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Androidスマホで「行かない役所」はじまる 「スマホ用電子証明書搭載サービス」

5月11日から、Androidスマートフォンにおいて「スマホ用電子証明書搭載サービス」がスタートします。

スマートフォンにマイナンバーカードと同等の機能(署名用及び利用者証明用の電子証明書)を持った電子証明書を搭載することで、スマホだけで、様々なマイナンバーカード関連サービスの利用や申込ができるようになります。4桁の暗証番号ではなく、「顔認証」「指紋認証」などスマホの生体認証機能も活用できます(機種による)。

対応するサービスは、マイナポータルを使った薬剤・検診情報や子育て支援、引っ越し、確定申告(2024年度から)など。また、銀行・証券口座の開設や携帯電話などの民間サービスの申込・利用、コンビニでの証明書交付サービスや健康保険証利用などが予定されています。

5月11日には、まずマイナポータルを活用したサービスからスタート。その後、民間サービスやコンビニ端末、健康保険証利用などに拡大していきます。また、iPhoneでの対応時期は5月11日時点では「未定」となっています。

スマホ用電子証明書搭載サービスでできること

マイナポータル活用からスタート

5月11日からスタートするのは「マイナポータル」を活用したサービス。薬剤・検診情報、母子健康手帳などの自己情報の閲覧や、予防接種などお知らせ、子育て関係など行政サービスの検索・電子申請の「ぴったりサービス」などの機能が利用可能になる予定です。

また、マイナポータル経由の引っ越し関連の届出は7月から、確定申告は2024年度(令和7年1月頃)からと、徐々にできることが増えていく見込みです。

これまでもマイナポータルとマイナンバーカードを組み合わせることで、届出等は可能でしたが、カードを別途用意せず、「スマホだけ」で完結できるというのが、この「スマホ用電子証明書搭載サービス」の新しいところです。複数回のカード読取が発生していた、確定申告でも、使いやすさの向上などが期待されます。

民間サービスの申込・利用

5月11日から順次となりますが、民間サービスの申込・利用も順次スタートします。銀行など金融機関の口座開設や携帯電話の申込み、キャッシュレス決済申込などの「本人確認」に、スマホ用電子証明書搭載サービスを活用する形です。5月中には数社がスタートする見込みです。

コンビニ交付は年内。健康保険証は'24年4月

住民票などの証明書をコンビニのマルチコピー機で取得できる「コンビニ交付サービス」は2023年内に対応予定です。さらに、健康保険証としての利用は2024年4月頃の対応を予定しています。

2024年度以降は、企業が行政機関への手続きをオンラインで行なえる「e-Gov」にも対応。その後、2025年1月頃に確定申告に対応予定です。

今後のユースケース拡大イメージ(出典:デジタル庁)

約220のAndroidスマホが対象

4月19日時点では、Androidスマートフォンの約220機種が対応しています。詳細は以下のリストにまとめられています。iPhoneには対応していませんが、「できるだけ早期」の実現を目指すとしています。

スマホ用電子証明書を利用申請・登録できるスマートフォン(4月19日時点)

スマホ用電子証明書は、スマートフォンの秘密鍵の格納領域(GP-SE)内に格納され、ここにはマイナポータルアプリを介してのみアクセス可能になります。またGP-SEには、「税」や「年金」など、プライバシー性の高い情報は記録されません。電子証明書ごとに、暗証番号が設定されており、入力を一定回数以上間違えるとロックされる点は通常のマイナンバーカードと同様です。

なお、対応端末以外では、マイナポータルアプリから「スマホ用電子証明書」の申込み画面が出てきません。対応端末のみで利用可能となります。必要な要件はGP-SEチップを搭載し、デジタル庁による動作確認が行なわれたもののみとなります。

カードを“親”としてスマホ用の証明書を発行

スマホ用電子証明書の発行は、「マイナポータル」アプリから行ないます。証明書の発行には、マイナンバーカードが必要になります。11日に公開される最新バージョンのマイナポータルアプリを利用します。

対応機種でマイナポータルアプリを立ち上げると、[スマホ用電子証明書を申請する]の画面がでてきます。ここで[申請する]を選んで、マイナンバーカードを読み取りして、マイナンバーカード用署名用電子証明書のパスワードを入力して申請を行ないます。

