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UberEatsのロボット配達がスタート 日本橋で3月6日から

Uber Eats Japanは、三菱電機と米国Cartken(カートケン)と業務提携を結び、AIを活用した自律走行ロボットによるフードデリバリーサービスを、3月6日から日本橋エリアでスタートする。ロボットデリバリーの稼働時間は平日10時から17時。協力加盟店のみの対応となり、最初は2店舗から始まる。利用者は通常の配達を選択することもできるが、ロボットの指定は不可。今後、対応エリアや加盟店を増やしていく。

日本橋エリアからサービスを開始
今後、徐々に配送エリアを拡大予定

2月21日に発表した内容で、3月5日にはサービス開始に先駆けてロボットやサービスの詳細についての発表会を行ない、日本橋にて実際にロボットが公道を走ってフードデリバリーを行なう様子を報道関係者向けに公開した。ロボットが横断歩道を含む歩道上を走ってトンカツ店までロースカツ弁当をピックアップに行き、注文者のもとへ配達した。

ロボットにはCartkenの「Model C」を使用
雨天でも走行可能
デモでは「ロースとんかつ弁当」を配送
デモでは2台が走行したが、実際のサービスで用いられるのは1台のみ

使用ロボットはCartkenの「Model C」。サイズは長さ71cm×幅46cm×高さ60cm、積載容量は最大27L、20kgまで。最高速度は時速5.4km。自律のほか遠隔監視操作のもと安全基準に準拠して走行する。サービスに使われるロボットは最初は1台のみ。

日本橋からロボットデリバリーがスタート

Uber Eats Japan マーケットオペレーション ディレクター アルビン・ウー氏

Uber Eatsがロボットデリバリーサービスを提供するのは米国に続き日本が世界2カ国目。Uber Eats Japan マーケットオペレーション ディレクターのアルビン・ウー氏は「Uberの配達というと自転車のイメージを持たれているかもしれないが他にも様々な配達手段がある。ここに新たにデリバリーロボットが加わる。日本橋からデリバリーロボットサービスが始まる」と挨拶した。

東京を選んだ理由は二つあるという。ウー氏は「一つは日本はUber Eatsにとって重要な国だから。ビジネスは今も拡大を続けており、高い需要と継続した成長を見込んでいる。二つ目は日本には優れたインフラがあること。日本の公道は整備されていて、ロボットの走行に適している。まず日本橋エリアを中心に、都心部からスタートする。将来的には配達パートナーが少ない過疎地などでもデリバリーロボットを活用することで、サービスを活用していただける未来を目指している」と語った。

そして「ロボットの普及はすぐに実現するものではないし、10年後も多くの人が配達していると思う。いっぽう人手不足は社会問題となっている。補完としてのデリバリーロボットは今後、ますます重要な位置を占めるようになる」と続けた。

エレベーターとも連携、屋内外での移動範囲を拡大

三菱電機 開発本部 先進応用開発センター長 田中昭二氏

ロボットは三菱電機が日本仕様へ適合させ、導入・運用を行なった上でUber Eatsアプリを通してサービスが提供される。具体的にはロボットデリバリー協会による安全基準の適合試験に合格したロボットを、管轄の都道府県へ届出することにより運行する。

三菱電機 開発本部 先進応用開発センター長の田中昭二氏は「ロボット配送は今後ますます深刻化する物流クライシスへの対策。ロボットデリバリーによって従来どおりの配送サービスを継続できるだけでなく、今後ますます人々の暮らしを豊かにすることができる」と語った。

Cartkenと三菱電機の取り組みについては、2022年以降、約4,000回、7,500kmの配送を行なっており「十分な蓄積を積み重ねている」と強調。2024年1月の改正道交法に準拠した遠隔操作型小型車としての安全基準にも合格しており、さらにエレベーターやセキュリティドアなどのビル設備との連携による縦移動も含めて屋内搬送にも既に対応しているという。今後は商品を受け取る場所を屋内外問わず広げていく。さらに関連会社のメルコモビリティソリューションと共にサービス可能エリアを広げる。一般ユースだけでなく、工場内搬送へのロボット適用も進めていきたいと述べた。

Cartkenと三菱電機の取り組み
今後のスケールアップの展望

自律配送ロボットは各種存在、スーパーや工場でも

Cartken CEO Christian Bersch氏

自律配送ロボットを作っているCartken CEOのChristian Bersch氏は、「ラストワンマイルデリバリーやキャンパス、工場内の配送に使われている。様々な場所で使われている。一般公道でもショッピンモール、オフィスでも走れるし、レストラン、スーパーマーケット、工場でのツールやサンプルのデリバリーもすでに行なっている」とユースシーンを紹介した。

