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自転車"ヘルメット着用"努力義務化はなぜ必要なのか

4月から、自転車に乗る人はヘルメットの着用が努力義務化されます。“努力義務”とはどういうことか、罰則はあるのかなど気になる点をまとめてみました。

ヘルメットの努力義務についてはこれまで、児童や幼児が自転車に乗る際、ヘルメットの着用が努力義務とされていました。これは、自転車に頻繁に乗り始める中学・高校生の年代が突出して事故率が高かったことから講じられた措置でした。4月の法改正では、これが年齢にかかわらず自転車利用者全員に適用されるようになります。

道路交通法が改定されるほか、「交通安全教育指針」にも全世代でヘルメット着用の努力義務化が記載。「交通の方法に関する教則」では、着用するヘルメットに関して「SGマーク」などの安全性を示すマークの付いたものを着用することが推奨されています。SGマークは、製品安全協会が定める制度で、安全基準、製品認証、事故賠償が一体となったものです。自転車用ヘルメットに関しては、耐衝撃性、あごひも強度、脱げにくさなどが規定されています。

努力義務を怠ると罰則は?

結論から言えば、努力義務は「着用に努める」ものであって義務ではありません。ですので、罰則や罰金などのペナルティはありません。

しかし、だからといって、ヘルメットを着用しない、というのは早計です。ヘルメット着用が全世代へ努力義務化されたのには理由があります。

警察庁によれば、交通事故全体に占める自転車の構成比率は、2018年の18.2%から2021年は22.8%と増加傾向にあり、2021年の自転車事故件数は69,694件で前年より2,021件増加しています。2021年の統計では、自転車の事故に関連する死亡・重症事故の相手は約76%が自動車です。そのうち、出会い頭による事故が約55%と最も多く、こうした事故では自転車側はその78%が安全不確認や一時停止を行なっていないなど、法令違反がありました。

そして、2018年~2021年に発生した自転車の事故では、死亡事故の犠牲者の約6割が頭部に致命傷を負っていることがわかっているそうです。負傷者の怪我の部位でみると、頭部はそれほど多い割合ではなく11%で、脚部が36%と最も多いのですが、死亡者に限定すると損傷部位として最も多いのが頭部の58%となっています。

死亡者の内訳のうち、他の部位が、高くても胸部の12%等であることから、頭部へのダメージが致命傷に繋がる確率が高いことがわかります。しかし、ヘルメットを装着すると死亡率は大きく下がり、ヘルメットを着用していない場合の死亡率は、着用している場合と比較すると約2.2倍も高くなっています。

以上のことから、ヘルメットを着用することで安全性が高まることはわかりますが、実際にヘルメットを着用している人は、現時点ではあまり多くないようです。シェアサイクル「ダイチャリ」を運営するシナネンモビリティPLUSが行なったアンケート調査(調査期間:2月16日~18日)によると、自転車用ヘルメットの着用率は、毎回着用している人が21.2%、たまに着用している、着用していないを合わせると78.8%の人が着用していないという結果がでています。

ヘルメットを所有している人の割合は38%ですが、毎回着用している人は55.4%、たまに着用している人が30%、着用していない人が14.6%であるなど、所有していても着用していない人がかなりの数を占めています。

また、実際に自転車走行中に、「ヒヤリ・ハット経験」をした人のうち、自転車で走るスピードを抑えるようになった人は53%ですが、ヘルメットを着用するようになったという人は21.1%に留まり、危険な体験をしてもヘルメットの着用動機には結びついていないという結果が出ています。

今回の法改正ではあくまで努力義務のため、今後どのようにヘルメットの着用率が推移するかが注目されますが、周りの人のヘルメット着用率に惑わされず、自らの安全のためにヘルメットの着用を強くお勧めします。

もちろん、ヘルメットの着用だけでなく、自転車に乗る上でのルール遵守も大切です。自転車と自動車の事故では、その8割近くで自転車側のルール違反がみられます。警察庁らは、「自転車安全利用五原則」のリーフレットを作成し、その啓蒙に努めていますが、この機会に改めて自転車利用時の心得を確認してみるのもいいかもしれません。

ヘルメット購入は店頭で

実際にヘルメットを買う場合は、ネット通販よりも実店舗での購入をお勧めします。特に、欧米とアジアでは頭部の形状が異なる傾向があり、一般的に欧米向けの製品は縦長に作られています。このため、欧米向けの製品は自分で頭囲を測って正しいはずのサイズのヘルメットを購入しても、着用時に違和感がある場合があります。できるだけ店頭で試着し、無理なく装着できるヘルメットを購入しましょう。日本などアジア圏で開発された製品なら、アジア向けの形状となっている製品がほとんどです。

また、ヘルメット着用時には、髪型が乱れてしまうのが気になる人もいるでしょう。ヘルメットには通気性と緩衝材を兼ねたパッドが組み込まれていますが、空気を逃すため独特の形状になっています。髪型にもよりますが、直接頭に被ると空気が抜ける穴に合わせて髪型がついてしまい、ボサボサ頭になってしまったりと、困ったことになりがちです。

これは、ヘルメットの下に被る「サイクルキャップ」を購入して着用することである程度軽減できます。サイクルキャップは汗の吸収も良くなるほか、ヘルメットの汚れ防止にもなるのでお勧めです。暑い時期にはメッシュタイプ、寒い時期には防寒用など、さまざまなタイプも用意されています。

サイクルキャップはヘルメット着用時に装着できるよう、薄手の素材で作られてはいますが、ヘルメットのサイズがギリギリだと窮屈になってしまう場合もあります。可能であれば店頭でヘルメットと一緒に試着してみるとよいでしょう。

編集部