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【オタク家を買う】注文住宅にかかる時間と手間とコスト

前回の記事で理由などを書かせてもらったが、筆者は「理想のマイホーム」を実現するためにフルオーダーの注文住宅を建てることに決めた。しかしこのフルオーダーの注文住宅というやつ、なかなかにコストも時間も手間もかかる。

注文住宅にかかるコスト・時間・手間はケースバイケースで、かなりの幅がある。その中でも筆者は、生来の粘着系オタクなので、いろいろこだわりまくり、現在進行中の計画でも想定以上にコスト・時間・手間がかかっている。しかしそれがわかっていても、ついついコスト・時間・手間がかかる仕様を追加しまくっている。

そんなわけで読者の参考になるかは微妙なのだが、今回は筆者の事例をもとに、注文住宅にかかるコストについて解説していく。

まず最初に概要を説明すると、計画全体の上限額は8,000万円としている。土地代と建物代、外構費用などを合わせた金額だ。ほかにも家具や車の購入費用、引越し代などが必要になるので、土地と建物と外構だけで8,000万円をフルに使うのではなく、なるべく安く収めることを目標としている。

まぁ、そんなに上手くは行かないのだが……

当然だけど土地のコストは場所次第

土地の手付金の200万円(土地価格の1割)。土日に契約したかったので札束でお支払い

筆者の今回の計画では、土地も探して購入している。だからまず土地の購入コストがかかっている。

土地の価格は、場所によるが、都心から1時間の距離で、駅近など人気の場所を避ければ、そこそこの利便性の住宅地でも、坪単価で20万円以下、例えば50坪(165m2)で1,000万円とかから買える。

普通の規模の戸建て、大雑把に100m2の2階建てとすると、土地の広さは50坪くらいでも十分だ。しかし欲しい地域に欲しいサイズの土地が売ってるとは限らないし、さまざまな要因で値段が変わってくるので、土地のコストは土地を決めるまで読みにくい。

買い手からすると価格は安い方が良いが、安い土地には安い理由があるわけで、しっかり調査せずに手を出すのは危険だ。条件の悪い土地だとインフラ整備や造成工事に何百万円、何千万円とかかることがあるので、土地を買う前に「予算内で家が建つか」をハウスメーカーなど専門家に判断してもらうのが不可欠だ。条件の悪い土地は売却も困難なので、タダ同然でも深い考えなしに買うのは控えめに言ってもヤバい。

筆者が最初に購入検討した土地、木更津市の金田地区。この辺り、2021年前半はまだ坪単価20万円未満から売られていたが……

また、この1年くらいは筆者のようにリモートワークできるようになった人が郊外に家を買うケースが多く、都心から離れていても、場所によっては地価が上昇傾向にある。

例えば筆者が最初に土地探しのターゲットとした東京湾アクアラインの千葉県側、木更津市の金田地区は、この1年で地価が猛烈に上がっている。筆者が土地を探し始めた2021年1月ごろは坪単価17万円とかの土地が多かったのに、いまは坪単価30万円とかもザラだ。

筆者が購入したのは、平地部分が約100坪の法面付き土地で、価格は約2,000万円。細かい場所は伏せるが、玄関から公共交通機関で山手線主要駅に最短1時間程度で到達する。法面付きなど一般的にはマイナス要素がいくつかあるが、2方向が高台で開放感のある眺望が得やすく、プライバシーも確保しやすい土地で、悪くない買い物だと思っている。

建物のコストは最後まで大まかにしかワカラナイ

建物のコストは、こちらも「坪単価」という言い方がされる。例えば総床面積30坪(約100m2、一般的な広さ)の家が2,400万円で建つなら、坪単価は80万円だ。大手ハウスメーカーだと坪単価60~100万、ローコストメーカーや工務店だと坪単価40万円未満から建てられる、というのが大雑把かつアテにならない相場感だ。

そう、建物の坪単価はいろいろな要因で上下するので、アテにならない。

例えば床面積が小さい家の方が坪単価は高くなる。同じ床面積なら、2階建より平屋の方が高い。立方体に近い単純な建物形状がもっとも安く、細長い家は高い。もちろん建物や設備の仕様・グレードによっても価格が上下する。

ハウスメーカーに計画を持ち込むと、契約前に標準仕様+事前の要望ベースで間取りが仮作成され、見積もり金額が提示される。この時点でも「ネットで見た坪単価より高いなぁ」と思うかもしれないが、契約後の打ち合わせで仕様を豪華にしたり、新しい仕様を追加したりすると、そのたびにどんどん金額が大きくなっていく。

そして住宅の建築コストは上昇している。原因はウッドショック、半導体不足、物流の混乱、海外のロックダウン、人手不足、戦争などなど。ハウスメーカーと打ち合わせしているあいだに資材単価が上がり、詳細な内容は同じなのに最初の見積りより価格が上がる、というケースだってありうる。

