レビュー

非接触で“睡眠”を知る。いびきもわかるスピーカー新Google Nest Hub

新しい「Google Nest Hub」が5月5日に発売開始されました。7型ディスプレイを持つGoogleスマートスピーカーの最新モデルですが、最大の特徴は“睡眠”を検知し、眠りの質の改善などに役立てられる「睡眠モニター」を搭載したことです。

“睡眠”の記録や管理という点では、Apple WatchやGarmin、Fitbit、シャオミ、ファーウェイなどのスマートウォッチ・フィットネストラッカーに、そうした機能を備えたものが増えています。

スマートウォッチ等の睡眠検知はとても優秀ですが、弱点として睡眠時に「身につける」必要があります。気にならない人は問題ないですが、「つけていると気になって眠れない」という人もいるでしょう。筆者もその一人です。

その点、新Nest Hubでは身に付けずに「寝るだけ」で、睡眠を検知し、改善のためのアドバイスも行なってくれるとのこと。睡眠モニター的な機能を持つベッドやスマート睡眠パッドなども発売されていますが、1万円程度のスマートスピーカーにこの機能が入ったということは、画期的です。

第2世代Goolge Nest Hubの価格は11,000円。カラーはChalk、Charcoalの2色展開です。今回は、最大の特徴といえる「睡眠モニター」を中心に試しました。

デザインはそのままに音質やジェスチャーなど強化

Nest Hubは、7型/1,024×600ドットディスプレイを備えたスマートディスプレイ。2019年発売の初代Nest Hubと並べて比較してみると、サイズやデザイン的にはほぼ共通です。ただし、低音再生能力を約50%強化したほか、新機能の「睡眠モニター」に対応するため、本体上部に「Motion Sense」用のセンサーを搭載しています。

Google Nest Hub(第2世代)
上部にマイクを装備

スピーカーは43.5mmフルレンジで、YouTube Music、Spotify、Apple Music、Pandoraなどの音楽やポッドキャスト、オーディオブックの再生に対応。低音を50%強化とのことで、従来のNest Hubと比べてみるとたしかにパワフルで、どっしりとした低音が出ています。同じような音量でもしっかりバランスよく音楽が聴けるようになり、スピーカーとしても進化していることがわかります。

背面。マイクのON/OFFスイッチを装備
側面。奥行きは69.5mmと短く、設置しやすい

Netflixや、YouTube、Hulu、U-NEXTなどの映像配信サービスにも対応。Google アシスタントによる音声操作のほか、画面に触れずにコンテンツの一時停止や再生などの操作ができる「クイックジェスチャー」に対応しました。

このクイックジェスチャーもなかなか便利。特にタイマーの停止などが、手をかざすだけでできるので重宝します。ベッドサイドに設置する場合、目覚ましタイマーとしても活用しますが、その際のアラーム停止やスヌーズも本体に“触れずに”行なえます。

ちょっと物足りないのは機能が限定されていること。可能な操作は、音楽や動画の再生と一時停止、タイマーの停止、アラームのスヌーズ切り換えだけです。音楽の曲送り/戻しなどができるようになると便利なのですが、現時点ではそうした機能はありません。

無線LANはIEEE 802.11b/g/n/ac対応、Bluetooth 5.0も備えています。電源は15WのACアダプタ。外形寸法は177.4×69.5×120.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量は558g。

睡眠モニターで非接触で眠りを把握

設置の“前準備”を念入りに

最大の特徴が、睡眠を理解・改善し、安眠をサポートする新機能「睡眠モニター」です。Nest Hubでは、Soliレーダー技術による「Motion Sense」により、人の動きや呼吸を非接触で察知し、その人が「どのように眠っているか」分析してくれます。

大きな動きだけでなく、数mmレベルの小さな動きも検知できるため、咳やいびきなどの睡眠障害も検出します。朝、起床すると「睡眠サマリー」がディスプレイに表示され、自分の睡眠データを確認し、睡眠の状況の把握や改善に役立てられます。

ただ、睡眠モニターの活用の前にセットアップが必要です。普段寝ている場所の脇に設置する必要がありますが、結構条件が厳しいので注意が必要です。具体的なセットアップ方法は以下のとおりです。

  1. マットレスの上面と同じぐらいの高さで、頭や胸の近く(足元などはNG)
  2. ベット脇にNest Hubをセットし、マットレスから約30~60cmの範囲、または腕を伸ばして届く範囲に置く
  3. 睡眠を検知できるようNest Hubを胸部に向ける
  4. 自分とNest Hubの間に障害物を取り除く
  5. シーツの上で普段寝ている場所に横になる

つまり、マットレスの上面と同じ高さ、かつマットレスから30~60cmで、胸の動きがきちんと感知できる場所に置く必要があります。筆者の環境では、マットレスから10cm程度しか距離がとれていませんが、寝る場所からの距離は50cm以上あるので、ひとまずこれでOKと判断しました。

マットレスと同じ高さとし、寝ている人から一定の距離を保つには、ベッドサイドテーブルなどが必要かもしれません。一人暮らしのワンルームなどで、これだけの空間を用意するのは難しい場合もあり、睡眠モニターはある程度、部屋とベッドの広さが必要な機能といえます。

設置例

一般的な睡眠モニターでは、アクティビティトラッカーやスマートウォッチなどを身にまとう必要があります。しかし、Google Nest Hubではレーダーを使うことで、「非接触」で睡眠の状況を検出・分析できるため、寝る時にバンドや明かりなどが気になるということがありません。これは大きなメリットといえます。

