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秋葉原のカフェでレジレス体験。ウォークスルーで決済完了

2月12日に秋葉原にオープンした、完全キャッシュレス、レジレスのウォークスルー決済カフェ「Developers.IO CAFE」を体験。さらにこのカフェを運営するクラスメソッドの代表取締役であると同時に、発起人でもある横田 聡氏に話を聞くことができた。

Developers.IO CAFE 外観

Developers.IO CAFEは、その名のとおりカフェであり、お店で淹れてくれたコーヒーと、物販コーナーで購入した菓子などのアテを楽しむ憩いの空間。パッと見では通常のカフェと変わらない、フラッと立ち寄れる場所だ。実際、ウォークスルー体験が目的という人の来店のほか、周辺の人が普通のカフェとして利用することも多いという。

まずは注文から決済までを体験

Developers.IO CAFEでは、コーヒーなどのドリンクは店に着く前、あるいは着いてからアプリで注文し、決済を済ませる。なお、注文などに使うDevelopers.IOアプリ(iOS/Android)を、スマホにインストール、ID登録をしておく必要がある。

店に着く前に専用アプリで注文をして決済

店に到着したら、店内のデジタルサイネージを確認。注文後にはアプリで番号が表示されるので、自分の番号の状況を確認する。

店内のデジタルサイネージ。筆者の番号は28番で準備中

待っている間に、店内の物販コーナーでお菓子を購入。アプリでQRコードを表示し、店内の端末に読み込ませたら、商品棚に進み商品を手に取る。そしてそのまま所定の場所を通過すると同時にポケットの中のスマホが震え(決済の通知)、決済が完了していた。

左側の赤枠部分がQRコードを読み込ませる端末。右側が商品棚。進入禁止の部分を奥側から通過すると手に取った商品の決済が完了する

あまりのスムーズさとあっけなさにキョトンとしているところに、事前に注文していたコーヒーが到着した。

購入したお菓子とコーヒー
注文履歴はアプリの「History」で確認可能

ここまでが一連の流れだが、もうひとつ、Developers.IO CAFE独自のサービスが仕込まれている。カップに、店員がひとつひとつ手書きしたメッセージが書かれているのだ。

カップに書かれた直筆メッセージ

機械的に物事が進むだけであれば、便利になる半面、冷たさを感じてしまうかもしれない。Developers.IO CAFEでは、業務を効率化したことで、店員にはこういったひと手間をかける時間ができ、人の温もりを感じさせるサービスを実現できている。

ウォークスルー決済のために商品の動きと人の動きをセンサーで把握

体験した後、カフェのアプリ注文と物販コーナーのウォークスルー決済について、それぞれどのようなシステムになっているかを聞いた。

カフェは、アプリから注文が入ると、厨房内の端末にその情報が表示される仕組み。現在のところは注文された順番に準備を進めるようになっており、時間指定などはできない。

厨房内の端末

物販コーナーの商品棚には、商品ごとに別々のカゴに置かれている。そしてすべてのカゴの下に、重量を検知するセンサーが配置されている。これにより、商品の増減を把握する。

商品棚
カゴの下のセンサー

さらに天井に設置されたセンサーによって、すべての来店客の動線を把握。

天井に設置されたセンサーと動線などを表示する画面の一部。緑の四角が人がいる場所で、不規則な青い線が現在に至るまでの動き

これらのセンサーは独立して動作しているが、それらのデータがクラウド側に収集、どの人が、いつ、どんなアクションを起こしたかが記録される。そしてクラウド側で総合的な推定をして、購入などを判定。プッシュ通知にて購入商品の通知がスマホに届き、同時に決済が完了する。一度手にして棚に戻したというデータも、クラウド側に記録されているという。

なお、今回は1人で利用したが、複数人が同時に入っても問題なく、またエリアが狭いので今は2人までとしているが、5人でも10人でも可能だという。現在はエリアの拡大を進めており、その規模が大きくなっていくと小売店の規模になると説明した。

目的は人員削減ではなく、来店客により良い体験をしてもらうこと

開発のきっかけは、横田氏自身のAmazon Go体験。なぜ今までなかったのかと感じ、「どうやっているのかわからないけどすごい」と感じ、そしてすごさへの憧れから実行に移す。渡米の際には1日何度も足を運び、天井や棚の裏側などを観察したという。

クラスメソッド 代表取締役 横田 聡氏

そして社員からAmazon Go的なものを作りたい人を募り、開発を開始。Amazon Goを分割して分析してみると、それぞれのレイヤーの知識は社内にある。分割したものに対して小さなゴールを設定し、小さなゴールに対してその道に詳しい人間を社内からアサイン。外部には発注することなく、すべて社内で、天井のセンサーなど市販のものも利用しつつ、様々な部分を自作、手作りで、3週間で完成させてしまった。

手作りの基板

完成させたものをアップデートさせながら、会議室の中で調査と開発のプロセスを3回繰り返したところで、会議室で試行錯誤しているだけでは本当のフィードバックは得られないということで、社員でもなく、クライアント企業でもなく、一般の客を対象とした店を出すことにする。

テナントは2018年12月1日から借り、カフェの準備期間に入る。その後1月半ばから、カフェアプリやオーダー管理、設計などを急ピッチで進める。カフェアプリは、クラスメソッドが行なってきた事業の延長線上だからこそ短期間でできた、15年間の集大成だという。

内観

店員数は店長が1人とアルバイトスタッフが5人。開発のため店内にエンジニアはいるものの、接客をする店員はエンジニアではない。

そこで気になったのが、一般的なカフェに比べてどれだけ人員削減ができるかという点。これを聞いてみると、横田氏は、目的は人員削減や無人化ではなく、客が困っているポイントを解決し、より心地よい体験をしてもらうことであると即答した。つまり、例えばレジで待たされる、呼んでも店員が来ないといった、客のストレスとなる部分を解決することが目的となる。

IT化できる部分もあれば、人がやるべきことも数多くある。人がやる必要がない部分をIT化することにより、人だからこそできること、例えば前述の手書きのメッセージを書くことに時間を費やすことができるようになるのだ。

現在の来客数は累積1,000人以上で、そのうち半分が物販を利用している。ウォークスルー利用者からの意見として、不思議な感覚という内容が多く、利用者の多くは物販コーナーから出るときにソワソワしているという。また、モバイルオーダーについては、全部これになったら良いのにという意見も多いと説明した。

今足りないものは何かを分析し、バージョンアップが続けられている。横田氏は、「ちょっと未来の当たり前になりそうなことを実験している」と話す。そして「シアトルのAmazon Goを体験するには往復で30万円くらいかかるので、それに比べたら似たような体験が300円くらいでできるのであればやってみたほうが良い」と笑った。

Developers.IO CAFEの所在地は、東京都千代田区神田須田町2-25 Gyb秋葉原1階。営業時間は平日の10時から18時。