トピック

枕の正しい選び方。「硬さ」「高さ」「大きさ」

今使っている枕は自分に合っていると思いますか? 正直なところ、値段や手触りだけで選んでしまい、自分に合っているかなんて気にせずに使い続けている人も多いと思います。しかし、自分に合った枕を選ぶことで睡眠の質が上がり、目覚めが良くなる可能性もあるのです。そこで今回は寝具メーカーで眠りや枕の知識も豊富な西川 東京オフィスの山口智也さんに、枕の正しい選び方について話を聞きました。

「合わない枕を使っていると朝起きた時に肩や首、腰に違和感や痛みが出たり、寝付きや目覚めが悪かったり、といった影響が出てきます。シンプルに快適な睡眠が得られていないと感じたら枕が合っていないかもしれないので、一度見直してみてはいかがでしょう」

西川 東京オフィス 商品第2部 第3課 山口智也さん

枕選びのポイントは「硬さ」「高さ」「大きさ」の3つ

自分に合った枕選びのポイントを聞いてみると、硬さ、高さ、大きさを正しく選ぶことが大事だと山口さん。

「まずは、ご自身に合う硬さを選ぶこと。西川では、かため、ふつう、やわらかめと3つの選択肢を用意しています。お客様からは『肩こりがあるから硬めがいい』という声もよく聞きますが、これは誤解です。正しい寝姿勢をしっかり保持できるかどうかがポイントなので、一概に『硬い方がいい』とは言えません。寝た時に気持ちいいと思う硬さは人それぞれなので、自分の好みで選ぶことをおすすめします」

立ったままの姿勢をキープできるのが理想の寝姿勢

硬さは中に入れる素材によって変わります。西川では、綿やウレタンフォーム、パイプなど、硬さが異なる様々な素材で枕を作っているので、感触や寝心地を確認しながら選ぶといいでしょう。

西川の枕で使われている素材たち。かためからやわらかめまで様々な種類が揃う

「次のポイントは高さです。西川の枕は、高め、普通、低めと3つのラインナップを基本としています。理想は、仰向け、横向き、どちらで寝ても首や頭を支えて自然な姿勢を維持できる高さです。理想の高さがわからない、という方のために店頭ではお客様の首の高さや長さ、後頭部の出っ張りなどを機械で計測して指標を出すことも行なっています」

仰向けでは枕が低すぎると息苦しくなりやすく、高すぎると首に負担がかかる
横向きの場合は肩幅などを考慮して適切な高さを選ばなければならない

山口さんが実際に接客すると、極端に高い枕を使っているお客様が非常に多いそうです。高過ぎる枕は首が凝ったり痛くなったりするので、そういった状態になる方は買い替えを検討したほうがいいかもしれませんね。

「最後のポイントは大きさ。頭の幅は平均20cm程度なので、頭3つ分入る幅60cm以上のものをおすすめしています。頭が3つ分入る大きさであれば寝返りを自然に打てますし、寝返りを打っても枕から頭が落ちることがありませんから」

十分な横幅があれば寝返りを打っても安心

西川の枕は63×43cm、70×43cm、70×50cmが主流のサイズ。ブランドやデザインによってイレギュラーなものもありますが、このくらいのサイズならどれも楽に寝返りが打てます。

オーダーメイド枕づくりを体験してみました!

自分にジャストフィットする枕が欲しい、という方には、やはりオーダーメイド枕が一番です。どの枕を使っても快適に眠れない、どんな枕が自分に合っているのかわからない、という方もオーダーすることが解決の近道になりそうです。実際にはどのような流れで自分に合った枕をつくっていくのか気になったので、オーダー枕づくりを体験させてもらいました。

素材別に用意されたオーダーメイド枕のベース

まずは素材選びです。やわらかい素材から硬い素材へとわかりやすく並べられていて、実際に見て、触りながら好みの素材を選んでいきます。

素材は全8種類を用意。手で触って感触を確認できる

「手で触った感触と寝た時の感覚は違うので、ここではあくまでもどういった素材が気になるか、という観点で選ぶのがポイントです。今使っている枕に近い素材や好みの硬さ、睡眠での悩みなどを聞き、素材の特徴を説明しながら、目で見て触って好みの素材を2~3種類選んでいただきます。通気性がいいもの、洗濯できるもの、といったご要望があればそれに合った素材も案内します」

私は「天使のほっぺ」というキャッチコピーを持つやわらかめの「エンジェルフロート」と、ふつうの硬さで触り心地が気持ちよかった「エラストマーパイプ」をセレクト。後で聞いたのですが、実はこの2つの素材がダントツで人気なんだそうです。

次は頭の高さを計測します。西川オリジナルの測定器プレスシェイパーを肩から頭にかけてゆっくりと押し当て、後頭部や首の高さなどを細かく測定。この数値が枕を試す時の目安になります。

この測定器を使えば肩から後頭部まで素早く測定できる
手順1 正面を見て正しい姿勢を保つ
手順2 後から測定器を当てて頭から肩の形をチェック
手順3 測定結果で低め、ふつう、高めなど高さの基準がわかる

私の場合は後頭部がやや低め、首は普通と測定されましたが、低めから微調整してぴったり快適な高さを探っていくことになりました。

仰向け、横向きともにジャストフィットまで高さを微調整

次は、選んだ素材の枕で寝心地を試すためにベッドに移動。エラストマーパイプは手で触った時もより硬く感じたので、最終的には想像よりも心地よかったエンジェルフロートをチョイス。こちらの素材で高さを合わせていくことになりました。

