画に、未だに縛られているように見えて仕方がない……。11月の第2グラウンド改修着手と、10年分割の事業費の安定した支払いの行方を待ちたい。










