レビュー

写真・動画編集で求める性能とスタイリッシュさ「DAIV 6H」

BTOパソコンのマウスコンピューターから、クリエイター向け「DAIV」の新モデルとなるノートPC「DAIV 6」シリーズが登場しました。ノートPCとしてはハイスペックに位置するシリーズで、写真・動画編集に威力を発揮するシリーズとなっています。

ラインナップは4機種で、高性能な順に「DAIV 6H」「DAIV 6N」「DAIV 6P-RT」「DAIV 6P」となります。6H、6N、6P-RTの3つは単体GPUを搭載しています。今回、最上位モデルとなるDAIV 6Hをお借りすることができたので、写真・動画編集の観点からのレビューをします。価格は369,800円~です。

スタイリッシュなデザイン

大きさとしては16型タイプとなります。サイズは353.7×245.3×18.5mm(幅×奥行き×高さ)。クリエイター向けのハイスペックPCというと、ゲーミングPCをベースとした少々ゴテゴテしたデザインのものが多かったのですが、DAIV 6Hは新設計となりシルバーの端正なデザインになりました。

ハイクラスの単体GPUを積みながらも厚みは十分抑えられていて、非常にスッキリしていて好感が持てます。本体の重量は約1.65kg。スペックを考えると軽く感じるほどです。

シルバーの綺麗な仕上げになっています
厚みも抑えられています

クリエイター向けというと、まずチェックしたいのがディスプレイ。パネルはノングレアで反射しにくく見やすくなっています。解像度はWQXGA(2,560×1,600)と広め。WQXGAといえば、単体のディスプレイならグラフィック用途向けの30型前後のサイズに使われる解像度です。いわば、デスクトップで大型ディスプレイを使うのと同じ作業領域が使えます。

ディスプレイは狭額縁仕様

実際、Lightroom ClassicとDaVinci Resolve Studioで作業をしてみましたが、かなり多くの情報が表示できます。DaVinci Resolveのカラーページ(色調整画面)などは大変込み入ったレイアウトですが、それがしっかり確認できるのはありがたいところです。

また、アスペクト比は一般的な16:9ではなく16:10と縦方向が少し長くなります。動画編集ソフトなら映像トラックを1~2本余計に出せるので、この違いもポイントでしょう。

Lightroom Classicを表示したところ。高解像度なのでパラメーターの表示数が多くなっています
DaVinci Resolve Studioのカラーページを表示したところ。込み入った画面でも見やすくなっています

SDカードスロットも搭載

続いてインターフェースを見ます。本体右側面は左からThunderbird 4、USB 3.0(Type-A)、フルサイズのHDMI、電源。本体左側面は左からUSB 3.1(Type-C)、USB 3.0(Type-A)、SDカード、ヘッドホン出力/マイク入力となっています。

本体右側のインターフェース
同左側

外部ディスプレイについては、本体の画面を出したまま4K解像度で3出力が可能と十分な拡張性があります。USB関係も充実しているので、外部ストレージの接続も問題無いでしょう。

最近のノートPCでは省かれることが多くなったフルサイズのSDカードリーダーもちゃんと装備しています。UHS-I対応に留まりますが、撮影データをすぐに取り込みたいときにはやはり便利。読込速度は実測で90MB/s前後でした。

SDカードを挿入したところ
Crystal Disk Markによる計測
Blackmagic Design Disk Speed Testによる計測

ACアダプターは専用品で、本体部分は従来の半分ほどに小型化されました。ただし、同梱のACケーブルはデスクトップPCを思わせる太さと硬さでかさばるのが気になりました。ACアダプター周りはもう少しスマートになると良いと思います。オプションになりますが、軽量になる「ショートタイプACケーブル」も選べます。

