レビュー

アマゾンのワイヤレスイヤフォン。Echo Budsの確かな実力

アマゾン初の完全ワイヤレスイヤフォン「Amazon Echo Buds(第2世代)」が発売されました。

完全ワイヤレスイヤフォンは、ソニーやボーズなどのオーディオブランドのほか、AppleのAirPods、GoogleのPixel Buds、MicrosoftのSurface Earbudsなど、ビッグテック(GAFA)の各社もスマートデバイスとして展開していますが、Amazonもその一員となったことになります。

名称は「第2世代」ですが、日本でのEcho Buds発売は今回が初。特徴は防水対応やAlexaによる音声コントロール、Alexaアプリによるシンプルなセットアップや「デバイスを探す」などの豊富な機能です。

価格はUSB-C充電ケース付きで12,980円、ワイヤレス充電対応ケース付きで14,980円。Amazonデバイスとしては一般的な価格設定にも感じますが、アマゾンの新提案「Echo Buds」の実力を試してみました。

装着感よし

Echo Budsは、左右のイヤフォンがケーブルレスのいわゆる「完全ワイヤレスイヤフォン(TWS)」です。AirPodsがその代表例でしたが、この数年ですっかり定着しており、市場調査会社GfKによると、イヤフォン市場における完全ワイヤレスの比率は台数ベースで25%とのこと。すっかり市民権を得ているようですが、その一端にはリモートワークの浸透などもあるのでしょう。

Echo Budsのカラーはブラックとグレイシャーホワイトの2色です。今回はブラックを使用しています。

Echo Buds本体のほか、充電ケースが付属し、このケースを使って充電します。バッテリー再生時間は最大5時間で、充電ケースを併用することで最大15時間の再生が可能となります。また、5分間の充電で最大2時間の再生が可能とのこと。

背面にUSB-Cポート

リモートワークで会議に繋ぎっぱなしという場合、5時間は少し心もとなく感じます。個人的には「5時間会議」という日はあまりないですが、会議がない時間は音楽やラジオを聞いたりするので、気づくと残量10%ということもありました(10%になると音声で教えてくれる)。1日充電無しで使うには、少し物足りないかもしれません。

イヤフォン本体は、IPX4相当の耐汗性能で、水しぶきや汗、小雨の中でも使用できるとのこと。重量は5.7g(本体のみ)。充電ケースの外形寸法は66.8×28.6×39.1mm。筆者が使っているソニー「WF-1000XM4」よりひと回り小さく使いやすさは感じられます。

Echo Buds(左)とWF-1000XM4(右)
Echo Buds(左)とWF-1000XM4(右)のケース

イヤーピースが4サイズ付属するほか、耳への装着感を高めるウイングチップは2サイズ同梱されています。また、自分の耳にマッチするかをテストできる「フィットテスト」機能も備えています。

イヤーピースは4サイズ。ウィングチップも同梱
ウィングチップでフィット感を向上できる

まずセットアップは、Alexaアプリから。スマートフォンのAlexaアプリを立ち上げて、充電ケースを開くとセットアップを開始します。[デバイスを追加]から画面の指示に従うだけで、ペアリングは完了。その後、必要な場合ウィングチップを装着すると、「フィットテスト」がスタートします。

Alexaアプリ

Echo Budsを耳穴に入れて、左右に回転させながらしっかりと装着。テストを開始すると音が流れ、Echo Budsの“フィット”具合を検証してくれます。このテストを行ないながら、左右の耳穴にあったイヤーチップを選べるようになっています。

完全ワイヤレスイヤフォンの場合、音質面でも落下防止のためにも「装着感」は非常に重要な要素です。そのためしっかりとしたテストが行なえるのは安心感があります。Aleaアプリでは、イヤフォンをタップして操作の機能割当や、Echo Budsを「Alexaで探す」などの設定も行なえます。

テスト後に装着してみましたが、フィット感はとてもよいです。AirPods(無印)が耳にあわず、WF-1000XM4もイヤーチップを選ぶ筆者ですが、3日間の使用中、落ちたことは一度もありません。少し走ってみても問題なさそうです。ウィングチップの効果だと思いますが、不安なく着けられる完全ワイヤレスイヤフォンといえ、個人的には、ここがEcho Budsの一番のお気に入りポイントです。

なお、Echo Budsは、Alexaアプリ以外の他のBluetoothデバイスからでもペアリング可能です。Echo Budsをケースに入れた状態で充電ケースの蓋を開け、ケースのボタンを3秒間押すとペアリングモードとなり、ケース正面のライトが青く点滅します。ここで、相手機器のBluetooth設定からEcho Budsを探すことで、ペアリングが完了します。ただ、この場合はEcho BudsからのAlexa呼び出しなどは使えません。また、2つのBluetoothヘッドフォンに同時に接続できる「マルチポイント」には非対応です。

バランスの良い音。ちょっと「おしゃべり」すぎる感

イヤフォンなので当然音質は気になります。しっかりと耳に装着し、ノイズキャンセルをオンにして音楽を聴いてみました。

音質については、全体的に情報量がしっかりあり、音源を問わず、バランスよく再生できそう。やや低域よりのバランスですが、低音はそれほど強くありません。筆者が普段使っているソニー「WF-1000XM4」のほうが、低域の太さや高音の繊細さなどが感じられる印象ですが、Echo Budsも明瞭で骨太なサウンドでしっかり音楽が楽しめます。また、マイクの品質も良好で、リモートワークでも実用的に使えます。

ソニーWF-1000XM4と比較し、音の聞こえ方の違いが感じられたのは、音の広がり(音場)がやや狭く、またノイズキャンセル時にはやや圧迫感があることです。WH-1000XM4のほうが開放的な印象です。また、ノイズキャンセルの効きはかなり強く、エアコンの風など持続的なノイズはほとんどカットされます。一方、人の声など断続的なノイズはそれなりに聞こえます。

