トピック

自宅のネット回線を10ギガの「光クロス」にしてみた

自宅のネットの光回線を、NTTの「フレッツ 光ネクスト」から、集合住宅向けにも順次提供が開始されている「フレッツ 光クロス」に変更しました。光クロスは「10ギガ」などと紹介されているサービスで、通信速度は理論値で最大10Gbpsと、大幅に速くなります。最近はWi-Fiも高速になっているほか、LANポートも自作PCやNASでは2.5Gbps対応の製品がじわじわと広がっていて、ネット回線の1Gbpsという仕様が見劣りするような状況になっていました。

インターネット回線の場合は、接続先の環境にもよるのでスペック通りの速度が出るわけではありませんが、自宅にあるネットワーク関連製品のスペックをまとめて底上げする良い機会だと思い、それらを含めて刷新を図ってみました。

そもそものきっかけは、使い始めてから10年が経過しようとしている古いNASでした。最近はファームウェアを更新する度に、最後の再起動が途中で止まって強制再起動させるしかなくなるなど、心臓に悪い状態が続いていました。ある日突然壊れるのも怖いなと思い、2023年に入ってから買い替えを検討しはじめました。自宅のLANは最大1Gbpsのギガビットで構築されていましたが、NASは特に、かねてから高速化したいと思っていたので、LANポートが標準で2.5GbpsのQNAP「TS-264-8G」にしました。2台のハードディスクに加えて、動作を高速にできるNVMeのSSDも2台搭載しました。

8TBのHDDを2台、キャッシュのように使うSSDも2つ買いました
LANポートが2.5Gbps接続のQNAP「TS-264-8G」

その後、ルーターをはじめとする基幹装置も刷新を検討しはじめるのですが、アクセスポイントとして使っていたWi-Fiルーターに派手めの脆弱性情報が出てくるなど、いよいよ更新のタイミングが迫ってきた感じになりました。

NASやLANの高速化を図るとなると、ルーターも内部が高速に処理できる高性能なモデルがふさわしいだろうということで、思い切ってNECのトップモデル「WX11000T12」を選ぶことにしました。それまで我が家では、有線専用のルーターとWi-Fiのアクセスポイントという、ルーター格の装置が2台ある体制だったので、これが1台にまとまり管理も楽になります。

WX11000T12

そして、ルーターが「フレッツ 光クロス」などの、10Gbpsのインターネット接続サービスをサポートするモデルということで、光回線の契約も10Gbpsの「光クロス」に契約を変更することにしました。光クロスは戸建てから提供が始まりましたが、現在は順次集合住宅でも申し込めるようになっています。

デスクトップPCのNICは事前調査をおすすめ

メインPCはマザーボードのLANポートが2.5Gbpsで、そのままだと速度を活かせないので、PCI-Expressのスロットに挿す10Gbps対応のネットワークインターフェイスカード(NIC)として、ASUSTekの「XG-C100C V2」を用意しました。マザーボード上では、割り当てられるPCI-Expressのレーン数を考慮した場所に挿す必要があるので注意が必要です。

今回の一連のネットワーク機器の刷新で、筆者宅において最も危うかったのが、NICに割けるPCI-Expressのレーン数の問題でした。これは一番最初に確認しておくべき事項だと思いました。

例えばグラフィックカード(GPU)を挿していると、マザーボードの端のPCI-Expressのスロットでは(GPUに割くため)PCI-Expressのレーン数が削減され、最大8Gbpsなど、10Gbpsに届かない速度でしか接続できない可能性が出てきます(実際になりました)。またGPUが大型で3スロット以上占有している場合だと、レーン数が確保されているスロットにNICが挿せないという、物理的な干渉問題が発生する可能性もあります。

このようにデスクトップPCでは、CPUが扱えるPCI-Expressの仕様、GPUの有無、マザーボードの仕様、PCI-Expressスロットの配置、マザーボードのBIOSでPCI-Expressのレーン数の調整ができるかどうかなどを、念入りに調べることをおすすめします。

市場に出回っている10Gbps対応のNICは、ASUSTekやバッファロー、アイ・オー・データなどが販売しているMarvell系コントローラーの製品か、ノーブランド品や海外のブランドから販売されているインテル互換系コントローラーの製品の2種類に大別されます。

このASUSTekの製品は、メーカー提供のほかMarvellからダウンロードできるドライバでも動きます。どちらもドライバにはクセがあり、“一部の処理をNIC側にオフロードする機能”をドライバのプロパティからオフにしないと動作が安定しないなど、微調整が必要でした。

新しいNECのルーターの有線LANポートは、10Gbpsが1つ、1Gpsが4つという構成です。10GbpsのポートをPCで使うことになるので、そのままだとNASの2.5Gbpsのスペックが無駄になってしまいます。そこで、10Gbps×2と2.5Gbps×4という構成のQNAPのスイッチングハブ「QSW-2104-2T」も買いました。

