レビュー

酷暑をしのごう。ソニーのREON POCKETとアシックスの空冷ジャケットをダブル利用

2種類の冷感ウェアでどれだけ涼しく過ごせるか、チェック!

夏の厳しい暑さを和らげる「冷感ウェア」の市場がいつになく盛り上がっている。おそらくこの手の元祖はキャップやヘルメットに仕込まれた小型ファンで額や頭部を冷やすものだったと思うが、最近はファンを内蔵するジャケットや、特殊な素材で冷気を感じさせやすくするウェア、首周りを涼しくするネックバンド型クーラーなどさまざまなタイプが登場してきている。

今回はそのなかでも注目度の高いニューフェイス、ソニーの「REON POCKET」(本体13,000円、専用インナーウェア1,800円)と、アシックスのファン内蔵ジャケット「AIR CONDITIONWEAR」(27,000円)の2種をお借りして、実際にどれだけ涼しさを感じられるのか試してみることにした。さらに「2つ同時に使えば2倍涼しくなるのでは?」という筆者の勝手な想像のもと、2つの冷感ウェアを併用したときの快適さも確かめてみた。

冷温デバイス「REON POCKET」とは?

まずはソニーの「REON POCKET」だ。こちらは冷感ウェアというより「冷温デバイス」と表現するのが正しい。通電することで温度が変化するペルチェ素子と呼ばれる素材を内蔵したパッドと、放熱用のファンを備えており、これらを内蔵バッテリーで駆動させることで、パッドに接している部分を冷やす(もしくは暖める)ことができるものだ。

ソニーの「REON POCKET」本体
ややグレーの四角いエリアが冷却・暖めをしてくれるパッド部分
充電用にUSB Type-C端子を備える

このデバイスは単体で使うのではなく、背中側の首元に小さなポケットの付いた専用のインナーウェアにセットして使うのが前提となる。また、REON POCKETの操作は専用のスマートフォンアプリから行なう形になっていて、電源のオン・オフ、冷却・暖めのレベル調整(各4段階)、放熱ファンの動作速度の変更(3段階)が可能。つまり、REON POCKET本体、専用インナーウェア、スマートフォンアプリの3つを組み合わせて利用するデバイスというわけだ。

専用のインナーウェアと組み合わせて使う
インナーの内側に小さなポケットがあるので、ここにREON POCKETを差し込む
インナーの背中側には穴が空いていて、ここから本体の放熱ファンで熱を逃がす
REON POCKETを操作する専用アプリ

インナーにセットするスタイルのため、他の冷感ウェアと違って使用中であることが目立たず、服装に気を使うビジネスシーンでも活用しやすいのが利点の1つでもある。スペックシート上の駆動時間は温度レベル3の設定で2.5時間としており、その短時間でどれほどの効果が得られるのか、さらには首元をピンポイントで冷やすだけで本当に涼しく感じられるのか、というのが気になるところ。

実際に着てみたところ
ここに上着を羽織ることになるので、デバイスそのものは全く目立たない

ファン内蔵ジャケット「AIR CONDITIONWEAR」とは?

一方、アシックスの「AIR CONDITIONWEAR」は、ウインドブレーカーのようなフード付きのウェアに2つの大型ファンが装着されたもの。ウェアの内側ポケットに専用のバッテリーケース(単三電池4本)を収納できるようになっており、ファンから伸びる電源ケーブルを接続してスイッチを入れることで、ファンを動作させて外気をウェア内に取り込む仕組みだ。ファンの強弱は2段階で調整可能となっている。

アシックスの「AIR CONDITIONWEAR」
腰の両脇に大きめのファンが取り付けられている
ウェアの内側に専用バッテリーケースを収納するポケットがある
単三電池4本で動作する
ファンから伸びる電源ケーブルを接続。スイッチで風力の強弱を切り替えられる

セフト研究所と株式会社空調服の技術を応用した、シンプルな構造の製品だ。しかしながらスポーツ用品メーカーのアシックスらしく、運動の合間に着ても、あるいは日常生活のなかで利用しても違和感のなさそうな見た目は、これまでデザイン面がネックでなんとなく避けてきた人にとっては魅力的にうつるのではないだろうか。

個人的には、真夏にウインドブレーカー風のウェアを着ることを考えるだけで暑くなりそうだし、周囲の目も気になるなあ、なんて思ったりするのだが、果たして……。

身体を“芯”から冷やしてくれる(?)「REON POCKET」

REON POCKETの電源を入れると、ほとんど瞬時にパッド部分が接する首元にひやっとした冷たさを感じる。温度設定をレベル3、もしくは2分間だけ強力に冷却してくれる「BOOST」モードにしてしばらくすると、背中から頭にかけて圧迫感というか、かき氷を一気にかき込んだときにも似たような冷感が走るほどだ。

