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1本は持っておきたい万年筆の選び方 エントリーから高級品まで

手帳やノートに書き込むなど、万年筆は日常のさまざまなシーンで使える実用性の高いアイテムです。お礼状などの手紙を書いたり、メッセージカードに一言添えたりと、丁寧に言葉を綴りたいときは「万年筆で書きたい」という人も多いでしょう。そこで今回は、使ったことがない人から上級者まで使える売れ筋やおすすめの万年筆を、渋谷ロフトで万年筆売場を担当する日本万年筆の金子由佳さんに聞きました。

「万年筆は他の筆記具と比べると少し高級なイメージがあると思いますが、1,000円台のエントリーモデルも販売されています。お客様のご要望で圧倒的に多いのは『書きやすさ』『恥ずかしくないブランド』『高級に見える』の3つ。売場スタッフとしては万年筆自体の価値や使われている素材にも注目して選んで欲しい、という思いもあるので、お客様にはそういったことも伝えながら、ご要望に添った商品をすすめるようにしています」

日本万年筆 渋谷ロフト店チーフ 金子由佳さん

多くの人は機能性とファッション性で選びがちですが、万年筆本来の魅力も理解した上で選ぶと、より愛着を持って使うことができそうです。

渋谷ロフト 万年筆売場

万年筆との相性を知るためにお手軽モデルから入るのがおすすめ

万年筆はボールペンやシャープペンと違い、インク交換やペン先のケアなど、いろいろと手間がかかるもの。面倒くさいと思う人もいれば、楽しくてハマっていく人もいるので、まずは万年筆との相性を確かめるためにお手軽なエントリーモデルを購入するのがおすすめだと金子さん。

「万年筆を使ったことがない人は、万年筆ならではの手間を乗り越えて、使い続けることができるかが重要なポイントになります。私自身も数百円のものからスタートしてどんどんハマっていったタイプなので、まずはリーズナブルなモデルを購入して、万年筆を使い続けることができたらステップアップしていくといいと思います」

ということで、まずはエントリーモデルの中で、売れ筋の商品を紹介してもらいました。最初に登場したのは国産ブランド、パイロットの「カクノ」です。

パイロット カクノ ノンカラー(1,100円)

「軸の素材や色など、多くのバリエーションがあるシリーズで、なかでも人気なのがクリアボディのノンカラー。インクの色が透けて見えるので、色違いを複数本持って楽しむこともできます。ペン先は細めでカリカリとした書き味なので、試し書きをしてから購入するのがベターです。普段から書く文字が小さめの人には向いていると思います」

ペン先はやや細く、ややカリカリとした書き味

次は海外ブランドのペリカンが子ども向けにつくっている「ペリカーノ・ジュニア」。大人にも人気のモデルで、金子さんも何本か持っているそうです。

ペリカン ペリカーノ・ジュニアシリーズ ブルー/レッド(各1,870円)
ペン先はステンレススチール

「万年筆は使いなれていないと、どの角度でインクがちょうど良く出るかわからないものですが、これはどの角度でもインクが出やすいので、万年筆特有の書きにくさがないのがいいところ。初心者でも持ち方に迷わないように、矯正グリップがついているのが特徴です。ゴム製なので疲れにくいですし、何といってもペン先の太さがいい。とてもなめらかな書き味で、書くのが楽しくなります」

持ち方矯正グリップなので、くぼみに指を当てればペン先のインクの出やすい角度になる

実際に書いてみると本当にスルスルと書けるので、ボールペンやサインペンのような感覚で使うことができます。見た目のかわいらしさもあって、大人にも人気というのも頷けます。

ドイツの人気ブランド、ラミーの「サファリ」も初心者におすすめの1本。カラーバリエーションが豊富で字幅の太さが選択できるなど、好みのものを選ぶことができます。

ラミー サファリ ホワイト/スケルトン(各5,500円)。大型のワイヤークリップは厚手のカジュアルウェアにもしっかりグリップする
ペン先はスチールを採用

「見た目がおしゃれで持ち方矯正もついているので、ファッション的にも機能的にも最初の1本に最適です。エントリーモデルの中でもクリップが付いているなど、少し高価な位置づけになるので、海外製のステータスにこだわる方にもおすすめしています」

