ミニレビュー

コクヨ「STAND BACK PACK」に感じた、バッグが“自立する”メリット

「STAND BACK PACK」13.3インチモデル

コクヨからテレワーク時代に向けたバックパック「STAND BACK PACK」が登場した。収納するPCのサイズに合わせ、13.3インチモデルが16,500円(税別)、15.6インチモデルが19,000円(税別)。カラーはともにネイビー・ブラックとグレーの2色展開で3月10日から発売される。発売に先立ち使用する機会を得たので、その使用感をレビューしてみよう。

2度目の緊急事態宣言が発令され、一般化しつつあったテレワークがさらに求められている現在、自宅で仕事をする時間が増えた人はより一層多いと思う。とはいえ、長時間自宅だけで仕事をするのは苦痛ではないだろうか。お子さんがまだ幼ければ遊び相手をしなければいけないし(むしろ積極的に遊びたい人も)、ひとりになりたい人もいるだろう。私のようにもともとテレワーク状態のフリーランスは家事の分担も年々増えている。

そんなテレワーク時代に注目されているのが「サードプレイス」。カフェやシェアオフィスなど、第3の働く場所を用意することで気分を変え、より仕事がはかどるという理由だ。

そんなサードプレイスでのテレワークに向けて発売されたのが「STAND BACK PACK」。同じコンセプトのもと立ち上げられた新ブランド「THIRD FIELD」のラインアップの1つで、PCと周辺機器を中心に必要最小限のものを持ち運ぶのに最適、とコクヨが開発した。さて、どのようなところに文具・オフィスツールメーカーならではの「バックパック」の理想がつまっているのだろうか。

容量は12L、マチは10cm。本当に必要なものだけを持ち運ぶ

パッと見、ビジネスバッグに見えるのはマチの薄さからだろうか。サイズは290×425×100mm(幅×高さ×奥行)。マチが10cmしかないのでよくあるPC用バックパックに比べ「入らなそう」と感じてしまう。しかし、収納量は「ミニマム」をデザインコンセプトにしている以上、期待すべきではない部分だ。容量12LなのでノートPCと資料、文具に貴重品が入れば十分、というユーザーをターゲットにしていることが、むしろ分かりすぎるほどに分かる。

一見、よくあるビジネスバッグ風

そんな第一印象の「STAND BACK PACK」だが、最大の特徴は「スタンド機能」。商品名に冠されているだけに、このバッグの“売り”ポイントだ。具体的にはフロントポケットがフラップ状に開き、バッグそのものを支えることで自立するというもの。スタンド機能は、他のTHIRD FIELDラインアップにも搭載しているイチオシの機能なのだ。

自立するSTAND BACK PACK

自立することに利便性を感じるかどうかは使う人次第

下部が開いて自立するというギミックには目を引くところがあるが「実際にはどのように役に立つのだろう」と思ったのが本音ではある。私自身が普段PC用バックパックを10年以上背負っているので、つまり、自立しないことに慣れているのであまり不満に思っていないからだろう。

コクヨいわく「自立することでワークツールが取り出しやすく片付けやすい」とのことだが、そのメリットは使う人により感じ方が異なると思われる。むしろ、世の中がテレワークになったがために普段バックパックなど背負わないビジネスマンが使用する場合は自立する機能が当たり前となり、普通のバックパックでは不便・もの足りないと感じるようになるのかもしれない。

私の使い方としては、ツールの取り出しやすさよりも「床に立つ」ことそのものが便利だと感じた。カフェやシェアオフィスでバックパックをどこに置くかというと、ベストなのは隣の椅子だ。だが、2席占有するのははばかれるシーンの方が多い。その場合は椅子の背もたれに背負わせるのだが、室内スペースに余裕がないと通路にせり出してほかの人の移動を妨げることになる。結果、床に置くのだが、たいていは自分の座る椅子にもたれかかってグニャリ感が出てしまう。気づくと完全に床に寝ていることも多い。それがSTAND BACK PACKであれば自分の横にスッと立っていてみっともなさが解消されるのだ。

かたわらに佇むSTAND BACK PACK

この床に立つという利点、シーンは異なるがクライアントとの会議や打ち合わせ、企業取材の際にも活かせると思う。会議のたぐいはPCと資料数枚しか持っていかないことの方が多いので収納力は問題なし。そして会議室の椅子は座り心地のよい背が丸いタイプが多く、バックパックをかけにくい。さらにそのようなシーンではバックパックそのものがカジュアルすぎて、椅子にかけたりしてその存在感を主張したくない、という思いもある。そもそも椅子にバッグをかけるなんてビジネスマナーにそぐわないかもしれない(気にしたことないけれど)。

ということでバックパックを床に置くのだが「STAND BACK PACK」ならしっかり自立してくれる。会議終わりの帰り際にグニャリ寝転びバックパックをかがんで拾い上げることもなくスマートだ。

つまり、自立機能はバックパックの佇まいそのものを変えていると感じられる。使いやすさももちろんだと思うが、バックパックのあり方を根本から変えたのがSTAND BACK PACKなのだ、といったら言い過ぎだろうか。言い過ぎだ。しかし、今までなかった製品であることは確かだと思う。

収納部分は2層構造。上下で収納するツールを分けられる

次に収納スペースについて見ていこう。よくある25L程度のPCバックパックの場合、メインコンパートメントにセカンドポケット、サイドボトルポケットなどで構成されているが、STAND BACK PACKは12Lと半分以下の容量なので、いわゆるメインコンパートメント部分を上下2層構造にして、ツールごとに収納するスペースを分けている。

例えば上部は文具に名刺、財布などの貴重品、下部は充電器やモバイルバッテリー、マウスなどの周辺機器といった按配だ。なお、上部と下部の仕切りはジッパーとマジックテープで開閉できるので、上下の区別なくメインコンパートメントとして使うことも可能だ。そしてPCは上下ポケットと背の間に収納するPCバックパックの定番仕様。

上部ポケットを開いた様子。マチが薄いうえ生地の厚みがそれなりにあるので、それほど多くの物は入らない

ちなみに下部ポケットはサイドのジッパーを空けて出し入れするなど、慣れないと使いにくいと感じるかもしれない。そして反対側のサイドジッパーを開けるとペットボトルを収納できるが、ポケットが独立しているわけではなく、下部ポケットに直接ボトルを差し込む仕様となっているため、下部ポケットに収納物が多いとペットボトルが入らない、ということもある。

ともあれ、収納量が最小限だからこそ、ユーザーが使いやすくなじんでいけるよう、仕掛けを多数ほどこしたのではないかと考えられる。なお、フロントポケット含め数カ所にポケットがあり、メモ帳など細々としたものを分けて収納できる。あまり立体的なものは入れにくいが、本体そのものが薄いので仕方がないところだ。

サイドポケットにペットボトルを差し込んだところ。折りたたみ傘を取り出すのにもよい

テレワーク時代に対応したコクヨのSTAND BACK PACKは、まさに必要最小限のワークツールを持ち運ぶためのバックパックだ。近年ではテレワークシーンだけでなく、オフィスそのものがフリーアドレスになったりと「モノ」をコンパクトに仕分け、収納する必要性が高まっている。オフィスでも自宅でもサードプレイスでもスムーズ&スマートにワークツールを持ち運べるバックパックは、これからのワークスタイルへの新たな提案のひとつといえそうだ。

森田範彦