Cartkenのロボットが使われている利用シーンは大学やショッピンモール、工場など

ロボットについては「カメラはロボットの自律機能のほか、リモートオペレーターからのモニタリングにも使われている。時速5.4kmの速度で走行でき、非常に効率の良いバッテリーや夜間用照明を搭載している。マイクやスピーカーもついており、緊急の場合、オペレーターとの通信ができる」とアピール。今回の配送に使われるロボット(Model C)以外にも、棚をつけた「Model E」タイプも紹介した。

ロボットにはマイクやスピーカーもあって緊急時対応可能
Cartkenの他のタイプの配送ロボット

実際の注文・配送フロー

Uber Eats Japan シニア・オペレーション&ロジスティクス マネージャー アニルド・デヴラパリ氏

Uber Eats Japan シニア・オペレーション&ロジスティクス マネージャーのアニルド・デヴラパリ氏は、Uber Eatsの状況から紹介した。Uber Eatsは11,000以上の都市でサービスを展開しており、加盟店舗数は全世界で89万。グローバル平均で30分以内の配送を実現しており、2023年9月~12月で対前年比の流通総額は17%増加した。

日本国内では2016年9月にサービス開始。2019年に食品・日用品の取り扱いを開始、サービス開始5年後の2021年に47都道府県展開、2022年10月にパートナー企業にデリバリネットワークを提供するUber Directの展開、そして2024年3月にデリバリーロボット導入となる。

Uber Eatsのグローバル展開
Uber Eatsの国内展開

実際の注文・決済は通常の配送と同様、アプリから行なう。ロボット配達対象店舗に注文し、ロボット配送が可能な場合は「自動運転車が近くで配達しています」と表示される。ロボット配達を了承すると、商品を受け取るために店舗へとロボットが待機場所から移動を開始する。

ロボットデリバリーの概要
アプリでの注文。ロボットによる配達を了承すると、ロボットが来る場合もある
歩道を走行中のロボット。人の早歩きくらいの速度で走行する
協力店舗の「とんかつ檍 日本橋店」
今回配送したのはローストンカツ弁当
ロボットに品物を積載

店舗側では基本的に他の注文と同じように管理され、ロボットデリバリーの場合はロボットが到着すると、タブレット画面に「自動運転車が到着しました」と表示されるので、店員はロボットの蓋をあけて商品を入れる。すると自動的にロックされてロボットが配達に向かう。

品物を搭載したロボットは、配達先に移動する。ロボットは自己位置を事前に作成したマップやGPSから把握しており、横断歩道の前では必ず一旦停止する。再スタートには遠隔監視からの指示が必要となる。移動速度は人の早足くらいで、案外早い印象だ。

横断歩道では必ず一旦停止
赤信号が青に変わったことを遠隔監視員が確認し、再スタートさせる仕組み

配達される人のアプリには配達ロボットがどこにいるのかがリアルタイムに表示され、GPS情報を正確に読み取り、到着予測時間をアプリに表示する。注文した客は到着時間のタイミングに合わせて建物の外に出てロボットを待つ。ロボットが到着したらアプリを操作して、中の商品を受け取ることができる。

ロボットが近づいたことがアプリ上に表示される
ロボットが目的地に到着
アプリでロックを解除して品物を取り出す

今回のデリバリーを実現するために実際の公道を走るにあたって、安全対策をしっかり行なったと強調。ロボットに関しては2022年から実際の配達に活用しているので安全性や信頼性を評価しており、日本の法律にのっとり、ロボットの天面に緊急停止ボタンを設置。三菱電機の専任オペレーターが常時、遠隔監視を行なっており、何かあった場合は現場に急行できる社員が待機している。必要に応じて、緊急対応プランに従い、救急や警察への通報なども行なう。万が一、何らかの事故やトラブルが発生した場合は、対人・対物損害賠償保険で補償する。

デリバリーロボットの安全対策
ロボット天面の非常停止ボタン

ロボットによる配達ネットワークの補完

3社による協働でロボットデリバリーを実施

デヴラパリ氏は「デリバリーロボットがあらゆるニーズを満たす未来はまだ遠い。だが雨天時は配達ニーズは高まるがパートナーは減る。そのようなときはロボットが補完する。また小売商品のラストワンマイル配送の一部を担うことができる。エレベーターなど既存インフラとの連携が可能になれば玄関前までの配送も実現できる。まずは加盟店が多いところから始めるが、将来的には配達員がいないような地方や過疎エリアでも配送を担えるのではないか」と語った。

配送ネットワークの補完としてロボットを活用