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実用的なミニチュア文具「キングミニ」登場の理由

キングジムが、ミニチュアサイズの文房具「キングミニ」シリーズを6月10日に発売しました。キングファイルなどのキングジム製品をミニチュア化したクリップやふせんなどをラインアップしています。このユニークなアイデアはどのように誕生し、商品化に至ったのか、開発担当者に伺ってきました。

ラインアップは「キングファイルクリップ」(M:550円、L:748円)、「キングファイルふせん」(背見出しタイプ、インデックスタイプ各550円)、「ミニ保存ボックス」(396円)。「ミニチュアサイズだけど、実用的な文房具」との謳い文句で展開しており、発売前からTwitterなどでも関連する多くのツイートが投稿されています。

「店頭で見つけたら、ぜひその場でお買い求めください」

そういって笑顔を見せるのは、キングミニを企画し、商品化に至るまで東奔西走した金谷聡志さん。その表情からは、開発担当者としての喜びと安堵の思いが伺えます。

キングジム 開発本部 ステーショナリー開発部 ステーショナリー課 金谷聡志さん

自社製品のオマージュだからこそ細部まで妥協せず真似る

好調とのことですが、ユーザーの反応を見ていていかがでしょうか。

「文房具として使ってくださっている方だけではなく、ミニチュアとして飾ったり、フィギュアに持たせたりという使い方をしてくださっている方がいるみたいで、そこがうれしいですね」

手前左から、キングファイルクリップM、L、キングファイルふせん背見出しタイプ、インデックスタイプ、奥がミニ保存ボックス

文房具なのに文房具として使われないことに喜びを感じる。これは、キングミニのアイデアの源泉が金谷さんの趣味と関係しているからです。

「私はミニチュアのカプセルトイが好きでよく回していますし、どんなものがあるのか見ているだけでも楽しんでいます。普段見慣れているものがなぜか、ミニチュアになると可愛い。これをヒントに、多くの人が一度は見たことがあるであろう、弊社のキングファイルをミニチュアにしたら面白いんじゃないかと考えたんです」

金谷さんは最初は、シンプルに「ミニチュアを作りたい」と上司に提案します。しかし、キングジムは玩具メーカーではなく事務用品・文房具メーカーです。そう簡単には企画は通りません。それでも金谷さんは諦めません。

「ミニチュアというだけであれば、たしかにうちでやらなくてもいい。ミニチュアにするために何か面白いことができないかと考え、ただ飾るだけじゃなくて、普段使えるようなものにしてみようと。使って良し、飾っても良し。ちっちゃいながら使えるもの。そして文房具メーカーなので、ミニチュア+文房具という企画になりました」

文房具と一言にいっても様々で、どんな機能を持たせるのかを考える必要があります。

「ミニチュアサイズ、つまり手のひらに乗るサイズでどのような機能を持たせれば良いか。カプセルトイもたくさん回して、小さなものをいろいろ並べてみたりして、検討していましたね。」

書類を色ごとに区別して綴じることができるキングファイルクリップ
ぴったり名刺が収まるサイズのミニ保存ボックス
キングファイルふせんは背見出しタイプ(上)とインデックスタイプ(下)の2種類

そうして企画したいくつかの案の中から、キングファイルを模したクリップやふせんなどの商品化のGOが出たのが2021年7月。発売する2022年6月までの間にも様々な苦労があったそうです。苦労した原因は、限りなく“本物”に近い“類似製品”とするため、妥協することなく作り込んだことにあります。

「キングジムがキングジムのオマージュをやるわけですから、細部までこだわらなきゃダメだという思いがあります。例えば、ファイルの縦横比や、背表紙の上部にあるスクエアパターンの黒のフチと真ん中の色の付いた部分の比率を、実物にできる限り近づけています。表面の質感も、元となる商品と同じ感じになるよう、こだわっています」

キングファイルクリップ、キングファイルふせんとキングファイル
ミニ保存ボックスと保存ボックス

ほかにも「マニアックな話ですが」と前置きをした上で教えてくれたのが、ファイルの折り目の内側部分の形状や、キングファイルのインデックスとキングミニのキングファイルふせん インデックスタイプの形状はほぼ一緒。さらには品番もシンクロさせており、例えば実物の保存ボックスの品番は「4370」、ミニ保存ボックスの品番は「MN4370」です。

キングファイルのインデックスとミニチュアふせん インデックスタイプは、サイズも形状も一緒
赤枠部分が品番。おっしゃる通り気づきません

今回、キングファイルと保存ボックスがベースとして選ばれていますが、キングファイルに比べると保存ボックスはイマイチマイナーな気もします。

「保存ボックスは見たことがない人もいるとは思っています。でも、クリップなどとセットで使えるものにしたかった。名刺をぴったり収納できることもアピールポイントですが、クリップやふせんをまとめて入れておくのにちょうどいい、セットでの使い勝手の良さを狙っています」

キングジム逆境下での新たなカテゴリーへの挑戦

企画や開発までのこだわりのお話では、金谷さんの好きを商品化しただけのようにも思えますが、実は開発背景には、ペーパレス化や新型コロナといった時流や社会情勢も関係しています。

「弊社の主力としてファイル関連商品がありますが、ペーパーレス化が進むとともに売り上げが落ちているという状況です。ペーパーレスは新型コロナの影響によるテレワークの浸透でさらに加速しています。そういった状況下で、法人向けのオフィス商品だけではなく、個人向け商品に力を入れていくという流れの中で生まれました」

キングミニは、キングジムとしての挑戦的なカテゴリーであるといいます。

「キングミニは、文房具というより、雑貨に近いシリーズだと思っています。キングジムというブランドにおいて、雑貨という切り口がどこまで通用するかにチャレンジしたいですね」

文房具ではなく雑貨カテゴリーとして、ある意味開き直ってしまえば、販路の拡大も狙えそうです。

「これまで弊社の商品の販売は文房具を取り扱う店舗でした。キングミニシリーズは、若い人が集まるバラエティ雑貨店で取り扱っていただけることを期待しています」

今回は数量限定での販売ということですが、これだけ注目が集まっているのだから定番商品にしてしまっても良さそうに思えます。

「もちろん、ニーズに応じて今後検討していくことにはなると思います。ただ、まずは数量限定商品としてどこまでいけるかを見てからになります。弊社は今までも、オフィス向けには“面白いもの、便利なアイデア商品を作っている”というイメージを持っていただけていると思っています。このイメージを、今までと異なるユーザー層にアピールしていくためのシリーズという位置づけです」

今回のラインアップに限らず、今後キングミニシリーズは拡大していくのでしょうか。

「それも第1弾の動きやユーザーの声を聞きながら検討することになりますが、私自身は集めることがミニチュアの醍醐味だと思っているので、1回限りの点ではなく面で展開していきたいと思っています」

キングミニ・コレクションを自宅にズラリと飾れる日を期待したいですね。最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

「改めてになりますが、見つけたら是非買っていただき、使ったり飾ったりしてみてください!」