読み取りが完了すると、スマホ用電子証明書のための6~16桁の「署名用電子証明書」と4桁の「利用者証明用電子証明書」の新たなパスワードを作成画面が現れます。このパスワードは、マイナンバーカードの各証明書のパスワードとは異なるのものです。つまり、カード用とスマホ用のパスワードは別管理になるため、パスワード変更時などで「どちらのパスワードを変えているのか」などを意識する必要があります。

なお、スマホ用電子証明書のパスワードはマイナポータルアプリから変更します。一方一般のマイナンバーカードのように窓口やコンビニATMなどでのパスワード変更できず、アプリからのみとなります。また、マイナンバーカード側のパスワードはアプリからは変更できません。

申請は9時から19時30分までの間であれば、数分で承認・登録され、すぐに利用可能になるとのことです。19時30分を過ぎると翌朝からの対応となります。

スマホ用電子証明書の大きな特徴が、パスワード入力に変えて、顔認証や指紋認証などの「生体認証」が利用できることです。電子証明書の登録完了後、[登録する]をタップして、生体認証などの利用登録が行なえます。

生体認証をONにしておけば、カードをかざさず、生体認証のみでパスワード要らずでマイナポータル等にログインできます。また、パスワード入力の失敗などもなくなりますので、スマホ用電子証明書ならではの重要な機能と言えます。

ログインのほか、電子署名の付与などでも生体認証を活用できます。

スマホ用電子証明書の発行は「1人につき1つの端末だけ」となっています。複数の端末には搭載できません。

また、スマホ用電子証明書は、スマホにマイナンバーカードを搭載するものではなく、スマホにマイナンバーカードの電子証明書(JPKI)機能のみを搭載するものです。券面APや券面事項入力補助AP、住基APなどは含まれません。まずはニーズの多い電子証明書から対応し、今後他の機能搭載についても検討していくそうです。

もうひとつ覚えておきたい点が、スマホ用電子証明書はマイナンバーカードにひも付いて、その電子証明書機能をスマホで使いやすくするためのものということ。そのため、電子証明書の有効期限は「マイナンバーカードの電子証明書の有効期限」と同一となります。マイナンバーカードの電子証明書は5年の有効期限がありますが、例えばマイナンバーカード側の有効期限があと2年であれば、新規にスマホ用電子証明書を発行した場合でも、スマホ用電子証明書の有効期限は2年になります。

利用イメージ(出典:デジタル庁)

機種変更にも対応。スマホの扱いは慎重に

利用時に注意したいのは、機種変更時などの扱いです。スマホ用電子証明書を使ったまま、下取や買取に出す、回収・廃棄するといったことが無いようにしましょう。公的な本人確認書類であるマイナンバーカードの電子証明書機能ですから、扱いには慎重を期しましょう。

機種変更などで、下取・買取に出す場合は、スマホ用電子証明書の「失効」手続きを必ず行ないます。この場合、使っていたスマホでマイナポータルアプリを開き、失効手続きを行なうことで、スマホ用電子証明書が無効になります。修理に出す場合なども、この手続が推奨されています。

再度、スマホ用電子証明書を利用する場合は、マイナポータルアプリから利用手続きを行ないます。これまで、機種変更時のバックアップで重要だったのは、LINEやモバイルSuicaなどでした。今後、スマホ用電子証明書も絶対に忘れないようにしましょう。

なお、スマートフォンを紛失した場合や、盗難にあった場合は。マイナンバー総合フリーダイヤルに連絡し、スマホ用電子証明書の一時利用停止を行ないます。一時利用停止後も、スマホが手元に戻ってこない場合は、マイナポータルアプリから失効手続きが必要です。

デジタル庁の河野大臣は9日の会見で、「『いかない役所・書かない窓口』としてスマホひとつで行政の手続きを全部済ませるようにしていきたい」と語り、スマホ電子証明書搭載のメリットを強調していました。

今回のスマホ電子証明書搭載により、マイナポータルを使った申請だけでなく、民間での本人確認なども便利になっていくと思われます。スマホに内蔵したことで、マイナンバーカードを持ち歩かなくても良くなる点も大きなメリットです、すでに生活必需品といえるスマホですが、さらにその重要度は増したとも言えそうです。

臼田勤哉