室温30度の仕事部屋で使ってみる
2分間だけMAXの出力でガンガン冷やしてくれるBOOSTモードもある

ただ、パッド部がひやっとするのはほとんど最初だけで、冷却するのがピンポイントなせいか数分もたつとあまり冷たさを感じなくなってくる。連続稼働時間は30分間で、それを過ぎると自動で電源がオフになる仕様も、使いはじめの頃はなんだか物足りなく感じたりもする。

ところが、冷たさを感じなくてもパッド部分が接する背中を指で触れてみるとガッツリ冷たいので、電源を入れている限り絶え間なく冷やされていることは間違いない。身体全体での「涼しさ」は体感しにくいが、長時間稼働させていると明らかに背中は「冷やしすぎ」の状態になっていて、肩こりの原因になりそうな予感もある。なので、30分での自動電源オフは妥当なところではないか、としばらく使い続けると思うようになってくる。

放熱ファンの騒音については、レベル1の強さなら気になるほどでもない。が、レベル2、3にすると甲高い音も混じってきて耳につく。本体が耳に近い場所にあることも関係しているだろう。ペルチェ素子で冷やされた分、このファンからは熱として放出される仕組みなので、ファンから出てくる風も暖かい。通常は専用インナーウェアに上着を羽織ることになるわけで、上着がファンの風を遮って内側に熱がこもり、背中側や首の上の方がほんのり暑く感じられるときもある。なので、可能な限り風通しの良さそうな上着を選びたいところだ。

気温28度・湿度70%以上の屋外では?

実際に屋外で使ってみるとどうだろうか。気温28度・湿度70%以上の屋外でREON POCKET(と半袖の上着)を着たまま、温度レベル2、ファンの強さ2に設定し、30分間ほど庭でモバイルワークをしてみたところでは、終始目立った発汗を感じることがなかった。これは、室温30度・湿度63%の室内でも同様。じめじめした蒸し暑さによる不快感もゼロで、快適に過ごすことができた。背骨付近を中心に、身体を巡る血液をうまく冷やしてくれているのだろうか。首元だけが冷たく、はっきりとした涼しさを体感できてはいないのに、全体としては暑くない。なんだか不思議な感覚だ。

ノートPCの電源さえ確保できれば、庭で1日中仕事できそうなくらいだった

でもって、汗の影響を受けにくい場所にあるREON POCKETは、もしかして運動中にも使えるのでは? なんて思いつきから室内サイクリングをしながら使ってみたのだが、これがなかなか興味深い結果になった。

普段はサーキュレーターとエアコンをフル稼働させながら自転車をこぐところ、サーキュレーターのみを動かし、REON POCKETを装着してワークアウトしてみる。室内は気温30度・湿度65%に達し、様子を見に部屋に入って来た家族がその蒸し暑さに顔をしかめるほど。しかし筆者自身はそこまで不快さを感じず、しばらくの間いつも通りペダリングできた。

室温30度でも、サーキュレーター+REON POCKETでわりと問題なく室内サイクリングが可能

それでも開始から35分、心拍数が140を超えたあたりでさすがに身体の熱が発散されない感じになり、いつも通りエアコンを全開に。とはいえ中程度の運動量なら、REON POCKETが確実に効果を発揮してくれることがわかった。

そしてさらに違いを感じられたのが運動後だ。普段なら激しい運動をした後は冷たいシャワーを浴びてもなかなか体内の熱が逃げず、30分くらいはじわじわ発汗し続けるところ、REON POCKETを使った場合は身体の熱が引く時間(発汗が収まる時間)が明らかに短くなっていた。身体の芯から冷やしてくれているのか、シャワー後、なんなら熱いお風呂で身体を温めたいと思ったくらいだ。

これが健康面でいいことなのか、良くないことなのかまではわからない。が、熱が身体にこもりにくいおかげで、運動後のさっぱり感が早くから得られたのはうれしい効果だった。

オフィスのエアコン問題も解決する「AIR CONDITIONWEAR」

AIR CONDITIONWEARは、一見すると完全にウインドブレーカーなので、真夏に着るのは室内であってもためらわれる。ファン2個と単三電池4本を収納したバッテリー部があるせいで、手に持つとずっしりくる重さもためらう気持ちに拍車をかける。が、それも着てスイッチをオンにすれば文字通り吹き飛んでしまう。ファンのうなり音とともに冷風に包み込まれ、長袖を着ていることをまったく意識しなくなるのだ。重さも着てしまえば気にならない。

ファンの電源をオンにするとウェアが若干膨らみ、内部で空気が循環する

静かな室内だとファンの音は弱であっても目立つ。周囲の音をしっかり聞き取りたいときなど、ノイズに敏感な仕事の最中に動作させるのはNGだろう。しかしそうでなければ、AIR CONDITIONWEARの活躍の機会はかなり多い。1年を通じて最高の仕事着になるのでは、と思ったくらいだ。なぜならファンを動作させれば冷房に、動作させなければ防寒着に、というように、AIR CONDITIONWEARは「プライベートな冷暖房装置」になるからだ。

