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【オタク家を買う】注文住宅、こだわるほど手間も時間もかかる!

前回の記事では筆者の注文住宅計画にかかるコストを大まかに解説したが、今回は手間と時間について解説したい。

建売住宅や中古住宅なら、物件探しだけで良い。しかし注文住宅だと、土地探しとハウスメーカー選び、ハウスメーカーとの打ち合わせ、そして工事と、それぞれが数カ月単位の時間がかかる。その間、調査や打ち合わせなどで1日数時間かかる。必要な時間も手間も、注文住宅は桁違いに多い。しかもこだわればこだわるほど、コスト同様に必要な時間も手間も増えていく。

ちなみに筆者の最新ステータスとしては、土地とハウスメーカーの契約は2月に完了し、ハウスメーカーとの打ち合わせが佳境に入っているところだ。そして佳境に入ったところで大きな変更ができないかとお願いして、スケジュールは2カ月ほど遅延し、計画着手から引き渡しまでの期間は2年くらいになる見込みとなっている。

ハウスメーカーには多大なご迷惑をお掛けしていてホント申し訳ないと思っているが反省はしていない。だって拙者、粘着系オタクだもの。妥協は最小限にしたい。

そんなわけで筆者の計画は通常ルートより大きく逸脱し、コストも時間も手間も増大しているが、今回は筆者の計画を例に、注文住宅にかかる時間や手間について、大まかなところを解説していく。

土地探しと調査検討にだいたい13カ月

筆者の場合、計画着手した2021年1月から11カ月間くらい、土地探しをした。そして2021年11月ごろに土地を見つけ、そこから3カ月間ほどかけて調査検討をして、土地を契約したのが2022年2月となる。

筆者が購入検討した土地のひとつ(ほかの人に買われてしまった)。東京100分圏で「山林」付きだが、これでも住宅街の一角の市街化区域

当然だが、土地探しと調査検討にどのくらい時間と手間がかかるかは、要件の厳しさやどのくらい妥協するか、土地探しする人の腕前、そして運によって長くなったり短くなったりする。ここにどのくらい時間がかかるかは、本当にわからない。

筆者は土地探しにおいて、自分でひたすら不動産情報サイトをチェックした。めぼしい物件を見つけたら、場所を特定してさらに詳細に調べる。有望な物件であれば、仲介不動産屋に連絡を入れ、資料をもらったり条件を聞いたり現地に行ったりする。

そしてハウスメーカーと相談し、大丈夫そうであれば、購入意思を示す買付証明を提出し、さらに具体的に調査検討する。ローンを使うなら金融機関の審査もこのあたりだ。調査検討には数週間かかるが、調査の結果、買えないということも珍しくない。筆者は2回、具体的な調査検討に進んだものの買えない、ということがあった(ほかの人に買われてしまった)。

土地調査で見落とせない境界標。あとこうした土留や溝なども現地でチェックした方が良い

筆者は11カ月間、1日2時間くらいのペースで土地探しをした。しかし後述するハウスメーカー選びなども並行して進める必要があるので、仕事の忙しい時期とかはちょっとツラかった、という印象だ。幸いにも筆者の2021年は、コロナ禍の影響で取材仕事が少なく、そこで余った時間を注文住宅計画に費やすことができた。なかなか恵まれている。いや、仕事がないのは恵まれていないのだが。

どんな感じで土地探しをやっていったかについては、具体的に書いていくと長くなるので、次回以降に解説したい。

土地探しと並行してハウスメーカー選び

勤めてる会社とか実家の家業とか、そういった動かし難い理由でハウスメーカーが決まることもあるが、そうでないなら、ハウスメーカー選びも土地探しと並行して行なう必要がある。

横浜の住宅展示場。住宅展示場巡りはハウスメーカー選びのキホン。こういう家がいいなー、みたいなアイディア収集にもなる

というのも、土地を見つけたら、購入前の調査検討の段階でハウスメーカーと相談するからだ。相談した結果、「調査検討したけど家が建てられませんわ」となることもあるので、相談せずに土地を購入するのはやめた方が良い。そして土地を見つけたらすぐに相談できるように、土地探しと並行し、なんなら土地探しに先行してハウスメーカー選びが必要となる。

家を建ててくれるハウスメーカーとしては、よく知られる大手ハウスメーカー以外にも、中小規模のハウスメーカー、やや地域限定なハウスメーカー、地元の工務店、設計事務所などさまざまな形態がある。それらの中から選んで家を建ててもらうことになるが、契約前に候補を1社に絞らない方が良い。