筆者の現在の計画だと、ハウスメーカーによる大きな割引があったものの、112.8m2(約34坪)でやや複雑な形状(凹型)の平屋ということもあり、見積もり段階で坪単価は高めだった。そしてさらにこだわって仕様を盛りに盛っているおかげで、建物で4,000万円前後のつもりが、最新の見積りでは4,800万円近くになっている。

坪単価で約140万円。ローコスト住宅や建売住宅の推定コストに比較して約3倍。正直、ツラい。話題の4,630万円をも超えている。どうしてこうなった、と言いたくなるが、1円単位の見積もり明細が出てるので、どこにコストがかかっているかはわかっているし、わかった上でコストをかけている。

例えば今回の計画で最重要視した「開放感」を実現するための外窓には、現在の見積では総額で400万円くらいかかっている。幅は合計で26mほど、全て高さ2.3mでトリプルガラス。このほかにも室内窓を作るのに100万円くらいの追加費用が発生している。こうした「こだわり」が積み重なると、4,800万円とかになるのだ。

このほかに外構工事、具体的には門柱や駐車場、植樹、フェンス、ウッドデッキなどにもコストがかかる。これは何もしなければ大した金額にならないが、何かやるたびに100万円単位でお金がかかる。筆者は可能なら造成工事もやりたいと思っているので、外構工事には最大1,000万円の予算を見込んでいる。

筆者の計画はまだ進行中で、最終的な価格はわからないが、現状のコストとしては以下のような感じを見込んでいる。

・土地:約2,000万円(購入済み)
・建物:約4,800万円(調整中)
・外構:約1,000万円(見積も出ていない)

現段階で合計7,800万円。当初予算の8,000万円には収まるが、車も欲しいし家具代や引越し代もある。なかなかにカツカツだ。

ローンではなく8,000万円を現金で用意した理由

筆者は予算8,000万円ほどを用意した。どこから用意したかというと、22年間かけて貯めたとしか言いようがない。

「実家が太いんだろ」と思われるかもしれないが、それは半分正解で、なんというか、まぁ筆者は実家暮らしなのだ。あとは収入は決して多くないが、ひたすら節約生活を続け、金のかかる趣味には手を出さず、ひたすら貯金したり株を買ったりした。そんな生活を22年間続け、投資運にも恵まれた結果、貯まったのである。

ローンを組んで住宅ローン控除を受ければいいのに、と思われるかもしれないが、まぁそれは確かにその通りかもしれないが、条件的に難しくもあった。

まず筆者はフリーランスなので、ローンを組みにくい・組んでも住宅ローン控除をフルで活用できるほど課税所得が安定していない、という悲しい事情がある。

また、今回の計画で探したのは、眺望やプライバシーを重視したやや特殊な土地だったわけだが、そうした土地はローンで買いにくいのでは、と判断した。山林付きとか市街化調整区域とか崖下とか崖上とか、そういうクセのある土地は、銀行による審査に時間がかかる可能性がある(実際どうなのか、筆者は銀行に相談しなかったのでわからないが)。

あと、できるだけ条件の良い土地を素早く契約するとなると、ローンは不利だ。筆者は3つの物件に対し、購入意思を示す買付証明を提出して交渉したが、購入した3番目の土地を含む2つの物件で、ローン利用の1番目の買付証明提出者を追い越す形で交渉できた。売り手としても、同じ金額なら手間のかからない現金購入者に売りたいのである。

土地の買い付けはときとして争奪戦になるわけだが、そのとき現金は武器となる。筆者のように普通ではない家を建てるなら、土地代だけでも現金で用意できると、かなり有利に計画を進めることができるかもしれない。

時間と手間とコストに見合う家が手に入るかは……

8,000万円の予算は、都心部から離れていることなどを考慮すると、やや高額だ。やろうと思えば4,000万円かからずに建てられたと思う。土地は1,000万円くらいからあるし、家も30坪くらいをローコストメーカーや工務店で安く作れば2,000万円くらいでいける。外構などの予備費を見込んでも4,000万円だ。

しかし安くするにはいろいろなこだわりや理想を捨てないといけない。こだわりや理想を捨ててコストカットするなら、フルオーダーの注文住宅を建てる意味が減る。それなら建売住宅や規格型の注文住宅と大差ないし、コストも手間も時間も大幅に節約できる。

筆者の今回の計画は、こだわりと理想を実現することが最大のコンセプトだ。そのためにコストがかかるのは覚悟の上だし、そのために大きな予算を用意した。

問題はそのコストに見合った家が建つかどうかだ。当然、細部まで慎重に検討しつつ計画を進めているが、実際に建てて住んでみないとわからない。家が完成したら住み心地を含めてレポートするつもりなので、そちらも楽しみにしていただきたい。

と言っても、家が完成するまでにはまだまだ時間がかかるので、次回以降は、注文住宅の計画の進め方について、いろいろな面から解説していく。