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アマゾン「Ring」のいま。日本のスマートホームに必要な“安心感”

Ringシリーズ

米Amazonは2018年に買収したスマートホームセキュリティのブランド、Ring(リング)のデバイスを2022年の春から日本にも展開している。来日したAmazon Ringのキーパーソンであるデイブ・ワード氏に今回、日本市場参入の手応えやAmazon Echoシリーズとの連携の展望を聞いた。

Amazon傘下のRingが成長を続ける理由

Ringは2013年に、創業者であり現チーフインベンターのジェイミー・シミノフ氏が米カリフォルニア州サンタ・モニカに立ち上げたスマートホームセキュリティのブランドだ。最初に商品化を迎えたデバイスは、Wi-Fiに接続して使うカメラ付きドアベル(インターホン)だった。

日本では多くの家庭がカメラ付きドアベルを備え付けているが、ワード氏によるとRingが誕生した当時は特に欧米でカメラ付きドアベルのある家庭はごく希だったという。

インタビューに答えてくれたRing LLC マネージング・ディレクター 英国、ヨーロッパ、インターナショナル担当のデイブ・ワード氏

「創業者のジェイミー・シミノフが、自宅の玄関から離れた場所にあるガレージから玄関の様子を確認したいと思い立って、カメラ付きドアベルの最初のプロトタイプを作りました。カメラの映像を本宅からも見られるようにしたところ、妻のエリンにも“あなたが家を留守にしている時にもこれさえあれば安心”と好評だったことから、Ringの最初のプロダクト開発が本格化しました」

Ringは今年、ブランド誕生から10年の節目を迎えた。2018年にアマゾン傘下の子会社となって以来、製品やサービスの開発体制に変化はあったのだろうか?

「これまでにもAmazonは買収した企業のアイデンティティーを尊重してきました。RingもまたAmazonのグループ傘下に加わった後も、変わらずRingのブランドで製品やサービスを展開しています。現在は両社のリソースを共用することによるポジティブなシナジー効果が生まれています」

ワード氏はAmazonとRingのスマートホームデバイス連携により互いの特徴が補完され、カスタマー体験が向上するのだと主張する。

例えばRingの屋内用セキュリティカメラ「Ring Indoor Cam」を、AmazonのAIアシスタントであるAlexaを搭載するデバイスに接続してRingスキルを有効化すると、Ringのインドアカムがモーションを検知した時にAmazonデバイスに通知を届ける機能などが使えるようになる。スクリーン付きのEchoデバイスやFire TVシリーズであればRingのインドアカムから送られるライブ映像をスクリーンで見ながら、Amazonデバイスを通して音声通話も行なえる。

「本体にカメラを内蔵するAmazon Echo Showシリーズには、遠隔地から宅内の様子を見守る機能があります。Ringデバイスと役割がオーバーラップしているように思われるかもしれませんが、実はそうではありません。エンターテインメント系の機能が充実するAmazon Echoデバイスに対して、Ringデバイスにはホームセキュリティに特化した高度なモーション検知やコンピュータビジョンによる物体認識の機能があります。さらに『Ringプロテクトプラン』に登録していただければ、Ringデバイスで録画した動画や静止画をクラウドに保存して後でチェックしたり、他のユーザーとデータを共有する機能などがフルに使えます」

カメラを内蔵するデバイスどうしによるビデオ通話に対応するAmazon Echo Showシリーズ。離れて暮らす家族を見守るスマートデバイスとしても活用されている

セキュリティよりも安心感? Ring「日本」のニーズ

AmazonはRingのデバイスとサービスを、アジア地域の中では日本に初めて投入した。2022年4月以降の手応えをワード氏に聞いた。

「日本はスマートフォンや高速ネットワークの普及率がとても高く、先進技術に慣れ親しんでいる人々の暮らしにRingが馴染むと考えています。日本参入後から現在までの手応えとして、Ringに対する期待感はホームセキュリティよりも、遠方に暮らす家族やペットの見守りなど『Peace of Mind(安心感)』を得ることの方により引き合いがあると感じています」

Ringシリーズのデバイスは2022年4月に3種類の“見守りカメラ”から上陸した。'23年6月には第2世代の屋内用カメラ「Ring Indoor Cam」と、上下左右150度の視野角をカバーする広角カメラを載せたドアベル「Ring Battery Doorbell Plus」を発売。後者は、10月1日以降有料で提供される「Ringプロテクトプラン」に契約すると、日本国内でも「置き配」の荷物を検知してユーザーに通知する機能にも対応する。

2世代の屋内用カメラ「Ring Indoor Cam」と「Ring Battery Doorbell Plus」
日本ではドアベルが人気

日本では欧米よりも先に多くの家庭が玄関にカメラ付きドアベルを導入していることを、Amazon Ringのチームは参入前から把握していたことから、製品の仕様を日本のニーズに合わせることにも腐心したという。

「日本のカメラ付きドアベルには、宅内から玄関の様子を確認するためのカメラと音声応答によるコミュニケーション機能が求められてきました。Ringのドアベルがあれば、スマホにRingアプリを入れて屋外から宅内の様子を確認したり、他にも様々な用途が広がります。現在お使いのカメラ付きドアベルに加えてRingのデバイスを手軽に試していただけるように、穴あけ不要の取付台をオプションとして開発しました。戸建ての住まい向けには、既存のドアホンをRingの製品に簡単交換できる、1個用ボックス対応の取り替え用カバーも用意しています」

Ringのデバイスであれば、自宅に設置したカメラ付きドアベルに遠隔地からアクセスして来訪者とビデオ付き音声通話ができる

ワード氏は、屋内用のRing Indoor Camや、電源工事不要で屋内外を問わず使える「Ring Stick Up Cam Battery」が、日本でも発売後から好評を得ていると話す。多くのユーザーは離れて暮らす家族やペットの見守り用途にRingデバイスを活用しているというが、ユーザーから寄せられる反響の中には「エアコンなど室内の家電の稼働状況や、仏壇にあげたお線香の状態を確認する用途にもRing Indoor Camが便利」という声もあるようだ。

ワード氏は、今後もAmazonのスマートデバイスの開発チームと連携を深めながら、ユーザーがRingに寄せる期待を受けとめていきたいと語る。例えば置き配検知のように、ユーザーからのフィードバックに基づいた機能を迅速に開発して、新しいデバイスに搭載できるようになったことの背景にもAmazonとのパートナーシップが活きているという。

ローカライズが重要に

日本市場における課題として、ワード氏は「Ring製品の来客機能に含まれるスマート応答の言語が英語しか選べないことなど、要所の日本語対応が必要であることを認識している」としながら、今後もユーザーの声に耳を傾けながらローカライゼーションを進めることが重要であると言及した。

遠方に暮らす高齢の家族を、家族どうしで、または医療・介護関係者が見守るために活用するスマートデバイスは、今後日本でも需要拡大が見込まれる領域だ。かたやカメラ付きのスマートデバイスで見られたり、生活する姿を映像として記録されることへの抵抗感は、この先デバイスが広く普及すれば「誰でもやっていることだから」と薄らぐことはないと筆者は思う。

カメラで映像を記録すること以外のソリューションや、新たなセンシング技術を採り入れることによって、主な用途がホームセキュリティから見守りにシフトしたRingの日本向けスマートデバイスが誕生したときに、日本国内でブランドの認知も本格的に拡大するのではないか。今後もRingの動向に注目したい。

山本 敦