ハウスメーカー各社の資料や提案書だけで段ボール1箱分以上になった。あんまりデジタル化されててない

ハウスメーカーによって使える工法、住宅の性能、得意とする価格帯や住宅設備などが違う。この違いによって、「この土地はこの会社がベストだけど、こっちの土地はこの会社だな」となることもある。そもそもエリアや接道などの条件によって建築できないハウスメーカーだってある。理想の家を建てるためにも、4社くらいのハウスメーカー候補があると良い。

筆者はハウスメーカー選びについて、Webの情報と住宅展示場巡りをメインに行なった。筆者がどうハウスメーカーを選んでいったかについては、次回以降に解説したい。

こだわるなら建築・住宅設備の勉強・情報収集に手間を惜しまない

こだわりを実現するためには、土地探し、ハウスメーカー選びと並行して建築や住宅設備について勉強して知識を蓄えたい。

例えば筆者の場合、とにかく大きな窓を大量に使おうと考えた。リビングルームには壁や柱がなく、全周が窓というのが理想だ。その理想に少しでも近づけるには、どのハウスメーカーのどの工法が最適か、自分の知識で判断しないといけない。

コスパの良い一般住宅に多いツーバイフォーなどの枠組壁式工法は、大きな窓は不得意だ。窓自体、一般的には3.6m(2間)が最大で、それ以上のサイズは特注となって高コストになりやすいが、一部のハウスメーカーには例外もある。こうしたハウスメーカー間の違いは、建築や住宅設備の知識を身につけた上で比較しないとわからない。

地理や歴史の知識があれば、海沿いの土地でも津波のリスクを見極められる

ハウスメーカー選びや設計の段階では、建築や住宅設備の知識が重要だが、土地探しでは高校レベルの知識や一般教養が役に立つ。具体的な教科で言うと、地理、地学、政治・経済、日本史、数学あたりだ。

例えば「三角関数なんて社会に出たら使わないだろ」と言う人もいるが、少なくとも筆者は、今回の計画で高低差や視界の広さを計算するのにアークタンジェントくらいまでは使っている。

といっても、筆者は大学が機械系なので理工系の知識があったし、ライターという職業柄、調査や勉強にも慣れている。普通はここまで知識を蓄える必要はないのかもしれない。しかし知識を蓄えながら計画を進めている筆者からすると、知識があればあるほど、注文住宅も理想に近づけると感じている。勉強は大事だ。

土地・ハウスメーカーの契約後は、ひたすら打ち合わせ

トヨタホームと契約した筆者は、トヨタグループのビルで打ち合わせしてる

土地とハウスメーカーの契約後は、ハウスメーカーと打ち合わせをして、家の設計や仕様を決めていく。通常、だいたい3カ月くらいかかる。ちなみに筆者はわがままを言わせてもらって2カ月くらい伸ばして5カ月くらいかけさせてもらっている。

打ち合わせの期間中は1〜2週間に1度のペースで打ち合わせをする。筆者の場合、おそらく平均より長めだと思うが、1回あたり5時間くらいかかっている。スケジュールが遅延している上に担当の方々を毎度、長時間拘束して申し訳ないと思っている(反省はしていない)。

打ち合わせでは前回の打ち合わせの内容を反映した図面や仕様書、見積もりが用意され、これではない、こうしたい、と打ち合わせをする。打ち合わせ後、ハウスメーカー側が打ち合わせ内容を反映した図面や仕様書、見積もりを作成し、次回はそれをベースに打ち合わせする。打ち合わせフェーズは、大雑把にこのサイクルの繰り返しだ。

打ち合わせの合間には「宿題」もある

打ち合わせと打ち合わせの合間にも、施主にはやるべきことがある。いや、やらなくてもいいのだが、やった方が良いことだ。

図面を読むとき、三角スケールがあるとかなり便利

まず提供された図面や仕様書、見積もりを自宅などで見つつ、自分の要望が反映されているか、さらに理想に近づけられないか、ひたすらチェックする。打ち合わせの時間だけだと仕様のごく一部しかチェックできないので、この自宅でのチェックも重要だ。

また、打ち合わせの合間に、使いたい住宅設備のメーカーのショールームに行くのも強くおすすめしたい。使い勝手やサイズ、色などは実物を見ないとわからないことも多いからだ。

チェックするべき主要な住宅設備は、キッチン、浴室、洗面、トイレ、窓、玄関扉、室内扉、棚などだ。フローリングや壁紙、外壁、屋根材あたりは、たいていハウスメーカーがサンプルを持っているので、打ち合わせ中に判断できる。打ち合わせする場所によっては、室内扉、玄関扉のサンプルがあることがある。しかしキッチンや浴室など水回りは、モノがデカい上にバリエーションも豊富なので、各メーカーのショールームに行かないと確認できないことがほとんどだ。