個性やこだわりを表現できる人気ブランドのエントリーモデル

ここからは少しでも個性やこだわりを見せることができる、購入しやすい価格帯のモデルを紹介します。まずは、世界屈指の老舗ブランド、パーカーの「IM モノクローム」シリーズです。

パーカー IM モノクロームシリーズ バーガンディBGT/シャンパンCHT(各8,800円)

「今まで紹介してきたものと違って本体の素材がワンランク上がっています。このモデルはペン先からクリップまで金属製の部分も同一色で統一されていて、とても素敵ですよね。ブランドを象徴するクリップに、品格漂うボディの美しさと、手頃な価格でも妥協が一切なく、ブランドのこだわりが感じられます」

ペン先まで統一された単色カラーがとても上品

続いては、万年筆としてはかなり珍しいノックタイプ、プラチナ万年筆の「キュリダス」。他のブランドでもノックタイプはリリースされていましたが、1万円を大きく切っての価格がプラチナ万年筆から登場し、大きな話題になっているそうです。

プラチナ万年筆 キュリダス グランレッド(7,700円)
ペン先はステンレス
グッと押し込むとペン先が出てくるノック式。万年筆ではかなりイレギュラーなタイプ

「キャップがないので、書きたい時にパッと使えるのが魅力です。見た目のメカニカルな印象や、細かな部分まで分解できる仕様などで、メカ好きの方に人気があります。ただ想像以上に仕様が複雑でインクの入れ替えが難しい、という声も聞かれます。そこを理解した上でご購入いただきたい商品です」

最近はシャープペンで人気のブランド、カヴェコの万年筆も売れ筋のひとつ。コンパクトさと機能性に優れていて、持ち運びが楽なところも好評です。

ドイツの老舗ブランド、カヴェコの万年筆。手前がブラススポーツ(14,300円)、奥がカヴェコオリジナル 250(18,150円)
ブラススポーツのペン先はスチール製だが、書き心地は柔らかめ

「真鍮を使った『ブラススポーツ』はずっしりとした重みがあり、経年劣化も楽しめるモデルです。『カヴェコオリジナル250』はアルミのボディを採用し、このブランドらしい八面体のデザインに仕上げたレトロな雰囲気漂う1本。どちらもペン先はデフォルトで付いていますが、素材・太さに豊富なラインナップがあり、自分好みに変えて楽しむことができます」

万年筆ではステータス。最初の「金ペン」を買うならコレ

ここからは、ペン先の素材に金が使われたモデルをご紹介。柔らかく書き心地のいい金ペンは、万年筆を使い続けるなら絶対に欲しい1本です。実際に鉄製のペン先のモデルと書き比べてみると、柔らかくしなやかなで、イヤな引っかかりも軽減されているように感じます。

「金ペンの中でもコスパ最強モデルは、セーラー万年筆の『プロフィット ライト』です。セーラーは広島県の自社工場で生産されていて、今、一番注目されている国産ブランド。万年筆はペン先に使われている金属により価格が大きく変わり、金ペンはある意味ステータスとされています。このモデルは鉄ペンに少し足しただけで手に入るお手頃価格の金ペンなので、予算に余裕がある方は1本持っていて損はないと思います」

セーラー万年筆 プロフィット ライト ゴールドトリム ブラック(13,200円)。クラシカルで上品なデザインも好評
14金のペン先は弾力があり、線幅に抑揚が出しやすいのも特徴

プロフィットライトとよく似ている、プラチナ万年筆の「#3776 センチュリー」も金子さんおすすめの1本。同じ14金のペン先ですが、こちらはその大きさが印象的です。

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー ローレルグリーン(22,000円)
人気のポイントとなっている、存在感のある大型ペン先