たとえば職場では、座席とエアコンの位置関係、もしくは人によって異なる体温、体感温度の違いなどで、エアコンの温度設定を巡る骨肉の争いが日々繰り広げられていると聞く(筆者が会社に勤めていた頃も少なからずあった)。しかしAIR CONDITIONWEARを着ていれば、暑いときは自分のファンをオンにすればいいし、寒いと感じるときはオフにするだけでいい。

30度の室内でも快適に仕事をこなせる

室内の温度設定にかかわらず(外気を取り入れるので全く関係ないわけではないが)ある程度は一定の快適さを保ってくれるから、同僚と無駄な争いを起こさずに済み、仕事の効率を常に一定にキープできる。仕事着としての見た目の違和感も少ないので(決まったユニフォームがある職場は別として)1日中着ていても問題ないようにも思う。

気温28度・湿度70%以上の屋外、それと室温30度・湿度60%以上の室内で仕事をしてみたところでは、空気をウェア内で循環させ、暖かい空気や湿気を袖口などから逃がしているのがわかる。もちろん汗をかくことはなく、常に快適なまま。おそらくファンの風が汗を蒸発させるときの気化熱の影響もあって、多少気温の高い場所でもAIR CONDITIONWEARを着ている方が涼しく感じられる。背中側に大きめのファンが2つも付いているので、背もたれのある椅子だと寄りかかれないようにも思えるが、うまく脇に避けてくれる格好になってほとんど邪魔にならない。

やや蒸し暑い屋外でも汗ばむようなことすらなかった

単三電池4本で駆動させることから、予備の電池さえ用意しておけばずっと連続動作させられるという点もメリット。さすがにこれを着ながら激しい運動をするのは、汗を逃がしきれないのと、ファンやバッテリーケースが防水構造になっていない(汗が浸水する可能性がある)こともあって避けた方が無難ではある。けれど“普段着”として使うのであれば、AIR CONDITIONWEARはかなり高いポテンシャルをもっていると言えそうだ。

室温40度超の環境で2つを同時に使ってみると……

身体を芯から冷やすREON POCKETと、体表面の風通しを良くして涼しくするAIR CONDITIONWEAR。この2つを同時に使えばさらなる涼感が得られるに違いない! と考え、試しに衣類乾燥機能の付いた自宅の浴室にこもってみた。室温は42度以上だ。湿度は40%余りと低いが、素っ裸になった状態でもあまり長居したくないサウナのような環境である。

室温42度以上の浴室。実験中は44度まで上昇した

REON POCKETを装着し、AIR CONDITIONWEARを着て、若干汗ばみながら浴室に突入。さっそく怒濤の熱気に襲われるが、2つとも電源をオンにすると、まずはAIR CONDITIONWEARのファンがウェア内の熱気を奪い、続いてREON POCKETが血液を冷やしはじめる。

REON POCKETのファンからも熱気が放出されるが、AIR CONDITIONWEARの風が首元あたりの空気も循環させる連携プレーで冷却効果がさらに高まっているようだ。数分もするとAIR CONDITIONWEARのファンが熱風を吹き付けてくるように感じられるが、耐えられないほどではない。数十分はいけるか……。

写真からは伺えないが、REON POCKETとAIR CONDITIONWEARを同時着用している。室温が42度もあると快適に過ごせる……とは当然言えないが、意外と我慢できるレベルではある

と思いきや、しばらくするとREON POCKETが高温のため動作を自動停止してしまった。AIR CONDITIONWEARは問題なく動作し続けていたけれど、こちらもモーターやバッテリー(電池)の寿命を考えると、温度の高すぎる環境で使い続けるのは控えた方が良さそうだ。

冷感を得るための補助的なアイテムとして

今回は実験的に高温の室内で試してみたりもしたのだが、そもそもこういった冷感デバイス・ウェアは、極端な高温下で長時間過ごせるようにするためのものではない、ということは頭に入れておきたい。たとえば炎天下の屋外では、REON POCKETが直射日光による急激な体温の上昇や有害な紫外線などを抑えるのに役に立つわけではないし、AIR CONDITIONWEARも外気が高温になってしまえば逆効果になり得る。

言わば、気温・室温の変化が大きい状況にあっても、体温の上下動を最小限に抑えて体調維持をサポートしてくれるもの。これらを使っていれば夏のどんなに暑い場面でも安心、というわけではない。炎天下での作業は極力避ける、室内冷房を適切に使う、水分をしっかりとる、といった基本的な熱中症対策を前提として、そのうえでさらなる涼感を得るための補助的なアイテムとして用いるのが正しい利用方法だ。

そういう意味では、どちらか1つを使うだけでも効果は確実にあるし、両方を同時に使えば涼感倍増とは言わないまでも、2つのいいとこどりをしながら過ごしやすさを一段とアップできる。在宅勤務をしていると電気代が気になりがちだが、冷感デバイス・ウェアをうまく活用することでエアコンなどの冷房効率を高め、電気代を節約することにもつながるはずだ。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。