Googleでは、数千名による10万回以上の睡眠データから検知のためのアルゴリズムを開発。非接触式のデータ検出ながら、市販の「スリープトラッカーと同等かそれ以上」の精度を持つとしています。

セットアップ自体は、画面に従うだけで、3分程度で終了します。台の高さやベッドからの距離など、“事前準備”のほうが大変なデバイスといえます。

なお、Soliが睡眠を検出するのは1人だけです。一緒に寝ている人やペットなどの動きは検出しません。そのため、睡眠データを取得するためには、基本的に同じ場所で寝る必要があります。

結果を見てみると……

10日間ほど使用したので、「睡眠モニター」の結果を見てみます。朝、起床すると、パーソナライズされた睡眠サマリーがディスプレイに表示され、自分の睡眠データを毎日確認できるようになっています。

確認できるデータは、主に「睡眠の長さ」「スケジュールの一貫性」「睡眠の質」の3点です。

睡眠モニター

睡眠の長さは6時間15分などの時間で、一貫性は睡眠パターンが一定であるかどうかを判定。睡眠の質では、睡眠時間のほか、睡眠が浅くなっている時間や、いびき、咳などの時間を検出。また部屋の明るさや室温などもスクリーン上で確認できます。

睡眠時間
スケジュール
睡眠の質

例えば5月12日のデータを見ると、睡眠時間は5時間51分で短く、睡眠時間が遅く、午前6時前にいびきをかいていることがわかります。いびきは自分ではわからないですし、日によって大きな差があることなどがデータから把握できます。

中・長期的なデータは、スマホのGoogle Fitアプリ(Android/iOS)で確認できます。睡眠モニターのデータのほか、対応したスマートウォッチやトラッカーの運動・健康データなどもまとめて見られるので、日々の健康状態や運動の履歴などが一目でわかるようになります。

Google Fitアプリ

ゴールデンウィークを挟んだこともあり、かなりメチャクチャな睡眠習慣でしたが、睡眠モニターの結果を見ると、「時間通り就寝していません」などとかなり厳しい評価がなされています。

改善案も、「就寝9時間前からカフェインを控える」など、なかなか厳しい提案がされています……。一つずつでも守って少しは、睡眠の質を上げていこうというモチベーションにはなりそうです。

Googleによれば、こうした睡眠データの取得により、睡眠の質の向上や生活習慣の改善を図り、健康につなげていけるとのこと。また、長期的な呼吸状況の把握などにも利用可能で、データを元に睡眠について医者に相談し、睡眠時無呼吸症候群が発覚することもあるとのこと。

なお、スマートウォッチなどでは、睡眠の“深さ”など、詳細な睡眠の状態まで把握するものもありますが、Nest Hubにはそうしたデータはありません。取得するのは、目が覚めている時や、いびきや咳の状況なので、詳細なデータが必要という人は、身につけるデバイスが必要かと思います。

なお、データはデバイス上で処理され、睡眠データのみがGoogleのクラウドに送信されます。せきやくしゃみなどは録音されず、いびきも“発していた”という情報だけが、クラウドに送られるとのこと。かなりプライバシーには配慮した設計と言えそうです。使わない場合はオフにできます。

また、スマートウォッチや手首につけるスリープトラッカーは、充電を忘れるという課題もありますが、Nest Hubの睡眠モニターは、常に通電しながら、非接触で睡眠を把握できるため、日々の作業のストレスは少ないと言えそうです。

気になるのは。睡眠モニターは「2021年中は無料のプレビュー版として提供」とされていいること。どうやら、来年以降は有料サービスになる可能性がありそうです。今後は、Google子会社のFitbitのスマートトラッカーとの連携なども検討していくとのこと。

第2世代Nest Hubでは、睡眠モニターのほかにも、寝室用の機能を強化。ホーム画面の「夜のおすすめ」では、明日の天気や起床アラーム、睡眠用のライトと音楽が1画面で管理できるようになっています。明日に備えて眠りにつくという意味で、多すぎない情報が助かります。また、画面もダークモードとなっています。

夜のおすすめ

またアラームは、徐々に音が大きく、画面が明るくなる「目覚ましディスプレイ」に対応。「手をかざしてアラームを止める」といった操作も可能です。

目覚ましディスプレイ

魅力的な新モデル。寝室縛りが悩ましい

新Google Nest Hubの睡眠モニターの最大のメリットは、「就寝時に身に着けなくていい」という点でしょう。

筆者もApple Watch購入時に、睡眠トラッキングに挑戦しましたが、気になって眠れず、すぐに辞めていました。そうした人でもNest Hubであれば、睡眠モニターを続けられそうです。

また、基本的なスピーカー機能の向上も魅力的です。普段遣いのスピーカーとして低音がしっかり出るようになり、初代Nest Hubよりかなり音質が向上し、気持ちよく利用できます。また、ジェスチャーも便利なので、初代モデルからの買い替えも魅力的と感じます。

悩ましいのは、睡眠モニターを中心に考えると、どうしても「寝室」という場所に設置場所が固定されてしまうことです。最新のスマートスピーカーは、映像や音楽、スマートホーム連携などの利用頻度の高いところに導入したいところですが、寝室でそれらの機能を使わない筆者の場合は、せっかくの機能を活かせません。

筆者の場合は、スピーカー利用が多いリビングのNest Hubをアップグレードし、寝室に旧型を持ってきたいのですが、睡眠モニターを優先するとせっかくの音質アップグレードをリビングで享受できなくなってしまいます。もっとも非接触での睡眠検知は、スマートスピーカーとしては唯一無二の機能ですので、しばらく使い続けてみたいと思います。

臼田勤哉