こだわらない住宅設備なら、カタログだけで選んだり、ハウスメーカーに任せても良いが、使用頻度の高いものや使い勝手や見た目にこだわりたいものは、少なくとも1回は実物を見てから選ぶことをおすすめする。

建設のスケジュールはかなり厳密に決まってる。けど遅延もある

打ち合わせでは家の形状・間取りを2カ月くらいで決定し、そこで行政に建築の確認申請などを依頼する。許可が降りるまで1カ月半くらいかかるので、それまでの間は、申請内容に影響のない内装、インテリア、資金について打ち合わせをする。

そして申請許可のタイミングあたりで契約の最終確認をして、発注となる。そこから工事開始だ。この発注後の工事スケジュールは、工場や作業者確保などの都合上、発注時に一気に決定される。

現地では最初に基礎を作る(必要に応じて地盤改良もする)。基礎の工事にはだいたい1カ月くらいかかる。

基礎が完成したら、いよいよ家を建て始めるのだが、ここからはハウスメーカーによって手順が異なる。というのも筆者が計画しているトヨタホームのユニット工法は、工場で住宅の8割くらいを完成させてくるという、やや特殊な作りだからだ。

工場で作られたユニットは、トレーラーに乗せられて現地に運ばれ、大型クレーンで据え付けられる。通常規模であれば、この据え付け工事は1日で屋根まで乗っかり、雨が降っても雨水が入り込まない状態、いわゆる雨仕舞いが完成する。レゴブロックかマインクラフトか、そんな感じだ。

ただ、そこからが時間がかかる。内装工事は現地で地道にやるしかない。屋根や外壁も仕上げが必要だ。基礎完成後の据え付け工事から引き渡しまで、3カ月くらいかかる。

行政による確認申請が許可され、建築がスタートしてから、建物の引き渡しまで、トヨタホームのユニット工法の場合、だいたい4カ月かかる。契約の最終確認後は、基本的に家の仕様は変更できない。無理を通せば変更できるメーカーもあるかもしれないが、たぶん引き渡し後にリフォーム業者を入れたほうがラクだ。発注後は、手を離そう。

ただし発注後の工事スケジュールは、施主以外の都合で伸びる可能性もある。

例えばいま、世間では半導体不足により、関連部材の納期が伸びている。国際物流が混乱すると、輸入部材が入って来なくなる。とあるメーカーでは人気別荘地での需要が増え、一方で外国人労働者が入国できない影響で、契約から工事着工まで1年以上かかると聞いた。とあるメーカーは工場が海外にある影響で、やはり着工までの期間が伸びているとも聞いている。某国の木材は輸入できないので、国内在庫が尽きたら、なくなる。

いろいろな「想定外」が発生する可能性があるので、そうしたものにも余裕を持って対応できるようにしておくべきだろう。

「手間」を楽しめない人でないと注文住宅は難しい

筆者のステータスとしては、2月に土地及びハウスメーカーと契約した後、仕様確定を筆者都合でジリジリと引き伸ばさせてもらっていて、当初予定では5月末には最終仕様を決めるところが、2カ月ほど後ろ倒ししている状態だ。建物の引き渡しは、今のスケジュールだと来年1月の予定となっている。

さらに筆者がゴネて伸びる可能性があるが、そうならないように努力はしたい。ハウスメーカーにはご迷惑をおかけしていて申し訳ないと思っている(反省はしていない、だって理想の家にしたいんだもの)。

計画の開始から土地の契約まで約14カ月、契約から引き渡しまで約10カ月と言ったところで、ちょうど2年くらいで家が建つ予定だ。そのうち半分が土地探しだし、契約後は筆者都合で2カ月くらい遅延してしまったが、これを1年以内に済ますのは、それなりの運と妥協が必要だろう。

注文住宅はコストもかかるが、手間も時間かかる。しかしコスト同様、手間や時間を惜しむと、理想のマイホームに近づけず、注文住宅をやる意味が薄れていく。こだわりの注文住宅を建てるというなら、できれば年単位で時間を確保するべきだ。

はっきり言って大変だが、この手間を楽しめる人にとっては、かなり面白いことだとも思う。技術的・法律的・コスト的な制約の中からベストの解を見つけ出すのは、なんというか、ゲーム的なのだ。わかりにくく例えるなら、「シムシティ」などのシミュレーションゲームや「V Rising」などのサンドボックスサバイバルゲームが好きなら、きっと楽しめると思う。いろいろな住宅設備から理想の構成を見つけ出す感覚も、RPGで最強装備を揃える感覚に似ている。

本記事シリーズでは注文住宅がどのようなことをするかをお伝えしていくが、その中で、注文住宅の楽しさも伝えることができれば幸いと思っている。次回以降は土地探しやハウスメーカー選びなどで、筆者がどのようなことをやっていったかをお伝えしていく予定だ。