Echo Budsではノイズキャンセルから、外音を聞きやすくする「アンビエントサウンド」にも切り替えられます。切り替えても音質はさほど変わりませんが、若干音の広がりに違いが感じられ、ノイズキャンセルのほうが“狭い部屋”のような密閉感があり、サウンドの輪郭が少し強調される印象です。個人的にはアンビエントサウンドのほうが気軽に聞けると感じます。

ノイズキャンセルとアンビエントサウンドの切替は、イヤフォンの長押し、もしくはAlexaアプリのデバイス設定で行なえます。

アンビエントサウンドは、5段階で外の音の取り込みを調整できます。最大にするとノイズが少し大きくなりますが、外部の話し声などが聞きやすくなります。この外音取り込みについては、ソニーWH-1000XM4のほうが優れており、自然で開放的に感じられます。ただし、WH-1000XM4の実売価格は約3万円とEcho Budsの2.5倍です。

Echo Budsは、イヤフォン本体のタップでも操作可能です。初期設定では左右のイヤフォンに4つのジェスチャーが設定されており、1回タップすると再生/停止、2回タップで次の曲/通話応答、長押しでノイズキャンセルとアンビエントサウンドの切り替えなどです。

  • シングルタップ:メディアの再生または一時停止
  • ダブルタップ:次の曲、通話応答または終了
  • トリプルタップ:前の曲
  • 長押し:ANCとアンビエントサウンドの切り替え

また、左右のタップごとに機能を割り当てられるので、左のタップは一時停止/再生、右はアレクサ呼び出しといった設定も可能です。シンプルで使いやすいですが、タップ後のレスポンスは少しだけ待たされる印象です。

Alexaアプリでタップ時の操作を設定できる

少し気になったのは、ノイズキャンセル/アンビエントサウンドの切替時の応答音声の“長さ”です。

イヤフォンを長押しタップすると

「ノイズキャンセレーションをオンにします」
「アンビエントサウンドがオンになりました」

と、現在の状態をEcho Budsが応答するのですが、この音声が流れている間は、音楽や通話の音量が絞られてしまい聞こえません。やたら丁寧で冗長な表現なのが気になります。

「モードが変わった」が伝わればいいので、丁寧な言葉使いは必要はないはず。例えば、「ノイズキャンセル」「アンビエントサウンド」だけであれば、音が切れる秒数を1~1.5秒程度は削れると思いますが、丁寧な表現ゆえに“待たされてる感”が高まります。もう少し応答音声を短くしてもよいと感じました。

「アレクサ、リラックスできる曲を15分間再生して」

Amazonデバイスなので、当然アレクサ(Alexa)による音声コントロールにも対応します。

「アレクサ、カレンダーの次の予定は?」などと話しかければ、次の予定を読み上げてくれますし、「今日の天気は?」といった問いかけにもアレクサが「今日の天気は晴れ、最高気温は~」と答えてくれます。また、Amazon MusicやApple Music、Spotifyなど、音楽サービスの楽曲検索や再生・停止などのコントロールにも対応します。

散歩中に「アレクサ、リラックスできる曲を15分間再生して」と話しかけると、一定時間音楽を再生するなど“曖昧”な指示にも応答します(スマートフォンとのBluetooth接続が必要)。帰宅時に、それまでEcho Budsで再生していた曲の続きを、自宅のEchoスピーカーで「アレクサ、続きをかけて」と呼びかけることで引き継ぐ、といった連携にも対応します。

また、家の中などで見つからなくなったEcho Budsを“探す”機能も搭載しています。

Echo Budsが見つからなくなってしまった場合、Alexaアプリのデバイス設定上で「デバイスを探す」ボタンを押すと、Bluetoothの範囲内にあるEcho Budsからチャイム音を鳴らし、探せるようになります。ただ、探せるのはBluetoothが届く範囲なので10m程度です。外出先で落とした場合は使えません。また、この機能を使うには、Alexaアプリで常に位置情報を取得する設定にする必要があります。

Alexaで探す

Alexaアプリではその他多くの機能や設定が用意されています。イヤフォンとケースのバッテリー状態のほか、マイクのミュート、ノイズキャンセリング/アンビエントサウンドモードの切替え、ランニング/ウォーキングのトラッキングを開始するためワークアウトボタンなどの操作が行なえます。

なお、Echo BudsはAlexaだけでなく、GoogleアシスタントやSiriなどに割り当てることもできます。スマートフォンでそれらの音声アシスタントを使っている場合は、Alexaアプリで左右のイヤホンの長押し設定をカスタマイズし、音声アシスタントの起動を設定できます。

バランス良い、オーソドックスなワイヤレスイヤフォン

短期間の使用ですが、Echo Budsは非常にバランスの良いイヤフォンだと感じます。AirPods Pro(30,580円)/AirPods(23,800円)やソニー「WF-1000XM4」(約3万円)、25日発売のソニー「LinkBuds」(23,100円)など、常時装着し、外の音を自然に聞かせるワイヤレスイヤフォンも増えていますが、Echo Budsはそれらとは少し位置づけが違います。シンプルなノイズキャンセルイヤフォンとして必要な性能を小さなボディにまとめた製品です。

Echo Budsの価格は12,980円。ワイヤレス充電対応ケース付きで14,980円です。ノイズキャンセル対応で、1~1.5万円程度の完全ワイヤレスイヤフォンは他にもあり、利益がほぼのっていない“破壊的な低価格”が多いAmazonデバイスにしては“破格”という印象はありませんが、装着感や音質、機能、ケースの小ささなど、バランス良く、隙の無いデバイスと言えます。

臼田勤哉