同梱のACアダプターとケーブル。左端は比較用のiPhone 12 mini

なおGPUの性能が制限されますが、100W出力可能なタイプであればUSB PDでの充電も可能です。

ハイエンドといえる処理性能

CPUは第12世代となる「Intel Core i9-12900H」。GPUはNVIDIAの「GeForce RTX 3070 Ti Laptop(メモリ8GB)」を搭載しています。いずれもかなりの高性能プロセッサで、今日のノートPCではほとんどハイエンドモデルと言ってよいものでしょう。OSはWindows 11 Homeがインストールされています。

DAIV 6シリーズの中では唯一Core i9を搭載しています(他はCore i7)

Adobeなどもそうですが、写真・動画編集のソフトはどんどんGPUを活用する方向に進んでいます。昨今はAI技術を使った様々な処理が搭載されつつありますが、これもほとんどがGPUでの処理が前提となっています。それだけに、クリエイター向けPCでは高性能な単体GPUは欠かせないパーツになっています。

Lightroom ClassicではGPU処理を有効にできます

メインメモリは32GBです。筆者が普段Lightroom Classicで多量の処理をしたり、DaVinci Resolve Studioで4K動画編集をしても使用メモリが32GBを超えるのは希という印象。従って、まずメモリ不足は起こらないと思います。なお、オプションで64GBに増やすこともできます。

Lightroom Classicで約2,400万画素のRAWデータ500枚をレタッチし、JPEGの最高品質(リサイズ無し)で書き出した時間は10分6秒でした。

Blackmagic RAW Speed Testでベンチマークテストをしてみました。GPU処理であれば、BRAW形式の8k60pが扱える性能です

ストレージは1TBのSSDで、NVMeタイプなので速度も申し分ありません。これだとRAWファイルや4K動画のデータもそれなりに保存できるので、作業において外部ストレージを使わなくてもある程度やりくりできる容量でしょう。こちらもオプションで2TBまで増やせるほか、内蔵の2台目として最大2TB SSDを追加できます。内蔵SSDの実測結果は以下の通りです。

Crystal Disk Markによる計測
Blackmagic Design Disk Speed Testによる計測

実使用においても、もちろんLightroom Classicの現像モジュールは引っかかり無くスムーズに動きますし、DaVinci Resolve Studioでは4K60pのXAVC S素材の複数本の同時再生が可能でした。

意外と便利なテンキーも搭載

キーボードはアルファベット部分のキーピッチが約19mmで、これは単体のキーボードとほぼ同じ数字です。それだけに、デスクトップPCに慣れていても違和感なくタッチタイピングが可能でした。キーの表面はさらさらしたマットな感じで、感触も良いものでした。

テンキーを搭載しているのもクリエイター向けPCでは評価ポイントになります。露出値や色温度、タイムコードなどのパラメーター類、そしてレーティングなど数値で打ち込みたいものも結構あります。その際にテンキーがあると、なんといっても効率が良くなります。

タッチパッドは約154×100mmと大きめになっています。左右上部のダブルタップで全面または右半面を無効化でき、文字入力時の誤作動が防げます。といっても、キー入力を試したところでは特に変な動きは無く、試用時は無効化の必要はありませんでした。

キーボードはバックライトを搭載しています。撮影スタジオではストロボ光に影響しないように、部屋の明かりを暗めにしている場合があります。そういった薄暗い環境ではこのバックライトが役立ちそうです。

メインマシンとして不足の無い性能

ざっと見てきましたが処理能力は非常に高く、ミドルレンジのデスクトップPCを超えるほどでしょう。本機が1台あれば、自宅やオフィスで外部ディスプレイを繋いで編集作業をしたり、ロケ現場に持ち込んでの画像チェックと両方問題無くこなせると思います。

30万円台後半という価格ですが、CPU、GPU、ディスプレイの解像度などを考えると高いものではないと思います。そして、これだけの性能をスタイリッシュなデザインにまとめたパッケージングも高く評価でき、まさに”クリエイター向け”というにふさわしいマシンと言えるでしょう。

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。