ミニレビュー

新プルームは吸いごたえを求めるスモーカーの心をつかめるか?

日本たばこ産業(JT)の新しいデバイス「プルーム・テック・プラス(Ploom Tech+)」と「プルーム・エス(Ploom S)」が1月29日に発売される。果たして新製品の投入により、アイコス一強の加熱式たばこの世界に風穴を空けられるだろうか。味わいはもちろん、ニオイや健康懸念物質の除去量など、それぞれに特徴があるとのことだが、ここでは初代「プルーム・テック(Ploom Tech)」を加えた3デバイスの吸いごたえを比較してみたい。

上からプルーム・テック、プラス、エス

プラスは従来のプルーム・テックに吸いごたえを求めた低温加熱型、エスは紙巻たばこに近い味わいを求めた高温加熱型(アイコス、グローと同方式)。なお、比較のために味わうカプセル、スティックはREGULAR(プルーム・テック)、MILD BLEND(プラス)、REGULAR TASTE(エス)とした。

なお筆者は高温加熱型ユーザーであるため、比較の基準も高温加熱型となることをあらかじめご了承いただきたい。

プルーム・テックはフレーバーを楽しむデバイス

まずはおさらいとして、プルーム・テックを久しぶりに吸ってみる。そう、この感じだ。紙巻たばこを吸っていた人にはもの足りないというか、「たばことはまた別物」といった印象の、いわゆる欧米で認知されている「電子たばこ」(たばこやフルーツなどの味・香りをつけた水蒸気を吸引する)の一種に感じられる味わい。たばこを吸うというより、フレーバーを楽しむもの、というのが正解だ。実際、数々のフレーバーが用意されている。

プルーム・テックは、デバイス本体に蒸気となるグリセリンなどを充填したカートリッジ(黒い部分)とたばこカプセルをセットして吸引する

もちろん、カプセルにはたばこ葉が詰まっているのだが、これまで10年、20年と紙巻たばこを吸っていた人には、その代わりを務めるモノとは言いがたい。かつての禁煙パイポとまで言っては失礼かもしれないが、禁煙したい人が使用するツールだと感じてしまう。

たばこカプセル

この「たばこ吸ってる感のなさ」に対するユーザーからの要望、吸いごたえを実現しているのがプルーム・テック・プラスとのこと。果たして、どの程度「吸いごたえ」をアップしているのだろうか。

もの足りなさをぬぐえないプルーム・テック・プラス

たばこカプセルを装着したプルーム・テック・プラス

プルーム・テックは加熱温度30℃の低温加熱型で、プラスも同じく低温加熱型だが、加熱温度を10℃アップして40℃。カプセル内のたばこ葉の量も増量しているというが……正直、その違いにそれほどの魅力は感じられなかった。

確かに喉に感じる、いわゆるキック感はある。しかし、アイコスやグローの高温加熱型の吸いごたえにはほど遠い。完全に禁煙を目指すのであればプルーム・テックでよいし、たばこの吸いごたえを求めるなら高温加熱型をセレクトする、というのが本音だ。

プルーム・テック・プラスのカートリッジ。デバイス本体のカートリッジカバーに入れて使用する

また、蒸気を発生するためのカートリッジをセットしてたばこ葉のカプセルを装着するという、プルーム・テックと同じ方式にめんどくささを感じてしまう。もちろん、1箱あたりでカートリッジのセットは1回だけだし、1カプセルで約50パフ吸えるのは従来の紙巻たばことは別の利便性があるかもしれない。が、「たばこを1本吸う」という感覚に乏しい。

私見だが、一服には、“たばこを1本吸うための数分間”が、非常に重要だと思っている。1、2回吸うだけでもOK、50回吸ってもOK、というのでは“たばこを吸うひととき”の特別感、魅力を感じにくいのではないだろうか。

プルーム・テック・プラスは、1箱にたばこカプセル5つと、カートリッジが1つ入っている

と、批判的な意見になってしまったが、もともとプルーム・テックを愛飲しているのであれば、選択肢が増えたことは歓迎すべきであろう。ユーザーの細やかな好みにも対応することで、加熱式たばこ全体の広がり、新たなユーザーの開拓を目指すのが、JTの戦略と見える。