気になった素材のベース枕をセットし、寝心地を確認

ベースとなる枕はやはり低く感じたので、シートを加えてベストな高さを探っていきます。

「このシートは1枚1cmの高さになり、1枚増えるごとに枕に入れる素材の量を増やします。オーダー枕は2層構造になっていて、1層目は好みの素材を入れ、2層目で高さを調整してお客様一人ひとりに合ったオーダーメイド枕を仕立てるわけです」

高さを微調整するシート。入れる場所により形が異なる

まずは仰向けで調整。シートを1枚入れるだけで感覚がかなり変わる印象です。頭が沈み過ぎず、自然にあごがひけている状態になるよう高さを調整していきます。

予想通り少し低く感じたので、高さを上げることに
枕の下にシートを加え、1cm刻みで微調整していく

続いて横向き。後から見て後頭部の中心から背骨のラインがまっすぐになっているか、枕が低い、高さが物足りない感覚はないかなど、確認しながら高さを調整してくれました。

頭から背骨がまっすぐになっているかも確認する

その後、寝返りがスムーズにできるかを確認し、調整は終了です。

ここまでの時間は15~20分程度。店舗の在庫状況にもよりますが、基本的にその日のうちに完成品を受け取ることができるそうです。

「購入後に再調整や定期的なメンテナンスが行なえるのもオーダーメイド枕の魅力です。一層目の素材を入れ替えることもできるので、季節によって変えたり、普段はふつうの硬さだけど疲れた時はやわらかい素材にしたりと、気分によって変えているお客様もいらっしゃいます」

横70×縦43cmのサイズは共通で、レギュラー素材は27,500円、プレミアム素材は38,500円。オンリーワンのオーダー枕は百貨店や直営店、寝具専門店などで作ることができますよ。なお、店舗によって取り扱う素材は異なります。

寝具専門店のオーダーメイド枕コーナーのイメージ

最新の睡眠科学を取り入れた「睡眠ラボ」の枕にも注目

オーダーメイド枕には憧れるけど、ちょっとハードルが高いと考える方も多いでしょう。そういった人にも快適な睡眠を提供できるように開発された商品を山口さんが紹介してくれました。それが2022年の夏、西川の新ハウスブランドとして登場した「睡眠ラボ」。西川の長年に渡る睡眠研究をベースに、悩みに合わせた提案をしてくれるシリーズです。

新しく西川のラインナップに加わった「睡眠ラボ」シリーズ

「このシリーズは量販店でも販売されていて、日常の何気ない買い物の時や、どんな枕を使えばよいか悩んでいる人でも『なんか良さそうだから買ってみよう』と思ってもらえるような商品です。睡眠ラボは枕とマットレスでトータルプロデュースをしていて、お客様のお悩みに合わせて商品を用意しています。パッケージを見ただけでどんな悩みを持つ人におすすめなのかわかるので、接客を望まない方でもフリーで探すことができますよ」

シリーズは全4種類あるので、それぞれの特徴や魅力を紹介してもらいましょう。まずはパッケージに「自分に合う枕が見つからない方へ」と書かれた、ユニークな形の「Soft」。

低反発のウレタンフォームを使用したSoft(13,750円)。サイズは70×60×11cm

「今、西川でも力を入れている肩口まで支える形状の枕です。仰向き寝も横向き寝も、肩口も背中も、多角的にサポート。頭部から肩甲骨まわりまでは体の約40%の圧力がかかるので、そこをワイドにサポートする特殊な構造になっています。ムレにくい工夫が施されていてどんな方にもフィットする枕です。自分に合う枕が見つからないという方は、ぜひ使ってみてください」

続いて紹介する「Net」は、頭部の熱ごもりを軽減して快適な寝心地を追求したモデルです。

熱がこもりにくい構造のNet(9,900円)。サイズは50×35×8cm

「優れた通気性でムレを感じにくい枕です。ご家庭の洗濯機で丸洗いできる(洗濯の際は商品の取り扱い表示をご確認ください)だけでなく乾きも早いので、常に清潔な状態で気持ちよく眠ることができます。また上下を逆にすれば高さを変えることができ、好みに合わせて高め低めが選べるのも魅力です」

「肩のこりやすい方へ」というお悩みに応えるのは「Flat」と「Dots」。それぞれ個性的な形状で体にフィットするつくりになっています。

「Flatは、肩口にフィットしやすいショルダーアーチ形状の枕です。寝返りを打って横向きになった際にも首の形にフィットして支えられるよう、両端が少し高い立体構造になっています。ウレタン素材は通気性がよくありませんが、空気穴をいれることでムレを軽減。肩口にしっかりとフィットして首を支えてくれるものを好まれる方におすすめです」

高反発ウレタンフォームのFlat(6,050円)。サイズは50×35×10cm

「一方、Dotsは点で支えて圧力を分散するタイプ。首のところがフィットしやすいネックサポート形状で、さらに両脇は横向き寝の肩にやさしくフィットする形状になっているので、仰向けでも横向きでも首や肩の隙間をしっかり埋めてくれます」

低反発ウレタンフォームが圧力を吸収するDots(9,900円)。サイズは60×35×10cm

心地よい眠りを徹底的に追求するなら

最後に、西川が提案する心地よい眠りについて山口さんに聞いてみました。

「西川では体圧が寝具によって分散できるよう、枕とマットレスのバランスが大切だとお話ししています。オーダーメイド枕などで自分に合った枕に変えれば絶対に睡眠の質が良くなるというわけではなく、マットレスとのバランスも重要。もし徹底的に心地よい眠りを追求するなら、枕だけでなく、マットレスとのバランスも考えた寝具選びをしていただければと思います」

睡眠は疲労回復や免疫力の維持など、心身の健康を維持する上で欠かすことができないもの。睡眠の質を高めれば明日への活力を見出すことができると思います。自分に合った寝具を選び、できることから心地よい眠りを目指しましょう。

中野悦子