デスクトップPCに挿すASUSの「XG-C100C V2」と、NASの高速接続のために10G/2.5G対応のスイッチングハブ「QSW-2104-2T」も導入

回線とプロバイダーは個別に契約 連携は微妙

挙動が分かりやすいハードウェアはともかくとして、ネットの回線契約を刷新するのは、予想できない部分もあり、思ったようなスケジュールでは進みませんでした。

光クロス対応のプランで、光電話は使用せず、ルーターを自前で用意する、といった条件から、新しいプロバイダーはニフティの「@nifty光 プロバイダーコース v6高速10ギガプラン」にしました。これはプロバイダー契約だけなので、NTT東日本とは別途「フレッツ 光クロス」の集合住宅向けのプランを契約します。NTTからは光クロス対応の新しいONUが届くので、工事日に合わせて置き換えます。

光クロスに申し込むとNTTから届く「10G-ONU」。ひかり電話を契約していないので、このようなネット専用のONU(≒モデム)になります

筆者は従来からプロバイダーとNTTのフレッツを別々に契約していました。今回、プロバイダーは光クロス対応のプランを提供しているニフティに変更しつつ、NTTとの契約も1Gbpsの「フレッツ 光ネクスト」から10Gbpsの「フレッツ 光クロス」にグレードアップする形です。これらは2社に(解約する旧プロバイダーも含めると3社に)それぞれ連絡して手続きします。旧プロバイダーの解約についてはオンラインで手続きが完結しました。

料金は「@nifty光 プロバイダーコース v6高速10ギガプラン」が月額2,420円、「フレッツ 光クロス」が月額6,050円です。どちらも電話で詳細を詰める形で、「今どきネットで申し込めないの?」と思いましたが、複雑な確認事項もあったので、結果的には電話が手っ取り早かったなという印象です。

移行でポイントになるのはNTTによる工事日で、不通期間を短くするには、工事日を起点にしてプロバイダーの解約や、新たなプロバイダーの利用開始日を調整します。

「フレッツ 光ネクスト」でプロバイダーだけを変更するケースとは異なり、光クロスへの移行と共にプロバイダーを変更するケースでは、旧プロバイダーからNTTへの接続が完全に解除された後でないと、新しいプロバイダーの接続ができない、と案内されました。NTT側としては光クロスへの切替工事を行なうだけなのですが、その後のプロバイダー側の作業による「出ていく」「入ってくる」のタイミング次第では、利用できない期間が長くなる、と注意を促しているのです。

“謎の接続”に困惑

実害はなかったものの、ここでちょっとしたトラブルが起こりました。NTTの光クロスの工事日と、旧プロバイダーからの私のNTT回線への接続を解除してもらうであろう日が一緒になるよう調整したのですが、NTTの工事は問題なく終わり自宅のONUの置き換えも手順通り完了したものの、旧プロバイダーのNTTへの接続が解除されない、という状況になったのです。

しかも、対応プランが無いためそもそも接続できないと思われた旧プロバイダーによる接続のまま、光クロスに切り替わった回線でインターネットに接続できる、という状態でした(通信速度が上下とも1Gbpsを超えていました)。

IPv6 IPoE接続では、利用するプロバイダーの情報は契約によって依頼するだけで、ユーザー側で情報を入力したり、作業に介入したりできるわけではないので、一連の変更作業はプロバイダーに任せるしかありません。

NTTの工事が終わって2日程度が経過しても、ルーターが認識する接続情報などが解約したはずのプロバイダーから切り替わらないため、この旧プロバイダーのサポートに問い合わせたのですが、まず解約は成立しており、ネットに接続できていても料金の追加請求は無いとのことでした。一般的な対応として、解約が成立した日以降も、実際に接続を解除する作業の直前までは、ネットに接続できるようにしているそうです。

この旧プロバイダーにおいて、NTTとの接続や解除の作業を行なうのは、プロバイダーとは別会社(この場合は子会社でもあったのですが)で、連絡して対応するまでに2~3日かかる場合があるとのことでした。10Gbpsの速度を得るための作業としては、これ以上無いほど皮肉の効いたタイムラグですが……。

ちなみに移行先となる新プロバイダー側ですが、旧プロバイダーの解除作業と連動・連携しているわけではありません。旧プロバイダーのサポートいわく、一般的にこのスキームでは、新プロバイダー側において、ユーザーが指定した利用開始予定日以降はNTT側に対して(数時間おきなど)定期的に接続できるかどうか確認するプログラムが走るとのことです。旧プロバイダーが接続を解除すれば、最大でも数時間で新プロバイダー側が接続に成功し、切り替えが完了する、という仕組みとのことでした。