「プラチナ万年筆の一部のモデルに搭載されている、2年間放置してもインクが乾きにくいという特許を取得した『スリップシール機構』を採用したモデルです。キャップの先端に完全気密ができるシステムを入れ込むことで、キャップを締めると密閉されてインクの乾きを防ぐ、という仕組みです。この機構は画期的で、とても人気があります」

ペン先にバネのようなものが入っていて、これが密閉状態をつくりインクの乾きを抑えてくれる

セーラー万年筆もプラチナ万年筆も見た目は似ていますが、持ってみるとかなり違うもの。ペン先の感触、しっくりくる握りなど、自分と相性のいいものを選ぶといいでしょう。

カッコよさが際立つ、有名ブランドの代表モデル

やはり万年筆を持つなら、カッコよさは譲れない。そんな方には有名ブランドの代表的なモデルがおすすめです。ここまで紹介してきたものと比べると多少値は張りますが、それだけに持っているだけで気分が上がり、書くのが楽しくなるものが揃っています。

「まずご紹介するのは、パーカーのソネットシリーズです。イギリス王室御用達で知られる昔から人気のシリーズで、『ソネット プレミアム』も『ソネット』も18金を使った金ペンになります。仕様、形、大きさはまったく一緒で、どちらもパーカーらしい品格が漂う美しさ。プレミアムは海外製ならではの装飾の繊細さも魅力です」

パーカーのソネットシリーズ。手前はソネット プレミアム メタル&ブルーCT(55,000円)、奥はソネット ブルーラッカーCT(52,800円)
ペン先はどちらも18金を使用

次はフランスのブランド、ウォーターマンの「カレン」。流線形のスタイリッシュなフォルムと、ペン先が特徴的な1本です。

ウォーターマン カレン ブラック・シーGT(66,000円)
ラグジュアリーな船のデザインに着想を得て、このシルエットに

「18金のペン先は、通常のオープンニブではなく、インレイニブという軸と一体化した仕様になっています。軸でペン先を丸ごと支えているため安定感があり、書き味はボールペンに近い感じ。構造的に書き味はやや硬めですがスムーズに書くことができ、長時間筆記や高筆圧にも耐える実用的なモデルです」

精巧にボディに組み込まれたペン先

最後は、今回紹介する万年筆の中では最高級となる、ペリカンの「スーベレーン M800」。多くの人が憧れる王道の万年筆は、どこを握っても書きやすい黄金の重心バランスを実現しています。

ペリカン スーベレーン M800 グリーン ストライプ(85,800円)
軸のストライプ柄は職人たちの手が加わっているため1本1本風合いが異なる

「王道の美しさ、職人たちの手が多く入った製造工程、18金のペン先の柔らかさと、魅力がたくさん詰まった万年筆です。特徴的なのは、インクを吸い上げる吸入が一体になっているところ。本体自体が直接インクを吸い上げる仕組みになっているので、インクを入れる量を調節できるのがポイントです。少ししか使わない時に新しいカートリッジを開けてしまうのはもったいないけれど、これなら、ほんの少しだけ吸い上げることができるのでインクの無駄を減らすことができます」

上のつまみをクルクル回しながら上下させるとインクが中に溜まる、という仕組み。正直、一体型は壊れやすいというデメリットもあるそうですが、ペリカンのものは高品質なので安心して使うことができる、と金子さんは話します。

18金のペン先はロジウム装飾が施されている

最後に、購入時に気をつけるべきことを聞いてみました。

「試し書きをしても使う紙によって書き味が変わってしまうことも多いので、どんな紙に書くかがわかっているとおすすめするモデルも絞りやすくなります。できれば、今使っている手帳や、使いたいと思っているノートなどを持ってきてもらい、それに合わせて万年筆やインクを選ぶのがベストです。また、エントリーモデルで万年筆が自分に合うか試す場合は、サービスインクのみで十分。1本使い切れば、その後も使い続ける可能性が高いので、インクはそれから購入すればいいと思います」

渋谷ロフト(東京都渋谷区宇田川町21-1)

なお、記事内の価格はすべて渋谷ロフト販売価格(2月14日時点)です。

中野悦子