プルーム・テック・プラスのパッケージ。フレーバーは、MILD BLEND、ROAST BLEND、COLD MINT、CLEAR MINTの4種類

そして、その戦略には、アイコス、グローと同じ高温加熱型たばこデバイスも、当然のごとく含まれている。次は真打ちとも言えるプルーム・エスを使用してみる。

吸いごたえは、アイコス→グロー→プルーム・エス

プルーム・エスにたばこスティックをセット

満を持して登場したと言っても過言ではない、JTの高温加熱型たばこデバイスのプルーム・エス。筆者が高温加熱型ユーザーである分、プルーム・エスへの期待は高かった。デバイスも丸みのある、手になじむデザインで好感度はいい。

喫煙スタイルはグローと同様にパックドリンクのストローをくわえているようなシルエットになってしまうが、連続使用可能なタイプへとアイコスもシフトしてきている現在、やむを得ないだろう。

手になじむ丸みを帯びたデザイン

また、清掃用ブラシに専用ケースが付属しているのも便利だ。グローの場合はブラシが付属するものの、ケースはない。結果、掃除で汚れたブラシは製品外箱内の所定の位置に戻している(外箱を処分できず)。アイコス(筆者が所有しているのは初代モデル)にもケース一体型のブラシとブレードを清掃するための「ヘラ」が付属しているが、アイコスは汚れ方が激しいためケース一体収納でなけれれば手に付いたりして本当に困る、という理由がある。プルーム・エスはグロー同様にあまり汚れない=メンテナンスが簡単でありつつ、ユーザーの利便性を考慮しているところが嬉しい。

プルーム・テック・プラスのクリーニングブラシ
デバイス本体の底面から挿入して清掃する

さて、デバイスの見た目うんぬんはこの辺までとして、実際の“味わい”はどうだろうか。

吸ってみた第一印象は「とても軽い」だ。たばこを吹かしたときの口内の感覚は非常にマイルド。吸い込んでみると、いわゆるキック感、吸いごたえも強くはないが、吸っているうちにその柔らかさに慣れてくる感じだ。

グローに近いが、グローよりも喉へのザラつきがないというか、甘やか。アイコスユーザーにはもの足りないが、グローユーザーであれば、喉への刺激が薄い分、たばこの旨みや雑味のないおいしさに魅力を感じる人もいるだろう。プルーム・エスとグローをしばらく吸い比べて、自分の求めている味わいを確認してみてもいいかもしれない。

また、ニオイの少なさも評価できるポイントだ。アイコス、グローともに独特の香ばしい香り、ロースト臭があるが、プルーム・エスは、それがほとんど感じられない。紙巻たばこは論外だが、アイコスでもグローでもたばこ臭を嫌悪する家族からそのニオイを指摘されてきた身としては、嫌煙家からもどうにかお目こぼしいただけるレベルだと感じている。

が、実際に家族に試してみたところ「ニオイがほとんどないからといってNG」とのこと。どんなに健康被害への少なさを声高に発したところで、たばこはたばこ(つまり害)。低温加熱型のプルーム・テックでさえも、場所を選ばず楽しめるモノにはなりはしないのが現実だと思われる。

プルーム・エスのパッケージ。フレーバーは、REGULAR TASTE、MENTHOL、MENTHOL COOL EFFECTの3種類

低温加熱型のプルーム・テックとプルーム・テック・プラス、そして高温加熱型のプルーム・エス。さらに高温加熱型で先行するアイコスと、追い上げを図るグロー。加熱式たばこの世界は、ユーザーの好みによって選択肢が広がってきている。

豊富なフレーバーで新たな喫煙習慣を生み出している低温加熱型デバイスと、吸いごたえの違いが鮮明になってきた高温加熱型デバイス。それぞれを吸い比べたり、その日の気分によって使い分けたりするように加熱式たばこの楽しみ方が醸成されてくると、喫煙が紙巻たばこの時代よりも豊かで魅力的な“大人のたしなみ”となるのかもしれない。

森田範彦