そして最終的に、筆者の場合、1カ月近く経っても旧プロバイダーのまま接続できてしまっているという状態が続きました。最初は「そのうち切り替わるやろ」と楽観視していましたが、新プロバイダーのニフティ側は「開通待ち」というステータスのままになっており、これが1カ月程度続くと強制解約になってしまいます。そこで改めて旧プロバイダーのサポートに問い合わせ、「解約して3週間経っても接続できる状態が続いているのは明らかにおかしいので、一般論の回答ではなく、私の状況を(解除作業をする子会社に問い合わせて)具体的に調べて教えてほしい」と依頼しました。その結果、私の回線については、件の子会社で実施する作業から漏れていたことが判明、接続の解除(廃止)作業がそもそも行なわれていなかった、ということが分かりました。

金曜日にこの連絡したのですが、週明けの作業になると言われ、翌週月曜の正午には旧プロバイダーでの接続ができなくなり、同日の15時頃に確認した時には、新プロバイダーのニフティで接続できるようになっていました。前述のようにユーザー側でできることはないので、ルーターを再起動するなどして、再びネットにつながるのを見たり、ルーターの接続情報を確認したりして、新プロバイダーに切り替わっていることが確認できました。

ちなみにこの新旧プロバイダーの解除・接続作業などによる切替とネット不通期間は、NTT側からは予測できないため、NTTから届く書面などではあらかじめ、光クロスへの変更ではネット回線が利用できるまで時間がかかる場合がある、と案内されています。NTTのサポートの電話口でも、余裕をみてか“数日かかる場合がある”と説明されました。

結果として今回のケースでは、プロバイダーの切り替えに伴う実際の不通期間は3時間未満でした。私は自宅のスターリンクを稼働させて不通期間に備えていたので、光回線が使えない3時間はルーターのWANポートにスターリンクを接続してしのぎました。

下り2倍、上りは10倍に

ネットの通信速度は、速度テストの接続先により変動しますが、「フレッツ 光ネクスト」(1Gbps)の契約の旧プロバイダーの場合は、下りが800Mbps前後、上りが600Mbps前後といった塩梅でした。上記のように、回線もハードウェアも10Gbpsに移行した後は、下りが1,600~2,000Mbps、上りが速い場合だと6,000~8,000Mbpsといった数字が出るようになりました。下りは2倍、上りは10倍近い速度です。

下りは思ったほど速度が出ていませんが、実際の用途としては十分以上です。回線の種類がauと出ているのは誤判定だと思われます

もっとも、従来の800Mbps前後の速度域でも通常のネットサーフィンは十分に快適だったわけですが……昨今はPCゲームのファイル、ハイレゾ音源ファイル、生成AI関連のファイルなど、大容量データが増えているので、相手のサーバーや回線次第ではファイルのダウンロードは快適になります。

我が家的にはむしろローカル環境の高速化によるメリットが顕著でしょうか。LANの回線速度が底上げされたことで、全体的に快適になりました。NASは書き込み・読み取り速度、通信速度がいずれも以前より高速になり、写真のRAWデータを保存して直接編集するのもサクサクになりました。ルーターはWi-Fiや実効スループットも高速なので、Wi-Fi 6Eなど昨今の高速な通信速度を活かせます。VRヘッドセットにローカルPCからデータをストリーミングするといった用途でもWi-Fi関連のボトルネックが解消され快適になりました。

ちなみにLANケーブルですが、家庭での10Gbpsの利用なら「Cat 6a」で十分で、距離が短ければ「Cat 6」でも対応できます。私の家ではONUとルーターが離れており、10mのLANケーブルを使っていますが、Cat 6からCat 6aに変えても速度に変化はありませんでした。

ルーターを置き換えたので、IoT機器などの無線LAN設定を切り替えるのは手間でしたが、そう頻繁にすることもでもないので、根気よく切り替えていきました。

刷新した機器の合計ですが、NASが76,799円、HDD(8TB×2)とSSD(250GB×2)、ヒートシンクが計63,026円、ルーターが45,810円、スイッチングハブが26,700円、10GbpsのNICが14,036円でした。合計は22万6,171円です。

NAS一式は、HDDにNAS向けのWD Red Plusシリーズ 8TBを2台、SSDも250GBでRedシリーズを2台にするなど性能重視なので高額になっています。このNAS関連を除いた、ルーター、ハブ、NICの合計は86,546円です。

自宅のネット関連機器がほとんど切り替わってしまい、大掛かりな移行になりましたが、ツギハギ的に増えていたネットワーク機器や古い製品を整理できたので、よかったのではないかと思います。

太田 亮三